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<やまねこのふえ>のお話
39 オリーブの木のお店
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銀色の森に着いたうさぎの楽器やさんとレノさんは、
うさぎの楽器やさんのお店がある
オリーブの木のショッピングモールに向かいました。
オリーブの木のショッピングモールは、
3本の立派な幹をつないで作られていて、
レストランや雑貨やさん、
アイスやさんが入っています。
その中の、2階の一角に、
うさぎの楽器やさんの小さなお店があるのです。
先に帰ったリンがいるはずです。
まだ、ニノくんは現れていないように見えますが、リンにきけばわかるでしょう。
オリーブの木は、あいかわらずのにぎわいを見せています。
店内に入っていくお客さんたちに続いて、
2階の楽器店の前まで来ると、
なつかしい木の扉が出迎えてくれました。
少し重い扉には、黒い飾り枠がついた小窓があります。
目の高さにある小窓から、お店の中をのぞくと、
リンではない白いうさぎが作業机に向かって座っていました。
「あれっ、どうしたの、リンは?」
うさぎの楽器やさんは、ためらいなく少々嬉しそうに扉を開けて、
その白いうさぎに話しかけました。
「あら、あなた、やっと帰ってきたのね!
もう、リンもどこかに行ったまま帰らないから、
毎日、私がお店番していたのよ!」
白いうさぎは、振り向いて、
どこかあっけらかんとした口ぶりで言いました。
座っていた白いうさぎは、うさぎの楽器やさんの奥さんです。
お店の棚はなんとなくガランとしていて、
うさぎの楽器やさんが出発するまえに作りためた楽器が売れて、
もう半数くらいになっていました。
それにしても、リンは銀色の森に帰ったのではなかったのだろうか?
「リン、一度も帰ってこないの?」
と、うさぎの楽器やさんがきくと、
「そおよ!あなたも、リンも、
いつまでも、まったく…!」
と、プンプンしているわりに怒りを感じないのは、
夫や息子を心配しているというより、
自分が余計なことをさせられているのが嫌なだけといった様子で、
むしろ、そんなところが気楽な相手であると、
うさぎの楽器やさんは思うのです。
だから、こちらも悪びれなくいいます。
「ごめん、ごめん。もう、お店は大丈夫。
帰っていいよ。」
それをきくと、奥さんは、機嫌よく
「はーい。」と言って、
手早く帰り支度をととのえました。
そして、お店を出るときに、
「あら。」と、うさぎの楽器やさんの後ろに居たレノさんに気がつきました。
すぐにピンとくるほど、
似ているのです。
「あのかた、まだ南の外れに住んでいらっしゃるわ。」と、軽くレノさんに声をかけて、
ごきげんよう、と出ていきました。
うさぎの楽器やさんは、1階のレストランからコーヒーをテイクアウトしてきました。
どんなにオリーブのお店が混んでいても、
うさぎの楽器やさんのお店がお客さんであふれかえることは、そうありません。
セールの時以外は、ね!
