龍魂

ぐらんじーた

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四聖龍

守りの強さ

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レイラは自分を奮い立たせる。

諦めるな。戦え。
そのために、ここにいる。

涙は乾いた。
龍を、全てをぶつけろ。

「あぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

今までに感じたことのない力。その力が溢れてくる。ありったけを、フリアにぶつける。
剣が光の軌跡を描きながら、フリアに襲い掛かる。

しかし。

「イマイチだぜ……?」

レイラの剣は、刀で軽々と止められてしまう。
ただ、攻撃力自体は上がっているらしい。
フリアの足が地面に少しめり込み、そこを中心にヒビを入れている。

(押し切れない……!)

手ごたえはあった。
だが、まだ彼には届いていないのか。

悔しさのあまり奥歯を鳴らしていると、氷龍と雷龍の紋章が空に描かれた。

「レイラッ!アイスブレイド!」
「ッ!サンダーソード!」

ミーネとマリナの龍術が飛ぶ。しかし、詠唱時間も不十分で、威力は望めない。
何もないより、マシ程度。
フリアには当たるが、ダメージは期待できない。

「……邪魔くせぇ」

ちら、とフリアはリゼルたちの立ち位置を確認する。
彼はレイラの剣を押し返し、リゼルたちが立っている方へ向いた。

「月影刃ッ!!」

フリアは刀を素振りした。
その剣の軌跡から、龍力が発生。斬撃が飛んでくる。

「!」
「きゃぁっ!!」
「皆さん!!」

武器で防御態勢をとるが、遅い。
斬撃をモロに受け、仲間たちは倒れてしまう。

(あの時以上だ……)

倒れる仲間たち。しかし、リゼルだけは、フリアの斬撃を完全にかわしていた。フリアの力は、王都で剣を交えたとき以上だった。
仲間たちは、その斬撃だけで体力をごっそり持っていかれてしまった。

「ってぇ……!」
「うぅ……」

大ダメージを受けているものの、命の危険とまでは至っていない。
距離で減衰があったのか、手を抜いていたのか。
それでも凄まじい攻撃であったことに変わりはないのだが。

「……絶対に……私が、守ります!!」

倒れる仲間を見て、レイラの身体が輝く。

力強い光。強さだけではなく、心が温まるような柔らかな光だ。
感じる龍力は、クラスト宅で見せたフル・ドラゴン・ソウルを超えている。
それなのに、彼女の圧というか、雰囲気は穏やかだ。

「レイラ……お前……」

レイラがクラストの指導を受けているとき、リゼルも離れた場所で用事をするフリをして、コッソリ聞き耳を立てていた。

守る戦い。敵に勝つ戦いではなく、仲間を、大切な人を守る戦い。
彼女のフル・ドラゴン・ソウルは、一段と飛躍した。

「へぇ……お前、面白いな……」

フリアの興味が、イングヴァー回収からレイラの強さに移る。

「ほ~ん……」

後ろで見ていたスゼイも同じような反応だ。だが、手を出すようなことはしてこなかった。それでも、油断できない。
ヤツは戦闘狂だ。乱入してくる可能性は十分考えられる。

興味深そうに王を眺めるスゼイの横で、フランバーレは素直に驚くと同時に、残念な気持ちになっていた。

(あの娘……)

フリアに何か言おうと口を開いたが、言葉が出てこない。すぐに口を閉じ、目を反らした。

(あの人は戦わないの……?)

シャレムを半殺しにした女。彼女は、これ以上戦う気はないらしい。
剣を二本とも納め、腕を組んでいる。

(まぁ、いいです)

何にせよ、手を出してこないのはありがたい。
このままフリアと戦わせてもらう。
その余裕そうな顔を、血で染め上げてあげようか。
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