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黄泉のイザナミ
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前ページ少し追加しました。
よろしくお願いいたします。
********
「綺麗に成長したね。これがこの世界がもたらす効果ならば、他の兄弟もそう変わるのかしら?」
美しいものは好き。
頭のの水を通して視るこの世界は、全てが美しく輝いて居た。
この世界には、……が、溢れている。
?
判らない。
......
懐かしい匂いがする。
私が欲してやまないものがここには在る。
胸が熱く苦しくなる。
私が、ここへ来たのは……私の無くしたものを探しに来たのだ。
私が無くした?
目尻が熱くなり、滴が零れ落ちる。
これは“玲子”の残した“涙”?
玲子は私の内に眠りに就いている。
零れた滴は目を保護する水に混ざり、それから気にならなくなった。
この世界は居心地が良い。
だけれども、私が帰る場所はイザナギの隣り。
早く捜し出して持ち帰らねば。早く早く、私のあの人の傍に帰らなければ。
懐かしい匂いは躰に余韻としてほんの少し残ったが、気にする程のものではなく、玲子と共に私の魂の奥深くに沈んで行った。
....
重苦しい空気漂う場所から、崩れた家屋を踏みつけ外へ出る。
そうして見えて来たのは、希望と言う名の眩しい白い空。
私は、この綺麗な世界に在る私の無くしたものを探しに来た。
......
愛する人を私だけのものにする為に……いや、元々私だけのイザナギ。
なのに変な考えに囚われる。
「はぁ……」
溜め息を吐き出す。
........
久し振りに考えるのに疲れた。
私に寄り添う様に傍に来た頭のの体に身を預ける。
ずっと眠っていた玲子の躰は少しの動きもすぐに疲れてしまう。
「少し、眠る」
頭のの冷たい躰が私の体を掬い上げる。
触れて安心する。
頭のが遠慮がちに、私から、玲子の躰から精気を吸い取る。
これは食事。
頭のは私から離れ、玲子から食事を取っていた。
痛みのない食事。
形は違えど愛しい行為に笑みが零れる。
躰の疲れに負けて目を閉じて、ふと思い出したのは、頭のの血を与えられた男。
それに、玲子の血筋。
玲子と交わる時に見た記憶。
玲子の祖先となる女が頭のの変化した理由。
頭のと玲子との間に出来た息子。
それと共に居た女。
二人を隠す様に燃えた土の焔。
気にはなるが、眠りに抗う術はなく、深く深い闇に思いは溶けて行く。
いずれは判る事。
私は、イザナミ。
それだけの力を持った女神なのだから……。
眠りに堕ちる直前、花の甘い香りが鼻につく。
この匂いは、桃?
それは夢?
哀しい想い。
夢は過去。
過去の産物は?
私は、
私を探しに来た。
私はイザナギを求めて、この世界に……岩壁を越えて―――。
前ページ少し追加しました。
よろしくお願いいたします。
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「綺麗に成長したね。これがこの世界がもたらす効果ならば、他の兄弟もそう変わるのかしら?」
美しいものは好き。
頭のの水を通して視るこの世界は、全てが美しく輝いて居た。
この世界には、……が、溢れている。
?
判らない。
......
懐かしい匂いがする。
私が欲してやまないものがここには在る。
胸が熱く苦しくなる。
私が、ここへ来たのは……私の無くしたものを探しに来たのだ。
私が無くした?
目尻が熱くなり、滴が零れ落ちる。
これは“玲子”の残した“涙”?
玲子は私の内に眠りに就いている。
零れた滴は目を保護する水に混ざり、それから気にならなくなった。
この世界は居心地が良い。
だけれども、私が帰る場所はイザナギの隣り。
早く捜し出して持ち帰らねば。早く早く、私のあの人の傍に帰らなければ。
懐かしい匂いは躰に余韻としてほんの少し残ったが、気にする程のものではなく、玲子と共に私の魂の奥深くに沈んで行った。
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重苦しい空気漂う場所から、崩れた家屋を踏みつけ外へ出る。
そうして見えて来たのは、希望と言う名の眩しい白い空。
私は、この綺麗な世界に在る私の無くしたものを探しに来た。
......
愛する人を私だけのものにする為に……いや、元々私だけのイザナギ。
なのに変な考えに囚われる。
「はぁ……」
溜め息を吐き出す。
........
久し振りに考えるのに疲れた。
私に寄り添う様に傍に来た頭のの体に身を預ける。
ずっと眠っていた玲子の躰は少しの動きもすぐに疲れてしまう。
「少し、眠る」
頭のの冷たい躰が私の体を掬い上げる。
触れて安心する。
頭のが遠慮がちに、私から、玲子の躰から精気を吸い取る。
これは食事。
頭のは私から離れ、玲子から食事を取っていた。
痛みのない食事。
形は違えど愛しい行為に笑みが零れる。
躰の疲れに負けて目を閉じて、ふと思い出したのは、頭のの血を与えられた男。
それに、玲子の血筋。
玲子と交わる時に見た記憶。
玲子の祖先となる女が頭のの変化した理由。
頭のと玲子との間に出来た息子。
それと共に居た女。
二人を隠す様に燃えた土の焔。
気にはなるが、眠りに抗う術はなく、深く深い闇に思いは溶けて行く。
いずれは判る事。
私は、イザナミ。
それだけの力を持った女神なのだから……。
眠りに堕ちる直前、花の甘い香りが鼻につく。
この匂いは、桃?
それは夢?
哀しい想い。
夢は過去。
過去の産物は?
私は、
私を探しに来た。
私はイザナギを求めて、この世界に……岩壁を越えて―――。
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