上 下
56 / 56
本編

黄金の竜アウローレンス⑤

しおりを挟む

問われて素直に「祖の竜を目覚めさせに行く」と宣言し。その前に姉上たちの関係性のに来たと簡単に答えた。
改めて姉である目の前の二人をしっかりと見る。
私の言葉に微動だにしない。

「そう……貴方がタマゴで生まれた時、予感はしていたのよ」
ユースローゼ姉上が微笑んだ。
「良かったわ。今回は壊れなくてすみそうね」
ナーイアウロ姉上が静かに言った。

「やはり、ユースセリアは祖の王女なのだな?」

私の言葉に二人は少し考えるように見つめ合い、

「どの“生”も貴方は居なかったのに。全てを知っている目をしてるわ。
どこまでを貴方は……あなたたちは知っているの?」

ナーイアウロ姉上が“あなたたち”と一括りにした。

「姉上は解っていて“輪廻”していたのではないのか?」

「漠然としたものだ。
“願い”を叶える為に何度も繰り返す。その為に手を加える事もしなかった。
ただ、見守る。それが最善の策だと予見して……だが、互いの“番”が共に“輪廻”を繰り返していたから耐えられたようなもの」

ただ事実を淡々と話すユースローゼ姉上。

「番?」

共に居る婚約者たち。

「ルイドールとアルバン。現国祖の人側であった王弟の次男ルイードと三男アルバンだ」

確かに初めの国王は祖の王女の娘でその王配は従兄弟で在ったと記録がある。
驚きしかなく。呼ばれた二人は静かに頭を下げた。
今まで見ていた二人とは、明らかに違う雰囲気だ。
先程の殺気立ったアルバン。おどおどとしたいつもの奴とは全く異なっていた。
ルイドール。いつも物静かな金の長髪の美丈夫。面を上げた時、その碧色の瞳に燃え上がる焔を見た。

「して、何故にが共に居る? 竜とは違いその存在は夢物語のような曖昧なものだった筈だ。
だが、“世界樹”が存在する事は事実で、“世界樹”本体が生きる世界に精霊や妖精が隠れているとは言われていた」
「そうね。ルイドールが、“ルイード”が初めから言ってたのよね。“世界樹”が解決の鍵だと」

ユースローゼ姉上とナーイアウロ姉上はどこまで知っているのか。

「確かに世界樹は初めからこの問題に絡んでいる。否、巻き込まれたと言っていい。
姉上方が誕生する切っ掛けを作ったのがユグドラシルだ。
頼まれたから王女に手を貸したんだ」

実際は脅されて。だが、本人も興味からした事だ。

「ここに居る男型の妖精が世界樹本人。
そして後ろに立つ女性騎士ヴァロアは、私アウローレンスの前世の娘。この“世界樹”を祖に持つ血筋の末裔。」

二人の姉上はさすがにそこまでは考えていなかったのか、驚きを隠せない顔をしている。

「ならばそなたも、その魂に流るるは“世界樹の血脈”だと言うのだな? 
どうしてそのような者が王家に“転生”して来たのだ?」

生まれ変わり。

初めての体験ではあるが当人である私の持論。“転生”とは、前世を記憶して生まれ変わる事。
“転生輪廻”とは、元の記憶をそのまま引き継いで何度も生まれ変わる事。

「私の父が竜の血筋だったのです。」

そして、馬鹿な男エドガーの話を包み隠さず告白する。
同時に聖女とウィクルムの話も。
静かに聞き終わった姉上たちは、美麗なかんばせに大きな笑みを咲かせた。

「ーーーようやっと揃ったと言う事ね? ルイドール」

ナーイアウロ姉上が嬉しそうに伴侶に問う。

「ええ。念願叶いました。」

ルイドールが小さな笑みをこちらに向けた。

「私は未来を見通す力を持っています。」

それは紛れもない真実だと判る。

「ああ……貴方は“神の気紛れ”でだね」

それまで静かだったユグが声を上げた。

このユーラシフラン王国は竜と人の子孫から成る国。
他国と大きく異なるのは“神”を信仰していない事。
国名をユーラシフランと定めた時、崇めるのは国救いの王家の祖の黄金の竜と決まっていた。
現在まで、誰もが生まれた時からそう教えられて来た。それは十二分に国民へ浸透している。

要するに、王家の歴代の王が生き神様なのだ。
だから“神”と名の付く者は妖精並に物語の中の架空の存在。
語る事は禁止されてはいない。だが、見えない故に、その存在は曖昧。

神を信仰していた頃、神は気紛れに特定の人間に加護を与える事があった。

そうユグは説明した。

“先見の明”
焔を宿した瞳。
未来を見通す力だと。

「ルイドール。強く美しい魂だ。
それが神の目に留まったのだろう」

何とも不思議な国なのだと、周りが見えて来た今思う事。

エドガーの時はただ流れるままに生きて来た。それは当たり前の営みで、愛しい者が亡くなった時から私の世界は壊れた。
壊れてから解る事。壊れなければ判らなかった事。
全てが居て居ないものに操られているようで恐ろしさを覚えた。
まるで信仰を棄てた者たちへの報復であるような……

「この国はどことも違っているんだよ……竜の血と交わった時から……もう知る者は居ないだろう。ユーラシフラン王国となる前は神を信仰する国だったんだ。故に“神の気紛れ”を与えられた最後の人間なのだろう。
ルイドール。この男の、魂に刻まれた加護が“転生輪廻”を可能としたのだろう。
それと同じ原理でヴァロアとユグドラシルの子孫は世界樹の加護を受けているんだよ。だからエドガーの転生をユグドラシルが行使出来た。
ただ、祖の王女の輪廻は、“呪い”に近い。」

物騒な言葉が出て来た。

「それは、祖の竜アウローレンスが関係しているのか?」

「そうだな。“番の呪縛”と言った方が分かり易いか? そちらの番同士もそう言う理由で共に輪廻転生を繰り返しているんだろう」

「ユグドラシル様。発言をお許し下さい」

深く頭を垂れたユースローゼ姉上がユグの前へ進み出た。

「いいよ。それから、この姿の名は“ユグ”で」

「感謝致します。ユグ様。
私たちの事は恐らくはそうだろうと理解はしておりました。母様は、ユースセリアの輪廻は呪い。それもその通りだと思います。私たちはまるでユースセリアを見守るように輪廻していました。毎回歳上と輪廻していたユースセリアがこの度初めて歳下と生まれ来たのです。それに、アウローレンスの名を持つタマゴと生まれた者も初めて。だから私たちは期待していたのです」

そもそもが、姉上方の輪廻の理由がはっきりとしない。

「私たちの願いは“幸せな普通の営み”愛し愛され生きて行く事」

それは誰もが憧れる生き方。

「愛する人と共に穏やかに暮らす。それさえ初めから皆無でしたから……」

姉上方の、それは心からの願い。それが切々と感じられた。



















しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.11 花雨

作品全てお気に入り登録しときますね(^^)

なぁ恋
2021.08.12 なぁ恋

わわわわわありがとうございます✧︎

解除

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

(R18)私の夫を寝取った親友ー金髪美人が不幸の引き金!

青空一夏
恋愛
私が帰宅すると、出張中のはずの夫と私の親友が夫婦のベッドでアレをしていた。私は洗面所に行って鍵を閉める。そこから展開する悲喜劇。ブラックコメディー。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。