うさぎの楽器やさん

銀色月

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<やまねこのふえ>のお話

7 カラスの自警団

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カラスは、うさぎを狙いにきたわけでは
ありませんでした。


青い湖のある森のカラスは、前方に飛んできた5~6羽で、
他のたくさんのカラスは、その他の森に住むカラスたちです。


総勢、30羽ほどのカラスの集団は、
青い湖のある森への侵入者を追い払うために、
やってきたのです。


青い湖のある森に住んでいた動物たちは、近くの森に避難していますから、
いつのまにかやってきた侵入者に、森を乗っ取られてしまうかもしれません。


生い茂る緑の葉もなく、
この森に誰もいないのが、すぐにわかってしまうんですから。

この場合の侵入者は、
うさぎの楽器やさんですがね!



カラスたちは、非常事態の青い湖のある森を守るために、
いろんな森から集まり、結成された、
自警団というわけです。
 
そのため、カラス語を使って、相手にわからないように会話をしていました。


うさぎの楽器やさんは、とにかく、誤解を解かなければ、と考えて、
正直に話すことにしました。

こういうときは、
その場しのぎのウソを言ったって、うまくいかないものですよ!
 

「あのふえを、おまえが作ったというのか!」

「このやろう!」

うさぎの楽器やさんの話をきいて、後ろの方のカラスが騒ぎました。


「本当に、わたしが作ったふえなのかどうか、知りたいんだ。
 だから、ここに来た。
 ふえのことを、おしえてほしい!」

うさぎの楽器やさんの必死な様子をみて、
体の大きな、青い湖のある森のカラスは、
何かを判断したようでした。



「ふえの音は、
 おそろしく美しいものだった。」

そして、語り始めたのです。
 

やまねこは、森に来て三日、
夜ごとに、
どこからともなく、ふえを吹いた。


ふえの音は、浸透するように、
森の動物たちの耳に、心に、届いた。

まるで、コンサートのようで、森の動物たちは、毎晩、楽しみにしていたくらいだ。


四日目の夜、
異変が起きた。


ふえの音を聴いていた、森の動物たちが、
奇妙な行動を始めた。

笑い続けたり、泣き続けたり、
怒り続けたり、踊り続けたり。
夢遊病のように、歩き続けていたものも、いた。


今になってみると、
自分の持つ欲のようなものが、増幅されたように思うが、
それが、抑えきれないほどだった。


ふえの音が聴こえている間、
森の動物たちの心は、支配されていた。

それがきっかけで、体調を崩したものや、
ケガをしたものも出た。



そのうち、ふえの音を浴びたもりの木や草が、枯れ始めた。

元気がなくなったと思ったら、
あっという間だった。
木の葉がみるみる落ちて、

森は、まるはだかになった。

森が大切にしてきた、青い湖も、
青くなくなってしまった。



「やっ…、やまねこは、、」

うさぎの楽器やさんが、いい終わらないうちに、カラスがいいました。

「あの、みすぼらしいやまねこが、
 森に足を踏み入れたときから、

 木々は、ざわめいていた。

 ただ、あのふえの音は、本当に魅力的で…
 また、聴きたいと思ってしまう。

 あんな、惨劇を起こすとわかっているのに。

 それこそ今も、
 あのふえの音に、心を支配されているのかもしれない。」




 ニノくんだ。

うさぎの楽器やさんは、自分の自尊心が増幅された感覚を思い出していました。


 そんなふえ吹き、他にいるもんか。


ふえの音が、さらに魅力的になっているのだとすれば、おそろしい。

だが、反面、聴いてみたいと思ってしまう。


 ああ、間違いない。
 …みすぼらしいのだけは、どうも納得できないが。



「どうだい、あんたが作ったふえかい?」
カラスは、静かにうさぎの楽器やさんの答えを待ちました。

カラスたちのいかりを、必要以上にあおりたくない。
だが、ごまかしたくもない。

結果、うさぎの楽器やさんの答えは、
こうなりました。
「あー、えー、うん。
 わたしが作ったふえ、だな。」

数羽のカラスが、カッとなって、
うさぎの楽器やさんに、飛びかかろうとしましたが、
体の大きなカラスが制しました。


「あんた、
 どうにかしようと思ったから、ここへ来たんだろう?」

「そっ、そのつもりだ。」
まだ、当てはないが。


カラスは、うさぎの楽器やさんの目を見て、いいました。

「それなら、われわれカラスは、
 あんたに協力する。」
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