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第一章 ミスで始まる異世界転生

第一話  バグのせいで仕様変更

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 高校一年生の春、最初のイベントである遠足に行くことになった。
 正直、行きたくない。
 元々人見知りな上、ぼっち状態で始まった新生活だけでも苦労しているのに、強制的に会話させられるイベントほど迷惑なものはない。

 そして予想通り、バスの最前列で担任の後頭部を一人見つめ無になるぼっちな俺。

「おーい、聞け」

 陽キャを中心に騒がしくしていた後列に向かって声をかける担任。おそらくサービスエリアに着くから、トイレ休憩等の注意事項を話すのだろう。

「サービスエリアでのトイレ休憩は必須だからな。その後は多少時間があるから、乗り遅れないように注意すれば買い物をしても良い。以上」

「「うぃーすっ」」

 ふざけた返事をするのは後列に座っている陽キャたちだろう。前列はお通夜のような状態だから、返事すらしない。
 寝ていたい担任にとっては都合が良いからか、特に注意をされることもなく無事にサービスエリアに到着した。

 俺はトイレ休憩後に肉まんを買ってバスに戻ったのだが、バスが視界に入ったところで、バスを中心に光る魔法陣を視界に捉えた。
 しかも魔法陣が少し広がったと思った直後、自分の半身が魔法陣の上にあることに気づく。

 ──やばい。

 そう思って身体を引こうとしても、既に遅し。
 肉まんを噛み締めたところで意識が途絶えた。



 ◆


「おーい。そろそろ起きてくれんか?」

「……ここは?」

「あの世じゃ」

「え?」

「肉まんの後のことは覚えているかね?」

「──あっ。魔法陣」

「そうじゃ。その結果が、ここじゃ」

「あれ? 勇者召喚では?」

 魔法陣って勇者召喚のテンプレではなかったかな?

「他の四人は、な」

「四人……」

 えっ? 誰が来たんだ?

「教えても良いが、名前は覚えているのか?」

「……いえ」

「うーん。では、特徴で思い出してくれ」

「はい、ありがとうございます」

「一人目は陽キャの代表君だな。二人目はガリ勉君。三人目はカメコ。最後はカメコの従者みたいな女の子じゃな」

「あ~あっ。最後列に座っていた……」

「トイレ休憩後にずっとバス内部で恋バナをしていたから召喚対象になったのじゃ。動かない方が照準を合わせやすいからの」

「はぁ……。じゃあ僕は?」

 直後、渋い顔になった気がする仙人風神様。

「すまんっ! あれはミスじゃ」

「えっ?」

「監督不行届だと思っているので、補償盛りだくさんで転生させて欲しい」

 もしかして別の神様のミス?

「転移では?」

「無理なのじゃ。お前さんの体はプチュンッとなった」

「……そ、それじゃあ無理ですね」

「うむ。それでじゃ、あそこにお前さんの体を用意した」

 神様が指差した先にはマネキンがあった。
 どうやらそのマネキンが、転生後の俺らしい。

「補償の内訳をさせてもらうぞ」

「お願いします」

「一つ目、魔法型じゃ。せっかく魔法がある異世界に行くのじゃ。魔法を使いたいじゃろ?」

「はい。楽しみです」

「うむうむ。属性は全属性にしておいたぞ」

「……異世界って属性が二つしかないんですか?」

「んっ? 何を言っている? そんなわけなかろう」

「で、でも……マネキン横のステータスには二つしかありませんよ?」

「ど、どれ?」

 だ、大丈夫だよね?

「──んなっ」

 何度も目を擦り、目を凝らしてステータスを見る神様は、信じられないものを目にしているかのような反応した。

「まだ変更できますよね?」

「も、もちろんじゃ……」

 不安だ……。

「えぇぇぇいっ! 必殺っ! 初期化ぁぁぁっ!」

 神様の必殺技を受けた結果、ステータス画面が真っ黒に。
 そして再起動を始めるステータス画面。
 二人分の期待を込めた眼差しを受けた画面は、最初の設定画面になった。

「「おぉっ!」」

 ──が、しかし。

「「おぉっ?」」

 変わらず居座る二つの属性。

「ま、まぁ……加えれば良いからのぅ」

「でも属性横の三角が消えてますよ?」

「…………うむ。バグじゃな」

「…………」

「さて、何じゃったかのぅ。最近老いてきたせいで記憶がとんと……」

「えっと──「そうじゃったっ! 一つ目は戦士型って話じゃったよな?」」

「えっ? ち──「入力を忘れていた種族をちょちょいとなっ」」

 徹底的に誤魔化す気だな。

「年齢もサービスするぞ。余剰分は魔力に変換してと」

 その後もブツブツと説明にならない説明を聞き、同時に目の前で改造されていくマネキンを見る。

「できたぞっ! 力作じゃっ!」

 初期化したなら意見を取り入れて欲しかったなぁ。
 
「ほれ、確認せい」

「はい」

 ステータス画面に近づいて上から見ていく。
 またバグあったら困るからね。

【情報】
 名前:リンジ・ツクモ
 年齢:10歳
 性別:男性
 種族:半ドワーフ
 属性:躯 識
 Lv:1
 状態:健康
 称号:創造神の寵愛(隠蔽)


