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崩壊龍
素直な気持ち
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「……そろそろ先に進めませんか」
黙って話を聞いていた、否、居眠りをしていたアレクが欠伸をしながら言う。
その態度に苛立つレイズたちだが、彼にモノ言える人間はいない。
「会議っていつ受けても暇ですね。面白くない」
「アレク……」
たしなめるようにクラッツは名前を言う。
こんなヤツが四聖龍か、とレイズたちは残念な気持ちになる。
シャレムも第一印象は悪かったが、今は良い方向に変わっている。
だが、アレクに関しては、ずっと悪いままだ。これがいい方向に変わる気配もない。
「……話を戻します。皆の意見は、リゼルを取り戻したい、でいいかな」
『中身』については一旦保留にするよ、とクラッツは結ぶ。
「え?まぁ……」
チラ、とレイズは仲間たちの様子を窺う。
リゼルは取り戻す気持ちに変わりはないが、中身は闇龍となっているらしい。
奇跡が起きて人格が戻る、なんてことは今の話の感じからして、望みはなさそうだ。
その上で、他の仲間はどう感じているのか。
「私も、変わりません……が、優先順位としては、低いと考えます」
「……レイラ?」
「今の話を信じるなら、リゼルの姿をした、別人格の人間です。確かに彼を取り戻したい気持ちは強いです。が、それは私個人の意思です。今は、国民を守る手段を考えなければなりません」
「う……」
正しい正しくないは置いておいて、レイラは「リゼルを取り戻す」ことを私的と考え、意見を変えた。
それを聞き、レイズ含めバージルたちは、言葉に詰まる。
「騎士団と同意見ですね」
クラッツはレイラの意見を書き加える。
「……君たちも。素直な気持ちを聞かせてくれ」
バージル、マリナ、ミーネに視線が集まる。
「……!」
キツイ。頭が混乱していて、すぐに決断できない。
だが、今の伝える雰囲気だ。何か言わなければ。
「俺も……レイラと同意見です……それに、連れ戻すってことは、敵の懐に突撃するってことっすよね……俺には、その覚悟は……ないっす……」
「バージル……」
そう。
彼を連れ戻すとしても、敵がすんなり渡してくれるとは限らない。
何かしらの戦闘は起こるだろう。
『あの島』での戦闘から時間もあまり経っておらず、戦力差がなくなったとは考えにくい。
覚悟ができていない。それが、自分の素直な感情だ。
「素直な意見、ありがとう。君の不安は尤もだ」
「わたしも……こわい」
「あたしも……です」
今までの話を聞いて、マリナとミーネも消極的になる。
このまま暗雲界に乗りこんでも、無意味に散ってしまいそうで、怖い。
リゼルは取り戻したいが、中身が闇龍なのだとするなら、話は別だ。どうしても優先順位は下がる。
それに、敵との戦力差は、どうしても無視できない。
素直に返す気がないから、イングヴァーの代わりにリゼルを連れて行ったのだ。
そして、イングヴァーの代わりの『コマ』として使われる。
『騎士団所属の見た目』をしている闇龍を、敵がどう使うのか想像したくもない。
彼は自分たちと共に世界を大移動している。よって、見知った人間に見つかる可能性も高い。
そんな『彼』が、騎士団や民間人に刃を向ける……国への信頼は更に失われるだろう。
しかし、取り戻す力も時間も何もない。だから、せめて町を、国民を全力で守ろう。
レイズたちの意見を理解し、頭の中で整理していたクラッツ。
(まずは防衛……体制を整えて、からか)
敵もいつ攻めてくるか分からない。
今日明日かもしれないし、一週間先かも、一ヶ月先かもしれない。
何にせよ、騎士団側は防衛に力を割き、戦力バランスを整えなければならないのだ。
黙って話を聞いていた、否、居眠りをしていたアレクが欠伸をしながら言う。
その態度に苛立つレイズたちだが、彼にモノ言える人間はいない。
「会議っていつ受けても暇ですね。面白くない」
「アレク……」
たしなめるようにクラッツは名前を言う。
こんなヤツが四聖龍か、とレイズたちは残念な気持ちになる。
シャレムも第一印象は悪かったが、今は良い方向に変わっている。
だが、アレクに関しては、ずっと悪いままだ。これがいい方向に変わる気配もない。
「……話を戻します。皆の意見は、リゼルを取り戻したい、でいいかな」
『中身』については一旦保留にするよ、とクラッツは結ぶ。
「え?まぁ……」
チラ、とレイズは仲間たちの様子を窺う。
リゼルは取り戻す気持ちに変わりはないが、中身は闇龍となっているらしい。
奇跡が起きて人格が戻る、なんてことは今の話の感じからして、望みはなさそうだ。
その上で、他の仲間はどう感じているのか。
「私も、変わりません……が、優先順位としては、低いと考えます」
「……レイラ?」
「今の話を信じるなら、リゼルの姿をした、別人格の人間です。確かに彼を取り戻したい気持ちは強いです。が、それは私個人の意思です。今は、国民を守る手段を考えなければなりません」
「う……」
正しい正しくないは置いておいて、レイラは「リゼルを取り戻す」ことを私的と考え、意見を変えた。
それを聞き、レイズ含めバージルたちは、言葉に詰まる。
「騎士団と同意見ですね」
クラッツはレイラの意見を書き加える。
「……君たちも。素直な気持ちを聞かせてくれ」
バージル、マリナ、ミーネに視線が集まる。
「……!」
キツイ。頭が混乱していて、すぐに決断できない。
だが、今の伝える雰囲気だ。何か言わなければ。
「俺も……レイラと同意見です……それに、連れ戻すってことは、敵の懐に突撃するってことっすよね……俺には、その覚悟は……ないっす……」
「バージル……」
そう。
彼を連れ戻すとしても、敵がすんなり渡してくれるとは限らない。
何かしらの戦闘は起こるだろう。
『あの島』での戦闘から時間もあまり経っておらず、戦力差がなくなったとは考えにくい。
覚悟ができていない。それが、自分の素直な感情だ。
「素直な意見、ありがとう。君の不安は尤もだ」
「わたしも……こわい」
「あたしも……です」
今までの話を聞いて、マリナとミーネも消極的になる。
このまま暗雲界に乗りこんでも、無意味に散ってしまいそうで、怖い。
リゼルは取り戻したいが、中身が闇龍なのだとするなら、話は別だ。どうしても優先順位は下がる。
それに、敵との戦力差は、どうしても無視できない。
素直に返す気がないから、イングヴァーの代わりにリゼルを連れて行ったのだ。
そして、イングヴァーの代わりの『コマ』として使われる。
『騎士団所属の見た目』をしている闇龍を、敵がどう使うのか想像したくもない。
彼は自分たちと共に世界を大移動している。よって、見知った人間に見つかる可能性も高い。
そんな『彼』が、騎士団や民間人に刃を向ける……国への信頼は更に失われるだろう。
しかし、取り戻す力も時間も何もない。だから、せめて町を、国民を全力で守ろう。
レイズたちの意見を理解し、頭の中で整理していたクラッツ。
(まずは防衛……体制を整えて、からか)
敵もいつ攻めてくるか分からない。
今日明日かもしれないし、一週間先かも、一ヶ月先かもしれない。
何にせよ、騎士団側は防衛に力を割き、戦力バランスを整えなければならないのだ。
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