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餓鬼
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しおりを挟む「間違いではない」
まほろばの言葉に思い当たる。
「もしかして“鬼”はテレパシーで繋がってる?」
ボクの考えが当たっているなら、前世の“鬼の同族殺し”は村八分にされる。の意味が解る。
「ライ。そうだ。鬼は“朱色の鬼”も例外なく、テレパシーで繋がっている。深い、精神の部分で。好むと好まざるとにかかわらずな」
「それは現在も?」
「根本は皆同じだろう? 人であった者が鬼の血筋で鬼に成り得るのだから」
「それは俺がお前達に惹かれた様に、仲間は仲間を呼ぶ。と言う事か?」
何時にもない真面目な表情で元気が言う。
それに深く頷くまほろばが、
「俺達の周りには常に“朱色の鬼”が集まって来る」
“鬼退治”には都合が良いのかもしれない。
けれど……大きく身震いが走る。
けれど、
「それは……戦い続けると言う事?」
そっと背後から温もりに包まれる。
まほろば。
「ライ……」
耳元でささやかれて、彼の優しさに安心する。
「俺が居るの判ってる?」
元気の軽い茶化しに、二人じゃないんだと我に返る。
「もちろん。まほろば話しを続けて」
「“テレパシー”は鬼なら誰もが持って居るが“千里眼”はそうではない」
肉眼では見えない遠い場所の出来事を視、聞く事が出来る。
「だから元気の言う“誘う”事は可能だろう」
“千里眼”と“テレパシー”を使えば可能。
これ以上の犠牲者を出す訳にはいかない。
***
………………………
「「はぁ……はあぁ――」」
この飢えの辛さに、喉まで渇いている。
喉元をかきむしる。
胃を叩く。
どれだけ食べても飢えている。
頭がおかしくなったのか?
頭がもうろうとする
頭を叩く。
叩く
叩く───。
ここから出たら、また食べてしまう。
何を食べているか始めは分からなかった。
口の中に入って来たあの濃厚な味。
あれは、人間の肉。
自覚してからも、我慢出来ず、
獲物を探しに外へ出る。
その時の俺は、俺でない誰かに成って居た。
空を飛ぶ様に身軽に跳躍し、自然に溶け込んだ俺に気付く者は居ない。
美味しそうなニオイのする獲物を───さらう。
死んでしまっては、不味くなるから、新鮮な内に食べなけりゃ───……
食べたい。
食ベタイ。
狩りをしよう。
この飢えは、
もう止まらない。
ただ、ただ、
この苦しみから逃れたくて。
この飢餓から救われたくて……
誰か、誰でもイイ。
止めてくれ!
狩りに行く。
狩りに行く。
食べたくて
食ベタクテ───
あぁ、頭がおかしくなる!!
「「あ゛ぁぁあ゛あぁぁ――――!!!!!」」
誰か。
誰かっ!!
───……
気配を感じる。
あの時の視線の主。
呼んでいるのか?
俺を?
お前は、誰だ?
誰だ
ダレ……だ?
………………………
***
*元気side*
あの鋭い視線と感情の渦に、意識を断った後も心臓が大きく鳴っている。
成功した!
赤い眼の“朱色の鬼”俺の送った信号をちゃんとキャッチし、動き出した。
この“朱色の鬼”俺が判るのは、気配と眼だけ。
全体像がうっすらとしていてはっきりとしない。
「上出来だ。近付いてくれば、必ず判る」
まほろばが保証してくれたなら待つしかないのだろう。
人間を喰う鬼。
先祖返りしているのか?
先祖。
それは生粋の鬼で在るまほろばも……
「俺は人間は食した事がない」
人間は、ね。
まほろばが喰ったのは同族の───ライ。
それは友情の為。
再会した二人はそれ以上の関係に?
「考えるな。それとも仲間に入りたいのか?」
腕を組んで不敵に笑みながら壁に寄り掛かって居るまほろば。細められた金の瞳が怖い。
「ごめん。からかい過ぎた」
素直に謝ると、
「愛する気持ちがよく解らない。ライへの気持ちがそうなのかもしれないが……これまで、交わりを持った事がないからな」
これは相談を受けているのかな?
ん?
ちょっと待て。なら……
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