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龍の呪い
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“キス”
面白い愛情表現だ。
響夜と優星、二人の行動が珍しく興味が湧く。
あれが示すのはお互いに惹かれ合ってると言う事か。
惹かれる。
私が惹かれるのは優月。
私の腕の中に居る優月。
その手の平に触れた感触が落ち着ける。
そう言う事だろうか?
「―――先生。話は訊いていたでしょう?」
高い声色で問う優星。訊く意味は理解している。
だが、
「龍の神社にあるのは“龍の宝珠”なのだな? それに死なぬの人間の躰から流れ出た水からお前の父親龍は現れた」
ならば、龍の入口に成っている可能性がある。
「それは“龍道”だニャ」
私の考えを後押しする様に、優月の膝で丸まって居た化け猫が呟いた。
「そうだ。人間を介して龍道を開いたんだろうな」
「どう言う意味だ?」
険しい表情をした響夜が詰め寄る。
「知らぬ内に龍道の護りを遣らされて居たんだ」
憎む相手の思い通りに。
「例えば、私の“人界”への入口はそこの池だ。妖怪の生きる“妖界”と“人界”の境目は薄い壁の様なもので区切られている。
昔話の様にそこかしらの暗闇から妖怪が出てくる。なんて事はほとんどあり得ない」
「俺は半分幽霊みたいニャ存在だったからニャ」
化け猫の補足で解りやすく説明出来そうだ。
「そうだ。稀に人界でも妖怪は生まれる。
猫や狸、狐、その様な動物が変化する。
だが、生粋の妖怪は人間を介さないとこちら側には来れないんだ」
「だから? 母は龍の入口だと?」
「そうだ。お前の“響夜”は妖怪の類を視れる一族なのだろう。そう言った者の中から女が妖界にさらわれ混血妖怪が生まれる」
混血は純血の者にとってはあくまでも道具。
「そうした関わりを持った人と妖は互いの世界の“水先案内人”になる」
「そうね。でもそれは一方通行の舟なんだけどね」
背後から聞こえてきた女の声に驚いて振り向く。
「母さん!」
優月と優星が声を揃えて女を呼んだ。
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