うさぎの楽器やさん

銀色月

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<森のオルガン>のお話

5 リンランレン

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今日は、お昼すぎから、うさぎの子どもたちが、お店に来ています。

3階のアイスやさんが、もう1段おまけのサービスをしているので、アイスを食べて、帰りに、楽器やさんに寄っているのです。

「ニノくん、あれ、取って。」

「ねえ、ここに貼ってある紙、なあに?」

「この曲、知ってる?」

この白い子うさぎたちは、うさぎの楽器やさんの、息子たちです。

なまえは、リン、ラン、レンといいます。


ニノくんは、お店番をしながら、子どもたちの相手もしなくてはなりません。

さっきから、ランが、たなの上の楽器をかたっぱしからニノくんにとってもらい、
試しに弾いてみたり、たたいてみたり、しています。

ニノくんは、ランの音をひととおり聴いていましたが、ランはバイオリンのような、弦楽器が、思いのほか上手です。

「将来、森のオーケストラのコンサートマスターになったりして、ね。」
ニノくんは、なんとなく未来が見えたような気持ちになって、ニヤニヤしました。


レンは、ずっと鼻歌を歌っています。
ニノくんも知っている、有名な曲から、聴いたことのない曲まで!

なかなか、いいメロディーです。
もしかしたら…と、思って、ニノくんは、聞いてみました。
「レン、その曲、自分でつくったの?」

レンは、「…、うん。」と、ちょっとはずかしそうに、いいました。

作曲家になった、未来のレン!
ニノくんは、森のオーケストラがレンの曲を初演する想像をふくらませました。


さて、リンは?

その時、きつねの女の子が、お店に入ってきました。
「いらっしゃいませ。」
ニノくんが、声をかけます。

すると、リンが、近くによって来て、
「ああ、オーケストラの、おねえさんだ!どうしたの?」と、いいました。

リンに言われて、ニノくんも思い出しました。
…そういえば、テンくんのとなりにすわっていたな。

きつねの女の子は、バイオリンの弦を買いにきたといいました。
「テンくんが、うさぎの楽器やさんに選んでもらってるって、きいたから、
私にも選んでもらいたくって。」

ニノくんは、「ああ、またか。」と、
うさぎの楽器やさんを呼びに行く覚悟を決めました。

ところが、リンが、
「ぼくが選んであげる。」と、弦を探し始めたのです。

ニノくんは、あわてました。
おもちゃを選ぶのと、わけが違うんですから!

でも、リンは、選びながら、言いました。

「おねえさんのバイオリンは、銀色トウヒの木で出来ているでしょう?

銀色トウヒには、今使ってる弦だと、硬すぎるよ。
だから、音が、思うように伸びないでしょ?
ええと、この弦がいいよ。」

リンが、にっこり弦を渡すと、きつねの女の子は、おどろいた顔をしてリンを見ていましたが、
はっと我に返って、

「私、4本とも、新しい弦に変えたいわ!」といいました。


なんという、商才!

ニノくんは、確信しました。

「リンは、きっと、うさぎの楽器やさんに、なる。」
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