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<やまねこのふえ>のお話
57 プライド
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一度、灰色になった、音楽堂の銀色トウヒは、
銀色にもどることはありません。
どんな植物も、そうですよね!
水やりを忘れて、枯らしてしまった時、どんなに手を尽くしても、その葉は、
いずれ柄の元からハラリと落ちてしまうのです。
ほんとうに、がっかりします。
銀色トウヒの葉も、振動で揺れると、カサカサとした音がして、
以前の輝きは、なくなってしまいました。
常緑の木が、そんなことになってしまい、
雰囲気がさびしくなった音楽堂でしたが、
どこからともなく、
動物たちが集まってきました。
キツネの女の子、
リスの兄妹、
うさぎママと、娘のラビちゃん。
オオカミのおじさまに、かわうそのぼっちゃん。
銀色の森の動物たちです。
レストランのシェフネコと、
お手伝いねこたち。
うさぎの奥さんもいますよ!
オーケストラの誘導を終えて、特等席で演奏を聴いていたうさぎの楽器やさんは、
思わずたちあがりました。
いつのまにか、となりに来ていた
タヌキの長老のグラハムさんが、
そっとうさぎの楽器やさんに話しかけました。
「こんな、すごい演奏を、
だれが聞き逃すかね?
この森の動物なら、
みんなが聴きたいと思うよ。
ほら、このとおり。」
動物たちは、順にならんで、客席にすわります。
「なあに、森が枯れたって、いいんだよ。
またいつか再生するというじゃないか。
時間がかかったって、
私たちには、音楽がある。
音楽のあるところに、また集まろうじゃないか。」
森の動物たちもまた、
あの日、ニノくんを見放してしまったことを、後悔していました。
音楽を愛する、この森の聴衆として、
今度は間違えてはならない。
聴衆としての、プライドなのかもしれません。
「われわれは、銀色トウヒを、失う覚悟が、できているのだ。」
と、タヌキのグラハムさんは言いました。
そして、仲間の音楽家の力を信じる。
「…まあ、なによりも、
このすばらしい音楽を、
今、ここで、この耳で聴きたいんだよ。」
かっこいいことを言っている自分にちょっと照れながら、
グラハムさんも観客席に歩いて行きました。
ぞくぞくと観客席に入った森の動物たちで、音楽堂は満席になりました。
森のオーケストラと、
ニノくんとランの2つのふえ、
そして森のオルガンの助演による、
コンチェルトが始まります。
うさぎの楽器やさんは、いそいそとオルガンの後ろに移動して、
スタンバイしました。
銀色にもどることはありません。
どんな植物も、そうですよね!
水やりを忘れて、枯らしてしまった時、どんなに手を尽くしても、その葉は、
いずれ柄の元からハラリと落ちてしまうのです。
ほんとうに、がっかりします。
銀色トウヒの葉も、振動で揺れると、カサカサとした音がして、
以前の輝きは、なくなってしまいました。
常緑の木が、そんなことになってしまい、
雰囲気がさびしくなった音楽堂でしたが、
どこからともなく、
動物たちが集まってきました。
キツネの女の子、
リスの兄妹、
うさぎママと、娘のラビちゃん。
オオカミのおじさまに、かわうそのぼっちゃん。
銀色の森の動物たちです。
レストランのシェフネコと、
お手伝いねこたち。
うさぎの奥さんもいますよ!
オーケストラの誘導を終えて、特等席で演奏を聴いていたうさぎの楽器やさんは、
思わずたちあがりました。
いつのまにか、となりに来ていた
タヌキの長老のグラハムさんが、
そっとうさぎの楽器やさんに話しかけました。
「こんな、すごい演奏を、
だれが聞き逃すかね?
この森の動物なら、
みんなが聴きたいと思うよ。
ほら、このとおり。」
動物たちは、順にならんで、客席にすわります。
「なあに、森が枯れたって、いいんだよ。
またいつか再生するというじゃないか。
時間がかかったって、
私たちには、音楽がある。
音楽のあるところに、また集まろうじゃないか。」
森の動物たちもまた、
あの日、ニノくんを見放してしまったことを、後悔していました。
音楽を愛する、この森の聴衆として、
今度は間違えてはならない。
聴衆としての、プライドなのかもしれません。
「われわれは、銀色トウヒを、失う覚悟が、できているのだ。」
と、タヌキのグラハムさんは言いました。
そして、仲間の音楽家の力を信じる。
「…まあ、なによりも、
このすばらしい音楽を、
今、ここで、この耳で聴きたいんだよ。」
かっこいいことを言っている自分にちょっと照れながら、
グラハムさんも観客席に歩いて行きました。
ぞくぞくと観客席に入った森の動物たちで、音楽堂は満席になりました。
森のオーケストラと、
ニノくんとランの2つのふえ、
そして森のオルガンの助演による、
コンチェルトが始まります。
うさぎの楽器やさんは、いそいそとオルガンの後ろに移動して、
スタンバイしました。
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