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<うさぎの楽器やさん>のお話
2 やまねこの男の子
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夕日が窓からさし込んで、
お店の中は、黄金色につつまれています。
やまねこの男の子は、お店に残っている3つの楽器を、
ひとつずつ順番にながめていました。
どんな楽器が残っていたのかというと、
空き缶の枠に色とりどりの釣り糸を張った弦楽器と、
小さなガラスびんに星の実と種を入れたマラカス、
そして、冬に咲く桜の枝で作った細長いふえでした。
やまねこの男の子は、赤毛にくっきりとした白と黒のしまもようが入った、
美しい毛なみをしていました。
黄金色の夕日があたり、
赤毛がキラキラ輝きます。
長いまつ毛に、透明なビー玉の中の黄色い瞳。
うさぎの楽器やさんが、見とれていると、
やまねこの男の子の足が、ひとつの楽器の前で、ふと、止まりました。
うさぎの楽器やさんは、少しの間、様子をみていて、
「やっぱり、な。」と笑みをうかべました。
「その、ふえ、だよね。」
うさぎの楽器やさんは、そっと声をかけました。
「…」
やまねこの男の子の目が、
うさぎの楽器さんをとらえました。
黄色に見えた瞳の奥は、緑色をしています。
本能的に、ぎくっとしてしまうのは、
自分がうさぎだからかな、、
と、ちょっと汗をかきながら、
「わかるよ。ふえが、きみを呼んでるから。」と、うさぎの楽器やさんは続けました。
「どうしてわかるかって?
そりゃあ、楽器やだもの。
まあ、ためしに吹いてみなよ。」
「…」
それでも、やまねこの男の子が、何も言わないもんですから、
うさぎの楽器やさんは、ふえを手にとって、
「こうやって、持つんだ。」
と言って、左手と右手の指で1つずつ順番に穴をおさえて、
横向きにふえを持って見せ、やまねこの男の子にふえを渡しました。
やまねこの男の子は、やはり、何も言わないで、ふえを見つめながら、
持った感触を確かめているようでした。
そして、うさぎの楽器やさんが教えたとおりにふえを持ちなおして、
知っていたように、ふえの穴を指で押さえました。
澄んだ、ソの音。
やまねこの男の子が、最初に吹いた音は、楽器やさんのお店の空気をふるわせました。
うさぎの楽器やさんの目は、たちまち、間違いのない自信に満ちました。
お店の中は、黄金色につつまれています。
やまねこの男の子は、お店に残っている3つの楽器を、
ひとつずつ順番にながめていました。
どんな楽器が残っていたのかというと、
空き缶の枠に色とりどりの釣り糸を張った弦楽器と、
小さなガラスびんに星の実と種を入れたマラカス、
そして、冬に咲く桜の枝で作った細長いふえでした。
やまねこの男の子は、赤毛にくっきりとした白と黒のしまもようが入った、
美しい毛なみをしていました。
黄金色の夕日があたり、
赤毛がキラキラ輝きます。
長いまつ毛に、透明なビー玉の中の黄色い瞳。
うさぎの楽器やさんが、見とれていると、
やまねこの男の子の足が、ひとつの楽器の前で、ふと、止まりました。
うさぎの楽器やさんは、少しの間、様子をみていて、
「やっぱり、な。」と笑みをうかべました。
「その、ふえ、だよね。」
うさぎの楽器やさんは、そっと声をかけました。
「…」
やまねこの男の子の目が、
うさぎの楽器さんをとらえました。
黄色に見えた瞳の奥は、緑色をしています。
本能的に、ぎくっとしてしまうのは、
自分がうさぎだからかな、、
と、ちょっと汗をかきながら、
「わかるよ。ふえが、きみを呼んでるから。」と、うさぎの楽器やさんは続けました。
「どうしてわかるかって?
そりゃあ、楽器やだもの。
まあ、ためしに吹いてみなよ。」
「…」
それでも、やまねこの男の子が、何も言わないもんですから、
うさぎの楽器やさんは、ふえを手にとって、
「こうやって、持つんだ。」
と言って、左手と右手の指で1つずつ順番に穴をおさえて、
横向きにふえを持って見せ、やまねこの男の子にふえを渡しました。
やまねこの男の子は、やはり、何も言わないで、ふえを見つめながら、
持った感触を確かめているようでした。
そして、うさぎの楽器やさんが教えたとおりにふえを持ちなおして、
知っていたように、ふえの穴を指で押さえました。
澄んだ、ソの音。
やまねこの男の子が、最初に吹いた音は、楽器やさんのお店の空気をふるわせました。
うさぎの楽器やさんの目は、たちまち、間違いのない自信に満ちました。
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