20 / 23
第一章 転生と計画
第十九話 ティグル、ときめく
しおりを挟む
シーズン中はさすがに村の本宅にいないとダメかと思ったのだが、俺が村に行くと神子筆頭候補が情緒不安定になるとかで、森にいられるのなら森にいろと言われた。そのおかげで、シーズン中でも毎日温かいモフモフに抱きついて眠れていた。
そしてシーズンと言えば、蛇を釣っては首を落として解体するという食肉製造プラントの仕事が始まったのだが、これがなかなか大変なのだ。筋肉の塊との綱引きが思いのほか大変だし、首をギロチンで落とす瞬間に目が合うと夢に出てきそうなほど気持ち悪い。それをアポロに伝えると、アポロは「蛙の目玉と一緒だね」と言っていた。
俺は食肉製造プラントの社長でアポロは蛙養殖場兼加工場の社長である。ではベガは何をしているのだろうかという疑問が湧くが、彼は俺たちの食肉製造加工場の社長であり、俺たちの会社の社員でもあるという一番過酷なポジションなのだ。だからこそ、俺たちは愚痴は言うが文句は絶対に言わないのだった。
そして新事実が判明する。蛇の目玉も宝石になるらしく、アポロの仕事がさらに激増した。代わりに俺とベガが養殖場の手伝いや、蛇の毒を使った滋養強壮剤を作ったり皮をなめしたりしていた。
結局、シーズン中も新たな商品を作ったり肉を確保したりと忙しい毎日を過ごしていた。
◇
そして俺は九歳になった。食肉製造プラントが稼働した翌年のヴァーミリオン商会との取引では、カクタス・フラウアがいないおかげで村長とコソ泥クソ野郎が取引をしていたが、商談にもならずボロクソに買い叩かれていた。フラウア家の残党のいるにはいるが、カクタス・フラウアの責任を取らされたせいで、ほとんど奴隷扱いだった。
俺はというと蛇の商品が驚かれ気に入られで、かなり大きな取引になった。特に【蛇眼石】と呼ばれるキャッツアイのような光の筋が入った宝石は縁起が良いとされ、王侯貴族がこぞって手に入れようとするんだとか。それと地味に強壮剤と皮も人気だった。皮はきれいな一枚で加工もしやすいと言っており、少し色をつけた金額で取引をしてくれたのだ。
それが九歳までの間ずっと続き、ヴァーミリオン商会とはかなりいい関係を築いて来れた。当然村の住人よりも稼いでいる俺は毎回睨まれたり襲われたりで大変だったが、アポロの言うとおり常時発動している鎧みたいなスキル【霊魔武装】のおかげで痛くも痒くもなかった。ただビックリするだけだ。
そんなことで今年も商品を用意してヴァーミリオン商会の隊商を待っているのだった。
◇◇◇
「お父様……わたし学園に行きたくない……」
「おいおい。どうしたんだ? 何かあったのか?」
何も言わず兎の耳を垂れた少女は俯いたまま、コクリと頷いたのだった。
「もしかして髪色のことと瞳の色ことか?」
またもコクリと頷いた。
「……そうか」
この少女の髪色は紫紺色で瞳の色は金色だった。父親の瞳も金色だが、紫と金色が揃った場合のみ金色は嫌悪される。何故ならば、魔物の瞳の色が基本的に紫色で上位種などになると金色になるからだ。そしてとある事情により、獣人の国は魔物の特徴を持つことで激しく差別されてしまうのだ。
結果、同年代の子どもたちによって魔物討伐という名のイジメが行われていた。
しかしこの家が学園に行かないわけにはいかない事情があった。そのことを分かっているからこそ、入園一年前のギリギリまで我慢してきたのだが、日に日に酷くなるイジメに十歳の女の子は堪えられなくなってしまったのだ。
その日から父親は何か方法はないかと考えていた。すると、たまたま家に来ていた上司が父親の異変に気づき相談に乗ってくれることになった。
「ふーん。どこもかしこもくだらんことをしておるな。俺も経験したが、この役職になったおかげで世界を見に行けた。おかげでどうでも良くなったぞ。所詮狭い世界でしか粋がれない醜い者共の精神安定剤でしかない。そんなものを相手にする必要はない。別に学園は一つだけではないしな。とりあえず広い世界を見せてやれ。もうすぐ副業のために出掛けるんだろ? たまには美味いものを持って帰ってくれよ。宝石ばっかじゃなくて」
「……そうですね。そうします。お土産の方も何か考えておきます」
「おう」
