河童様

なぁ恋

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愛情論理

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*朗side* 
 

優月の顔、真っ赤になっている。

可愛い。と言うとやっぱり嫌がるだろうか?

優月を見て胸が高鳴るのは、いけない事なんだろうか?

優月が怒った顔して部屋を出て行く。

響夜と優星。
眠る二人を見て羨ましく思う。
肌を寄せ合って眠る。

それだけで意味がある。

どんな問題があろうが、二人が一緒に居られるならそれだけで良い。




一人は寂しいものだ。




ここへ来てそれが十分に感じられた。

どんなに嫌がろうが優月は連れて行く。

「それで良い筈だ」

“河童”は隠れなければならない存在なのだから。

そうしなければ、捕まってしまう。

母みたいに?

それを探しに行った父は、どうなったのか?

あの“離れ”は“爪痕”を利用して妖怪除けの結界がはってある。

だから龍の妖気を受けても倒れる事がなかった。

“河童の池”が水先家に在るのはそれはそう在るべき自然な事だったのだろう。
 
 
背を正すと、窓から外が見えた。

河童の池。

優月は毎日ここから見ていたのだろうか?

知りたい事は尽きず、疑問ばかりが頭を過る。

この世界を知る術は来るまでは優月から得た知識。
来てからは優月の学校に潜り込む為にそこの教員達から少しずつ、負担を掛けない様に人間の生活についての記憶を頂いた。

“人間関係”は理解しにくく省いたんだが“恋”や“愛”について、深く見ておけば良かった。
 
多分。としか言い様がないが、私のこの感情はそう言った部類に入るのだろう。

優月を好きだと思うのだ。
私のものにしたいと感じるのだ。


「優月」
名を口にするだけで胸が熱くなる。

この気持ちを素直に出したら、優月は戸惑って逃げ様とする。
私の想いは違うと否定された。

想う心をどう理解すれば良いのか判らない。

ただ、好きだと心が叫んでる。
 
 
 

*優月side* 
 


なんであんな事したがるんだろ?

“好き”と言われるのは僕だって嬉しいけどさ。

でも。

「ニャア」
「クロス」

階段の中段で見上げるクロスが居た。

可愛い黒猫のクロス。
抱き上げて一緒に一階へ。

「ニャにもされニャかったか?」

その言い方って。思わず苦笑う。

「今朝はありがとう。何だか先に逃げちゃってごめんね。ご飯も先に食べちゃったよ」

「ふんニャ。今俺も食べたからニャ」

台所まで帰って、思い出す。

「着替えるの忘れてた」

パジャマを摘んで伸ばし溜め息。

「あれ? 母さんは?」
「布団畳んで来るって離れへ行ったニャ」

「そう。……仕方ない。今度こそ着替えて来るよ」

「一緒に行くニャ」

頼もしいけど、朗と騒いだら姉ちゃん達が起きちゃうから……。

「大丈夫。ここで待ってて」
クロスを下に降ろして、重い足で来た道を帰る。
 
 
 
部屋へ戻ると、窓辺に立つ朗が居た。

「朗」
名前を呼ぶと、振り向いた。
僕を見る目は優しく細められ、星が輝く瞳は寂しげな感じがした。

「優月」
僕を呼ぶ声も柔らかく優しい。

それだけで頬が熱くなる自分を感じた。

「下へ行ってて」

「優月……私を好きになってくれ」

簡単なんだ。
人の気を引くには、素直に自分の気持ちを言えば良い。

今度こそ、自分の胸の高鳴りが嘘じゃないと解った。

足の力が抜けて、その場に座り込む。
顔全体が発火したみたいに熱い。

近付いて来た朗が両膝を折り目線を一緒にして僕を覗き込む。

「好きになって欲しい」

叩き込む様に言われ、返す言葉が見つからず黙って居ると、顔が、朗の綺麗な顔が近付いて来た。

唇が掠める。
耐えられなくて目をギュッと瞑る。
掠めた唇が重なった。

昨夜よりも、さっきよりも身近に感じて、空いた両手で朗の服を掴む。引き寄せた感じになって、キスが深くなった。

嫌じゃないんだ。
この感覚。
朗は全身で僕を好きだと訴えて来る。

これは抗う事が出来ない誘惑。

唇が離れ、それでも身体にかかる朗の重みが心地好くて、両手を伸ばし彼がそうしている様に朗を抱き締める。

「好きだ」
「……嫌だ」

心は求めても、理性は否定している。

流されたくない。
流されちゃダメなんだ!
 
 
 
 
 
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