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揺れ始める稲穂
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しおりを挟む長い長い夢を見ていた。
それはまだ兄上の腕の中で眠っていた幼き頃の夢だった。ある時からか兄上の服や髪の毛、体液に至るまで全てから体の芯まで支配されたくなるような甘い匂いで満ち始めたのだ。
私はその匂いが大好きで、怖いはずなのに何故か落ち着くような香りだと気がついてからは毎日兄上の部屋に行ってはその匂いを嗅いでいた。
「っ⋯⋯」
ネモはふわふわと覚醒しだした意識には酷なほど込み上げてくる吐き気に我慢しきれずそのまま嘔吐した。
「ぉぇっ・・・・・・っ、ぇっ」
ネモが頭を上げようとすれば彼の頭はガンガンと平衡感覚さえ狂わせるような頭痛が絶え間無く彼の頭を遅い体は寒気が止まらないのか小刻みに震え続けていた。そして更に彼の目の前はぐらぐらと回り続けるのだった。
彼が眠っていた期間は2週間と3日、久しく動かしていない体は鉛のように重くネモは自分の吐いた物が血液と胃液なのに驚きを隠せないでいた
懐かしい匂いがする。この匂いはノアが初めて領地に来た時に付けていた匂いだ。ネモは最初はノアの匂いだと思ったがそれは徐々に薄まり全く違う匂いに変わった。その全く違う匂いがノア本人のものだと気がつけばネモはどこか寂しくなったのだった。
それからたまにノアはあの匂いをどこからくっつけて来たのだろうと気になったがそっと知らないふりを続けたのだった。
まるで兄上の匂い、甘く痺れるような香りに私はどうせノアだろうと分かってはいたが無我夢中でそれに抱きつくと優しく頭を撫でる手が今度は私の髪の毛を指に巻き付け遊び始めた。まだ領地にいた頃、伸びてきた前髪が煩わしくなってついでに後ろの髪も切ろうとした時があったノアはさも当然かのように『え、切るのか?伸ばすんじゃねーの?綺麗な髪なのにもったいねぇ』と言い放ったのだった。こいつはこうやって女を落としてきたのか、と分かった瞬間私は寒気が止まらなくなった。
「辞めろ、っ⋯⋯ノア。私は、ぉぇっ⋯⋯⋯お前に付き合ってやれる程、元気じゃない。、お前が酔った時だって放置してやっただろ・・・頼むから放っておいてくれ」
お前が隠れて飲んでアノスに折檻をされそうになった時も庇ってやったし何なら放ってやった。
お前と言うやつはつくづく恩を仇で返すクソ野郎だ。
ネモは抱き締めてくるその腕を押し退けようとしたが、その腕は更にネモを強く抱き締めただ離れず温めてくれたのだ。
「兄上を忘れたのか、ノア?」
最後に聞いた時よりも低く男らしい声になったライフォードはにこりと笑うとネモの両頬に手を添えた。
「ぁ、にうえ?」
ライフォードは徴兵された日からあの手この手で屈強な戦士に揉まれながら筋肉を付けていたのだ。見違えるような肩幅と胸の厚さにネモは確かめるように記憶の中の兄の特徴と擦り合わせていた。
やっと吐き気も収まりネモは辺りを見回すと寝台が自分の吐いた血で血塗れになっているではないか。そう気が付き頭が真っ白になる。
これは上手く隠さねばアノスに叱られてしまう。
「のあ、のあ、どうしよう、あ、あのすに怒られる」
ネモはアノスが一番嫌う「生きてようが死んでようが、・・・仲間の死を伴った作戦が一番腹が立つ。」に当てはまる行為をやってしまった。酒の席で過去に言っていた事を思い出し慌てて証拠隠滅しようと寝台の隅に掛かっていたシーツを必死になって剥がした。
きっとこの事がアノスにバレれば怒られるどころじゃない。ヘクターがビビり散らかして役に立たなくなる上に雰囲気がこの世の終わりだ。
「ねぇ、ネモ。隠す方がアノスの怒りに触れるよ?」
だがネモは冷静になってふと声の方向を見上げるとそこにはよく似ているがノアでは無く本物のライフォードがネモの背中をさすっていたのだった。
確かにアノスと声は似ているがこの気品のある喋り方はアノスとは正反対だ。
