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騎士団
王都へ
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レイズたちは、騎士団の入隊試験を受けるため、王都へ移動中だ。
騎士団保有の飛行艇で、数時間の予定だ。天候は晴れ。
揺れも少なく、なかなかに快適だ。動力は、複数の龍力者が供給しているらしい。
燃料単体のモノや、龍力の理解の進歩により、龍力者のエネルギーを使用するモノも開発されている。
グリージに居た時は接点すらなかった高等技術だ。
(試験、か……マジで受けるとは……)
飛行艇内で外の景色を眺めていたレイズ。
ぶっちゃけ、何かしらの理由を付けて、辞退するつもりだった。
だが、退き返したい気持ちよりも、先を見たい気持ちが勝った。
ただ、それよりも気になるのは、アーロンとリゼルの存在である。
「……つか、何でいる」
レイズの問いを具体化するように、バージルが続けた。
「引率が必要なのか?」
「お前たちの試験を見に行くんだよ。推薦状もあるしな」
そう言って、アーロンはニヤつきながら丸めた紙を見せてきた。
丸まっているために中身は確認できないが、あれが推薦状。あれがあれば、受かる可能性が飛躍的に高まるゴールドチケット。
「……あざす」
「……ども」
彼の同乗の理由は分かったが、このクソ根暗は?
「おま……リゼルは?」
お前、と言おうとして、慌てて言い直す。
機嫌を取ったつもりはないが、言葉遣いを注意しないと、何をされるか分かったものではない。
「帰るだけだ。僕に話しかけるな」
「あっそ……」
リゼルは相変わらずだ。そして、刺々しい。
バージルは、心の中で舌を出す。
こんなヤツが騎士団員で、役職?がついているとは。
(でも、つえぇんだよな……)
実際、実力は確かだ。
バージルは、先日の戦いを思い出していた。
彼がいなければレイズは助からなかったし、あの団員や自分だってどうなっていたか分からない。
(……『差』ってヤツを見せつけられた気分だ)
バージルは静かに唇を噛み、拳を震わせる。
あの術を見る限り、闇。炎や風よりはレアな属性になるが、あくまでも属性だけの話。
使いこなせるかは、龍力者自身の技量の方が重要。
さて、あの龍術、かなり強い龍力を感じた。
自分の最高のコンディション、最高の集中力で出せる最大火力よりも、十中八九強い。
(……俺だって龍力者だ。出そうと思えば……いや……)
あれだけの力。力だけなら、強引に出そうと思えば出せる。
だが、その分龍の意識は強くなる。そうなった時、冷静に龍力を構築できるか、紋章を通じて力を解放できるかは自信がない。
リゼルは、力を高めても意識がブレないよう、相当量の特訓をしてきたのだろう。
悔しいが、同じ龍力者として、龍力を見たら分かってしまう。
「ふ~~~~……」
分かりやすく頭を抱えるバージル。
実力がないと、最前線には出ることができない。これは、自分が求める『真実』との距離と同義。
「……酔ったか?」
心配そうなレイズの声に、バージルは何でもない、と返答し、続ける。
「いや、別件だ。それより、お前は?酔わないのか」
グリージに乗り物らしき物はなかったと思うが。
「外見てたら酔わなかったぞ。これも揺れないし」
「なるほどな」
そんなこんなで思い思いの時間を過ごしていると、アーロンが口を開いた。
「見えたぞ。あれが王都レイグランズだ」
その声に、レイズはいち早く反応する。
「でけえ……」
べったりと窓に張り付き、王都を見下ろす。
これだけ離れているのに、ミナーリンよりも何倍も大きい。
中央に見える城が、王の城だろうか。
また、城以外にも大きな建物が並んでいる。ザ・都会って感じだ。
「この飛行艇は、騎士団本部直行だ。手間が省けていいだろう?」
アーロンは自慢げに笑う。
「直近の試験日は?」
「……『あの日』以降、騎士団も人材確保に躍起になっていてな。かなりの頻度でやってる。で、リゼル。王都の試験は?」
「……明日だ」
「マジかよ?」
驚くレイズ。
騎士団に入ることが一応の目的だったが、具体的な試験日程は気にしていなかった。
そもそも、「バージルについて行けば何とかなるだろ」精神で動いていたため、騎士団関係は丸投げ状態であったし。
「……報告は聞いてる。龍のコントロールのこと、あの日の被害者であることを伝えれば受かると思うぞ。推薦状もある。何も問題ない。」
聞いたことがある。そういうのは、「フラグ」と言うらしい。
「……蓋を開けたら落ちてた、なんてのはなしだぜ?」
「あの日の龍力者は、騎士団も積極的に採用してる。大丈夫だ」
国は、エラー龍力者を支援しようと動いている。
しかし、国への信用の失墜や、『そもそも力を引き出せない』エラー龍力者が多いため、難航しているのが実情だ。
「え?俺は?対策なし……?」
正式な龍力者であるバージルは、アーロンに触れられないことに戸惑う。
「お前は……その龍力者をここまで育てたんだ。十分なアピールになるさ。推薦状には具体的に功績として書いてある。安心しろ」
「あざます……本当に……」
あれだけ誘っておいて、「自分だけ落ちた」では笑うに笑えない。
そうこう話しているうちに、騎士団本部が見えてきた。着陸が近い。
「さ、行くぞ、ヒヨッコたち」
「……僕は違う」
アーロンの号令に、リゼルは静かに反論した。
この地で、明日、騎士団の試験を受ける。新しい生活が、本格的に始まろうとしていた。
騎士団保有の飛行艇で、数時間の予定だ。天候は晴れ。
揺れも少なく、なかなかに快適だ。動力は、複数の龍力者が供給しているらしい。
燃料単体のモノや、龍力の理解の進歩により、龍力者のエネルギーを使用するモノも開発されている。
グリージに居た時は接点すらなかった高等技術だ。
(試験、か……マジで受けるとは……)
飛行艇内で外の景色を眺めていたレイズ。
ぶっちゃけ、何かしらの理由を付けて、辞退するつもりだった。
だが、退き返したい気持ちよりも、先を見たい気持ちが勝った。
ただ、それよりも気になるのは、アーロンとリゼルの存在である。
「……つか、何でいる」
レイズの問いを具体化するように、バージルが続けた。
「引率が必要なのか?」
「お前たちの試験を見に行くんだよ。推薦状もあるしな」
そう言って、アーロンはニヤつきながら丸めた紙を見せてきた。
丸まっているために中身は確認できないが、あれが推薦状。あれがあれば、受かる可能性が飛躍的に高まるゴールドチケット。
「……あざす」
「……ども」
彼の同乗の理由は分かったが、このクソ根暗は?
