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<やまねこのふえ>のお話
14 銀色トウヒの木
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カラスたちがいるところから、あまり離れすぎないように、
気をつけては、いたのですが…、
ついつい、興味深いものを見つけると、足をのばしてしまいます。
うさぎの楽器やさんは、楽器をつくるときに使えそうな、質のいい樹液があるのを見つけて、
ヤギの雑貨やで仕入れてきたビンに、採取しました。
もう、3日、
ふえの音にさらされているのです。
生命力が強いと言われていても、
やはり、森全体が、不安定になっているように見えます。
あと、数日したら、
ほころびが出る。
そうしたら、一気に進んでしまうぞ。
古の森にすむ動物たちも、少しでも影響を受けてしまったものは、
すでに、他の森に避難しています。
「さて、もう、戻ろう。
帰り道がわからなくなってしまう。」
うさぎの楽器やさんが、くるりと向きを変えようとしたとき、
目の端に、見覚えのある木が、うつりました。
「…銀色トウヒだ。」
なつかしい友だちに会ったような、うれしさに、
つい、またひと足、進めてしまいます。
銀色トウヒの木のそばに行き、
幹をさすると、
なつかしい香りがたちのぼります。
「ああ、この香り!おちつくなぁ。」
うさぎの楽器やさんは、銀色トウヒの葉を少しつんで、
バッグに入れました。
バッグをあけるたび、この品の良い香りがしたら、うれしいじゃないですか!
その時です。
違和感を感じて、ふと、木を見上げると、
うさぎの楽器やさんの背の高さの3倍くらいの高さの枝の上に、
何かがいるのがわかりました。
しずかに、目をこらして見ると、
それは、
黒いぼうしとマントをまとっている、
くたびれた、みすぼらしい、
やまねこです。
やまねこ!
うさぎの楽器やさんは、さけびそうになりましたが、
すんでのところで、こらえました。
カラスたちに、知られる前に、
こっそり確かめておきたい。
ニノくんなのか?
もう一度、目をこらして、
枝の上でねている、やまねこをみると、
どうしても、ニノくんとは思えないのです。
毛並みは、すりきれてパサパサだし、
色あせていて…
それに、あんな格好して、寝るだろうか?
「ちがう。ニノくんは、
こんなじゃ、ない。」
ひとまず安心して、ため息をつき、
もう一度見上げると…
どきっ!
目が合いました。
やまねこが、鋭い目でこちらをみています。
その目は、
透明なビー玉の中の黄色い瞳。
瞳の奥は、緑色をしています。
見覚えのある、その目。
「…ニノくん!」
こちらを見ている?
ちがう。
狙っているのだ。
この、白いうさぎを!
ええっ、なんで⁈
次の瞬間、やまねこは、うさぎめがけて、飛び下りました。
「わあっ!」
うさぎの楽器やさんは、
とっさに、逃げました。
振り返らず、全力で走ります。
これは、カラスの時とは違って、振り返ったら、おしまいだ!
やまねこは、うさぎをしとめようと、
追ってきます。
「まっずいぞ!」
うさぎの全力は、思ったより速いのですが、あわてて転ぶのが命とりです。
やまねこは、うさぎがいつか転ぶのを、
待っているのです。
あっ、
やっぱり!