「兄上、説明をしてください」
「それは私が言うことじゃないのかな?こんなに無茶をして、ネモが死にかけた所を見た兄上の気持ちは考えてくれないの?」
自分の腕を見てみると手首から肘にかけてを包帯で巻かれ反対の腕にも沢山の注射痕が残っていた。
ネモの頭の中では、反省をしたなら先に謝罪。といつかアノスに言われたことが咄嗟に出てきている。
「ご、めんなさい」
「うん、いいよ。二度目は無いからね」
ライフォードはそう言うとネモの頭を撫でネモの隣にコロリとその身を倒した。
ネモが寝かされていたのはライフォードが普段、寝室として使っている部屋のようでその寝台は大人5人が余裕で入るほどの大きさだった。寝台は触れるだけで最高級のものを使っているのが分かるほど沈み心地がよく毛布も程よい厚みがありふかふかだった。
「兄上、お久しゅうございます。ずっと、会いたかったです」
そう言ってネモはライフォードに抱きついた。
「ネモってばすぐそう言って私を虜にしてしまう。困ったものだね」
そんな事は無い。いつだって私の方が兄上の虜だ。今だって私は恥ずかしながらも兄上の匂いをずっと嗅いでいる。この匂いを嗅ぎ続けると良くない事は頭ではわかっていた、だが腰が甘く痺れるような感覚になり気を抜くと前が張ってしまうのを我慢するだけで精一杯だ。そんなダメな弟を許して欲しい。
「まず、ネモはどこまで覚えてるの?」
「⋯っ?!あの2人は、」
「そんなに興奮しないで、無事だよ。お腹の子供も無事だそうだ。ネモが救ったのは二人じゃなくて三人だったみたい」
あの花嫁のお腹には本人も気がついていなかったがもう1人いたそうだ。あれから直ぐに悪阻が始まり医者にみせた所妊娠がわかったと言う。
ネモはそう思うと少し嬉しくなった。
きっと女の子ならば花嫁に似て美人という感じになるのだろう男の子ならば美丈夫と言った所か。花婿に似れば見るからに優しそうな雰囲気でおっとりとした子になるだろう、女でも男でも誠実な人になるはずだ。
良かった、あの時に助けて良かった。
「それでネモはこの手首、自分で切ったでしょ?肘のところまでパックリ切れてたんだよ、何針縫ったと思ってるの」
「あ、あにうえ、痛い痛い、、そんなに強く掴まないで」
そういえばあの時ネモは代償を指定しないと最悪死ぬと本能が何かを察していた。だから冷静にも手首を切り裂いた血でその代償を払ったのだ。だが、これだけ体が弱りきっていた、本人も分かっていると思うがきっと血だけでは代償が全然足りなかったのだろう。現に死にかけていたのだから代償を指定しなかった時のことを考えると身の毛もよだつ。
「兄上っ、ノアは、アノスとヘクターは。宿を出る時に私、彼らにどこに行くか伝えていないんです。きっと私を探しています」
「そんなことは無いよ。3人ともしっかり私が回収して今は通常の業務に戻っているよ」
「入っておいで」兄上は重厚感のある年季の入った扉に向かってそう言うとその扉はギィと古臭い音を立ててアノスとヘクターの2人が入って来た。
いつもとは違うブルーの騎士服に身を包み流石熟練なだけあってアノスの方にはヘクターよりも多くの勲章とバッジがぶら下がっており布自体も少し年季が入っている。ヘクターは新品同然でいかにも数回しか着たことの無い様子が伺た。そして不慣れ感を助長するように柄にもなくその茶色い髪を上にあげている。
「ぶっ⋯⋯ヘクター前髪なんか掻きあげて、女にでも会うのかお前には似合わないぞ。犬っ面がばれ」
「犬っ面がばれて笑われるぞ」と言いたかったネモがそれを言い終わる前に2人は大きく息を吸いベッドの下で跪いた。
「「失礼致します、帝国の太陽シリウス・ルーレシア皇太子殿下並びにネモ・グラウジー様、アノス・ライジェシア、ヘクター・アルベニーでございます。」」
2人はそう声を張り上げると頭まで下げ左手を右の胸に掲げ最敬礼をする。そして2人は兄上が「いいよ」と言うまで微動だにしなかった。正装なのだろう初めて見るブルーの騎士服に身を包んだ二人は特にアノスだ、野営をしている時のあの歳を感じさせるだらしなさが綺麗さっぱり消えていた。
