23 / 88
<やまねこのふえ>のお話
1 やまねこのふえ
しおりを挟む
にぎやかな、女の子たちの声が近づいてきて、声の主たちが、小窓に黒い飾り枠がついた、うさぎの楽器やさんのドアを、開けました。
「こんにちは!」
「あら?リンは?」
声の主は、この春、森のオーケストラのオーディションに合格した、茶色うさぎの女の子と、リスの女の子です。
「やあ、ごめんよ。リンは、今日からしばらく街の楽器やさんに行っているんだ。」
店番をしていたうさぎの楽器やさんが、メガネをかけなおしながら、言いました。
「えーっ、しばらくって、いつまで?」
茶色うさぎの女の子が、バイオリンケースを抱えて言いました。
「街で、大きなコンサートがあってね、手伝いながら、勉強してくると言っていたよ。2~3日じゃあないかな。」
うさぎの楽器やさんは、余計なことかな、と思いながら、つけたして言いました。
「急ぎかい?弦が欲しいのかな?」
茶色うさぎの女の子は、悪びれる様子もなく、
「リンに選んで欲しいの。急いでないから、またにするわね。」
と言って、ニッコリすると、
行きましょ!とリスの女の子を促し、
ドアを出て、3階のアイスやさんに向かいました。
「やれやれ。」
このところ、こんなやりとりが増えました。
ちょっと前まで、リンは、うさぎの楽器やさんの仕事を、見よう見まねの状態で、仕事ぶりは、うさぎの楽器やさんの足元にも及ばなかったはずでしたが、
いつのまにか、うさぎの楽器やさんも感心するほどの、目利きの才能を発揮するようになっていました。
もっとも、女の子たちが、リンに会いにくるのは、目利きの才能だけではありませんがね!
リンは、今や、だれもが見とれる、すてきな、白うさぎの若者なのです。
そんなわけで、主に店に立つのは、リンで、うさぎの楽器やさんは、家にいて、ゆっくりと楽器をつくる時間を持てるようになりました。
おかげで、質の良い楽器を、以前より多く作り出すことができ、その楽器を目当てに、他の森からも、わざわざお客さんがやってくるように、なっていました。
次に入ってきたお客さんは、タヌキの老紳士でした。
うさぎの楽器やさんは、なんとなく、ほっとして、「いらっしゃいませ。」と声をかけました。
「こんにちは。やあ、本人がいらっしゃるとは、これは嬉しい!あなたの作った楽器を愛用していますよ。」
と、言って、タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんと握手をしました。
タヌキの老紳士は、すこし遠い森に住む愛好家で、フルートを吹いています。
たまに、うさぎの楽器やさんのお店に来ることもあるのですが、リンが対応していたようで、うさぎの楽器やさんにとっては、初めて見る顔でした。
タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんに相談しながら、フルートを選びました。
お店に置いてある3本のフルートのなかから、銀色トウヒの森の、音楽堂のオルガンに使ったパイプと、同じ金属で作ったものを気に入り、
何度か試しに吹いてみてから、決めました。
うさぎの楽器やさんが、タヌキの老紳士のフルートを丁寧に拭いて、磨きなおし、
ケースに収めている間に、タヌキの老紳士が、気になるウワサ話をしました。
「青い湖のある森で、異変があったらしい。
どうも、ふえの音をきいて、その森の動物たちの行動が、おかしくなったらしいんだが、
ついには、植物にも影響が出て、森が枯れてしまったらしいんだ。
いま、青い湖の森は、動物が住めなくなり、壊滅状態。
ふえを吹いていたのは、みすぼらしい、やまねこだって聞いたんだが…。
この話は、街の楽器やで、もちきりなんだ。
この森も、気をつけた方がいい。」
うさぎの楽器やさんは、血の気が引きました。
「こんにちは!」
「あら?リンは?」
声の主は、この春、森のオーケストラのオーディションに合格した、茶色うさぎの女の子と、リスの女の子です。
「やあ、ごめんよ。リンは、今日からしばらく街の楽器やさんに行っているんだ。」
店番をしていたうさぎの楽器やさんが、メガネをかけなおしながら、言いました。
「えーっ、しばらくって、いつまで?」
茶色うさぎの女の子が、バイオリンケースを抱えて言いました。
「街で、大きなコンサートがあってね、手伝いながら、勉強してくると言っていたよ。2~3日じゃあないかな。」
うさぎの楽器やさんは、余計なことかな、と思いながら、つけたして言いました。
「急ぎかい?弦が欲しいのかな?」
茶色うさぎの女の子は、悪びれる様子もなく、
「リンに選んで欲しいの。急いでないから、またにするわね。」
と言って、ニッコリすると、
行きましょ!とリスの女の子を促し、
ドアを出て、3階のアイスやさんに向かいました。
「やれやれ。」
このところ、こんなやりとりが増えました。
ちょっと前まで、リンは、うさぎの楽器やさんの仕事を、見よう見まねの状態で、仕事ぶりは、うさぎの楽器やさんの足元にも及ばなかったはずでしたが、
いつのまにか、うさぎの楽器やさんも感心するほどの、目利きの才能を発揮するようになっていました。
もっとも、女の子たちが、リンに会いにくるのは、目利きの才能だけではありませんがね!
リンは、今や、だれもが見とれる、すてきな、白うさぎの若者なのです。
そんなわけで、主に店に立つのは、リンで、うさぎの楽器やさんは、家にいて、ゆっくりと楽器をつくる時間を持てるようになりました。
おかげで、質の良い楽器を、以前より多く作り出すことができ、その楽器を目当てに、他の森からも、わざわざお客さんがやってくるように、なっていました。
次に入ってきたお客さんは、タヌキの老紳士でした。
うさぎの楽器やさんは、なんとなく、ほっとして、「いらっしゃいませ。」と声をかけました。
「こんにちは。やあ、本人がいらっしゃるとは、これは嬉しい!あなたの作った楽器を愛用していますよ。」
と、言って、タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんと握手をしました。
タヌキの老紳士は、すこし遠い森に住む愛好家で、フルートを吹いています。
たまに、うさぎの楽器やさんのお店に来ることもあるのですが、リンが対応していたようで、うさぎの楽器やさんにとっては、初めて見る顔でした。
タヌキの老紳士は、うさぎの楽器やさんに相談しながら、フルートを選びました。
お店に置いてある3本のフルートのなかから、銀色トウヒの森の、音楽堂のオルガンに使ったパイプと、同じ金属で作ったものを気に入り、
何度か試しに吹いてみてから、決めました。
うさぎの楽器やさんが、タヌキの老紳士のフルートを丁寧に拭いて、磨きなおし、
ケースに収めている間に、タヌキの老紳士が、気になるウワサ話をしました。
「青い湖のある森で、異変があったらしい。
どうも、ふえの音をきいて、その森の動物たちの行動が、おかしくなったらしいんだが、
ついには、植物にも影響が出て、森が枯れてしまったらしいんだ。
いま、青い湖の森は、動物が住めなくなり、壊滅状態。
ふえを吹いていたのは、みすぼらしい、やまねこだって聞いたんだが…。
この話は、街の楽器やで、もちきりなんだ。
この森も、気をつけた方がいい。」
うさぎの楽器やさんは、血の気が引きました。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。




【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる