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本編

黄金の竜アウローレンス①

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王女と竜
すこーし書き加えてます。
よろしくお願い致します!

*****


ソノ“名”ワ  ワレノモノ
カエセーーー


頭の中で深い男の声が木霊した。


くらりと目眩がし、よろけるもアンスが支えてくれた。

「アウロ様大丈夫ですか?」
「あぁ。大事無い。目眩がしただけ、だが……」

あの声。恐らくは祖の竜の声だ。 
祖の名が“アウローレンス”と言うのだ。私はそこから名付けられた。

だが、返せ。とは?
もう存在しない相手にどうしろと言うのだ?
否。まさか……「生きている?」呟いて考える。

「竜は長寿だ」

頭上からユグの声が降って来る。

「やはり。祖の声か?」

「そうだ。私にも聞こえた」

「どう言う事だ?」

疑問しかない。

「目覚め始めたと言う事は、ようやく王女も輪廻されたと言う事だな」

輪廻。

「エドガー。主は記憶を持って“転生”した。だが、この王国の初めの王女は記憶を抱え込んだ状態で“輪廻”をしたんだ。条件を満たせば記憶が目覚めるような」

「竜の名はアウローレンス。竜の王国の初めの王女の名はユースセリア。
現第三王女だ。では、ユースセリアが祖の王女の生まれ変わりだと?」

「そうだ。まさか、この時に生まれるとは思わなかったが……条件は“名”だ。切っ掛けは“アウローレンス”だろう。
そして魔森の中心に在る世界樹の根元で、黄金の竜は眠って居る」

なんと。

「どう言う事だ?」

高い声が疑問符を紡いだ。
癒し手マムがウォールウォーレンと共に室内へ入って来ていた。

「そうだ。夕食が出来たと、アンスを呼びに来たところだったんだ」

ユグが「忘れていた」と悪びれずに言うと、さっさと飛んで行ってしまった。

「そうそう。なかなか来ないから呼びに来たんだよ」

申し訳なさそうに眦を下げるウォールウォーレンを顎で来いと指示するマムが「食べながら訊く」短く言った。







この屋敷は変わらない。
場所も全ての配置も。

だからか、安心する。

「では、“竜のアウローレンス”の話を教えてもらおうか?」

座るや否や話を急かすマムはフォークに肉を刺していた。

大テーブルを囲んで食事をする面々は何事かと不思議な顔をしている。

私は当然と上座に座り、その左横にアンスを、続くマムとウォールウォーレン。
右向かいの席にはヴァロア、ウィクルム。
その横にユグとロア。

マムが大口を開けて肉を頬張りながら「それで?」と更に促す。
ユグは金色の花の蜜を啜り、記憶を確認するように宙を仰ぎ見て。

「“条件が合えば魂が目覚める”。そう言う“契約”を竜の番は交わして王女は死んだのさ」

まだロアとも出逢っては居ない最古の時代。と懐かしむように語り始めた。

生まれたばかりの黄金の竜は気付けば知らない場所、人間界に迷い込み、己よりも大きな体躯の獣に突如襲われ抵抗も出来ず瀕死の状態となる。
それを見つけたのが当時の王女ユースセリア。
まだ時代。その中でも貴族、更に王族は豊富な魔力を持っていた。ユースセリアはその中でも一番と言われるくらいの魔力を抱えていた。
そのユースセリアが“言霊”で竜と“契約”を交わした。それとは知らずに、だ。
そのお陰で竜は回復し、更に重ねられた“名の呪縛”でユースセリアに縛られ、人間界から離れられなくなった。
ユースセリアの安易な言葉で
竜も本能のままに彼女をし魂が繋がった。
それはユースセリアが5歳の時。
世界樹だけが三世界と繋がる術なのは現在と変わらない、その出来事も私は見ていた。ただ傍観していた。

