神様のミスで繋がる異世界転生

暇人太一

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第一章 ミスで始まる異世界転生

第二話  無能のせいで児童労働

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 使命があるという爆弾を放り投げられたのだが、どうせなら構成を決める前に放り投げて欲しかった。

 自由に生きてください。
 それが最大の補償です。
 分かりました。
 スローライフを送れるような構成にします。

 というような流れだと思っていたのに。
 これこそ正に青天の霹靂だ。

「まぁまぁ、落ち着くのじゃ。そんなに難しい使命でもないぞ」

「生きているだけで良いって感じですか?」

「いや、それは難易度云々の前に甘すぎじゃろ」

「そんなそんなっ! 魔物とかいない世界の、さらに平和ボケしていると言われている国の生まれから、特権階級の横暴でチョンパされたり、魔物の恐怖に耐えねばならない世界に移動し、そこで寿命を全うすることは決して簡単なことではございませんっ」

「おっ! おうっ!」

「片や四人で、片やぼっち。独力で頑張らねばならぬのですっ」

「それなら大丈夫じゃ。他の四人は四カ国で公平に分配される事になっておるから、それぞれ環境の違いはあれど一応ぼっちじゃ」

 ドラフトみたいな感じかな?
 それとも人身売買的な?
 どっちも嫌だなぁ。

「……正規の勇者ですっ。きっと手厚いスキルがあるのでしょうっ」

「先ほども言った通り、リソース不足で加護もつけられなかったぞ」

「ゆ、勇者じゃない人がやらなくても良いかなって……」

「加護持ちは使徒扱いじゃよ。称号に記載してないだけで勇者より立場は上じゃ。なんなら称号に記載しても良いのじゃよ?」

「……ぼ、僕はそんな薄情で失礼なことを考えていませんよ? 是非とも使命について伺いたいと思っておりますともっ」

「うむ。素晴らしい好少年で安心したぞっ」

「光栄ですっ」

 確実に面倒事に繋がるだろう称号は、絶対にノーサンキュー。
 簡単とは言わずとも、難しくないと言える程度の使命なら素直にやった方が良い。

「さて使命についてじゃが、みんな大好き異世界の定番アトラクション、その名もダンジョン。それの攻略じゃ」

「こ、攻略ですか……。楽しんで欲しいからってわけではないですよね?」

「そう言えたら良かったのじゃが、今回は言えそうにないの」

「では、何か問題が発生したということですか?」

「うむ。現地人が選ばなかったダンジョンがそろそろ暴走しそうでな」

「選ばなかったとは?」

「例えば街の近くにある場所は利便性が良いから頻繁に行くじゃろ? そうするとわざわざ行くだけでも大変なダンジョンは見向きもされなくなるのじゃ。ただ、そういう場所の方がリソースが多く供給され、消費されることなく次々に魔物が生産されていくのじゃ。結果、外に溢れ出すことになるのじゃ」

「じゃあ、現地人が攻略すれば良いのでは?」

「既に託宣をし、各地で攻略を始めさせた」

「そうなんですね。それなら安心ですね」

 俺達が何もせずとも無問題ってね。

「まぁ尽く失敗しておるけどな」

「えっ?」

「今回はそのテコ入れじゃよ」

「テコ入れが必要なほどの難易度ってことですか?」

「そ、そんなことないぞ。現地人が情けないだけじゃ」

 不安だ……。

「あっ! じゃあ四人で世界を回るのですか?」

 鉢合わせは勘弁だなぁ。

「いや、世界というか……とりあえず一番無能が多い大陸にお前さん達を送り込む」

「……無能が多い大陸。それは所謂修羅の郷では?」

「…………お花畑の郷じゃな」

「頭がですよね?」

「自然豊かな良い大陸じゃよ」

「せめて四人と鉢合わせしそうにないところに送ってください」

「それは安心せよ。四人は大陸東側の国々で分配されるから、お前さんは手薄になるだろう西側に送る予定じゃ」

「ひ、一人で四人分の働きをするんですか?」

「仕方なかろう。全てはバグのせいじゃ」

「ぜ、善処……します」

「そんなに気を張らんでも、最下層まで行ってダンジョンコアを浄化してくれれば良いだけじゃよ」

「浄化ですか?」

「お前さん達の世界に頭部がアンパンでできたキャラクターがおるじゃろ?」

 アレはいるって言うのか?

