うさぎの楽器やさん

銀色月

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<うさぎの楽器やさん>のお話

9 うさぎの楽器やさん

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コンサートを終えて、<キングダム>が帰りのしたくをしている時も、
うさぎの楽器やさんは、少し、離れたところで、頭を下げて、
お礼を言っていました。

ニノくんは、だいぶ慣れて、
衣装を運ぶのを、手伝ったりしました。


黒ひょうさんは、ニノくんに、自分のバイオリンを持たせて、
弾き方を教えてくれたりして、遊んでくれました。

そして、ニノくんが、ふえを持ってきて吹いてみせると、
まだ、たどたどしい、ふえの音に合わせて、ライオンさんが伴奏してくれました。

すると、
いつの間にか、ひょうさんがチェロの低い音でリズムをきざみ、

そこへ、カッコいいメロディーを、黒ひょうさんが重ねました。

 
うさぎの楽器やさんは、もう、ほんとうに、うらやましそうに、
遠くから、見ていましたよ!

いたちの運送やさんが来て、ライオンさんのピアノを運んでいくまで、楽しい合奏は続きました。


 <キングダム>を見送ったあと、
うさぎの楽器やさんは、始めからそこにいたように、いつのまにかニノくんの横に並んでいました。

「ニノくんがいてくれた、おかげだ。
ありがとう。」

うさぎの楽器やさんは、満足そうに、笑いました。


ニノくんも、満足していました。

ちょっと怖くて、とても、おもしろい仕事だったんですから。


「さて、楽器やの仕事は、まだ終わってないぞ。
会場の片づけを、しよう!」

と、言ってうさぎの楽器やさんは、歩き出しました。


会場の灯りに照らされて、なんだかカッコいいうさぎの楽器やさんのうしろ姿を、少し眺めてから、
ニノくんは、追いかけていきました。


「ぼくは、ふえを買った後も、うさぎの楽器やさんの仕事を、ずっと、手伝いたい。
そして、
いつか、きっと、ぼくも楽器やさんになるんだ!」

その時、ニノくんは、そう思いました。


会場の灯りが、ニノくんの胸の奥まで、照らしてみせてくれたかのようでした。


でもね、感のいいみなさんは、もう、わかっているかもしれませんが、
思ったとおりにならないことって、たくさんあるのです。
ニノくんも、そうだったんですよ。

ふえの持ち主になった後の、やまねこのニノくんのおはなしは、また、次のお話で。

うさぎの楽器やさんのおはなしは、おしまいです。




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