33 / 88
<やまねこのふえ>のお話
11 月の丘
しおりを挟む
満月の夜、
月の丘は、影ふみして遊べるほど、明るく照らされ、
遠くから見ても、その場所がすぐにわかります。
丘の上には、背の高い木が、ないのです。
それなら、悪い木は、どこに生えていたかというと、
月の丘に登る途中の、
道の真ん中です。
動物たちは、通せんぼしているような悪い木に向かって歩いて行き、
木を避けて月の丘に登っていたのです。
うさぎの楽器やさんと北の森のカラスは、
悪い木が生えていた場所に行ってみることにしました。
前長老が、悪い木の枝を用意してくれるまで、
少々、時間がかかりそうだったからです。
「月の丘に、いくの?
だめだよ。
行ったら、悪いことがおきるんだよ。」
と、きつねの子どもは、引きとめようと必死です。
「遊びに行くんじゃないんだ。
大丈夫だよ。」
うさぎの楽器やさんは、いいましたが、
ずっと、言いつけを守ってきたきつねの子どもは、
心配そうに見ています。
「おまえも、行くか?」
「えっ⁈」
北の森のカラスが言ったので、
きつねの子どもの、心配と好奇心とが、引っ張りあいを始めました。
「おまえは、いずれ森の長になって、
長老にもなるんだろ。
だったら、しっかり見ておけ。」
カラスの目は、子どもを見る目ではありませんでした。
それを見て、きつねの子どもは、
「うん。」と、静かに返事をしました。
「遊びに行くんじゃないぞ。」
きつねの子どものしっぽが、ワクワク振れているのを見て、
カラスは念を押しました。
悪意を持っていた桜が、ふえになりたがったのは、なぜだろう?
青い湖のある森のように、
何かを破滅させるための力が欲しかったのか?
ふえを吹かせるために、
ニノくんが必要だったのか?
それとも、
ニノくんが、桜の力を利用しているのか?
うさぎの楽器やさんは、月の丘に行ったら、なにかわかるんじゃないかと、思っていました。
ところが、月の丘の、桜が生えていた場所には、
跡形もなく、今は、のんびりとしていて、
不安を感じるようなことはありません。
前長老が、「天罰だ。」と言ったのが、
なるほどと思われるほど、
ほんとうに、雷が落ちて、
その桜だけが燃えてしまったのだと、わかりました。
うさぎの楽器やさんは、悪意か何かが残っているのではないかと思っていたので、
拍子抜けしました。
「天が罰を与えたなら、
もう、その件は終わりだよなぁ。」
北の森のカラスも、そう感じたようでした。
「遊んでも、大丈夫だぞ。
でも、悪い木があったことは、
忘れるなよ。」
と、きつねの子どもに言いました。
「わかった!」
と言いながら、きつねの子どもは、なにも知らずに、悪い木があった、その場所に立っています。
「踏むなよ、もう~。」
前長老は、ちゃんと桜の枝を用意していてくれました。
今までのやりとりから考えると、
手違いのひとつもあって不思議はなさそうですが、
まるで、使命をはたす時がきたかのように、しっかりとしていました。
「わしは、もうながくないんだから、
これは、おまえさんが、持っていってくれ。」
と、言って、
枝を包んである布ごと、うさぎの楽器やさんに手渡しました。
うさぎの楽器やさんが、布を広げると、
見たことのある枝が、現れました。
ああ、そうだ。
この枝で、ふえを作ったなぁ!
