龍魂

ぐらんじーた

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四聖龍

相対する冷たい光

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瓦礫の上に、血まみれで倒れているシャレム。

(え……?)

四聖龍の彼女があの姿になっている衝撃で、誰もが思考が停止していた。
その中で、時間が動き出したのが早かったのが、レイラだった。

「シャレムさん!!」

崩れたコンクリートに注意しながら、瓦礫の山を登っていくレイラ。
気掛かりなのは、シャレムだけではない。クラッツとイングヴァーが瓦礫の下だ。早く救出しなければ、命が危ない。
レイズは無意識にリゼルを見る。

「やばいんじゃないか……!?」

彼は既に剣を抜き、周囲を警戒している。

「注意しろ。戦闘態勢を取れ」
「ッ……!!」

今のところ敵の姿は見えない。
リゼルは仲間に注意を促し、龍力を高める。
ここにシャレムを飛ばした龍力者が追ってくる可能性は高い。

その間、レイラは何とか瓦礫をよじ登り、シャレムの肩を叩く。

「シャレムさん!!……シャレムさん!!」

身体は汚れ、頭からは血が滴り落ちている。
そして、衣服には血がついている。すべてシャレムの血だろうか。
剣こそ手放さずに持っているが、こんな状態で戦えるだろうか。

「ごぼッ……!!」
「!」

シャレムは血を吐き、咳をした。
それを皮切りに、呼吸が大きくなる。
目が開き、シャレムと目が合う。

「シャレムさん!よかった!」
「はぁ……はぁ……あいつは……!?」

辛そうに首を動かし、辺りを見回すシャレム。
レイラも周囲を警戒するが、今のところ特に異常はない。

「……まだ誰も来てません」
「ぜったい……くる……」

シャレムは顔を歪めながら、何とか起き上がろうとする。

「待ってください!今治します!」
「ッ……!!」

レイラは回復術を唱える。光龍の紋章がシャレムを包む。
彼女の傷が塞がっていく。全快とはいかないものの、見た目は幾分マシになった。顔色も少し改善される。

「……ありがと、王サマ」
「やめてください。私は……」

目を伏せるレイラ。シャレムは立ち上がり、続ける。

「でも、助かった」

彼女は、レイラの頭に手を置く。
「えへ」と彼女の顔が緩む。

その時だ。リゼルが叫んだ。

「気を付けろ!何か来るぞ!」

空を切るような、高い音。その音は段々大きくなる。
シャレムの穏やかな表情が消え、戦うときのそれになる。

「アナタたち!下がっていなさい!!」

瓦礫の山から駆け降りるシャレム。

「下に団長と……がいます!!」
「!!」

レイラの声に、シャレムは一瞬瓦礫の山を見る。が、今はそれどころではない。

「……後よ!!」

シャレムは再び龍力を高める。
『それ』が来たのは、その数秒後だった。

「来た……!!」

種類の異なる、二本の剣。片方の剣は、龍力に反応しているのか、鼓動を打つように、一定のリズムで光り輝いている。
はためく金髪。キモノ風の装い。そして、圧倒的龍力。

ドン、と『彼女』はシャレムの前に着地した。
ひび割れる地面は、その衝撃の強さを表している。

「女……?」
「つえぇぞ……あいつ……」

シャレムは、リゼルたちを庇うように立つ。
二本の剣を扱う女は、シャレムの傷が塞がれていることに気付いた。

「治療したの……残念」
「あ?」
「また、傷つくのに……」
「…………」

彼女は雰囲気は冷たい。声も透き通っており、冷たさをより印象付ける。
纏っている光龍のオーラも、レイラのような心地よい温かさを感じない。

(さて、と……)

短時間剣を交えただけだが、勝てないことは明白だ。
シャレムは何とか追い払えないか考える。その時ふと、レイラが言っていた言葉を思い出した。

(団長が瓦礫の下……?合図もあった……ってことは、『執行』の直前だった……?)

とすると、この下には団長だけではなく、イングヴァーもいる。

(なるほど、ね)

先程のレイラの言葉に違和感を覚えるシャレム。
「団長と」と言いかけて、「団長が」に変えていた。シンプルに焦り故の言い間違いではなく、敵にイングヴァーの存在を知らせないためだった。
レイラなりの気遣い。しかし、これは使えるかもしれない。

シャレムは剣先を瓦礫の山に向ける。

「……イングヴァーはこの下よ?計算ミスかしらね」
「…………」
「戦いには勝てなくても、アンタらの目的さえ阻止できれば良いの」
「生きてる。そのあたりも織り込み済み」

フランバーレは、顔色一つ変えない。淡々と続けるだけである。
本当に計算した結果なのか、焦りを悟られまいとしているのか、読み取れない。

「どうかしらね……!」

だが、退かないということは、敵の任務は破綻していないということなのだろう。
ならば、付近にいた団長も今は無事。

「二回戦、開始よ」
「……はぁ」

シャレムは、敵に向かって走り出す。時間を稼ぐために。
『執行』は彼らに任せるしかない。
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