だから、レノさんとゆっくり座っていることもできます。
「ニノくんより、私たちの方が早かったようですね。
山を通ってきてよかった。」
今のうちに、やっておきたいことがあると、うさぎの楽器やさんは思っています。
ここは、アウェイではなく、ホームなのですから、自由自在に動けます。
「レノさんは、ここを寝泊まりに使ってください。
ここは、おそらくベースキャンプのようになります。
ニノくんが現れたら、お店などやっている場合ではなくなるでしょうから。」
うさぎの楽器やさんの水を得た魚のような様子に、
レノさんはなんだか圧倒されて、うなずきました。
そうしている間に、
「帰ってきたんだって?」
と、きつねのオークが現れました。
おそらく、奥さんが伝えてくれたのでしょう。
奥さんは、元演奏家でしたから、
これから始まることの察しがついていたのかもしれません。
きつねのオークは、うさぎの楽器やさんと気が合う友だちで、
ニノくんがお披露目コンサートをするまでのあいだ、練習の様子を見てくれていました。
うさぎの楽器やさんとレノさんに、
きつねのオークが加わり、
話し合いが始まりました。
うさぎの楽器やさんのお店がある
オリーブの木のショッピングモールに向かいました。
オリーブの木のショッピングモールは、
3本の立派な幹をつないで作られていて、
レストランや雑貨やさん、
アイスやさんが入っています。
その中の、2階の一角に、
うさぎの楽器やさんの小さなお店があるのです。
先に帰ったリンがいるはずです。
まだ、ニノくんは現れていないように見えますが、リンにきけばわかるでしょう。
オリーブの木は、あいかわらずのにぎわいを見せています。
店内に入っていくお客さんたちに続いて、
2階の楽器店の前まで来ると、
なつかしい木の扉が出迎えてくれました。
少し重い扉には、黒い飾り枠がついた小窓があります。
目の高さにある小窓から、お店の中をのぞくと、
リンではない白いうさぎが作業机に向かって座っていました。
「あれっ、どうしたの、リンは?」
うさぎの楽器やさんは、ためらいなく少々嬉しそうに扉を開けて、
その白いうさぎに話しかけました。
「あら、あなた、やっと帰ってきたのね!
もう、リンもどこかに行ったまま帰らないから、
毎日、私がお店番していたのよ!」
白いうさぎは、振り向いて、
どこかあっけらかんとした口ぶりで言いました。
座っていた白いうさぎは、うさぎの楽器やさんの奥さんです。
お店の棚はなんとなくガランとしていて、
うさぎの楽器やさんが出発するまえに作りためた楽器が売れて、
もう半数くらいになっていました。
それにしても、リンは銀色の森に帰ったのではなかったのだろうか?
「リン、一度も帰ってこないの?」
と、うさぎの楽器やさんがきくと、
「そおよ!あなたも、リンも、
いつまでも、まったく…!」
と、プンプンしているわりに怒りを感じないのは、
夫や息子を心配しているというより、
自分が余計なことをさせられているのが嫌なだけといった様子で、
むしろ、そんなところが気楽な相手であると、
うさぎの楽器やさんは思うのです。
だから、こちらも悪びれなくいいます。
「ごめん、ごめん。もう、お店は大丈夫。
帰っていいよ。」
それをきくと、奥さんは、機嫌よく
「はーい。」と言って、
手早く帰り支度をととのえました。
そして、お店を出るときに、
「あら。」と、うさぎの楽器やさんの後ろに居たレノさんに気がつきました。
すぐにピンとくるほど、
似ているのです。
「あのかた、まだ南の外れに住んでいらっしゃるわ。」と、軽くレノさんに声をかけて、
ごきげんよう、と出ていきました。
うさぎの楽器やさんは、1階のレストランからコーヒーをテイクアウトしてきました。
どんなにオリーブのお店が混んでいても、
うさぎの楽器やさんのお店がお客さんであふれかえることは、そうありません。
セールの時以外は、ね!
だから、レノさんとゆっくり座っていることもできます。
「ニノくんより、私たちの方が早かったようですね。
山を通ってきてよかった。」
今のうちに、やっておきたいことがあると、うさぎの楽器やさんは思っています。
ここは、アウェイではなく、ホームなのですから、自由自在に動けます。
「レノさんは、ここを寝泊まりに使ってください。
ここは、おそらくベースキャンプのようになります。
ニノくんが現れたら、お店などやっている場合ではなくなるでしょうから。」
うさぎの楽器やさんの水を得た魚のような様子に、
レノさんはなんだか圧倒されて、うなずきました。
そうしている間に、
「帰ってきたんだって?」
と、きつねのオークが現れました。
おそらく、奥さんが伝えてくれたのでしょう。
奥さんは、元演奏家でしたから、
これから始まることの察しがついていたのかもしれません。
きつねのオークは、うさぎの楽器やさんと気が合う友だちで、
ニノくんがお披露目コンサートをするまでのあいだ、練習の様子を見てくれていました。
うさぎの楽器やさんとレノさんに、
きつねのオークが加わり、
話し合いが始まりました。
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