父親の晴れやかな表情を見た上司はようやく一安心し、仕事の打ち合わせを始めるのだった。
◇◇◇
昨日ようやく森の中のいつもの野営地に着いたと聞き、俺たちは急いで荷物を荷車に積んでいった。この荷車は大活躍しており毎日使っているせいで、取引日当日になってから荷物を載せていた。もう一台作ることはしなかったが、増えた商品を載せるための連結式の荷車を作った。まるで電車ごっこをしているような気分になりながら、取引をしに村へと向かった。
この頃には身長もかなり伸び体もほとんど大人であったため、さすがに暴力的なイジメは少なくなってきた。特に同年代の子どもの反応は凄まじく変化して、逆に怯えられるようになっていた。
まぁ気持ちは分かる。
今はほぼ大人と平均的な小学生中学年くらいの差があり、今までイジメていたものからしたら復讐されるかもしれないと戦々恐々としているからだろう。俺は五歳の頃から復讐を始めていたから、今さら復讐をする必要はないのだ。それに被害者面して弱く見せていた方がいいこともあるため、余計なもめ事は起こさないに限る。
エルフたちの買い物や取引が終わった頃を見計らって隊商に近づくと、一人見慣れない女の子が一人で立っていた。これはお互いのために無視する方がいいと思っていると、女の子の方から声をかけられた。
「買い忘れですか?」
「いいえ。ヴァーミリオン商会と個人的な取引をさせてもらっています。それから私は『ティグル・アステール』と申します。どうぞお見知りおきください」
俺を見て何も気づかないってことは初対面であることは間違いない。それならば真っ先にすることはあいさつだ。できるだけいい印象を持ってもらわなければならないからな。
「は……初めまして。わたしは『クロエ・ヴァーミリオン』と申します。よろしくお願いします」
あっぶねー! あいさつしておいてよかったー!
見慣れない女の子の正体がまさかのヴァーミリオン商会の御令嬢だとは思わなかったが、最初にあいさつをした自分の判断は間違っていないと自分を褒めてあげたい。
「おや? あいさつは済ませてしまったのか。紹介したかったのにな」
ヴァーミリオン商会の会長が来てすぐそう言った。俺も最初に紹介してもらいたかったなと思ったが、不快に思われていないなら特に気にする必要もないだろうと思うことにした。
「クロエ、彼がいつも【蛙石】や【蛇眼石】を作ってくれているんだよ。まだ祝福の儀を迎えていないのにすごいだろ?」
「……え? わたしよりも年下なのですか?」
「ん? 年齢は聞かなかったのか? 彼はクロエの一つ下でまだ九歳だよ」
俺の年齢を聞いた御令嬢は目を見開き、俺の頭の先からつま先までを何度も往復させて驚いていた。
「まぁハーフですので成長が早いみたいですよ。それと両親がいませんので生きていくために手に職をつけただけですよ。たまたまです」
実際すごいのはアポロであって俺ではない。だから褒められるのは困るのだ。
「そ……そうなのですか……」
同情しているのかなと思ったのだが、どうやら自分のした行動が恥ずかしかったようで両手を頬に当て顔を赤らめていた。そしてその様子を何故か商会長が驚愕の表情で見つめていた。
「商会長殿、早速今年分を御覧いただきたいのですが……?」
「ん? あぁ……そうだね。見させてもらうよ」
失礼だったかなと思うも、情緒不安定な神子筆頭候補のためには一刻でも早く村を出て行かなければならず、商談を邪魔される前に済ませてしまう必要があったのだ。
「そう言えばティグル君は来年祝福の儀を受けることになるわけだけど、どのスキルがいいなとか思ったことはないのかな?」
いつか来るだろうと思っていた質問だが、さすがに既に持っているとは言えない。般若さんには虐待のことと同じくらい口止めされている秘密であり、俺自身説明できないスキルの話はしたくないので好都合でもあった。その結果思いついたスキルは、テイマーである。希少スキルの一つだから憧れていても不思議ではないのだ。
「テイマーがいいですね」
「ほぉ……うちの娘と同じ事を言うのだね」
「それは大変喜嬉しいですね。美少女との出会いだけでなく、意見まで同じというのは不肖な身である私には身に余る光栄でございます」
「美少女……」
ん? どうした?
