うさぎの楽器やさん

銀色月

文字の大きさ
上 下
5 / 88
<うさぎの楽器やさん>のお話

5 楽器やさんの仕事

しおりを挟む
その日から、やまねこの男の子は、毎日、うさぎの楽器やさんを手伝いに来るようになりました。


やまねこの男の子の名前は、
ニノくんといいました。

楽器やさんが、新しい楽器を作っている間、
ニノくんは、お店の掃除をしたり、お客さんとお話したり、
お店がひまな時は、ふえを吹いて、練習をしました。

驚いたことに、ニノくんは、ふえの吹き方を、何も、知りませんでした。

初めて吹いた時の、あれは、なんだったのだろう?

と、うさぎの楽器やさんは、不思議でなりませんでした。


うさぎの楽器やさんは、楽器を作る合間に、ふえの吹き方を教えました。

「あんまり、強く押さえると、割れちゃうからね、軽く持って。」

「口の形と、息の量で、調節して。いい音が出れば、それがいいんだ。」


教え始めると、やはり、筋がいいようで、
1オクターブが出せるまで、大した時間は、かかりませんでした。

それに、あの、不気味だったふえが、
よく通るいい音を出すのです。

「この分なら、吹きこなすのに、
そう時間はかからないな。

次に、半音階を教えて、
2オクターブも出せれば、
大抵のメロディーが演奏できる。」

うさぎの楽器やさんは、ニノくんの上達が、楽しみになりました。
 

楽器やさんの仕事は、楽器を作ったり、売ったり、教えたり、修理したりするだけではありません。

森の動物たちに、すばらしい音楽を届けることもします。

どうやって、届けるかというと、
すばらしい演奏を聴くことのできる、コンサートを開くのです。

森には、動物たちのオーケストラがありますが、
森の外にも、もっと、いろんな演奏家がいることや、たくさんのリズムや音色があることを、うさぎの楽器やさんは、伝えたいと思っています。

うさぎの楽器やさんは、楽器を、ひとつ、作り上げてから、ニノくんを呼びました。

「えー、ニノくん。

つぎの満月の夜、森の広場で、
コンサートを開くことになりました。

我々、うさぎの楽器やは、
会場の準備と、チケットを売ること、
そして、演奏家をサポートする、アシスタントをします。」

「はい。うさぎの楽器やさん、
いったい、どんな演奏家を呼ぶんですか?」
ニノくんは、興味しんしんです。

「それは、なんと、
私が大ファンの、ピアノ・トリオに来てもらえることになったのです!」

ピアノ・トリオとは、ピアノと、あと2つの楽器の三重奏です。

「えー、前々から、ぜひ、来てもらいたいと思っていたのですが、

いろいろと、都合が悪いことがあって、
今まで、実現しなかったのです。」

うさぎの楽器やさんは、ニコニコしています。

「ニノくんには、演奏家のアシスタントをしてもらいたいと思います。」


ニノくんは、ワクワクしました。

演奏家たちの、お世話をしながら、お話もできるし、
すぐ近くで、すばらしい演奏を、聴けるのですから!

うさぎの楽器やさんは、ニコニコしながら、続けました。

「ニノくんは、やまねこなので、
きっと大丈夫です!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~

桜あげは
ライト文芸
入社早々に躓く気弱な新入社員の楓は、偶然訪れた店でおいしいカレーに心を奪われる。 彼女のカレー好きに目をつけた店主のお兄さんに「ここで働かない?」と勧誘され、アルバイトとして働き始めることに。 新たな人との出会いや、新たなカレーとの出会い。 一度挫折した楓は再び立ち上がり、様々なことをゆっくり学んでいく。 錆びた階段の先にあるカレー店で、のんびりスパイスライフ。 第3回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...