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<うさぎの楽器やさん>のお話
4 持ち主
しおりを挟む「ふえは、たしかに、やまねこの男の子を呼んでいた。」
うさぎの楽器やさんは、ほんの少し前に、そう感じたのです。
やまねこの男の子がお店に入ってきた、
そのときに。
「やまねこの男の子が、お店に入ってきたのだって、
何かを感じたからだったのではないか?」
うさぎの楽器やさんは、今までに、
たくさんの、お客さんと楽器との出会いを見てきました。
そうは言っても、1日で、こんなに売れてしまったことは、初めての経験でした。
人気店のセールというのは、
ほんとうに、すごいものです!
そんな特別なセールの日ではなく、
いつもなら、お客さんは、楽器と「いい出会い」をしても、その場では決めかねて、1度帰ってしまうこともあります。
でも、そんなお客さんは、すぐ、また、
数日後に、やってきて、
「やっぱり…」と言って、その楽器を買い求めるのです。
だから、うさぎの楽器やさんは、そのお客さんに、ぴったりだと思った楽器は、
こっそり、取り置きしておくことがあります。
楽器にも、
1番ふさわしい持ち主のところに行ってほしいからです。
やまねこの男の子が、ふえを見ていた時にも、
試しに吹いてみる前から、1番ふさわしい持ち主だと思いました。
ふえの持つなんらかの不安が消えて、
ふえ自身が幸せになるような気がしたのです。
その時、うさぎの楽器やさんは、
初めてやまねこの男の子の声を聞きました。
「欲しい。でも、お金ない。」
ポツリと、きっぱり、性格が見てとれるような、さらりとした声でした。
やはり、やまねこの男の子は、ふえに呼ばれて、ここに来ただけで、
そもそも、楽器を買おうなんて、思っていなかったのでしょう。
うさぎの楽器やさんだって、まさか、自分が、こんな事を言うとは、思っていなかったのですが…、
こう言ったのです。
「そうだな…こういうのは、どう?
きみが、楽器やさんの仕事を手伝って…
ふえの分のお金をためて、買うっていうのは?」
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