御令嬢が何やら呟き商会長はポカーンとし、周囲の護衛や商会員は肩を震わして笑いを堪えていた。
「ティグル……さんは動物が好きなんですか?」
御令嬢がモジモジしながら話し掛けてきた。テイマー希望が気になったようだ。
「動物というよりもモフモフした存在が好きなんですよ。テイマーなら動物だけでなく幻獣とかも仲良くできる可能性がありますからね」
「モフモフは可愛いですよね! わたしも好きです!」
さっきまでのモジモジはなんだったんだ? と思えるほど興奮しながら近づいてきた。したがって御令嬢を至近距離で見ることになり、その可愛さに思わず動きが止まってしまった。
整った顔に綺麗な金色の瞳、艶やかな紫紺色の髪に豊満な胸。非の打ち所がないとはまさにこの子のことを言うのではないかと思うほどである。
「おほんっ! さて取引といこうかね」
取引は御令嬢が見学のなか行われ少しだけ緊張するもいつものように終わり、今回もまた生活用品を購入するのだが、今回はいつもより多めに購入することにした。お金もスキルに全額入れず、懐にこっそりしまって逃亡資金として取っておいた。
というのも次に来るのは、王族と一緒に祝福の儀を終えて神子が判明した後で、エルフの村で開かれる宴に参加するために物資を持って訪れるそうだ。
つまり、俺は死亡扱いでこの村にはいないのだ。
「……それでは取引の時間をいただきましてありがとうございました」
一瞬『今まで』と言いかけてしまったが、なんとか堪えあいさつを終えた俺は家に戻ることにした。もう会うことはないかもしれないけど、初めてよくしてくれたことは決して忘れはしないと心に刻み込むのだった。
そしてシーズンと言えば、蛇を釣っては首を落として解体するという食肉製造プラントの仕事が始まったのだが、これがなかなか大変なのだ。筋肉の塊との綱引きが思いのほか大変だし、首をギロチンで落とす瞬間に目が合うと夢に出てきそうなほど気持ち悪い。それをアポロに伝えると、アポロは「蛙の目玉と一緒だね」と言っていた。
俺は食肉製造プラントの社長でアポロは蛙養殖場兼加工場の社長である。ではベガは何をしているのだろうかという疑問が湧くが、彼は俺たちの食肉製造加工場の社長であり、俺たちの会社の社員でもあるという一番過酷なポジションなのだ。だからこそ、俺たちは愚痴は言うが文句は絶対に言わないのだった。
そして新事実が判明する。蛇の目玉も宝石になるらしく、アポロの仕事がさらに激増した。代わりに俺とベガが養殖場の手伝いや、蛇の毒を使った滋養強壮剤を作ったり皮をなめしたりしていた。
結局、シーズン中も新たな商品を作ったり肉を確保したりと忙しい毎日を過ごしていた。
◇
そして俺は九歳になった。食肉製造プラントが稼働した翌年のヴァーミリオン商会との取引では、カクタス・フラウアがいないおかげで村長とコソ泥クソ野郎が取引をしていたが、商談にもならずボロクソに買い叩かれていた。フラウア家の残党のいるにはいるが、カクタス・フラウアの責任を取らされたせいで、ほとんど奴隷扱いだった。
俺はというと蛇の商品が驚かれ気に入られで、かなり大きな取引になった。特に【蛇眼石】と呼ばれるキャッツアイのような光の筋が入った宝石は縁起が良いとされ、王侯貴族がこぞって手に入れようとするんだとか。それと地味に強壮剤と皮も人気だった。皮はきれいな一枚で加工もしやすいと言っており、少し色をつけた金額で取引をしてくれたのだ。
それが九歳までの間ずっと続き、ヴァーミリオン商会とはかなりいい関係を築いて来れた。当然村の住人よりも稼いでいる俺は毎回睨まれたり襲われたりで大変だったが、アポロの言うとおり常時発動している鎧みたいなスキル【霊魔武装】のおかげで痛くも痒くもなかった。ただビックリするだけだ。