うさぎの楽器やさんは、木の根っこにつまづいて、
ゴロンゴロンと転がりました。
やまねこが、あっという間に追いついて、
うさぎの首に噛みつこうとした、その時、
「カア、カア、カア、」
とカラスの鳴き声がきこえ、やまねこは、一瞬ひるみました。
そこへ、間髪いれずに、青い湖のある森のカラスが飛んできて、
そのまま、やまねこに突っ込んでいきました。
やまねこは、カラスのハシボソのクチバシに突かれ、
飛ばされて胸を負傷しましたが、
カラスも無傷では済みませんでした。
突かれる一瞬に、
やまねこの鋭い爪が、からすの翼を裂いたのです。
青い湖のある森のカラスは、翼を負傷し、
飛べなくなりました。
気をつけては、いたのですが…、
ついつい、興味深いものを見つけると、足をのばしてしまいます。
うさぎの楽器やさんは、楽器をつくるときに使えそうな、質のいい樹液があるのを見つけて、
ヤギの雑貨やで仕入れてきたビンに、採取しました。
もう、3日、
ふえの音にさらされているのです。
生命力が強いと言われていても、
やはり、森全体が、不安定になっているように見えます。
あと、数日したら、
ほころびが出る。
そうしたら、一気に進んでしまうぞ。
古の森にすむ動物たちも、少しでも影響を受けてしまったものは、
すでに、他の森に避難しています。
「さて、もう、戻ろう。
帰り道がわからなくなってしまう。」
うさぎの楽器やさんが、くるりと向きを変えようとしたとき、
目の端に、見覚えのある木が、うつりました。
「…銀色トウヒだ。」
なつかしい友だちに会ったような、うれしさに、
つい、またひと足、進めてしまいます。
銀色トウヒの木のそばに行き、
幹をさすると、
なつかしい香りがたちのぼります。
「ああ、この香り!おちつくなぁ。」
うさぎの楽器やさんは、銀色トウヒの葉を少しつんで、
バッグに入れました。
バッグをあけるたび、この品の良い香りがしたら、うれしいじゃないですか!
その時です。
違和感を感じて、ふと、木を見上げると、
うさぎの楽器やさんの背の高さの3倍くらいの高さの枝の上に、
何かがいるのがわかりました。
しずかに、目をこらして見ると、
それは、
黒いぼうしとマントをまとっている、
くたびれた、みすぼらしい、
やまねこです。
やまねこ!
うさぎの楽器やさんは、さけびそうになりましたが、
すんでのところで、こらえました。
カラスたちに、知られる前に、
こっそり確かめておきたい。
ニノくんなのか?
もう一度、目をこらして、
枝の上でねている、やまねこをみると、
どうしても、ニノくんとは思えないのです。
毛並みは、すりきれてパサパサだし、
色あせていて…
それに、あんな格好して、寝るだろうか?
「ちがう。ニノくんは、
こんなじゃ、ない。」
ひとまず安心して、ため息をつき、
もう一度見上げると…
どきっ!
目が合いました。
やまねこが、鋭い目でこちらをみています。
その目は、
透明なビー玉の中の黄色い瞳。
瞳の奥は、緑色をしています。
見覚えのある、その目。
「…ニノくん!」
こちらを見ている?
ちがう。
狙っているのだ。
この、白いうさぎを!
ええっ、なんで⁈
次の瞬間、やまねこは、うさぎめがけて、飛び下りました。
「わあっ!」
うさぎの楽器やさんは、
とっさに、逃げました。
振り返らず、全力で走ります。
これは、カラスの時とは違って、振り返ったら、おしまいだ!
やまねこは、うさぎをしとめようと、
追ってきます。
「まっずいぞ!」
うさぎの全力は、思ったより速いのですが、あわてて転ぶのが命とりです。
やまねこは、うさぎがいつか転ぶのを、
待っているのです。
あっ、
やっぱり!
うさぎの楽器やさんは、木の根っこにつまづいて、
ゴロンゴロンと転がりました。
やまねこが、あっという間に追いついて、
うさぎの首に噛みつこうとした、その時、
「カア、カア、カア、」
とカラスの鳴き声がきこえ、やまねこは、一瞬ひるみました。
そこへ、間髪いれずに、青い湖のある森のカラスが飛んできて、
そのまま、やまねこに突っ込んでいきました。
やまねこは、カラスのハシボソのクチバシに突かれ、
飛ばされて胸を負傷しましたが、
カラスも無傷では済みませんでした。
突かれる一瞬に、
やまねこの鋭い爪が、からすの翼を裂いたのです。
青い湖のある森のカラスは、翼を負傷し、
飛べなくなりました。
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