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本編
※暴君へ忠誠を誓う
しおりを挟む本当なら、不敬罪で処刑されたって仕方ないことをしでかした。
目覚めたら、黄金の髪の美丈夫が、俺の腕枕で眠っていた。
あ―――――……やっちまった。
俺は、25歳だ。
ヴァロアのように、飛び級するほど成績優秀ではない、本当に平々凡々なバルト男爵家の次男坊。アンスだ。
よくある茶色い髪に、翠色の瞳。これと言って特徴のない顔。
筋肉は、ある程度鍛え上げている。
そして、城の王女様方の近衛隊隊長をしている。
女性ばかりの小さな騎士団だ。
俺が隊長として女性ばかりの隊を率いることとなったのは、少しばかりの理由がある。
女性は、恋愛対象ではないから。
それは、隠すことなく公言していて、独身だが安全だと言うので選ばれたのだ。
まあ、それはいいんだ。
団員たちは、優秀で、俺を慕ってくれている。
だが、如何せん、欲求不満気味だったんだ。多分……
まあ、苦しい言い訳だ。
ヴァロアに明日は休めと言い忘れたと、騎士寮まで訪ねて行くところだった。
すると、丁度ヴァロアの部屋から男が出て来た。しかも、裸体の男が。衝撃的だった。
駆けて対峙すると、その美しさに驚いた。しかも、アウローレンス殿下だと言う。
その証明だと“竜眼”を出現させる。
その瞳に吸い込まれそうだった。
頭の先から足の先まで、何もかも完璧な男がそこには居た。
衣服を頼まれ、戻ってくると、第一王女が婚約者を伴いそこに居た。
そのやり取りに、殿下の痴態に、喉がなる。
最早、興奮で頭が、下半身が、沸騰しそうであった。
深呼吸し、間に割って入る。
感謝され、
そのまま後を着いて行き、室内まで入り込む。
冷静に、と、浅く息を吐く。
そして、黄金と赤の美しい瞳が、俺を射抜く。
理性がぶっ飛んだ。
そして、現状だ。
朝だ。
早朝。
いつも俺が起きる時間だ。
朝一で体を動かし、水を浴びる。
「ん……」殿下が身動ぎ、長いまつ毛が揺れ、開く。
「……綺麗だ」
自然と出た言葉に頬が熱くなる。
昨夜の濃厚な時間を思い出し、朝勃ちしていたものが、さらにその存在を増す。
そこに、衝撃を与えられる。
「うっ……陛下っ」
「アンス」
名を呼ばれながら、その唇が俺に触れ、体が覆い被さってくる。
あ……この体制は
「殿下っ!」
「何? 今更、私の初めて両方捧げたんだからさ。もう一回、アンスのナカに入れさせてよ……」
耳元で囁かれ、じくりと、腹の奥が疼いた。
俺は、殿下の強引さで、初めてを奪って、初めてを捧げてしまったのだ。
この体格で有り得ないと思っていた。のに、だ。殿下は、竜の血族。一般の男性とは異なる怪力で、押さえつけられ、気付けば奪われていた。
あれやこれやとしまくった。
それこそ、しながら寝落ちたらしい。
現状はまた、押さえつけられ、抵抗出来ない。
それが、困ったことに、全く嫌ではないんだ。
俺は、美しい男が好きなのだ。
そして、こんなに満足したことも初めてだ。
今だけは、溺れそうな予感に目を瞑ろう。
殿下が愛を捧げるヴァロアの顔が頭を掠めるが、もう、後の祭り。
例え、殿下の心が他にあろうとも、俺は、殿下から離れられないだろう。
複雑なことは考えず、快楽に身を任せる。
美しい顔が快楽に歪み赤く染る様を特等席で見てやるのだ。
俺と二人、ベットの上ですました顔をしたアウローレンス殿下が、朝の支度を整えに来た侍女たちに商会を呼ぶように命令をしていた。
キモの据わった殿下に、キモの冷えた俺は、もう溜め息しか吐けない。
これ以降俺は、第二第三王女付き近衛隊隊長兼第三王子付き護衛となった。
あれだけ噂に惑わされ、厄介で手に負えないと思っていたアウローレンス殿下の、一番の味方になる覚悟を決めた。
その覚悟を感じ取ったのか、殿下は自身の闇と、ヴァロアとの関係と、“祝福の花”のこと、全てを教えてくださった。
守ってやりたいと、本気で思い、足元に傅き、その右手を取ると手の甲に口付ける。
「貴方に永遠の愛と誓いを」
その言葉に満足気に、蕩けた視線を遠慮なく俺に注ぐ。
「あぁ。当たり前だな」
その暴君振りに、心底心頭して、
幸せを噛み締めたのだった。
愛は盲目とは、よく言ったものだと、殿下の中のエドガーに共感するのだった。
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