15 / 15
揺れ始める稲穂
15
しおりを挟む「おい、ネモ様や、お前からライフォードの匂いがするのは⋯やったか?」
朝一番、アノスが部屋に入ってきた瞬間のセリフだ。
これに心当たりのあるネモはいかにもそういうことをしていました。と言わんばかりの動揺のし様で朝からそわそわとしているのだ。
正式な番になった訳では無いため首にはやはり赤い首輪が付けられ今日はネモも皇帝とその皇后に会う為に正装をしていた。
アノスとライフォードは軍服を着るのみで済むと好んで騎士服や軍服に身を包むものだから手馴れたもので二人はネモの着替えを待っている。
朝起きて見れば体はカピカピになった体液と肩の鋭い痛みにネモは思わず少しの怒りが込み上げてきた。
⋯かけるのはいい、でもせめて拭いてくれ
その思いも虚しくネモは朝から風呂に入らざるを得なかった。だがネモの体はライフォードの匂いに包まれており肩にも首にも所有印が付いている。
嬉しく思わないわけが無い。
兄上が私に発情をした。
その事実だけでネモは興奮するのだった。だがまだ好きかどうかで答えるなら好きだとは思う、けれど運命の番抜きにしてシリウス本人を見てみたい。
だから、ネモは作戦に出ることにした。
まず1つ目の作戦は自分がシリウスを好きなのなら隣に女やオメガが居た瞬間キレ散らかすだろう。その事を見越してわざと女やオメガに接触させることだ。
次に距離を取る。
距離を取って寂しい、触れたいと感じればもうそれはきっと好きなのだろう。
兄弟としてネモとライフォードは過ごしてきた。だがライフォードがシリウスに変わったとしてもネモの中ではライフォードに変わりない。
実を言うとネモの気持ちは揺れている。
シリウスを好きなのだろうがそれは運命の番だから惹かれると言われればなんの反論もできないでいる。が、恋焦がれてしまうのだ。
今日のネモは上品な水色のトップスと落ち着いたブラウンのパンツを身にまとっていた。そしてその上にはシリウスの軍服のジャケットを被せられぶらり、ぶらりとその袖を垂らしている。
正式ではないがかしこまった謁見でこれはいいのだろうか。と思うネモであったが本来、精霊の愛し子の立場は皇帝、教皇と同じであるため何時しか時代がおかしくなっただけなのだ。
だから精霊の愛し子が皇帝や教皇に気を使いすぎる必要な無い上に謙る必要も無い。
それでも相手はネモだ。
ライフォードはネモを可愛い、可愛いと表現しているがアノスからすると誰もが痺れるほどの強烈な女王様気質を振り回しそのムチで教皇を叩き上げるくらいの事はする人間だと思っている。
「それじゃ、注意事項2つ行くよ。まずネモから目を離さないこと、そしてネモは私達から離れないであと私の言う事には全て従ってね。以上」
それにしてもシリウス殿下、独占欲半端ないな。
ネモ様の着てる服、上から下までシリウス殿下の色な上にジャケットは殿下のじゃねーか。
「アノス、目は大丈夫か?」
「まだ情報量に慣れねぇがいつか慣れるだろう。でも眼帯があった方が落ち着く、それに見えすぎなくて済む」
「アノス、警護は宜しく頼んだよ」
服の上からでも分かるシリウスのスラリとした長い手足、バランスよく鍛え上げられた筋肉。そしてそれを更に際立たせる甘いマスク⋯
彼は空気をしめるようにそう言うといつものシリウス・ルーレシアの姿へと変わっていく。
その変わりようと言ったら雰囲気までもが別人だった。
優しい雰囲気も無ければ情もない、その瞳はただ前だけを移している。
ネモはそんな兄が怖くなりその手に自分の手を重ね、「シリウス殿下⋯」と呟くのだった。
「ネモ、舐められたら終わりって訳じゃないけどネモはいつも通りでいいよ。それこそノアにしたみたいにしたらいい。」
「分かってます⋯」
131
お気に入りに追加
387
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる