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影鬼
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しおりを挟む幸せに気付けるなら築く事が出来る。
二人を見てて思う。
家族を作るのは賛成だ。
美夜子さん。
美夜子さんも。幸せになれるなら、反対なんてしない。
俺だって……。
虎之介が次に帰って来た時に、島へ連れてって貰おう。
空羅寿と羅刹は二人で居るから寂しくはないだろうけど、そろそろ俺が寂しくて堪らなくなって来た。
元気で居るかな?
幻となら、夢で会えるけど―――千里眼は重宝してる―――やっぱり触れたい。
視線を合わせて、抱き締めたい。
幸せで切なくてこんな気持ちを味わえるのは、空羅寿とだけだ。
知らず溜め息を吐く。
「元気?」
心配げな樹利亜の視線を受けて、何でもない様に肩をすくめる。
「ご馳走さまでした! 俺帰るよ」
「それじゃ私も」
席を立とうとする樹利亜に、
「今日からここで、龍太郎と暮らすんだ」
「元気?」
「家族になるんだろう?」
「でも……」
悲しそうで、不安な眼が俺を見る。
「俺なら大丈夫だよ。そろそろ、自分の事だけ考えて。樹利亜は、幸せになって当然なんだから」
樹利亜が涙目になる。
「龍太郎……兄さん。姉を、よろしくお願いします」
頭を下げて、ココロから願う。
「もちろんだ。
元気。お前も俺の弟になるんだ。遠慮何かするなよ」
それも、嬉しい事だ。
「うん! じゃ、また来るよ」
言って振り向かず、外へ飛び出す。
すっかり暗くなった夜空を見上げると、満月だ。
白く光る月。
この空の下で俺の大切な人達が繋がってる。
まほろば。ライ。
お前達も幸せか?
*
*ライside*
呼ばれた気がして頭を上げる。
「ライ?」
ボクの下に居るまほろばが身動ぐ。
「うん。呼ばれた気がしたんだ」
誰にかは判らないけれど。
「ライ……」
優しく呼ばれ、その胸に頭を乗せる。
ここは月頭の別荘。
まほろばの左腕を再生して、そのまま様子を診る為に数日留まって居た。
空気が澄んでいて、居心地が良い。
まほろばの左腕を撫でる。温かい、前と変わらない腕。それがボクの背中を擦り、安心する。まほろばが居ればボクはそれだけで安心して眠れる。
「もう少し眠ると良い。まだ夜明け前だ」
眠れないまほろばが優しく囁く。
それは子守歌の様にボクに眠りを誘った。
まほろばはボクの“今日で明日”“現在と未来”まほろばと居る事で生きている実感が沸く。
カーテンの隙間から差し込む月光が、微かにまほろばの顔を照らし、ほほ笑んで居る事が確認出来た。
心底から信頼し、愛されて居る事を実感しながら、深い安堵の溜め息を吐くと、ボクは彼の身体の上で丸くなり受け留めて貰えてる幸せを噛み締めながら眠りについた。
愛してる、
まほろばを。
ボクは、まほろばが居ればそれで良い。
それは今からもずっと変わらないと、
変わらないで欲しいと願いながら。
「ライ。愛している」
まどろむボクの耳元で、まほろばの優しい声が聞こえた。
「「ライ! 何故お前は俺を苦しめるっ!」」
どこからか、まほろばの怒りを含んだ声が聞こえて来た。
眠りに堕ちる瞬間、相反する二つの声が重なって聞こえた。
そんな気がした。
理解出来ないまま、深い眠りに堕ちた。
それは、夢だと結論づけて。
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