うさぎの楽器やさん

銀色月

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<やまねこのふえ>のお話

33 ふえの想い

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 あぶないあぶない。

 驚いた。あのやまねこ、ニノくんにそっくりなんだもの。

 ダンディーで、かっこよくて、
 ニノくんと同じ波長を持っていたから、思わず、手をのばしちゃったけど、
 拒否されちゃった。

 やっぱり、ぼくのパートナーは、ニノくんだけ。

 ぼくを分かってくれるのは、ニノくんだけ。
 ほんとうのニノくんを分かっているのは、ぼくだけ。


 ぼくがいなければ、ニノくんはこの素晴らしい才能を使うことなく、埋もれていく。

 ぼくがいなければ、ニノくんは、ほんとうの喜びを感じることもできないで、
 終わってしまう。


 そんなの、許さない。


 世の中のみんなが、ニノくんのすばらしさに気がつくべきなんだ。

 ぼくが、みんなにおしえてあげる。
 
 

 ぼくの、大事なニノくんを。

 やっと見つけたんだから。

 

 ぼくが、動けない桜の木だったとき、
 だれもぼくのことを分かってくれなかった。

 ずっと、
 何年も、
 何十年も。

 ぼくのすることを、何でも悪い方に受け取って、悪者に仕立てあげた。

 誰かのせいで上手くいかなかったことも、
 みんなぼくのせいにした。

 ぼくは、ぼくの思ういいことをしてきたのに。
 ぼくのすることは、何もかも悪いことだと決めつけた。

 何年も、
 何十年も。

 だから、桜の木から抜け出してやると決めたんだ。

 雷を呼んだのも、ぼくだ。

 長老が、ぼくの枝を拾ったのも、
 白キツネに渡したのも、
 白うさぎがふえに仕立てたのも、

 偶然のように見えるけど、すべて決まっていたんじゃないかな。

 ぼくが、ニノくんと出会うために。



 ぼくなら、ニノくんの技巧をあますことなく表現することができる。

 ほんのちょっとのニュアンスだって、逃さない。

 音の擦れのその先端さえ。
 絵画の筆あとのように見せることができる。

 だって、ニノくんはすごいんだ。

 ただ息をするように音楽を奏でているようで、そこには様々な息づかいがある。

 他のふえなんかには、到底追いつけない。
 追いつけなければ、その息づかいは表現されず、なかったことになる。


 ニノくんの音楽が、なかったことになってしまう。

 ありえないだろ?



 ぼくは、楽しいんだ。
 次に、ニノくんがどんな息づかいをぼくにくれるのか。
 ニノくんの演奏のおかげで、
 ぼくも出来ることが広がって、成長していくんだ。

 きみに出会えて、嬉しい。


 どこまで、いけるだろう。
 わくわくするよ。

 どこまでも、いく。
 きみとなら。
 
 絶対に離さない。

 きみだって、そうだろ?
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