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<やまねこのふえ>のお話
1 やまねこのふえ
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にぎやかな、女の子たちの声が近づいてきて、声の主たちが、小窓に黒い飾り枠がついた、うさぎの楽器やさんのドアを、開けました。
「こんにちは!」
「あら?リンは?」
声の主は、この春、森のオーケストラのオーディションに合格した、茶色うさぎの女の子と、リスの女の子です。
「やあ、ごめんよ。リンは、今日からしばらく街の楽器やさんに行っているんだ。」
店番をしていたうさぎの楽器やさんが、メガネをかけなおしながら、言いました。
「えーっ、しばらくって、いつまで?」
茶色うさぎの女の子が、バイオリンケースを抱えて言いました。
「街で、大きなコンサートがあってね、手伝いながら、勉強してくると言っていたよ。2~3日じゃあないかな。」
うさぎの楽器やさんは、余計なことかな、と思いながら、つけたして言いました。
「急ぎかい?弦が欲しいのかな?」
茶色うさぎの女の子は、悪びれる様子もなく、
「リンに選んで欲しいの。急いでないから、またにするわね。」
と言って、ニッコリすると、
行きましょ!とリスの女の子を促し、
ドアを出て、3階のアイスやさんに向かいました。
「やれやれ。」
このところ、こんなやりとりが増えました。
ちょっと前まで、リンは、うさぎの楽器やさんの仕事を、見よう見まねの状態で、仕事ぶりは、うさぎの楽器やさんの足元にも及ばなかったはずでしたが、
いつのまにか、うさぎの楽器やさんも感心するほどの、目利きの才能を発揮するようになっていました。
もっとも、女の子たちが、リンに会いにくるのは、目利きの才能だけではありませんがね!
リンは、今や、だれもが見とれる、すてきな、白うさぎの若者なのです。
そんなわけで、主に店に立つのは、リンで、うさぎの楽器やさんは、家にいて、ゆっくりと楽器をつくる時間を持てるようになりました。
おかげで、質の良い楽器を、以前より多く作り出すことができ、その楽器を目当てに、他の森からも、わざわざお客さんがやってくるように、なっていました。
次に入ってきたお客さんは、タヌキの老紳士でした。
うさぎの楽器やさんは、なんとなく、ほっとして、「いらっしゃいませ。」と声をかけました。
「こんにちは。やあ、本人がいらっしゃるとは、これは嬉しい!あなたの作った楽器を愛用していますよ。」
と、言って、タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんと握手をしました。
タヌキの老紳士は、すこし遠い森に住む愛好家で、フルートを吹いています。
たまに、うさぎの楽器やさんのお店に来ることもあるのですが、リンが対応していたようで、うさぎの楽器やさんにとっては、初めて見る顔でした。
タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんに相談しながら、フルートを選びました。
お店に置いてある3本のフルートのなかから、銀色トウヒの森の、音楽堂のオルガンに使ったパイプと、同じ金属で作ったものを気に入り、
何度か試しに吹いてみてから、決めました。
うさぎの楽器やさんが、タヌキの老紳士のフルートを丁寧に拭いて、磨きなおし、
ケースに収めている間に、タヌキの老紳士が、気になるウワサ話をしました。
「青い湖のある森で、異変があったらしい。
どうも、ふえの音をきいて、その森の動物たちの行動が、おかしくなったらしいんだが、
ついには、植物にも影響が出て、森が枯れてしまったらしいんだ。
いま、青い湖の森は、動物が住めなくなり、壊滅状態。
ふえを吹いていたのは、みすぼらしい、やまねこだって聞いたんだが…。
この話は、街の楽器やで、もちきりなんだ。
この森も、気をつけた方がいい。」
うさぎの楽器やさんは、血の気が引きました。
「こんにちは!」
「あら?リンは?」
声の主は、この春、森のオーケストラのオーディションに合格した、茶色うさぎの女の子と、リスの女の子です。
「やあ、ごめんよ。リンは、今日からしばらく街の楽器やさんに行っているんだ。」
店番をしていたうさぎの楽器やさんが、メガネをかけなおしながら、言いました。
「えーっ、しばらくって、いつまで?」
茶色うさぎの女の子が、バイオリンケースを抱えて言いました。
「街で、大きなコンサートがあってね、手伝いながら、勉強してくると言っていたよ。2~3日じゃあないかな。」
うさぎの楽器やさんは、余計なことかな、と思いながら、つけたして言いました。
「急ぎかい?弦が欲しいのかな?」
茶色うさぎの女の子は、悪びれる様子もなく、
「リンに選んで欲しいの。急いでないから、またにするわね。」
と言って、ニッコリすると、
行きましょ!とリスの女の子を促し、
ドアを出て、3階のアイスやさんに向かいました。
「やれやれ。」
このところ、こんなやりとりが増えました。
ちょっと前まで、リンは、うさぎの楽器やさんの仕事を、見よう見まねの状態で、仕事ぶりは、うさぎの楽器やさんの足元にも及ばなかったはずでしたが、
いつのまにか、うさぎの楽器やさんも感心するほどの、目利きの才能を発揮するようになっていました。
もっとも、女の子たちが、リンに会いにくるのは、目利きの才能だけではありませんがね!
リンは、今や、だれもが見とれる、すてきな、白うさぎの若者なのです。
そんなわけで、主に店に立つのは、リンで、うさぎの楽器やさんは、家にいて、ゆっくりと楽器をつくる時間を持てるようになりました。
おかげで、質の良い楽器を、以前より多く作り出すことができ、その楽器を目当てに、他の森からも、わざわざお客さんがやってくるように、なっていました。
次に入ってきたお客さんは、タヌキの老紳士でした。
うさぎの楽器やさんは、なんとなく、ほっとして、「いらっしゃいませ。」と声をかけました。
「こんにちは。やあ、本人がいらっしゃるとは、これは嬉しい!あなたの作った楽器を愛用していますよ。」
と、言って、タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんと握手をしました。
タヌキの老紳士は、すこし遠い森に住む愛好家で、フルートを吹いています。
たまに、うさぎの楽器やさんのお店に来ることもあるのですが、リンが対応していたようで、うさぎの楽器やさんにとっては、初めて見る顔でした。
タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんに相談しながら、フルートを選びました。
お店に置いてある3本のフルートのなかから、銀色トウヒの森の、音楽堂のオルガンに使ったパイプと、同じ金属で作ったものを気に入り、
何度か試しに吹いてみてから、決めました。
うさぎの楽器やさんが、タヌキの老紳士のフルートを丁寧に拭いて、磨きなおし、
ケースに収めている間に、タヌキの老紳士が、気になるウワサ話をしました。
「青い湖のある森で、異変があったらしい。
どうも、ふえの音をきいて、その森の動物たちの行動が、おかしくなったらしいんだが、
ついには、植物にも影響が出て、森が枯れてしまったらしいんだ。
いま、青い湖の森は、動物が住めなくなり、壊滅状態。
ふえを吹いていたのは、みすぼらしい、やまねこだって聞いたんだが…。
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この森も、気をつけた方がいい。」
うさぎの楽器やさんは、血の気が引きました。
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