そんなことで今年も商品を用意してヴァーミリオン商会の隊商を待っているのだった。
◇◇◇
「お父様……わたし学園に行きたくない……」
「おいおい。どうしたんだ? 何かあったのか?」
何も言わず兎の耳を垂れた少女は俯いたまま、コクリと頷いたのだった。
「もしかして髪色のことと瞳の色ことか?」
またもコクリと頷いた。
「……そうか」
この少女の髪色は紫紺色で瞳の色は金色だった。父親の瞳も金色だが、紫と金色が揃った場合のみ金色は嫌悪される。何故ならば、魔物の瞳の色が基本的に紫色で上位種などになると金色になるからだ。そしてとある事情により、獣人の国は魔物の特徴を持つことで激しく差別されてしまうのだ。
結果、同年代の子どもたちによって魔物討伐という名のイジメが行われていた。
しかしこの家が学園に行かないわけにはいかない事情があった。そのことを分かっているからこそ、入園一年前のギリギリまで我慢してきたのだが、日に日に酷くなるイジメに十歳の女の子は堪えられなくなってしまったのだ。
その日から父親は何か方法はないかと考えていた。すると、たまたま家に来ていた上司が父親の異変に気づき相談に乗ってくれることになった。
「ふーん。どこもかしこもくだらんことをしておるな。俺も経験したが、この役職になったおかげで世界を見に行けた。おかげでどうでも良くなったぞ。所詮狭い世界でしか粋がれない醜い者共の精神安定剤でしかない。そんなものを相手にする必要はない。別に学園は一つだけではないしな。とりあえず広い世界を見せてやれ。もうすぐ副業のために出掛けるんだろ? たまには美味いものを持って帰ってくれよ。宝石ばっかじゃなくて」
「……そうですね。そうします。お土産の方も何か考えておきます」
「おう」
父親の晴れやかな表情を見た上司はようやく一安心し、仕事の打ち合わせを始めるのだった。
◇◇◇
昨日ようやく森の中のいつもの野営地に着いたと聞き、俺たちは急いで荷物を荷車に積んでいった。この荷車は大活躍しており毎日使っているせいで、取引日当日になってから荷物を載せていた。もう一台作ることはしなかったが、増えた商品を載せるための連結式の荷車を作った。まるで電車ごっこをしているような気分になりながら、取引をしに村へと向かった。
この頃には身長もかなり伸び体もほとんど大人であったため、さすがに暴力的なイジメは少なくなってきた。特に同年代の子どもの反応は凄まじく変化して、逆に怯えられるようになっていた。
まぁ気持ちは分かる。
今はほぼ大人と平均的な小学生中学年くらいの差があり、今までイジメていたものからしたら復讐されるかもしれないと戦々恐々としているからだろう。俺は五歳の頃から復讐を始めていたから、今さら復讐をする必要はないのだ。それに被害者面して弱く見せていた方がいいこともあるため、余計なもめ事は起こさないに限る。
エルフたちの買い物や取引が終わった頃を見計らって隊商に近づくと、一人見慣れない女の子が一人で立っていた。これはお互いのために無視する方がいいと思っていると、女の子の方から声をかけられた。
「買い忘れですか?」
「いいえ。ヴァーミリオン商会と個人的な取引をさせてもらっています。それから私は『ティグル・アステール』と申します。どうぞお見知りおきください」
俺を見て何も気づかないってことは初対面であることは間違いない。それならば真っ先にすることはあいさつだ。できるだけいい印象を持ってもらわなければならないからな。
「は……初めまして。わたしは『クロエ・ヴァーミリオン』と申します。よろしくお願いします」
あっぶねー! あいさつしておいてよかったー!
