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<やまねこのふえ>のお話
6 青い湖のある森
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懐かしい森から、北の森に向かうのと同じくらいの距離を、北東に向ったところに、
青い湖のある森があります。
青い湖のある森には、その名のとおり、
湖水が青くみえる湖があります。
その青は、
湖底に生えている、めずらしい藻の影響で、
鮮やかな瑠璃色なのだとききます。
森の動物に会えば、
ふえ吹きのこともはっきりする。
うさぎの楽器やさんは、まだ、そんなことを考えていたのです。
それは、青い湖のある森があった場所にきて、
崩れさりました。
森が、ないのです。
枯れた木の幹が、骨のように立ちならび、
ところどころ、乾ききった枝が折れ、
となりの枝に寄りかかっている。
緑は、ないわけではない。
ただ、それは力なく、
やがて、枯れゆく色をしていました。
その姿は、およそ森ではありません。
うさぎの楽器やさんは、
青い湖を探しました。
この森は、それほど大きな森ではありません。
メインの青い湖をかこむ、
こじんまりした森なのです。
湖に、水はありましたが、
茶色くにごっていて、
青い色を作り出していた藻が枯れたのだと、想像がつきました。
まるはだか同然になった森に、
動物は、いません。
どこか、他の森に避難しているのでしょう。
懐かしい森にも、
青い湖のある森から移ってきたものたちが、
すでに、いたのかもしれません。
ああ…。
この時、うさぎの楽器やさんは、
自分の考えが、どれほど甘かったのか、
思い知りました。
一羽の若いカラスが飛んできて、
葉のない枝にとまりました。
「カア、カア、カア、」
何度も鳴いて、仲間を呼んでいるようです。
すると、遠くから、
「カア、カア、カア、」と返事があり、
そのまた遠くからも、
「カア、カア、カア、」と、応答が聞こえます。
仲間を呼んで、どうするかって?
「まずいぞ。」
うさぎの楽器やさんは白いので、よく目立ちますから、
こんな、かくれる草むらもないところで襲われたら、ひとたまりもありません。
豊かな森だったころには起こらなかった争いや、いじわるが、横行していても、
不思議はありません。
カラスの鳴き声は、方々から、きこえています。
うさぎの楽器やさんが、逃げようとした方向から、
さっき応答したカラスが、飛んできました。
狙われている!
直前でかわすと、
カラスの脚が、うさぎの楽器やさんの耳をかすめて行きました。
「ウワッ。」
いつのまにか、たくさんのカラスが、
集まってきているのが、わかりました。
逃げ場が、ない。
うさぎの楽器やさんは、腹をくくって、
逃げるのをやめ、
カラスに向きあいました。
「青い湖のある森にすむカラスか?
この森をこんな状態にした、ふえのことを、おしえてほしい!」
「カア、カア、カア、」
一羽のカラスが、またなきました。
それに応答するカラスたちの声をききながら、
うさぎの楽器やさんは、失望していました。
ことばを失うほど、
すさんでしまったのか?
伝わらないのか、
と思っていたとき、
後方から、5~6羽のカラスが飛んできて、
うさぎの楽器やさんの頭上近くの、
乾いた枝にとまりました。
そして、その中の、
体の大きな一羽が、いいました。
「この森のカラスは、わたしだ。
おまえは、何をしに来た?」
青い湖のある森があります。
青い湖のある森には、その名のとおり、
湖水が青くみえる湖があります。
その青は、
湖底に生えている、めずらしい藻の影響で、
鮮やかな瑠璃色なのだとききます。
森の動物に会えば、
ふえ吹きのこともはっきりする。
うさぎの楽器やさんは、まだ、そんなことを考えていたのです。
それは、青い湖のある森があった場所にきて、
崩れさりました。
森が、ないのです。
枯れた木の幹が、骨のように立ちならび、
ところどころ、乾ききった枝が折れ、
となりの枝に寄りかかっている。
緑は、ないわけではない。
ただ、それは力なく、
やがて、枯れゆく色をしていました。
その姿は、およそ森ではありません。
うさぎの楽器やさんは、
青い湖を探しました。
この森は、それほど大きな森ではありません。
メインの青い湖をかこむ、
こじんまりした森なのです。
湖に、水はありましたが、
茶色くにごっていて、
青い色を作り出していた藻が枯れたのだと、想像がつきました。
まるはだか同然になった森に、
動物は、いません。
どこか、他の森に避難しているのでしょう。
懐かしい森にも、
青い湖のある森から移ってきたものたちが、
すでに、いたのかもしれません。
ああ…。
この時、うさぎの楽器やさんは、
自分の考えが、どれほど甘かったのか、
思い知りました。
一羽の若いカラスが飛んできて、
葉のない枝にとまりました。
「カア、カア、カア、」
何度も鳴いて、仲間を呼んでいるようです。
すると、遠くから、
「カア、カア、カア、」と返事があり、
そのまた遠くからも、
「カア、カア、カア、」と、応答が聞こえます。
仲間を呼んで、どうするかって?
「まずいぞ。」
うさぎの楽器やさんは白いので、よく目立ちますから、
こんな、かくれる草むらもないところで襲われたら、ひとたまりもありません。
豊かな森だったころには起こらなかった争いや、いじわるが、横行していても、
不思議はありません。
カラスの鳴き声は、方々から、きこえています。
うさぎの楽器やさんが、逃げようとした方向から、
さっき応答したカラスが、飛んできました。
狙われている!
直前でかわすと、
カラスの脚が、うさぎの楽器やさんの耳をかすめて行きました。
「ウワッ。」
いつのまにか、たくさんのカラスが、
集まってきているのが、わかりました。
逃げ場が、ない。
うさぎの楽器やさんは、腹をくくって、
逃げるのをやめ、
カラスに向きあいました。
「青い湖のある森にすむカラスか?
この森をこんな状態にした、ふえのことを、おしえてほしい!」
「カア、カア、カア、」
一羽のカラスが、またなきました。
それに応答するカラスたちの声をききながら、
うさぎの楽器やさんは、失望していました。
ことばを失うほど、
すさんでしまったのか?
伝わらないのか、
と思っていたとき、
後方から、5~6羽のカラスが飛んできて、
うさぎの楽器やさんの頭上近くの、
乾いた枝にとまりました。
そして、その中の、
体の大きな一羽が、いいました。
「この森のカラスは、わたしだ。
おまえは、何をしに来た?」
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