それになぜ2人が兄上に最敬礼しシリウス・ルーレシア皇太子殿下の名を呼ぶのだ、何の冗談だ。兄上はライフォード・グラウジーだぞ。
「アノス、扉を閉めたら無礼講って事でいいよ。いつも通りの喋り方をしてくれ」
アノスはそう言われハリスに扉を閉めさせると「ぁあぁ”ーやっぱ堅苦しいのは気に入らん」と気だるそうな声を出しながらジャケットのボタンをブチブチと外しそこら辺に脱ぎ捨てた。それを「あぁ、もう、ほんっといつもいつも」とヘクターが拾う。だが、アノスはそんなヘクターの苦労さえ知らずに次々と装飾品まで脱ぎ散らかしとうとうシャツ1枚にまでなってしまった。
「シリウス殿下もお人が悪い。なーんにも説明してないじゃないですか」
「だって今起きたばっかりなんだもん。説明するも何もまずはおはようのキスからでしょ」
兄上はそう言うと私の唇に自分の唇を当て壊れた人形のように動かなくなった私の唇を舐め上げ、ぬるり、と舌を入れたのだった。
「あー、ヘクター?上官命令だ見なかったことにしろ」
「はっ」
ビシッと敬礼をするヘクターの目にはアノスの手が覆いかぶさりそのままの状態でヘクターはまた敬礼をした。
「ぁ、⋯に、ぅえ⋯⋯ぁ、ん」
その間にも兄上の舌は私の上顎を舐め、逃げる舌を追いかけては酸欠になる寸前まで私を弄んだのだ。
兄弟でこんな事おかしい、そう思うのに私は兄上の唾液が甘く感じ始め頭は焼き切れたようにふわふわとした感覚に包まれるのだった。兄上しか考えられなくなる。そして、離れていく兄上の唇を名残惜しく眺めていた。
「っ⋯?!何するんですか兄上」
「そりゃーおはようのちゅーでしょ。私たちは運命の番なのだからこれくらいしてもいいはずだよ。ネモも私のキスでトロトロになって、えっちだね」
「兄弟なのに運命の番とはなんの冗談ですか。目が覚めないのなら覚まして差し上げますよ」
そう啖呵を切ったネモはライフォードの頬をつまむとそのまま軽く左右に伸ばす。
「あー、殿下?そろそろ話進めてください。そんな痴話喧嘩は閨、でやってください」
ネモはライフォードによる巧みなキスに夢中になりアノスとヘクターが居ることをすっかり忘れてしまっていた。
だがシリウスはネモをしっと抱き抱えるとそのまますぐ隣の執務室に移動しソファーにネモを座らせる。
「ネモ、まだ起き上がらない方がいいよ。横になってなさい」
お言葉に甘え、とネモはゆっくりとそのソファーに身を倒した。
そして当たり前かのようにアノスは向かい側のソファーに座るとヘクターがその真後ろに立った。
ネモはこの3人の間柄と言うか空気感がさっぱり分からず頭の中には何故?が大渋滞している。皇太子と騎士団の隊長がなぜこんなに仲良さげにいるのだ。騎士団長ならまだしもただの隊長・・・
道中にも感じて居たが騎士団長とただの各隊長という割には信頼関係ができすぎている。
「それじゃー説明しよう」
ライフォード・グラウジー改め兄上は本物のシリウス・ルーレシアで間違い無い。
現皇帝ルーシュ・ルーレシアが皇太子時代に百年戦争を終わらせようとサルバドール王国と条約を結びに行く前、彼は国内で何なら良くないことが起きているのを察した。そこで5歳になったばかりのシリウスを公には隠されているが自分の腹違いの弟サウザン・の家へと連れて行ったのだった。
だが、そこで明らかに放火と思われる火事が起こり屋敷は騒然とした。その火元はシリウスの眠っていたすぐ隣の部屋で状況的にもシリウスを狙った犯行にしか思えなかったのだ。サウザンはシリウスの身を案じてサウザンの旧友である、グラウジー辺境伯へシリウスの身分を伏せた状態で引き取って貰ったという。
そしてその後サウザン本人は妻と子を残して何者かに毒殺され亡くなった。そのサウザンの子供がノアだ、そう言う繋がりでシリウスとノアは遠縁に当たるためどことなく顔や雰囲気が似ているのかもしれない。
