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崩壊龍
発見
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レイズたちが王都を経って、数日後。
クラッツの読み通り、犯罪者は自分たちが配置された後に現れた。騎士団基地で支給された通信端末が鳴りっぱなしだ。
その様子から、他の町でも戦いが起こっていることが分かる。仲間たちも、きっとどこかで戦っているだろう。
南の町に配置されたレイズも、最前線で犯罪者たちと戦っている。
騎士団員も総出で戦っており、龍力レベルこそ高くないが、心強い。
彼らは、隙ある限り「グランズを出せ」としきりに叫んでいる。
これだけ言われれば、住人の耳にも入るだろう。そして、こう考え始める。
『グランズが生きていて、表に姿を出さない』
と。これは、イメージが悪い。
王の盾であり、剣でもある騎士団へのイメージも、同時に悪くなるだろう。
だが、騎士団ですら居場所を把握していない。完全なる巻き込まれなのだが、住人にとっては関係ないことだ。
(……後一人!)
犯罪者は、グループで現れている。ここに現れたのも例外なく、数名のグループであった。
ただ、人数は他の町に比べて少ないように感じる。他の町で、多い所では十人を超えていたところもあるのだ。
時間差で増援があるかも、と警戒していたが、応戦している間、その敵の数が増えることはなかった。
残るは一人。それも、大して強くない。
(これなら!!)
『フル・ドラゴン・ソウル』の出番はない。
「炎龍剣!」
「ぐッ……」
レイズは龍力を節約しながら、その犯罪者を気絶させた。
「流石です!」
「……ありがとう。あとは頼むぜ」
共に戦う団員に褒められ、すこし嬉しくなるレイズ。
龍魂を授かり、しばらく経つ。敗北経験が多く、自分では成長を感じられていない時期が長かったが、こうして戦い、勝利を得ると、自分の成長を感じる。
犯罪者の搬送とチェックリストの確認を騎士団員に任せ、レイズは息をつく。
これで、一通り討伐は完了した。念の為町を一回りして、基地へと戻ろう。
そう考えていた矢先。
「!!」
遠くの建物の隙間に、見覚えのある黒髪の長髪が見えた気がした。
気温は高く、日差しもあるのに、全身黒い服だった。
「ッ……!!」
一気に緊張が高まるレイズ。
(最悪だ……!!フリアか……!?)
この日に備え、騎士団が外出を控えるようアナウンスしている。それに加え、街中での戦闘行為の発生。
この町の住人が、好き好んで外出しているとは考えにくい。
それに、黒髪で黒い服で、となると、もう嫌な予感しかしない。
震える手で、通信端末に手を伸ばす。
「……こちらレイズ。フリアとみられる人物を発見。追跡する」
一度、唾を飲み込む。
汗が噴き出る。声が上手く出ない。
「団員は……撤退せよ」
これは、予め決められていた指示だ。
時は、騎士団本部にいた頃まで遡る。
現れるのは犯罪者だけとは限らない。
配置が決まった後、レイズはクラッツに『彼ら』に遭遇した場合の対処を聞いていた。
団長の答えは、「戦闘行為を行わない」ことだった。
「万が一、フリアやスゼイまでが町に現れても、絶対に戦うな」
「え?」
「戦っても勝てる相手ではない。様子を見るんだ」
「…………」
「そいつらが人を襲うようなら、戦闘が必要だが、北の傾向から、その可能性は低い」
「……その辺が分からないですね」
「そうだ。思いっきり暴れた方が、王をあぶり出しやすい気もする。が、敵はそれをしてこない」
レイラだけではなく、皆が思っていたことだ。
彼らの実力なら、やろうと思えば、何でもできそうな気さえする。
しかし、彼らは騎士団意外と戦闘行動を行っていない。破壊行為も消極的である。
「……あくまで、グランズ王ってことはない?」
「無関係な人間は襲わない……?」
可能性の一つだが、マリナの考えにミーネは一定の理解を示した。
「襲わない……ことはなさそうだが、どうだろうな。そこは敵の考え次第なところがある」
「そうですね……」
「とにかく、戦うな。様子を見るんだ。団員も撤退させろ。勝てない戦いはしない。犠牲が増えるだけだ」
「了解した」
本気で町を襲う気なら、わざわざ各地から犯罪者を奪う必要はない。
フリアたち自らの圧倒的力で、あぶり出せばいい。
それがないということは、向こうも無駄な破壊や犠牲を望んでいない、と考えられる。
そして、今。
(よりによって、ここかよ……)
彼らが戦闘・破壊行為をすれば別だが、現段階では戦う必要はない。
手を出すなよ、と念じながら、レイズは彼らの死角の建物の壁にへばりつくのだった。
クラッツの読み通り、犯罪者は自分たちが配置された後に現れた。騎士団基地で支給された通信端末が鳴りっぱなしだ。
その様子から、他の町でも戦いが起こっていることが分かる。仲間たちも、きっとどこかで戦っているだろう。
南の町に配置されたレイズも、最前線で犯罪者たちと戦っている。
騎士団員も総出で戦っており、龍力レベルこそ高くないが、心強い。
彼らは、隙ある限り「グランズを出せ」としきりに叫んでいる。
これだけ言われれば、住人の耳にも入るだろう。そして、こう考え始める。
『グランズが生きていて、表に姿を出さない』
と。これは、イメージが悪い。
王の盾であり、剣でもある騎士団へのイメージも、同時に悪くなるだろう。
だが、騎士団ですら居場所を把握していない。完全なる巻き込まれなのだが、住人にとっては関係ないことだ。
(……後一人!)
