煉獄人形

瀬模 拓也

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chapter12

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ピンポーン



のんきなチャイムの電子音がもう一度鳴る。





誰だろうか、こんな時間に。





とは言え秀一にとっては大海の木片、ピンチにチャイムだ。

誰でもいい、この異常な状況を説明して助けてもらわなければ。







急いで扉を開けるが自分でドアチェーンをしていたのを忘れていた。扉は3分の1ほどしか開かなかった。





けれどもそれが秀一にとって幸いな事になった。



「うわぁぁっ!!」

小さく開かれた扉の向こうにー

















ーメイがいたのだ。









驚きすぎて秀一は玄関で尻餅をついてしまった。



何故彼女がここにいるのか。



「夜分遅くにすみません。お電話を頂いたのですが・・・・」

事務的に淡々とメイが話し出す。











電話ー?









昼間秀一がかけたあの事だろうか。



混乱する頭で何とか思い出しす。











でも何故秀一の家が分かったのだ?











そう気づいた瞬間背筋が凍る。



「あの人形・・・・」

メイが言い終わらない内に秀一は扉を閉める。







「っっ!」

鍵をかけ自分の体で扉を押さえる。

ホラー映画のようにドアノブが回される音はしないが、背後にメイの気配を感じて鳥肌が立つ。

家の中には人形、外にはメイ。



絶体絶命だ。







(どーする!?)





試験でも使った事がない程頭をフル回転させる。



いっそメイと対峙して戦うか・・・・





ダメだ。武器が無い。









家の中にはテレビでよく見かける鈍器、ゴルフクラブもバットも置いていない。









普段母親が台所で使っている古ぼけた包丁ではとても勝てる気がしない。



(台所・・・・・・!?)

そうだ勝手口だ。





台所の脇にあるもう一つの扉は玄関と反対にある。



そこから逃げ出せれば-。



(・・・よしっ!)

人形がリビングから出てくる様子は無い。



メイに気付かれないようにスニーカーを履くと音を立てないように廊下を走る。



普段使っているカバンを掴むとそのまま台所へ入り勝手口を開ける。



















ドアの外は深い闇が広がり虫の鳴き声が響いていた。





メイはまだ玄関の所にいるのだろう。



(今だ!!)

一刻も早くここから逃げ出さなければ。



あとは誰かに会うか電話で助けを求めれられれば-。







月明かりの無い夜の帳(とばり)へ秀一は駆けだした。
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