龍魂

ぐらんじーた

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四聖龍

四聖龍は仲良し?

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犯罪者の護送は、すんなりとクリアできた。
犯罪者の龍力レベル、護送ルートを厳選し、北を除くエリアの護送に四聖龍が付き添った。
レイズたちは、南の四聖龍シャレムの班で護送に参加した。
道中で会う魔物を倒した程度で、フル・ドラゴン・ソウルを使う機会もなく、ミッションは終わった。
正直、拍子抜けであった。

『敵』を迎え撃つ場所は、監獄島カトズ。
海に囲まれた、自然豊かな島。そこに建てられた監獄だ。
レイグランズから距離があり、騎士団員の往来は不便だが、新たに作る手間もお金も惜しい。
ただ、陸路では来れないため、敵の捕捉はしやすい。

護送された犯罪者は50名ほど。
当初の予定通り、騎士団が捕らえるのに苦労したメンバーのみを護送した。
そうでなければ、敵サイドも戦力として引き入れる理由がないと判断したためだ。

全ての犯罪者を牢に入れ、とりあえず一段落した騎士団サイド。
四聖龍は、監獄のテラスで風を浴びていた。

「……最低の空気ね。ここで過ごすなんて、サイアク」

護送した犯罪率は、男が多い。
女。しかも、モデルのシャレムを見た男たちは、汚い言葉を吐きまくった。
ブチ切れた彼女が何人か半殺しにしたという噂も聞いている。牢を一々見て回ることはしなかったため、真偽のほどは不明であるが。

「外はマシじゃな」
「そりゃね」

自然に囲まれているため、海風は心地よいが、監獄内は最悪だ。
毒々しい空気が充満している。
普段煌びやかな生活を送っているであろうシャレムがイライラしているのは、誰にでも分かる。

「少しの間じゃ。ま、同意するがな」
「……これで、ヤバイ奴はここに集められた訳だな」
「そうじゃ。敵がまだ犯罪率を欲しがっているなら、最も危険な場所でもあるがな」
「……チャンスだ」

ウィーンは小さく言う。

「ふぉふぉ、そうじゃな。我々の生活のために、敵をつぶしてやろうじゃないか」
「モデルの仕事が飛んでる……」

手帳を見ているシャレム。
ここ数日、時間的拘束が強い任務をしたせいで、代役で仕事が行われていた。
ショックだ。

「……この任務は拘束が多い。兼業は難しくなるぞ」
「引退はしない。仕事は好きだし」
「こっちはどうじゃ?」
「最高に嫌い。だけど、アタシは強いから。仕方ないわね」

平常時であれば、四聖龍に仕事は滅多に回ってこない。
待遇は良いのに、仕事は滅多に回ってこない。最高の役職だ。だが、『あの日』以降、仕事量は増えている。
彼女のように、表の生活がある人間には負担に感じるかもしれない。

「ウィーン。お前さんは?」
「……オレはもっと強い。強いやつを戦えれば、それでいい」
「戦闘狂。シュミ悪」
「黙れ……」

ギロ、とウィーンに睨まれる。
が、シャレムは動じない。

「殺気がゼロね。素人なら騙せだけど、アタシはプロよ。残念でした」
「…………」

ウィーンは呆れたように鼻から息を吐く。

「本気でやってもいいんだが?」
「冗談でしょ。アンタがアタシに勝てるとは思えないわ」

誰にでも喧嘩を売るシャレム。
二人の間に火花が散る。

「やめんか。見苦しい」

ハーゼイに宥められ、ため息をつくシャレム。
本気ではない、と言いたいが、現在進行形で本気でイライラしているため、ため息で誤魔化すしかなかった。

「はぁ……そう言えば、一人ヤバいのがいたわ」
「あぁ、一人だけおったな」
「……アレか」

特徴や固有名詞を出していないが、三人は全く同じ人物を思い出していた。
40歳代くらいの、中年の男。
他の犯罪者は龍鎖がニ、三本だが、そいつは倍だった。

「イングヴァー。騎士団も大勢の重傷者を出して捕らえた男ね」
「あぁ。よく四聖龍まで上がってこなかったと感心したが」
「オレたちは魔物相手が多い。対人は騎士団が努力すべきだ」

騎士団は、対人戦と魔物を相手にする。
四聖龍は、騎士団では対処できない魔物を秘密裏に相手する。
と言うのが、今までの傾向だ。そこに決まりはないが、自然とそうなっている。

「……戦闘狂のクセに、言うわね」

口ではそう言ったが、自分も四聖龍になるまで、そうだと思っていた。しかし、そんな約束事は文書化されていない。

「努力すべき、と言っただけだ。戦わないとは言っていない」
「はいはい」
「……騎士団の最後の意地じゃろうな。それに、周りの目があるとワシらも動きにくい。特に、お前さんは、な」

クイ、とシャレムを示すハーゼイ。
シャレムは、若い女性に人気が高い有名人だ。
人払いはあるものの、いつも完璧に人払いができるとは限らない。運悪く目撃されてしまう可能性もあるのだ。
『騎士団で対処できなかった問題を、人気モデルが対象した』となれば、騎士団の頼りなさが浮き彫りになる。
シャレム個人のアピールポイントにはなるが、四聖龍としては動きにくくなる。
そうなれば、事情を知らない人間によって、南以外の任務にも呼ばれる可能性だって出てくる。それは、非常に面倒くさい。

「ま、仕事がないなら、ないでイイけど。どうせ待遇変わんないし」
「ふぉふぉ、お前さんらしいの」

ハーゼイはそう言い残し、先に建物内に入っていく。ウィーンもそれに続く。
残されたシャレムは、海風に吹かれながら、深呼吸した。

(この気配……嫌なカンジ)

身体を抱くように腕を組み、指を肌に食い込ませる。
これは、『来て』いるのか。二人は気づかなかったのか?

「…………」

腕を下ろし、手すりに手を置く。
いつでも、来い。と言わんばかりに、神経を研ぎ澄ませる。
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