犯罪者は、グループで現れている。ここに現れたのも例外なく、数名のグループであった。
ただ、人数は他の町に比べて少ないように感じる。他の町で、多い所では十人を超えていたところもあるのだ。
時間差で増援があるかも、と警戒していたが、応戦している間、その敵の数が増えることはなかった。
残るは一人。それも、大して強くない。
(これなら!!)
『フル・ドラゴン・ソウル』の出番はない。
「炎龍剣!」
「ぐッ……」
レイズは龍力を節約しながら、その犯罪者を気絶させた。
「流石です!」
「……ありがとう。あとは頼むぜ」
共に戦う団員に褒められ、すこし嬉しくなるレイズ。
龍魂を授かり、しばらく経つ。敗北経験が多く、自分では成長を感じられていない時期が長かったが、こうして戦い、勝利を得ると、自分の成長を感じる。
犯罪者の搬送とチェックリストの確認を騎士団員に任せ、レイズは息をつく。
これで、一通り討伐は完了した。念の為町を一回りして、基地へと戻ろう。
そう考えていた矢先。
「!!」
遠くの建物の隙間に、見覚えのある黒髪の長髪が見えた気がした。
気温は高く、日差しもあるのに、全身黒い服だった。
「ッ……!!」
一気に緊張が高まるレイズ。
(最悪だ……!!フリアか……!?)
この日に備え、騎士団が外出を控えるようアナウンスしている。それに加え、街中での戦闘行為の発生。
この町の住人が、好き好んで外出しているとは考えにくい。
それに、黒髪で黒い服で、となると、もう嫌な予感しかしない。
震える手で、通信端末に手を伸ばす。
「……こちらレイズ。フリアとみられる人物を発見。追跡する」
一度、唾を飲み込む。
汗が噴き出る。声が上手く出ない。
「団員は……撤退せよ」
これは、予め決められていた指示だ。
時は、騎士団本部にいた頃まで遡る。
現れるのは犯罪者だけとは限らない。
配置が決まった後、レイズはクラッツに『彼ら』に遭遇した場合の対処を聞いていた。
団長の答えは、「戦闘行為を行わない」ことだった。
「万が一、フリアやスゼイまでが町に現れても、絶対に戦うな」
「え?」
「戦っても勝てる相手ではない。様子を見るんだ」
「…………」
「そいつらが人を襲うようなら、戦闘が必要だが、北の傾向から、その可能性は低い」
「……その辺が分からないですね」
「そうだ。思いっきり暴れた方が、王をあぶり出しやすい気もする。が、敵はそれをしてこない」
レイラだけではなく、皆が思っていたことだ。
彼らの実力なら、やろうと思えば、何でもできそうな気さえする。
しかし、彼らは騎士団意外と戦闘行動を行っていない。破壊行為も消極的である。
「……あくまで、グランズ王ってことはない?」
「無関係な人間は襲わない……?」
可能性の一つだが、マリナの考えにミーネは一定の理解を示した。
「襲わない……ことはなさそうだが、どうだろうな。そこは敵の考え次第なところがある」
「そうですね……」
「とにかく、戦うな。様子を見るんだ。団員も撤退させろ。勝てない戦いはしない。犠牲が増えるだけだ」
「了解した」
本気で町を襲う気なら、わざわざ各地から犯罪者を奪う必要はない。
フリアたち自らの圧倒的力で、あぶり出せばいい。
それがないということは、向こうも無駄な破壊や犠牲を望んでいない、と考えられる。
そして、今。
(よりによって、ここかよ……)
彼らが戦闘・破壊行為をすれば別だが、現段階では戦う必要はない。
手を出すなよ、と念じながら、レイズは彼らの死角の建物の壁にへばりつくのだった。
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