世界を跨いだ竜はユースセリアから常に魔力供給を必要とした。故にそこからユースセリアの成長が留まってしまい、5歳の姿のままの王女は竜と共に城に閉じ込められた。

それを良しとしなかったのは王族の方で、何故なら王女は国王唯一の子ども。
王妃を娶り子を生した後、大病し子を持てぬ体になっていたのだ。
だから唯一の跡取りで在る王女をこう言う形で閉じ込めるのは王族、国王にとって、到底許せることではなかった。
跡取りとして王弟とその息子の三人居たが、現国王は自身の娘を跡目に据えたい。それを譲らなかった。
のはこの国は小国ではあったが豊かな大地故に周りの国から狙われ、常に争いの絶えない事。
その戦に王弟とその息子らを矢面に立たせる事が出来ていた。
ゆっくり様子を見るのもいいと高を括っていたのだ。
大事な王女故閉じ込めて育てると言う建前も理由として容易く受け入れられ、何より伝説の存在で在った竜を手懐けた王女として、その存在価値と人気は不動のものとなりつつあった。
王女の見姿は5歳でも、中身は年相応に成長する。そして竜は大きな黄金の鱗を持った立派な成体へと成長していた。
国王は王女への跡目を確かなものにしたいが為に竜を脅す。

幼女姿のままの王女。
引き離されたくなくば……と竜に戦場へ参戦するよう命令を下す。
王女が憂いている。
その問題を取り除きたい。と。最もな言葉で言いくるめて。

竜は居るだけでも兵士たちの士気が上がる。
その体躯で敵を蹴散らしもする。
やがて竜に護られし国として他国は侵略を諦め始めた。
そうして気付けば王女と出逢って十三年の年月が流れ、王女18歳の生誕の日、竜は何か欲しいものはないかと初めて訊いた。王女は少し前から考えていた事をそのまま告げる。人の姿に成れないかと。
竜はその望みを叶えた。
その姿は黄金の髪を持ち赤い瞳の美丈夫で瞬く間に王女は恋に堕ちた。
番で在る二人はこの時真の伴侶と成ったのだ。

だが、問題も起こる。
ユースセリアは己の5歳の幼女の姿を恥じる。
二人は似合わないと、本気で心を病んで行く。

病みの先に行き着いたのが子どもが欲しい。と言う願い。

だが、どうしたってそれは叶わなかった。
女性として成長していないユースセリアに子を成す能力はない。

竜は王女を連れ、最後の望みと人間界に根付く世界樹に願いに来た。

愛する番の願いを叶えたい。と。

その願いは“金色の花”があれば叶えることが出来る。それは判っていた。
だが、人間の心は複雑。それが正解かは判らない。
王女はその頃にはもう深く病んでいた。
ただ子どもが欲しいとの願いだけなら良いのだが……。
疑念を持ちながらも、王女の為の一輪の金色の花を手渡す。
憔悴しきっていた王女の瞳に光が灯り、願いを口にした。

竜との子どもが欲しい。と。
それは純粋な想い。
 
竜と向かい合い花のような笑顔を浮かべた。
花弁が散るようにその姿を綻ばせた王女は、年齢通りの美しい女性の姿へと変化させた。

二人泣き笑い喜んだ。

そして王女は一つのたまごを産んだ。

そこからが悲劇の始まりだった。

たまごが中々孵化しない。
一年経ち二年経ち。
人間界でたまごを孵化させるには魔力が著しく足りないのだ。
半狂乱になった王女は禁忌を犯す。
この国の根本である魔力をたまごに与えると言う暴挙に出たのだ。
父王と同じ過ちを、世界樹を脅すと言う手段で。

たまごを誕生させたのだから孵化まで面倒をみろと。

世界樹はただ傍観している立場では在ったが、一度手を貸した事で巻き込まれる。
それに憂いはあれど、その結末を知りたいとも思ってしまったので手を貸す事にした。

人々の持つ魔力の殆どを、たまごに注ぎ込む。
金色の花を使えばそれも容易かった。






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