220 / 469
四聖龍
後継者を求めて
しおりを挟む
ウィーンは一人、とある森の村の付近で木々の合間から差し込む光に目を細め、休んでいた。
「…………」
とある村には、ある目的でやってきている。
(どう出るか、だな……)
四聖龍は、基本的にお互い干渉することはない。
したがって、このような事態になるまで、自分以外の四聖龍が誰なのか知らなかった。当然、住んでいる場所も知らない。
東西南北に一人ずつ割り振られているのだから、その区域のどこかにくらしていると想像するが、具体的な住所は不明だ。同時に、自分の住所も他の四聖龍は知らない。
互いに干渉しない部分は精神的に楽だが、こういうイレギュラー時には少々手間だ。
ウィーンは、シャレムのように候補を上げるのは最終手段にしたいと考えていた。
自分を庇って死んだハーゼイの意志を尊重したいと考えたからだ。
敵との戦いこそ一対一で行えていた。が、最終的には戦闘力の差故のミスがあった。実際、上手く誘い込まれた結果となったのだ。
(だから、なのか)
普段であれば、興味すら湧かない案件だ。あの時のシャレムに「勝手にしろ。こっちも勝手に(候補を)出させてもらう」と言えなかったのは、彼の最期に自分が関係していたから。
よって、あの日以降騎士団上層部に対して調査を進めていた。
当然住所を共有させていないため、おおよそではある。
そのおおよそが分かれば、衣服や装飾品、武器の特徴から更に細かく絞り込むことができる。
地道な作業だったが、幸いにも時間は有り余っていた。
そして、調査を進めるうちに、分かったことがある。
表向きのハーゼイは、小さな村でこども園の園長をしていたらしい。
ならば、まずはそこへ向かう。彼は一度だけ深く息をつき、村へと足を踏み入れる。
「あれか……」
子供たちの遊ぶ声が聞こえてきた。
小さい村であることと、声変わりしていない高い声は良く通ることから、すぐに分かった。
「……ちょっといいか」
「はい?」
近くにいた若い女性スタッフを捕まえ、話を聞いていたウィーン。
ただ、欲しかった情報は得ることができなかった。
「……そう、か」
彼は、あの作戦の前に仕事を辞めていた。それだけではない。住んでいた場所も引き払ったようだ。
もしかしたら、あの作戦で生き残れないと判断していたのだろうか。
(ハーゼイ……あんたは……)
後から気付いた事だが、衣服も装飾品も、村やその近くの特産品だった。
万が一のことに備えていたのか、偶然か。
何にせよ、住む場所も引き払ったのであれば、家屋調査もできないだろう。
ここまで身辺整理されてしまえば、彼の弟子への手掛かりはないと言ってもいい。
ここまで苦労して、時間も体力も消費したのに、成果なし、か。
(……なんでこんなことやってんだろうな)
自分の性格からして、あり得なかった時間だ。こんなクソ面倒なことに労力を割くなんて。
四聖龍の規定通り、ハーゼイの後継者探しであげたかった?それとも、病院にいたくなかった?ただの暇つぶし?それとも、罪滅ぼし、か。
「ここ、か」
彼の住んでいた家まで何とかたどり着いたが、当然鍵は閉まっており、中に入ることはできない。
木造の一戸建ての古民家だ。
庭も広くなく、質素な感じだ。一人暮らしの初老の男の家。
個人差はあるだろうが、そう聞いてイメージするまんまの家だ。
同じ立場である自分の待遇面から考えても、四聖龍が住んでいるとは到底思えない。もっといい家に住めそうなものだが。
まぁ、バレにくいという面では良い住処ではあるが。
(ハーゼイ……あんたの後継者は……)
作戦前に身辺整理をするほどの男だ。後継者のことも考えていそうなものだが。
ハーゼイの働いていたこども園も一通り目を通してみたが、本当にこどもだけだ。後継者がいるとは思えなかった。
それは、職員も同様であった。龍魂こそあれど、高い龍力を持っていそうな職員はいなかった。
(無駄足、か)
しかし、このまま帰ったところで、彼はシャレムのように候補者を出すことはできない。
こういう性格だから、知り合いも少ない。それを考えなかったとしても、四聖龍の実力に見合う者など、そうそういない。
ため息をつき、王都に戻ろうとした時だ。
村の入り口で警備をしていた村人が叫んだ。
「魔物が出たぞ!!隠れろ!!」
「ッ!!」
小さな村には騎士団が常駐しない。
それに、今は主要な町の警備に人を取られている。したがって、小さな村は自警団が頼りなのだ。
「早く帰れ!急げ!」
「早く……!!」
村の人間は急いで各々の家に隠れる。
あっという間に、外にいるのは自分一人となってしまった。
(いや、誰かいるな)
見える範囲にいるのはウィーン一人だ。
しかし、気配がする。数は一つで、龍力を纏っている。そして、その気配は移動している。
一人で魔物に挑むつもりなのか。
「くそ!」
ウィーンは短剣を抜き、気配のする方へ走り出す。彼の故郷を壊させないために。