「こうやって持つんだ。」と、ニノくんに手渡した時の、
ふえの質感を思い出しました。
白キツネに分けた枝は、ここから分岐したものだろうな、と、
想像がつく切り口があります。
やはり、つきあいにくい性質かもしれませんが、嫌だとは思いませんでした。
ところが、枝を直に持ったときに…、
「あっっ!」
見ていたカラスが、うさぎの楽器やさんよりも驚いてさけびました。
保存状態が悪かったのか、
半分くらいに砕けて折れてしまったのです。
うさぎの楽器やさんも、ドキドキしましたが、
楽器やの目で、おちついて見ると、
残りの半分は、まだしっかりしています。
「小さいふえなら、作れそうだな。」
月の丘は、影ふみして遊べるほど、明るく照らされ、
遠くから見ても、その場所がすぐにわかります。
丘の上には、背の高い木が、ないのです。
それなら、悪い木は、どこに生えていたかというと、
月の丘に登る途中の、
道の真ん中です。
動物たちは、通せんぼしているような悪い木に向かって歩いて行き、
木を避けて月の丘に登っていたのです。
うさぎの楽器やさんと北の森のカラスは、
悪い木が生えていた場所に行ってみることにしました。
前長老が、悪い木の枝を用意してくれるまで、
少々、時間がかかりそうだったからです。
「月の丘に、いくの?
だめだよ。
行ったら、悪いことがおきるんだよ。」
と、きつねの子どもは、引きとめようと必死です。
「遊びに行くんじゃないんだ。
大丈夫だよ。」
うさぎの楽器やさんは、いいましたが、
ずっと、言いつけを守ってきたきつねの子どもは、
心配そうに見ています。
「おまえも、行くか?」
「えっ⁈」
北の森のカラスが言ったので、
きつねの子どもの、心配と好奇心とが、引っ張りあいを始めました。
「おまえは、いずれ森の長になって、
長老にもなるんだろ。
だったら、しっかり見ておけ。」
カラスの目は、子どもを見る目ではありませんでした。
それを見て、きつねの子どもは、
「うん。」と、静かに返事をしました。
「遊びに行くんじゃないぞ。」
きつねの子どものしっぽが、ワクワク振れているのを見て、
カラスは念を押しました。
悪意を持っていた桜が、ふえになりたがったのは、なぜだろう?
青い湖のある森のように、
何かを破滅させるための力が欲しかったのか?
ふえを吹かせるために、
ニノくんが必要だったのか?
それとも、
ニノくんが、桜の力を利用しているのか?
うさぎの楽器やさんは、月の丘に行ったら、なにかわかるんじゃないかと、思っていました。
ところが、月の丘の、桜が生えていた場所には、
跡形もなく、今は、のんびりとしていて、
不安を感じるようなことはありません。
前長老が、「天罰だ。」と言ったのが、
なるほどと思われるほど、
ほんとうに、雷が落ちて、
その桜だけが燃えてしまったのだと、わかりました。
うさぎの楽器やさんは、悪意か何かが残っているのではないかと思っていたので、
拍子抜けしました。
「天が罰を与えたなら、
もう、その件は終わりだよなぁ。」
北の森のカラスも、そう感じたようでした。
「遊んでも、大丈夫だぞ。
でも、悪い木があったことは、
忘れるなよ。」
と、きつねの子どもに言いました。
「わかった!」
と言いながら、きつねの子どもは、なにも知らずに、悪い木があった、その場所に立っています。
「踏むなよ、もう~。」
前長老は、ちゃんと桜の枝を用意していてくれました。
今までのやりとりから考えると、
手違いのひとつもあって不思議はなさそうですが、
まるで、使命をはたす時がきたかのように、しっかりとしていました。
「わしは、もうながくないんだから、
これは、おまえさんが、持っていってくれ。」
と、言って、
枝を包んである布ごと、うさぎの楽器やさんに手渡しました。
うさぎの楽器やさんが、布を広げると、
見たことのある枝が、現れました。
ああ、そうだ。
この枝で、ふえを作ったなぁ!
「こうやって持つんだ。」と、ニノくんに手渡した時の、
ふえの質感を思い出しました。
白キツネに分けた枝は、ここから分岐したものだろうな、と、
想像がつく切り口があります。
やはり、つきあいにくい性質かもしれませんが、嫌だとは思いませんでした。
ところが、枝を直に持ったときに…、
「あっっ!」
見ていたカラスが、うさぎの楽器やさんよりも驚いてさけびました。
保存状態が悪かったのか、
半分くらいに砕けて折れてしまったのです。
うさぎの楽器やさんも、ドキドキしましたが、
楽器やの目で、おちついて見ると、
残りの半分は、まだしっかりしています。
「小さいふえなら、作れそうだな。」
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる