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崩壊龍
血の剣
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レイラの『フル・ドラゴン・ソウル』により、彼女の圧勝かと思われたが、土壇場での、ゼルの血の剣による強引な龍力の底上げ。
それにより、拮抗した戦いが続いている。
この戦いにおいて、今までで最高クラスの戦いだ。
互いが己の実力の限界を超えて、龍力をぶつけ合っている。
一瞬一瞬を気が抜けない戦いだ。
「龍閃!!」
「オ゛ラァ!!血刃!!」
ジジ、と光と闇の稲津が迸る。
それらは彼らを中心に発生する龍圧に乗り、大地を駆けていく。
技を放った後、二人は刃を滑らせ、弾く。
それを幾回繰り返し、バックステップで同時に距離を取る。
「はぁ…はぁ……」
「ちィ……」
良くも悪くも、龍力のレベルが上がったことで、疲労感も強くなる。
同じ感覚で龍力を使うと、一気にエネルギーを持っていかれてしまう。
(これが、フル……!!)
だが、それ以上に感動が大きい。
レイラは『フル・ドラゴン・ソウル』の力に驚いていた。
龍力レベルが文字通り一段階強化された感覚だ。
ドラゴン・ソウル状態時で龍力を増幅させた状態とは、桁違いに力が溢れているのが分かる。
その分、パートナーである光龍の存在が、より近くに感じる。
(信じられません……!力が、溢れる……!)
しかし、そんな彼女の龍力に追いついているゼルも強い。
彼自身の強さもあるだろうが、血で具現化した剣による影響は大きいだろう。想像以上に力が底上げされている。
血液をエネルギー源としてプラスしている分、龍力の底上げの役目を果たしているのだ。
剣の重さが段違いに増しただけでなく、龍力も加わり、とんでもない強さに仕上がっている。
ただ、リスクも大きい。
自ら血をエネルギーに上乗せしているため、傷は放置である。それに、この激しい運動。傷は広がるばかりだ。
そのため、現在進行形で流血している。乱暴な力の使い方と、血の剣。
拮抗した戦いを繰り広げている暇は、ない。
(急がないと……!!)
当然、レイラはそれを理解している。そのため、少し焦っている。
リゼルの身体は、本当にボロボロだ。
急がなくては、勝負に勝てても、リゼルの肉体を救えない。
肉体に刃が届かなくとも、剣劇の一撃一撃のたびに、ゼルの顔が痛みで歪む。
傷が開いたままの腕で剣を振っているし、衝撃も大きい。
とにかく早期決着を、と、レイラも攻めるスキを探しているのだが、それがない。
(ないなら……作るだけです!!)
積極的に攻めるタイプではない普段のレイラなら、諦めではないが、様子見に徹していただろう。
だが、今の彼女にその選択はない。彼を裏切らないための戦いと、その力。それらが彼女を突き動かしている。
溢れる渾身の力を、ぶつける。
「光龍剛剣!!」
基礎技の光龍剣の派生で、シンプルな技だ。だが、威力を底上げすれば、崩しに使える。
それに、基礎技故に、エネルギー消費も少ない。
レイラの狙い通り、ゼルはその重たい威力に耐え切れず、体勢を崩す。
「グぁ……!!」
「今です!!」
光龍連牙爪。
連続して繰り出される光龍の牙と爪。剣を光龍の牙や爪に見立てた技だ。
体勢の崩れたゼルに、それを防ぐ術はない。
「が……は……!!」
血を吐き、ゼルは宙に飛ばされる
傷口と繋がっていた血の剣が手を離れ、空を舞う。
「ま……けるかぁぁぁあああああ!!」
空中で吐血ながらも、ゼルは吠える。
回転しながら弧を描く血の剣。彼はそれに手を伸ばす。
「させません!」
レイラは追撃しようとするが、様子がおかしい。
「え……?」
空を舞っていた血の剣は空中で、浮いている。
よくよく観察すれば、彼の剣と分離し、血の剣だけが浮いている。
彼の剣は音を立てて地面に転がった。
「これ……は……!!」
その様子に気が取られ、一瞬動作が遅れた。
一秒にも満たない時間。だが、それでも戦闘においては十分な時間だ。
ゼルは、静かに笑みを作る。
(ブラッディ・レイン……!!)
技を叫ぶ力はない。残りの龍力を全て、血の剣に込めた。
突如、悲鳴にも近い声が辺りに響く。
「!!」
耳を塞ぎたくなるような、嫌な音。前に聞いた、アレクの剣の比ではない。
宙に浮いた血の剣を中心に、闇龍の紋章が描かれる。
(……来る!!)
