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<やまねこのふえ>のお話
45 救いの手
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うさぎの楽器やさんが、オークたちのいる南西の斜面にたどり着いたとき、
ニノくんは、まだ岩の上にいました。
ふえを手に持っていましたが、
ふたたび吹こうとする様子はありません。
ただ遠くの空をぼんやりとながめているように見えるのです。
オークとうさぎの楽器やさんのいるところへ、北の森のカラスが戻ってきて、
レノさんが無事であることを伝えました。
「ああ、よかった!」
レノさんが滑落していくのを目の当たりにしていたオークは、胸をなでおろして、
とたんに明るい気持ちになりました。
うさぎの楽器やさんから2ndのふえが急に上手くなったタネあかしをきいて、
「あれ、ランだったのか!
どおりで、上手く行き過ぎだと思ったよ!」
などと、笑い合いました。
ぼんやりと岩の上に座っているだけのように見えるニノくんは、
ふえと会話をしていました。
「ココハ、シッテイル。」
『そうだよ。僕らが出会った森だ。』
「コノ オカデ、レンシュウ シテ イタ。」
『うん。この岩にも来たことがあったよね。
キミは、どんどん上手くなった。
僕が見込んだ通りだった。』
「コンサートノ…練習をしていた。
オルガンのお披露目と…。」
ニノくんが少し自分をとり戻したのは、
なつかしい銀色の森の風景と、
2ndのふえの効果だったのかもしれません。
「ニノくん!おーい、ニノくん!」
自分が呼ばれたのかどうか、はっきりわかりませんでしたが、
ニノくんは、振り向いて声がする方を見ました。
頭の上のほうで、白いうさぎが手を振っていました。
その白うさぎの名前が、自然と口をついて出ました。
「うさぎの楽器やさん…。」
こっちにおいでと、うさぎの楽器やさんが斜面の上から手を伸ばしていたので、
ニノくんも右手を伸ばしました。
その時、
ふえをもっていた左手がピクリと震えて、
ニノくんの全身の毛が逆立ちました。
なんで、
銀色の森を出たのだったか…。
ニノくんは思い出したのです。
あのお披露目コンサートが、あんなことになったのは、どうしてだったのか知りたくて…、
ふえの正体を知りたくて…、
どうしたら、ちゃんと聴いてもらえるようになるか、知りたくて…、
銀色の森を出た。
最初にふえの正体がわかって、
どうしてあんなことになったのか、わかった。
どうしたら、ちゃんと聴いてもらえるようになるか、自分なりの答えも見つけた。
それなのに、
今まで、いろんな森から逃げてばかりだった。
逃げているうちに、
魔物になってしまった。
もう、逃げてはダメだ。
ニノくんは、うさぎの楽器やさんの手を取らず、
両手でふえを握りしめました。
ふえは、喜びました。
自分が選ばれたのですから。
ニノくんは、あのうさぎよりも、僕をえらんだ!
風にのって、
かすかに、
独特の乾いた音色が聴こえてきました。
強弱のない、重音の美しい響きは、
眼下の銀色トウヒの群生地から聴こえてきます。
銀色の森の一角にある、銀色トウヒの群生地。
そこから聴こえて来る、ニノくんにも聴き覚えのある、この音は…。
ここまで読んでくださったみなさんは、
もう、わかりますよね!
あそこには、うさぎの楽器やさんがつくった
森のオルガンがあるのです。
『僕たちも、演奏しよう。
もっと、すばらしい音楽を聴かせてあげようよ!』
ふえは、オルガンの音を聴いて、
機嫌良く言いました。
ニノくんは、まだ岩の上にいました。
ふえを手に持っていましたが、
ふたたび吹こうとする様子はありません。
ただ遠くの空をぼんやりとながめているように見えるのです。
オークとうさぎの楽器やさんのいるところへ、北の森のカラスが戻ってきて、
レノさんが無事であることを伝えました。
「ああ、よかった!」
レノさんが滑落していくのを目の当たりにしていたオークは、胸をなでおろして、
とたんに明るい気持ちになりました。
うさぎの楽器やさんから2ndのふえが急に上手くなったタネあかしをきいて、
「あれ、ランだったのか!
どおりで、上手く行き過ぎだと思ったよ!」
などと、笑い合いました。
ぼんやりと岩の上に座っているだけのように見えるニノくんは、
ふえと会話をしていました。
「ココハ、シッテイル。」
『そうだよ。僕らが出会った森だ。』
「コノ オカデ、レンシュウ シテ イタ。」
『うん。この岩にも来たことがあったよね。
キミは、どんどん上手くなった。
僕が見込んだ通りだった。』
「コンサートノ…練習をしていた。
オルガンのお披露目と…。」
ニノくんが少し自分をとり戻したのは、
なつかしい銀色の森の風景と、
2ndのふえの効果だったのかもしれません。
「ニノくん!おーい、ニノくん!」
自分が呼ばれたのかどうか、はっきりわかりませんでしたが、
ニノくんは、振り向いて声がする方を見ました。
頭の上のほうで、白いうさぎが手を振っていました。
その白うさぎの名前が、自然と口をついて出ました。
「うさぎの楽器やさん…。」
こっちにおいでと、うさぎの楽器やさんが斜面の上から手を伸ばしていたので、
ニノくんも右手を伸ばしました。
その時、
ふえをもっていた左手がピクリと震えて、
ニノくんの全身の毛が逆立ちました。
なんで、
銀色の森を出たのだったか…。
ニノくんは思い出したのです。
あのお披露目コンサートが、あんなことになったのは、どうしてだったのか知りたくて…、
ふえの正体を知りたくて…、
どうしたら、ちゃんと聴いてもらえるようになるか、知りたくて…、
銀色の森を出た。
最初にふえの正体がわかって、
どうしてあんなことになったのか、わかった。
どうしたら、ちゃんと聴いてもらえるようになるか、自分なりの答えも見つけた。
それなのに、
今まで、いろんな森から逃げてばかりだった。
逃げているうちに、
魔物になってしまった。
もう、逃げてはダメだ。
ニノくんは、うさぎの楽器やさんの手を取らず、
両手でふえを握りしめました。
ふえは、喜びました。
自分が選ばれたのですから。
ニノくんは、あのうさぎよりも、僕をえらんだ!
風にのって、
かすかに、
独特の乾いた音色が聴こえてきました。
強弱のない、重音の美しい響きは、
眼下の銀色トウヒの群生地から聴こえてきます。
銀色の森の一角にある、銀色トウヒの群生地。
そこから聴こえて来る、ニノくんにも聴き覚えのある、この音は…。
ここまで読んでくださったみなさんは、
もう、わかりますよね!
あそこには、うさぎの楽器やさんがつくった
森のオルガンがあるのです。
『僕たちも、演奏しよう。
もっと、すばらしい音楽を聴かせてあげようよ!』
ふえは、オルガンの音を聴いて、
機嫌良く言いました。
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