シリウス本人が自分は皇帝の子供であると気がついたのは6歳になった時だという。ネモが生まれた時、なぜだかネモに強く惹かれそのまっさらな項に噛みつきたいという欲が出た。
そこで彼は自分はグラウジー辺境伯の子じゃないと気が付きグラウジー辺境伯を問い質した。
グラウジー辺境伯はサウザンからシリウスを引き取る際、「子供は何があってもお前より面がよく育つ。その子が自分は何者かと気になり始めた時これを渡せ、嫌でも分かる。だが中身は絶対に見るなよ、頼む」と言われ渡されていた箱をシリウスへ渡したそうだ。
『子供には少しきつめの薬を飲ませてあるからこれまでの記憶は混濁しているはずだ、だからそれだけが親と子を繋ぐものなんだ』
グラウジー伯爵はその旧友のお願いを二つ返事で聞き入れた。何故ならサウザンは女にふしだらだった為どうせこの子はサウザンの隠し子か何かでおっかない嫁にバレそうになったから寄越してきたのだろうと思っていたからだ。
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そんな事があり気がつけば領地の経営に忙しくなりグラウジー辺境伯はシリウスの頭の良さに目をつけ脅しながらもこき使い続けた。だが、戦況が悪くなり徴兵が来るとシリウスが呆気なく「行って参ります」というのだからあれは殺しても死なないと確信に似た何かを思って張合いのないやつだなと放置した。
「という事は兄上と私は兄上と私じゃないのですか?」
「何を言ってるんだい。兄上は兄上だよ」
兄上はそっと私を抱き抱え膝に乗せると私の首元に吸い付きすー、すーと匂いを嗅いでは至福という顔をした。
だが、いくら何でも兄弟として育ってきた人に性欲を抱くなんて尋常じゃない。
「早く兄上にここ噛ませてね」
そう言うと兄上は私の首元にカプリと噛み付いた。その瞬間だったぞわり、とした感覚に思わず私は逃げなくてはならないと思ったが体は素直な物でろくな抵抗も出来ないまま項を舐められ吸いつかれたのだった。
「私はネモに発情期が来たらそのまま番にしてしまおうと考えているよ。教会に取られる前に私のものにしなくちゃ兄上は不安で教会を潰してしまいそうだ」
「なぜ教会が出てくるのですか?」
「ネモの存在が国中に知れ渡っちゃってしょうがなくなったから公表したんだ。そしたら精霊の愛し子は皇族の所有物ではなく教会の管理下にあるべきだとか何とか言い出してネモを寄越せってうるさいんだよ」
「はぁ、そんなの知りませんよ。私は今のところ番に兄上を考えておりません、ですが兄上がそう思いなら噛んでくださっても構いませんよ。今は止まってますが発情期がいつ来るか分からなくて公務に支障が出ていたんです、それに身を狙われるのは恐怖しかないんです。その代わり私はすぐに領地に帰ります」
そういいネモは今は何月何日かとシリウスの執務室にある日付表を見ようと立ち上がろうとした時だった。ネモはシリウスに引っ張られそのまま身動きが取れなくなってしまったのだ。
はぁ、私の中の兄上はこんな事はしないしもっとかっこよかった気がするのだが今更考えても仕方ない。
「兄上はネモとらぶらぶな関係になりたいの。アノスとヘクターみたいなお互いが一番って言う感じの空気がダダ漏れな番になりたい訳。政略番なんて言うなら兄上はネモが兄上を好きになってくれるまで誘発剤でも媚薬でも何でも使うよ」
「え、アノスとヘクターってそう言う関係だったのか?」
今まで空気になっていたのに急に話を振られたアノスはよりによって一番振られたくない話だった為その問いに表情ひとつ変えることなくスルーをした。だがヘクターが分かりやすく真っ赤になるものだからネモのいい遊び道具になってしまっている。根掘り葉掘り聞き出そうにもアノスに質問をした所で器用にかわされてしまう。だからネモの標的がヘクターに変わるのにそう時間はかからなかった。
こういう時に頭が回らなくなるヘクターは一応答えはしないがネモの「ならヘクターはアノスの事嫌いなんだ」と言うような誘導にまんまと乗せられてしまいついにはあられも無いことを喋り始めたのだ。