ゾクゾクする龍力が周囲を支配する。
空を見上げると、闇色と紅蓮色が混じったような色の剣が、いくつも具現化されているところだった。
「な……!!」
まさしく、ゼルが先ほど血と龍力でで具現化した剣だ。それも、現物より大きい。
それが何本も闇の紋章から具現化される。
まさに、血剣の雨。
(くたばれや……クソッタレ……)
遠い意識の中、ゼルは最期の悪態をついた。
そして、ゆっくりと目を閉じる。
血の剣が、彼女を切り刻むことを信じて――――――
それにより、拮抗した戦いが続いている。
この戦いにおいて、今までで最高クラスの戦いだ。
互いが己の実力の限界を超えて、龍力をぶつけ合っている。
一瞬一瞬を気が抜けない戦いだ。
「龍閃!!」
「オ゛ラァ!!血刃!!」
ジジ、と光と闇の稲津が迸る。
それらは彼らを中心に発生する龍圧に乗り、大地を駆けていく。
技を放った後、二人は刃を滑らせ、弾く。
それを幾回繰り返し、バックステップで同時に距離を取る。
「はぁ…はぁ……」
「ちィ……」
良くも悪くも、龍力のレベルが上がったことで、疲労感も強くなる。
同じ感覚で龍力を使うと、一気にエネルギーを持っていかれてしまう。
(これが、フル……!!)
だが、それ以上に感動が大きい。
レイラは『フル・ドラゴン・ソウル』の力に驚いていた。
龍力レベルが文字通り一段階強化された感覚だ。
ドラゴン・ソウル状態時で龍力を増幅させた状態とは、桁違いに力が溢れているのが分かる。
その分、パートナーである光龍の存在が、より近くに感じる。
(信じられません……!力が、溢れる……!)
しかし、そんな彼女の龍力に追いついているゼルも強い。
彼自身の強さもあるだろうが、血で具現化した剣による影響は大きいだろう。想像以上に力が底上げされている。
血液をエネルギー源としてプラスしている分、龍力の底上げの役目を果たしているのだ。
剣の重さが段違いに増しただけでなく、龍力も加わり、とんでもない強さに仕上がっている。
ただ、リスクも大きい。
自ら血をエネルギーに上乗せしているため、傷は放置である。それに、この激しい運動。傷は広がるばかりだ。
そのため、現在進行形で流血している。乱暴な力の使い方と、血の剣。
拮抗した戦いを繰り広げている暇は、ない。
(急がないと……!!)
当然、レイラはそれを理解している。そのため、少し焦っている。
リゼルの身体は、本当にボロボロだ。
急がなくては、勝負に勝てても、リゼルの肉体を救えない。
肉体に刃が届かなくとも、剣劇の一撃一撃のたびに、ゼルの顔が痛みで歪む。
傷が開いたままの腕で剣を振っているし、衝撃も大きい。
とにかく早期決着を、と、レイラも攻めるスキを探しているのだが、それがない。
(ないなら……作るだけです!!)
積極的に攻めるタイプではない普段のレイラなら、諦めではないが、様子見に徹していただろう。
だが、今の彼女にその選択はない。彼を裏切らないための戦いと、その力。それらが彼女を突き動かしている。
溢れる渾身の力を、ぶつける。
「光龍剛剣!!」
基礎技の光龍剣の派生で、シンプルな技だ。だが、威力を底上げすれば、崩しに使える。
それに、基礎技故に、エネルギー消費も少ない。
レイラの狙い通り、ゼルはその重たい威力に耐え切れず、体勢を崩す。
「グぁ……!!」
「今です!!」
光龍連牙爪。
連続して繰り出される光龍の牙と爪。剣を光龍の牙や爪に見立てた技だ。
体勢の崩れたゼルに、それを防ぐ術はない。
「が……は……!!」
血を吐き、ゼルは宙に飛ばされる
傷口と繋がっていた血の剣が手を離れ、空を舞う。
「ま……けるかぁぁぁあああああ!!」
空中で吐血ながらも、ゼルは吠える。
回転しながら弧を描く血の剣。彼はそれに手を伸ばす。
「させません!」
レイラは追撃しようとするが、様子がおかしい。
「え……?」
空を舞っていた血の剣は空中で、浮いている。
よくよく観察すれば、彼の剣と分離し、血の剣だけが浮いている。
彼の剣は音を立てて地面に転がった。
「これ……は……!!」
その様子に気が取られ、一瞬動作が遅れた。
一秒にも満たない時間。だが、それでも戦闘においては十分な時間だ。
ゼルは、静かに笑みを作る。
(ブラッディ・レイン……!!)
技を叫ぶ力はない。残りの龍力を全て、血の剣に込めた。
突如、悲鳴にも近い声が辺りに響く。
「!!」
耳を塞ぎたくなるような、嫌な音。前に聞いた、アレクの剣の比ではない。
宙に浮いた血の剣を中心に、闇龍の紋章が描かれる。
(……来る!!)
ゾクゾクする龍力が周囲を支配する。
空を見上げると、闇色と紅蓮色が混じったような色の剣が、いくつも具現化されているところだった。
「な……!!」
まさしく、ゼルが先ほど血と龍力でで具現化した剣だ。それも、現物より大きい。
それが何本も闇の紋章から具現化される。
まさに、血剣の雨。
(くたばれや……クソッタレ……)
遠い意識の中、ゼルは最期の悪態をついた。
そして、ゆっくりと目を閉じる。
血の剣が、彼女を切り刻むことを信じて――――――
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