鬼に成る者

なぁ恋

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泣いた赤鬼

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手の平の角が熱く輝く。

角は“体”には無くても“魂”と繋がっている?

角を固く握り締め、小さな悲鳴を上げて座り込んでいる園田の目線に合わせて片肘ついて座る。


「止めてくれ……死にたくない……」


涙でくしゃくしゃになった顔で、懇願する。

ボクにナイフを向けて来た彼は、死にたくない。と泣く。


「……死なないよ」


にっこりとほほ笑み、角を握った右手を園田に向ける。


「朱色の血よ。出て来い」


「かぁっ!! がっ!」


園田は、自身の首を押さえながら、小さく嘔吐した。


小さな真珠台の赤い珠。

簡単に出て来た、鬼の血。

それを拾い、光りに翳すと、綺麗な透明な石で……

でも、解る。


これじゃ足りない。


幾つあれば良いのかは、判らない。

けれど、確実に、この血の珠があれば“鬼”になれるのが解る。
目標が出来た。

“朱色の鬼の血”を求めて旅をする。

“鬼”に戻る為の“鬼退治”

“鬼の気配”は、最初に思った通り、そこ此所に感じられる。

微々たるモノだが、この校舎の中でさえ……解る。
角が戻って来た事で、同族を感じられる。
風にのったそのニオイでさえ、感じる。


まほろばの様な生粋の鬼が居ないのも判る。



その昔、
鬼と人間の混血児は、数える程しか、居なかった。

年月が経ち、その血は、広がる。

薄くなり、たまに、先祖返りで特殊な能力を持つ者もいる。

それを、邪なココロで使えば“朱色の鬼”と同じ末路を辿る事になる。


頭とココロで、理解した。

これからの行く末。


ボクの……まほろばの宿命。


「行こう!」

右手に角と血の珠を握り締め、左手をまほろばに差し出す。

「ライっ!?」

佳乃の引き止める声色。でも、振り向かない。

「さよなら……佳乃」

次の瞬間には、ボクを抱えたまほろばが空に向って駆けていた。

まるで、空を飛んでいるみたいに、

青く広い空に、二人で溶け込んで行く様に……陽の光りが眩しくて目を瞑る。

まほろばを抱き締めて。
もう放さない。と誓いながら――――――


………………………………………………



“鬼退治”を始めよう。

自分の為に。“朱色の悪鬼”は、それこそ沢山居るだろう。

長い旅になるかもしれない。

いつまで続くかもわからない……


けれど、二人で居られる。
それが、すべて。
それだけで、イイ――― 


……………………………………………



荷物と、お金を取る為に、ばぁちゃん家に寄って居た。

リュックを探すのに、押し入れを探っていて、


【ないた あかおに】


古く擦り切れた絵本が出て来た。


「懐かしい……」


幼い頃、唯一ばぁちゃんにねだって買って貰った絵本。

優しい赤鬼が、村人と仲良くしたいと願うのを、友達の青鬼が悪者になって、村で暴れて赤鬼が倒す。

それで赤鬼は村人と仲良くなり、仲良く過ごす。
それから顔を見せない青鬼が心配になり会いに行き、
自分が居たら村人が落ち着かないから旅にでます。と言う置き手紙をみつける。


『……長い旅、遠い旅、けれども、僕は、どこにいようと、君を想っているでしょう。

君の大事な幸せをいつも祈っているでしょう。

さようなら、君、体を大事にして下さい。

どこまでも 君の友達

青鬼』


赤鬼は何度もそれを読んで、涙を流す……そんな内容。


何故か惹かれて、何度も何度も読んだ絵本。


どこか、ボク達に似て居る。

離れ離れになった二人は、それからどうなったんだろう?


ボクは離れない。
もう……離れたくない。

絵本を、壇に立て掛けて、線香に火を着ける。

「ばぁちゃん……行って来る」

必要最低限の着替えと、全財産をリュックに入れて、玄関から出る。
カギを閉めて、

「行ってきます!!」

そして、表で待つまほろばの腕に飛び込んだ。
彼は、柔らかくほほ笑んで迎えてくれた。
この温かい腕かいなは、現実。

もう、離れない。
離れないから、泣かないで、



赤鬼――――――


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