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崩壊龍
憧れ故の
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「俺は……!!」
「話を戻そうか!?そうだよ!!お前の予想通り、裏ルートでこいつに龍魂を与えた!!」
「……!」
フリアとスレイの出会いの話が間にあったため、話を濁されたと思っていたが、向こうから話を戻してきた。
「もちろん、龍魂の適性はガン無視だ!!龍の使い方も教えていない!!」
耳を塞ぎたくなるフリアの言葉。
適性を考えることなく人間への龍魂の付与。その後のフォローアップもなし。
「教えていない」のではなく、「教える気がない」の間違いではないのか。
彼がそのまま力を発現することがなければ、そのまま捨てる気だったのではないのか。
スレイは使い捨ての実験動物ではない。絶対に許されない。
「幸い、こいつは龍魂の知識『だけ』はあった!その手間は省けて良かったぜ!?」
「……!」
「適性も教育もなしに龍魂を使い続ければ、どうなるか、分かるよな!?」
「……クッソヤロォが!!」
百歩譲って、スレイと炎龍の相性が良くても、最低限の教育・経験は必要だ。
使い方を誤れば、龍魂は暴走する。
今回のケースでは、相性を見ていない。炎龍とスレイの相性が悪い可能性だってある。
力が引き出せれば、相性が良いわけではない。ただ、本当に会わなければ、力そのものを理解できないため、龍力を発動させることはできない。
最初のハードルこそ越えているのが、また不幸である。
(くそ……!!)
最初のハードルを越えてしまったこと。そして、運悪くスレイには知識があること。
この二点が、スレイを『こう』させたと考えていい。
龍魂は、結局のところ、龍の力の組み立ての知識だ。
スレイはその知識がある分、本当の初心者とは違い、龍力の構成力がある。
ただし、知識があっても、経験がないなら話は別だ。
龍魂は教科書通りにはならない。おおかたの基礎は変わらないが、自分のクセや龍との相性で、構成に微調整が必要になる。
本来なら、実戦以外でその感覚を掴んでいくべきなのだ。
レイズがバージルと組んでやったように、そこには『慣れ』が必要になる。
しかし、スレイは龍との相性も慣れも無視してこの高度な龍力を使っている。
それに加え、素人目に見ても、すでに精神は普段の彼ではない。身体が壊れるのも時間の問題だ。
そうなれば、スレイは死ぬ。
龍力への憧れに身を焼かれて、死ぬのだ。
「助けたいなら……さっさとケリ付けな」
そうレイズに言い、フリアはスレイの背に手を当てる。
「……もっと暴れろ!!」
ズズ、と月光龍の力がスレイに伝わる。
力を分け与えるというより、炎龍と龍力を反応させているようなイメージだ。
「スレイに触るな!!」
レイズは飛び出そうとするが、スレイの圧に負けそうになる。
空気の壁に阻まれているかのようだ。
「ッ……!!」
月光龍の力に反応し、スレイの龍力がどんどん上がっている。
「さぁ!!弟に勝て!!それでお前は『兄』に戻れる!!」
「アぁ!!」
フリアはそうスレイを焚きつけると、振り返り、町の方向へ歩いていく。
「おい!!待て!!」
「俺は暴れねぇ。安心しろ。だが、そいつは知らねぇけどな」
「ッ!!」
荒れ狂う龍力の渦の中心に、スレイは立っている。
そして、こちらを睨みつけている。
「行くゾ……レイズ……!!」
「く……!!」
スレイに視線を移し、フリアに視線を戻した時には、フリアは消えていた。
遺されたのは、肌を刺すような殺気を放つ兄と、精神を乱された弟の二人だけとなった。
「話を戻そうか!?そうだよ!!お前の予想通り、裏ルートでこいつに龍魂を与えた!!」
「……!」
フリアとスレイの出会いの話が間にあったため、話を濁されたと思っていたが、向こうから話を戻してきた。
「もちろん、龍魂の適性はガン無視だ!!龍の使い方も教えていない!!」
耳を塞ぎたくなるフリアの言葉。
適性を考えることなく人間への龍魂の付与。その後のフォローアップもなし。
「教えていない」のではなく、「教える気がない」の間違いではないのか。
彼がそのまま力を発現することがなければ、そのまま捨てる気だったのではないのか。
スレイは使い捨ての実験動物ではない。絶対に許されない。
「幸い、こいつは龍魂の知識『だけ』はあった!その手間は省けて良かったぜ!?」
「……!」
「適性も教育もなしに龍魂を使い続ければ、どうなるか、分かるよな!?」
「……クッソヤロォが!!」
百歩譲って、スレイと炎龍の相性が良くても、最低限の教育・経験は必要だ。
使い方を誤れば、龍魂は暴走する。
今回のケースでは、相性を見ていない。炎龍とスレイの相性が悪い可能性だってある。
力が引き出せれば、相性が良いわけではない。ただ、本当に会わなければ、力そのものを理解できないため、龍力を発動させることはできない。
最初のハードルこそ越えているのが、また不幸である。
(くそ……!!)
最初のハードルを越えてしまったこと。そして、運悪くスレイには知識があること。
この二点が、スレイを『こう』させたと考えていい。
龍魂は、結局のところ、龍の力の組み立ての知識だ。
スレイはその知識がある分、本当の初心者とは違い、龍力の構成力がある。
ただし、知識があっても、経験がないなら話は別だ。
龍魂は教科書通りにはならない。おおかたの基礎は変わらないが、自分のクセや龍との相性で、構成に微調整が必要になる。
本来なら、実戦以外でその感覚を掴んでいくべきなのだ。
レイズがバージルと組んでやったように、そこには『慣れ』が必要になる。
しかし、スレイは龍との相性も慣れも無視してこの高度な龍力を使っている。
それに加え、素人目に見ても、すでに精神は普段の彼ではない。身体が壊れるのも時間の問題だ。
そうなれば、スレイは死ぬ。
龍力への憧れに身を焼かれて、死ぬのだ。
「助けたいなら……さっさとケリ付けな」
そうレイズに言い、フリアはスレイの背に手を当てる。
「……もっと暴れろ!!」
ズズ、と月光龍の力がスレイに伝わる。
力を分け与えるというより、炎龍と龍力を反応させているようなイメージだ。
「スレイに触るな!!」
レイズは飛び出そうとするが、スレイの圧に負けそうになる。
空気の壁に阻まれているかのようだ。
「ッ……!!」
月光龍の力に反応し、スレイの龍力がどんどん上がっている。
「さぁ!!弟に勝て!!それでお前は『兄』に戻れる!!」
「アぁ!!」
フリアはそうスレイを焚きつけると、振り返り、町の方向へ歩いていく。
「おい!!待て!!」
「俺は暴れねぇ。安心しろ。だが、そいつは知らねぇけどな」
「ッ!!」
荒れ狂う龍力の渦の中心に、スレイは立っている。
そして、こちらを睨みつけている。
「行くゾ……レイズ……!!」
「く……!!」
スレイに視線を移し、フリアに視線を戻した時には、フリアは消えていた。
遺されたのは、肌を刺すような殺気を放つ兄と、精神を乱された弟の二人だけとなった。
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