「こうなるから教えたくなかったんです。ヘクター遊ばれちゃってますよ。
殿下、責任は取ってくれるのですよねぇ?」
「少しぐらい多めに見てくれよ。私、忘れもしないよ。ナルルの戦いの後お前ヘクターが泣くまで腰振ってたらしいじゃん。あれ程、私とノアには口うるさく言ってた癖にヘクターの泣き声丸聞こえでそれはそれで面白かったよ。しかもその時のヘクター14?15?13だった様な気もする。それに私とノアのどっちかが女を手酷く抱いてるって勘違いされて大変だったよ」
「兄上、私に愛を囁く癖にほかの女抱いてたなんて不潔です」
「殿下とノアの遊び方は尋常じゃないんですよ、戦地のど真ん中で妊娠騒動とか勘弁してください。それに皇族の種をばら撒くなって何度言えば気が済むんですかホントに」
一番暴露されたくない事を暴露されてしまったのだろう。とうとうヘクターは涙目になってネモに縋り付くような視線を送った。
そしてヘクターも黙ってられなくなったのか反撃の狼煙を上げた。
「でもライフォード先輩が抱いてた女、いっっつもネモ様に似た女ばっかりだったじゃないですか。だいたい淡いブロンズの髪でいかにも才色兼備な子でしたよね。女を探す度にネモ様の写真と見比べて、変態上司め!」
「おい、ヘクターそれをネモにバラすのは話が違うだろう」
慌てて兄上はヘクターを黙らせるが私はそれを聞いて気分がいいったらありゃしない。
兄上がどこの馬の骨とも分からない女を抱いていたのは見逃すとして好んで抱いていた女がノアの言う通り昔の私まんまだったなんていじらしいではないか。後でヘクターを褒めておこう
「兄上もアノスもそこら辺にしたらどうですか、ヘクターが真っ赤になって震えてますよ」
ヘクターは元々ベータだったのだがオメガ寄りな所もあったそこで相性の良いアノスと出会ってしまったことで、ヘクターの中に眠っていたオメガ性をアノスに引きずり出されてしまいビッチングしたらしい。しかもまだ13の頃で初夜は戦の後だったという。
うわ、ヘクター苦労人。
急にオメガになってしまい、発情期は苦しいわ初めてのそういう行為が20歳も上の巨根・・・・・・可哀想すぎて同情しちゃう。
たまたま水浴びをしていたアノスと鉢合わせた時、私はその鍛え上げられた筋肉よりも股にぶら下がった凶悪なアレに目がいった。
こういう経緯があった為ノアがネモに「次の発情期はいつだ」と聞いた時ぼんっとタコのように赤くなり空気になりきったのだろう。
「所で兄上とこいつらはどういう関係なんですか?」
「私が初めて配属された時の部隊の隊長がアノスで同期がノア、そしてその3年後に配属されたのが初後輩のヘクター」
「ネモ様、騙されないでください。ライフォード先輩とノア先輩にいびられて何人も異動願い出しては辞めてってますからね?」
そう、シリウスとノアはライフォード先輩ノア先輩と呼ばれていた時代に「愚図」「ノロマ」「雑魚に後ろは預けたくないね」とアノスの見えないところでそれはそれは幼稚な後輩イビリを繰り返していたそうだ。ヘクターはと言うと初日から腹が立ち二人の寝床を水浸しにした挙句嫌がらせでありもしない事をアノスに言って処罰される二人を嘲笑ったそうだ。
それからと言うもの二人はヘクターを気に入り後輩として可愛がった。
・・・それにしても兄上もノアもしょうもない事が好きなんだな
「ナルルの時に立場は見事にひっくり返ったがな、作戦中に好き勝手するわ嫌がらせはするわクソ生意気な部下を持った俺の身にもなれ」
つまりは元々皆同じ部隊。
道理でこのノリなのか。
仮にも皇太子の前でソファーに横になりつつ靴を脱ぎ捨てたアノスは確かに元上官という感じがしないでもない。
「そう言えば兄上、ノアはどこいるのですか?」
「あ、そうだ、殿下。もう気が済んだでしょう、そろそろ解放して上げたらどうですか」
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