「おま……リゼルは?」
お前、と言おうとして、慌てて言い直す。
機嫌を取ったつもりはないが、言葉遣いを注意しないと、何をされるか分かったものではない。
「帰るだけだ。僕に話しかけるな」
「あっそ……」
リゼルは相変わらずだ。そして、刺々しい。
バージルは、心の中で舌を出す。
こんなヤツが騎士団員で、役職?がついているとは。
(でも、つえぇんだよな……)
実際、実力は確かだ。
バージルは、先日の戦いを思い出していた。
彼がいなければレイズは助からなかったし、あの団員や自分だってどうなっていたか分からない。
(……『差』ってヤツを見せつけられた気分だ)
バージルは静かに唇を噛み、拳を震わせる。
あの術を見る限り、闇。炎や風よりはレアな属性になるが、あくまでも属性だけの話。
使いこなせるかは、龍力者自身の技量の方が重要。
さて、あの龍術、かなり強い龍力を感じた。
自分の最高のコンディション、最高の集中力で出せる最大火力よりも、十中八九強い。
(……俺だって龍力者だ。出そうと思えば……いや……)
あれだけの力。力だけなら、強引に出そうと思えば出せる。
だが、その分龍の意識は強くなる。そうなった時、冷静に龍力を構築できるか、紋章を通じて力を解放できるかは自信がない。
リゼルは、力を高めても意識がブレないよう、相当量の特訓をしてきたのだろう。
悔しいが、同じ龍力者として、龍力を見たら分かってしまう。
「ふ~~~~……」
分かりやすく頭を抱えるバージル。
実力がないと、最前線には出ることができない。これは、自分が求める『真実』との距離と同義。
「……酔ったか?」
心配そうなレイズの声に、バージルは何でもない、と返答し、続ける。
「いや、別件だ。それより、お前は?酔わないのか」
グリージに乗り物らしき物はなかったと思うが。
「外見てたら酔わなかったぞ。これも揺れないし」
「なるほどな」
そんなこんなで思い思いの時間を過ごしていると、アーロンが口を開いた。
「見えたぞ。あれが王都レイグランズだ」
その声に、レイズはいち早く反応する。
「でけえ……」
べったりと窓に張り付き、王都を見下ろす。
これだけ離れているのに、ミナーリンよりも何倍も大きい。
中央に見える城が、王の城だろうか。
また、城以外にも大きな建物が並んでいる。ザ・都会って感じだ。
「この飛行艇は、騎士団本部直行だ。手間が省けていいだろう?」
アーロンは自慢げに笑う。
「直近の試験日は?」
「……『あの日』以降、騎士団も人材確保に躍起になっていてな。かなりの頻度でやってる。で、リゼル。王都の試験は?」
「……明日だ」
「マジかよ?」
驚くレイズ。
騎士団に入ることが一応の目的だったが、具体的な試験日程は気にしていなかった。
そもそも、「バージルについて行けば何とかなるだろ」精神で動いていたため、騎士団関係は丸投げ状態であったし。
「……報告は聞いてる。龍のコントロールのこと、あの日の被害者であることを伝えれば受かると思うぞ。推薦状もある。何も問題ない。」
聞いたことがある。そういうのは、「フラグ」と言うらしい。
「……蓋を開けたら落ちてた、なんてのはなしだぜ?」
「あの日の龍力者は、騎士団も積極的に採用してる。大丈夫だ」
国は、エラー龍力者を支援しようと動いている。
しかし、国への信用の失墜や、『そもそも力を引き出せない』エラー龍力者が多いため、難航しているのが実情だ。
「え?俺は?対策なし……?」
正式な龍力者であるバージルは、アーロンに触れられないことに戸惑う。
「お前は……その龍力者をここまで育てたんだ。十分なアピールになるさ。推薦状には具体的に功績として書いてある。安心しろ」
「あざます……本当に……」
あれだけ誘っておいて、「自分だけ落ちた」では笑うに笑えない。
そうこう話しているうちに、騎士団本部が見えてきた。着陸が近い。
「さ、行くぞ、ヒヨッコたち」
「……僕は違う」
アーロンの号令に、リゼルは静かに反論した。
この地で、明日、騎士団の試験を受ける。新しい生活が、本格的に始まろうとしていた。
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