うさぎの楽器やさん

銀色月

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<森のオルガン>のお話

2 銀色トウヒの森

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ニノくんは、森の広場の方に歩いて行きました。

森の広場は、オーケストラが練習したり、コンサートを開いたり、森のお祭りを開いたりするときに、いつも動物たちが集まる、おなじみの場所です。

 
森の広場を通り越すと、
水遊びにちょうどいい小川があり、
小川の橋を渡ると、道が2つに分かれています。

右の道は、丘の上の小さなお茶のお店につづく、登り坂です。

左の道は、少し暗いスギの木の道で、
銀色トウヒが群生する森につながっています。

ニノくんは、左の道を進んでいきました。

この先には、誰の家もないので、
森の動物たちには、あまり会いません。

でも、
ニノくんは、オリーブの木のお店がお休みのときに、一度、
このあたりで、うさぎの楽器やさんを見かけたことがありました。


「たしか、こっちの方だった。」

ニノくんは、いつのまにか走り出しているのと同じくらいの急ぎ足になっていました。
こんなときは、どんな結果が待っているのか、はやく、はやく、と確かめたくなってしまうものですよね!


銀色トウヒは、冬にも枯れない葉をもつ、背の高い木です。

そのため、銀色トウヒの森に入ると、
お日さまがさえぎられて、暗く感じます。

木の香りは、上品で、落ちつきがあって、
暗くても、美しい銀色の下葉のおかげで、不安になることはなく、
むしろ、なにか考えごとがあるときには、ここを散歩したくもなるのです。

「うさぎの楽器やさん、何か、考えごとでも、あるんだろうか?」

ニノくんは、悩み事のあるうさぎの姿を探しました。


すると、
少し左のほうの木と木のあいだに、
ちらりと、白いうさぎの姿が、見えたのです。

ニノくんは、急ぎ足を止めて、
そっと、近づいていきました。


そこには、
背の低い、幹の太い木がありました。

銀色トウヒとは種類が違います。

枝ぶりは立派でしたが、枝先の葉の少なさが、目につきます。

「半分、だけ、枯れているのかな?」
ニノくんには、そう見えました。


元々そこに生えていた木が、
まわりに生まれた背の高い銀色トウヒたちの成長とともに、
次第に、陰になり、勢いを失ったように見えます。

うさぎの楽器やさんは、その木の根元にいて、
道具カバンを広げて、何やら作業をしています。


すぐ近くまで行くと、
楽器をつくっているらしいことが、ニノくんにもわかりました。


「これは、オルガンだよ。」

うさぎの楽器やさんは、作業する手を止めずにいいました。
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