うさぎの楽器やさん

銀色月

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<うさぎの楽器やさん>のお話

5 楽器やさんの仕事

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その日から、やまねこの男の子は、毎日、うさぎの楽器やさんを手伝いに来るようになりました。


やまねこの男の子の名前は、
ニノくんといいました。

楽器やさんが、新しい楽器を作っている間、
ニノくんは、お店の掃除をしたり、お客さんとお話したり、
お店がひまな時は、ふえを吹いて、練習をしました。

驚いたことに、ニノくんは、ふえの吹き方を、何も、知りませんでした。

初めて吹いた時の、あれは、なんだったのだろう?

と、うさぎの楽器やさんは、不思議でなりませんでした。


うさぎの楽器やさんは、楽器を作る合間に、ふえの吹き方を教えました。

「あんまり、強く押さえると、割れちゃうからね、軽く持って。」

「口の形と、息の量で、調節して。いい音が出れば、それがいいんだ。」


教え始めると、やはり、筋がいいようで、
1オクターブが出せるまで、大した時間は、かかりませんでした。

それに、あの、不気味だったふえが、
よく通るいい音を出すのです。

「この分なら、吹きこなすのに、
そう時間はかからないな。

次に、半音階を教えて、
2オクターブも出せれば、
大抵のメロディーが演奏できる。」

うさぎの楽器やさんは、ニノくんの上達が、楽しみになりました。
 

楽器やさんの仕事は、楽器を作ったり、売ったり、教えたり、修理したりするだけではありません。

森の動物たちに、すばらしい音楽を届けることもします。

どうやって、届けるかというと、
すばらしい演奏を聴くことのできる、コンサートを開くのです。

森には、動物たちのオーケストラがありますが、
森の外にも、もっと、いろんな演奏家がいることや、たくさんのリズムや音色があることを、うさぎの楽器やさんは、伝えたいと思っています。

うさぎの楽器やさんは、楽器を、ひとつ、作り上げてから、ニノくんを呼びました。

「えー、ニノくん。

つぎの満月の夜、森の広場で、
コンサートを開くことになりました。

我々、うさぎの楽器やは、
会場の準備と、チケットを売ること、
そして、演奏家をサポートする、アシスタントをします。」

「はい。うさぎの楽器やさん、
いったい、どんな演奏家を呼ぶんですか?」
ニノくんは、興味しんしんです。

「それは、なんと、
私が大ファンの、ピアノ・トリオに来てもらえることになったのです!」

ピアノ・トリオとは、ピアノと、あと2つの楽器の三重奏です。

「えー、前々から、ぜひ、来てもらいたいと思っていたのですが、

いろいろと、都合が悪いことがあって、
今まで、実現しなかったのです。」

うさぎの楽器やさんは、ニコニコしています。

「ニノくんには、演奏家のアシスタントをしてもらいたいと思います。」


ニノくんは、ワクワクしました。

演奏家たちの、お世話をしながら、お話もできるし、
すぐ近くで、すばらしい演奏を、聴けるのですから!

うさぎの楽器やさんは、ニコニコしながら、続けました。

「ニノくんは、やまねこなので、
きっと大丈夫です!」
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