【スキル】
 固有:メダル
    生命魔法

 肉体:剛力〈1〉弱毒耐性〈1〉
    頑強〈1〉即死無効〈5〉
    強靭〈1〉精神耐性〈3〉

 補助:言語理解〈5〉身体強化〈3〉
    鑑定妨害〈3〉気配遮断〈2〉

 知覚:魔力感知〈3〉

 魔法:魔力操作〈3〉精霊術〈1〉
    加工魔法〈1〉従魔術〈1〉
    錬金魔法〈1〉魔法陣〈1〉

 戦闘:体術 〈1〉
    短剣術〈1〉

「ステータス以外の情報もあるからのぅ」

 神様が指し示した場所はマネキンの足元。


【身体】
 種族:半ドワーフ
    手先=器用
    お酒=少し強め

 外見:人族寄り
    毛量=少なめ
    身長=高身長
    体型=筋骨隆々
    肌色=褐色
    瞳色=黄色
    毛髪=黒髪ショート

 魔眼:天霊炯眼
    基材=精霊視
    天眼=魔力視
    炯眼=洞察力
    暗視=おまけ

 知識:必要最低限の異世界知識

 魔量:超人的な魔力量
    回復=高速な回復力
    獲得=若返りの余剰分
    
 称号:創造神の寵愛
    効果=豪運
      +成長補正(スキル含む)
      +ステータス偽装


【装備】
 特典:ガイド本
    小巾着袋(旅費)
    生成シャツ
    焦茶ズボン
    生成パンツ
    焦茶ブーツ(ショート丈)
    剣鉈


「どうじゃ? リソースもまだ多少は融通できるから、必要なものをリストから選んで良いぞ。ついでに装備も選ぶのじゃぞ」

「ありがとうございます」

 情報の画面はもういじれないから、スキル画面の前に行き、リストからスキルを選んだ。
 装備はコスト削減のためにオススメの定番セットにした。


【情報】
 名前:リンジ・ツクモ
 年齢:10歳
 性別:男性
 種族:半ドワーフ
 属性:躯 識
 Lv:1
 状態:健康
 称号:創造神の寵愛(隠蔽)


【スキル】
 固有:メダル
    生命魔法

 肉体:剛力〈1〉弱毒耐性〈1〉
    頑強〈1〉即死無効〈5〉
    強靭〈1〉精神耐性〈3〉

 補助:言語理解〈5〉身体強化〈3〉
    鑑定妨害〈3〉気配遮断〈2〉

 知覚:魔力感知〈3〉直感〈1〉
    気配探知〈1〉索敵〈1〉

 魔法:魔力操作〈3〉精霊術〈1〉
    加工魔法〈1〉従魔術〈1〉
    錬金魔法〈1〉魔法陣〈1〉

 戦闘:体術〈1〉短剣術〈1〉
    投擲〈1〉棍棒術〈1〉
    盾術〈1〉

 生産:木材加工〈1〉料理〈1〉
    金属加工〈1〉調合〈1〉
    魔具作製〈1〉錬金術〈1〉


【装備】
 定番:七点セット
    肩掛け鞄
    麻袋大袋
    竹風水筒
    着火小筒(魔具)
    大巾着袋(下着二着入り)
    タープ
    ロープ


 使用できるギリギリまで使い切り、転生体の構成を終えた。

「お、お、お前さんや……。使い切ってしまったのか?」

「えっ? 駄目でしたか?」

「い、いや……。駄目というか、その……四人分のリソースだったんじゃ」

 き、聞いてないよ?

「き、聞かれてないからの」

 お互いがお互いに責任を擦り付けようとするが、絶対に俺は悪くない。補償って言ったもんっ。

「まぁ……なんとかなるじゃろ」

「ですよねっ!」

「うむうむっ」

「「はははははっ」」

 使命なんかないだろうしね。
 きっと大丈夫さ。

「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ。まぁ使命はあるがな」

「えっ?」

「んっ?」

 何か爆弾を放り投げられた気がするのは気の所為なのか?
 気の所為だよね?

「使命はある」

 気の所為じゃなかった。



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