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<やまねこのふえ>のお話
61 終演
しおりを挟むアンコールは、森のオーケストラとランが演奏しました。
ランは、曲の途中に、テンくんから楽器をかりて、バイオリンも演奏しました。
おもいがけず、ランの本業を聴くことができたので、
銀色の森の動物たちも大喜びでした。
アンコールの間も…、
森の動物たちが音楽にひたりながら思い思いに音楽堂から帰っていった後も、
ずっと、
ニノくんは、オルガンの後ろでふえをにぎりしめて、
小さな子どものように泣いていました。
すぐ横に、うさぎの楽器やさんがついています。
聴衆を見送ってから、リンとランもかけつけました。
テンくんとオークも、ニノくんの様子を心配していましたが、
うさぎの楽器やさんが大丈夫だからと言って、森のオーケストラと一緒に引きあげてもらいました。
このあと、オークのお店に行くようです。
すばらしい音楽にどっぷり浸かったオーケストラのメンバーは、
自らもなかなか興奮冷めやらないため、
反省会を兼ねて打ち上げをするんですよ!
音楽堂が静かになると、
ニノくんも少しずつ落ちつきを取りもどしました。
ニノくんは、にぎりしめていたふえを、
あらためて確かめるように見ました。
あの時、ふえが割れたから、
意識が戻った。
ふえが、引きもどしてくれたのだと、わかりました。
吹き口から、指穴と反対方向のヘッドにむけて、
木目に沿って、いさぎよく割れています。
吹き口の、丸いかたちが途切れているので、
いくら吹いても空気が逃げていき、音が出ません。
ふえは、何も話さなくなりました。
ニノくんには、ふえの声が、
何も、聴こえません。
まるで、迷子になったみたいに、
どうしたらいいか、わからずにいました。
でも、うさぎの楽器やさんは、違います。
うさぎの楽器やさんは、ニノくんの手から、そっと、ふえをとりました。
「あとは、楽器やにまかせて、
すこし、休むといい。」
うさぎの楽器やさんの後ろには、
ニノくんのお母さんがいました。
ニノくんの演奏を聴きにきていたのです。
そして、その横には、レノさんもいます。
ニノくんは、うなずいて、ゆっくり立ち上がり、
久しぶりに、銀色の森の南の外れにある家に、帰っていきました。
久しぶりなのは、レノさんもですがね!
うさぎの楽器やさんのもとに、
リンとランが残りました。
そこへ、カラスの自警団が、銀色トウヒの枝を階段のようにして、降りてきました。
カラスたちも、銀色トウヒの枝の上で、
演奏をきいていたのです。
カラスたちとうさぎの親子が集まった中、
「どうするの?」
ランがききました。
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