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蜜月鬼
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しおりを挟む*ライside*
自分が何を言って居るのか分からなくなって、頭を振る。
「ライは何歳だ?」
「17歳です」
唐突な質問にきょとんとなる。
「俺は37歳だ。君より20年も長く生きて居る。なのに、色恋沙汰は未だに解らない。
前世は関係無く、互いの問題だ」
龍太郎さん。
優しくほほ笑みをくれた。少し安心して笑みを返す。
新しい鬼。
一本角。黒髪に青い眼。
ボクと同じ一本角。
太古。鬼は沢山居た。
近くに腰かけた龍太郎さんの角に思わず手を伸ばす。
「触れても良いですか?」
「良いよ」
頭をこちらに寄越す。
白く光る角。
「ボクも角は一本だった」
艶やかな白い角。それは自身の突き出た骨で出来ている。
触れると、指先にピリッ とした刺激。
「電気をまとっている。俺はどうやら雷様らしい」
雨を降らす雲に住んでいる鬼。
「実際に雷様は居なかったけれど……電気を操る者は居た」
今のボクの額に角は無い。
もし有ったなら
「ボクの鬼の能力は平凡。昔から、前世から、まほろばは“癒し”を施す医者の様な存在だった」
昔。
必ず二人で居た。
生まれてから、気付けは傍に居る事が自然で……離れる事等ないと思っていた。
「ボクは、まほろばと違って目立たない鬼だった」
それなのにまほろばはボクの傍に居て、
それが自然で。
当たり前で……
こんな状態になるなんて夢にも思わなかった。
恋愛感情が育つなんて、考えもしなかった。
俺が死ぬなんて思いもしなかった。
「傍に居るのが当たり前で、居なくなる何て考えもしなかった」
涙が溢れ流れる。ポタポタ と手の平に落ちる。
自分のまほろばへの執着心が彼を放したくなくて……惨い事をさせた。
再会の約束は彼を縛るボクの“呪縛”彼の自由をこの手で奪った。
*まほろばside*
躰に当たる冷たい風もこの身の熱を取ってはくれず。
ライは大丈夫だろうか?
触れられて、耐えられなくて噛み付いていた。
止められなかったら……
身震いする。
ライがどうなっていたか。
気付いたら、逃げ出していて、着いた先が、昔の住家。
暗い洞窟の先を見る。
そこに何かを見た様で?
───喰ってしまえ
何を?
───あの柔らかい肢体
誰を?
───ライを。
思い出す。
喰んだ肉
噛み締めた肉
口内に広がる鉄の味
甘く
温かく
旨い
美味しい
「違う!!」
あの時、感覚は麻痺していた。
味覚感覚全てが皆無で……
───噛み千切った肉片を呑み込んだ
「違う!!」
頭を抱える。
ここは、ライを亡くした場所
彼の眠る彼の墓場
暗い洞窟に入る。奥へ
空の光りが少し差し込むこの寝床の下にライが居る。
冷たい岩場。
重なった岩を一個ずつ取り除いて行くと
地面が見え、土煙立つ。
触れた地面は固く、この中にライの亡骸。骨を埋めた。
素手で地面を掘る。
冷たい土が口を開ける。
掘っても
掘っても
ライは出て来ない。
ここにライが居る筈、
ここは冷たかろう。
身体が入る程穴が空いた。
その土の中、土壁に背を預けて肩の力を抜く。
「俺は何をやって居る?」
独りごち小さく笑う。
「ライは……居ない」
“ライ”は“礼”に成った。
別れ、再び出逢った。
失い気が狂う程に求め、手に入れたかったライ。
彼は自分のモノだと、
最初から誇示して居た。
仲間の皆にライは自分のモノだと解らせて居た。
“癒し”の能力を持つ者はそうは居ないから、俺は仲間の特別で
だからライを手に入れるのは簡単だった。
一緒に居る事で彼は自分のモノだと主張すれば良かったのだから。
ライは初めから俺の特別。
生まれ出てから、彼の存在を感じた時から、ライは俺の―――
……躰が熱い。
彼が欲しい。
押さえ付け
俺のモノにしたい……
───牙を立て、喰いたい……
優しく
───雄々しく
奪いたい
───喰いたい
彼の存在は俺を
狂喜させ、
───狂わせる。
「ライ……礼―――!」
冷たい土の中、ライは消え。
暖かい風に導かれ、礼が現われた。
ただひたすらに、俺は彼を求める。
抱きたくて
───喰いたくて
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