「まぁ存在はしてます」

「その頭部みたいに浄化済のコアを交換してくれれば良い。そして瘴気塗れの交換前のコアを持ち帰って教会で浄化し、次の交換用に使ってもらう」

「ということは、最初のコアを持たされるんですよね? 空間収納みたいなものをもらえるってことですか?」

「本来は魔法で対応してもらうはずだったのじゃが、お前さんは戦士型じゃからの」

「最初は──「残念じゃが定番セットの麻袋に入れて運んでくれ。大丈夫じゃ。ドワーフは力持ちじゃからの」

 もしかして、そのための半ドワーフだったりする?

「いや、それは違う。半ドワーフにした最大の理由はコスパが良いこと。次点でバグの属性対策じゃな」

「二つあるから良いのでは?」

「差別は良くないから、二つは悪くないという建前はある」

「建前」

「そう、建前じゃ。では本音は? と思うじゃろ?」

「はい」

「──この二つかぁぁぁっ! ハズレじゃないかぁぁぁっ!」

 ご老人の絶叫タイムが目の前で繰り広げられた衝撃で内容が入って来ない。

「とまぁ、絶叫したくなるほどにはハズレじゃ」

 絶叫劇が終わった後に出現した神様製ホワイトボードに属性が羅列されているのだが、よくある属性に加えて少し変わった属性が記載されている。

 火、水、風、地、光、闇、空の七つはなんとなく分かるだろう。
 続く躯、識の属性がよくわからない。
 そしてこの二つは俺が唯一持つ適性属性である。

「躯属性はまだ良い。唯一回復魔法を取得できる属性だから、回復魔法を持っていれば引く手数多じゃろう。持っていなければ、竜化とか獣化みたいな種族固有魔法や五感強化等の強化魔法だけじゃから、基本お払い箱じゃな」

 俺って生命魔法なる固有スキルはあったけど、回復魔法はリストにすらなかったよ?
 お払い箱にならない?
 大丈夫かな?

「ぼっち転生をするのに、そこが気になるのか?」

「……将来への懸念です」

「そうか」

 将来も心配する必要がないだろとでも言いたい顔はやめて欲しい。地味に心に来る。

「お前さんは回復系魔法の統合型魔法を特別に創ったから、スキルレベル関係なく回復できるぞ。能力的には現地人の聖人や聖女以上じゃ。行動に気をつけなければ一瞬で面倒事に巻き込まれるからの」

「ふ、普通で良かったんですよ?」

「普通にしたらゾンビ戦法ができんじゃろ?」

「え? それは何です?」

「攻撃を受けても自分で回復して前進あるのみっ」

「普通に嫌です」

「時には嫌なこともしなければいけない。それが仕事じゃ」

「まだ子供です」

「異世界は十歳から仕事をするのじゃ」

 他の戦法を考えておこう。
 誰が特攻隊みたいなことをするか。
 安全にマイペースに攻略して異世界を謳歌する。
 これが当面の目標だな。

「もう一つの属性は?」

「これはなぁ。スキルを取得できない者たちのために創った魔法なのじゃが、それ故スキルで代用できるような魔法なんじゃ。例えば、お前さんが取得した〈気配探知〉。識属性には《探知》という魔法がある。特化型と汎用型で違うが、おおよそは同じじゃ」

「うーん。使い方次第では便利なのでは? スキルも魔力を消費するのでしょう?」

「そうなのじゃが、専門的な仕事をするような魔法もあるのじゃ。そしてそのような仕事をする者の身分は主に平民であり、非戦闘員である。結果的に──」

「──侮蔑の対象になるってことですか?」

「その通りじゃ」

 生命魔法を隠して行動するとしたら、俺は生産職系の魔法しか使えない半ドワーフってことか。

 半端者とか言われそう。

「あっ! だからぼっち……」

「うむ。じゃが、独力でも攻略できるように成長を促す効果を持つ加護を授けたのじゃ。どんどんスキルを使って成長するのじゃ」

 俺、頑張るっ。



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