「…………」
とある村には、ある目的でやってきている。
(どう出るか、だな……)
四聖龍は、基本的にお互い干渉することはない。
したがって、このような事態になるまで、自分以外の四聖龍が誰なのか知らなかった。当然、住んでいる場所も知らない。
東西南北に一人ずつ割り振られているのだから、その区域のどこかにくらしていると想像するが、具体的な住所は不明だ。同時に、自分の住所も他の四聖龍は知らない。
互いに干渉しない部分は精神的に楽だが、こういうイレギュラー時には少々手間だ。
ウィーンは、シャレムのように候補を上げるのは最終手段にしたいと考えていた。
自分を庇って死んだハーゼイの意志を尊重したいと考えたからだ。
敵との戦いこそ一対一で行えていた。が、最終的には戦闘力の差故のミスがあった。実際、上手く誘い込まれた結果となったのだ。
(だから、なのか)
普段であれば、興味すら湧かない案件だ。あの時のシャレムに「勝手にしろ。こっちも勝手に(候補を)出させてもらう」と言えなかったのは、彼の最期に自分が関係していたから。
よって、あの日以降騎士団上層部に対して調査を進めていた。
当然住所を共有させていないため、おおよそではある。
そのおおよそが分かれば、衣服や装飾品、武器の特徴から更に細かく絞り込むことができる。
地道な作業だったが、幸いにも時間は有り余っていた。
そして、調査を進めるうちに、分かったことがある。
表向きのハーゼイは、小さな村でこども園の園長をしていたらしい。
ならば、まずはそこへ向かう。彼は一度だけ深く息をつき、村へと足を踏み入れる。
「あれか……」
子供たちの遊ぶ声が聞こえてきた。
小さい村であることと、声変わりしていない高い声は良く通ることから、すぐに分かった。
「……ちょっといいか」
「はい?」
近くにいた若い女性スタッフを捕まえ、話を聞いていたウィーン。
ただ、欲しかった情報は得ることができなかった。
「……そう、か」
彼は、あの作戦の前に仕事を辞めていた。それだけではない。住んでいた場所も引き払ったようだ。
もしかしたら、あの作戦で生き残れないと判断していたのだろうか。
(ハーゼイ……あんたは……)
後から気付いた事だが、衣服も装飾品も、村やその近くの特産品だった。
万が一のことに備えていたのか、偶然か。
何にせよ、住む場所も引き払ったのであれば、家屋調査もできないだろう。
ここまで身辺整理されてしまえば、彼の弟子への手掛かりはないと言ってもいい。
ここまで苦労して、時間も体力も消費したのに、成果なし、か。
(……なんでこんなことやってんだろうな)
自分の性格からして、あり得なかった時間だ。こんなクソ面倒なことに労力を割くなんて。
四聖龍の規定通り、ハーゼイの後継者探しであげたかった?それとも、病院にいたくなかった?ただの暇つぶし?それとも、罪滅ぼし、か。
「ここ、か」
彼の住んでいた家まで何とかたどり着いたが、当然鍵は閉まっており、中に入ることはできない。
木造の一戸建ての古民家だ。
庭も広くなく、質素な感じだ。一人暮らしの初老の男の家。
個人差はあるだろうが、そう聞いてイメージするまんまの家だ。
同じ立場である自分の待遇面から考えても、四聖龍が住んでいるとは到底思えない。もっといい家に住めそうなものだが。
まぁ、バレにくいという面では良い住処ではあるが。
(ハーゼイ……あんたの後継者は……)
作戦前に身辺整理をするほどの男だ。後継者のことも考えていそうなものだが。
ハーゼイの働いていたこども園も一通り目を通してみたが、本当にこどもだけだ。後継者がいるとは思えなかった。
それは、職員も同様であった。龍魂こそあれど、高い龍力を持っていそうな職員はいなかった。
(無駄足、か)
しかし、このまま帰ったところで、彼はシャレムのように候補者を出すことはできない。
こういう性格だから、知り合いも少ない。それを考えなかったとしても、四聖龍の実力に見合う者など、そうそういない。
ため息をつき、王都に戻ろうとした時だ。
村の入り口で警備をしていた村人が叫んだ。
「魔物が出たぞ!!隠れろ!!」
「ッ!!」
小さな村には騎士団が常駐しない。
それに、今は主要な町の警備に人を取られている。したがって、小さな村は自警団が頼りなのだ。
「早く帰れ!急げ!」
「早く……!!」
村の人間は急いで各々の家に隠れる。
あっという間に、外にいるのは自分一人となってしまった。
(いや、誰かいるな)
見える範囲にいるのはウィーン一人だ。
しかし、気配がする。数は一つで、龍力を纏っている。そして、その気配は移動している。
一人で魔物に挑むつもりなのか。
「くそ!」
ウィーンは短剣を抜き、気配のする方へ走り出す。彼の故郷を壊させないために。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる