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<やまねこのふえ>のお話
2 世代交代
しおりを挟む3日後、リンが帰ってきました。
リンは、街の楽器やさんに行って、外国の森から招いた交響楽団のコンサートのお手伝いをしてきました。
「父さん、聞いてよ!
ランのやつ、合格したんだ!
交響楽団がね、今回のコンサートに来るついでに、新しい楽団員のオーディションをしたんだ。
そしたら、たった、ふたり。
選ばれたの、バイオリンのランと、ファゴットのベテランだけ!
ラン、そのまま、交響楽団と外国の森に行くんだよ。
すげえなぁ!
あいつったら、けろっとしてて、父さんによろしくって!」
なんと、ランが!
ランは、街の音楽学校に行っており、
友だちと弦楽トリオを組んで活動していたのは知っていたのですが、そんなことになっていたとは。
「すごいなぁ、ラン。
レンの方は、どうしてた?」
レンも、仕事をしながら、街に住んでいます。
うさぎの楽器やさんは、レンについては、ほんの少し、心配がありました。
優しいところはいいのですが、
まわりと、うまくやっていけているのか?
リンも、気にしていたらしく、
言われずとも、ちゃんとレンのことを見てきたようで、
「レンも、ちゃんとやってるよ。
今は、ミュージカル劇団の舞台音楽を作っているらしい。
かわいい彼女がいてさ、一緒に住んでる。」と、言いました。
なんと、彼女っ!
どうやら、親の余計な心配は、いらないようです。
うさぎの楽器やさんは、もうひとつ、
気になることを聞かなければならないと、思いましたが、
なかなか言いだせませんでした。
すると、リンが、言いにくそうに、先に言い出したのでした。
「あの、さ、気になるウワサを聞いたんだ。」
内容は、タヌキの老紳士が言っていたことと、ほぼ同じでした。
尾ひれがついたり、ウワサが伝わる間に、事実と異なってしまってひどい話にふくらんでいたということも、ないようでした。
「…ニノくんじゃないかな…。」
リンは、いくぶんか、しずんだ声で、
街で誰にも言えなかったことを、うちあけました。
「…うん。そうかもしれない。」
うさぎの楽器やさんは、息子の不安を受けとめようと、平静をよそおいましたが、
話しているうちに、しだいに声が大きくなっていきました。
「もし…、もしそうなら、
やらなければならないことが、ある。
ほんとうは、もっと早く、やるべきだった!
すぐに、出発したい。
リン、おまえに、楽器やを任せていいか?」
リンは、それを聞いて、ほっとした顔をしました。
「もう、とっくに任されていると思ってる。」
そして、いちにんまえの楽器やの顔をして、
「ニノくんを、たのむよ、父さん。」
と、言ったのでした。
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