見慣れない女の子の正体がまさかのヴァーミリオン商会の御令嬢だとは思わなかったが、最初にあいさつをした自分の判断は間違っていないと自分を褒めてあげたい。
「おや? あいさつは済ませてしまったのか。紹介したかったのにな」
ヴァーミリオン商会の会長が来てすぐそう言った。俺も最初に紹介してもらいたかったなと思ったが、不快に思われていないなら特に気にする必要もないだろうと思うことにした。
「クロエ、彼がいつも【蛙石】や【蛇眼石】を作ってくれているんだよ。まだ祝福の儀を迎えていないのにすごいだろ?」
「……え? わたしよりも年下なのですか?」
「ん? 年齢は聞かなかったのか? 彼はクロエの一つ下でまだ九歳だよ」
俺の年齢を聞いた御令嬢は目を見開き、俺の頭の先からつま先までを何度も往復させて驚いていた。
「まぁハーフですので成長が早いみたいですよ。それと両親がいませんので生きていくために手に職をつけただけですよ。たまたまです」
実際すごいのはアポロであって俺ではない。だから褒められるのは困るのだ。
「そ……そうなのですか……」
同情しているのかなと思ったのだが、どうやら自分のした行動が恥ずかしかったようで両手を頬に当て顔を赤らめていた。そしてその様子を何故か商会長が驚愕の表情で見つめていた。
「商会長殿、早速今年分を御覧いただきたいのですが……?」
「ん? あぁ……そうだね。見させてもらうよ」
失礼だったかなと思うも、情緒不安定な神子筆頭候補のためには一刻でも早く村を出て行かなければならず、商談を邪魔される前に済ませてしまう必要があったのだ。
「そう言えばティグル君は来年祝福の儀を受けることになるわけだけど、どのスキルがいいなとか思ったことはないのかな?」
いつか来るだろうと思っていた質問だが、さすがに既に持っているとは言えない。般若さんには虐待のことと同じくらい口止めされている秘密であり、俺自身説明できないスキルの話はしたくないので好都合でもあった。その結果思いついたスキルは、テイマーである。希少スキルの一つだから憧れていても不思議ではないのだ。
「テイマーがいいですね」
「ほぉ……うちの娘と同じ事を言うのだね」
「それは大変喜嬉しいですね。美少女との出会いだけでなく、意見まで同じというのは不肖な身である私には身に余る光栄でございます」
「美少女……」
ん? どうした?
御令嬢が何やら呟き商会長はポカーンとし、周囲の護衛や商会員は肩を震わして笑いを堪えていた。
「ティグル……さんは動物が好きなんですか?」
御令嬢がモジモジしながら話し掛けてきた。テイマー希望が気になったようだ。
「動物というよりもモフモフした存在が好きなんですよ。テイマーなら動物だけでなく幻獣とかも仲良くできる可能性がありますからね」
「モフモフは可愛いですよね! わたしも好きです!」
さっきまでのモジモジはなんだったんだ? と思えるほど興奮しながら近づいてきた。したがって御令嬢を至近距離で見ることになり、その可愛さに思わず動きが止まってしまった。
整った顔に綺麗な金色の瞳、艶やかな紫紺色の髪に豊満な胸。非の打ち所がないとはまさにこの子のことを言うのではないかと思うほどである。
「おほんっ! さて取引といこうかね」
取引は御令嬢が見学のなか行われ少しだけ緊張するもいつものように終わり、今回もまた生活用品を購入するのだが、今回はいつもより多めに購入することにした。お金もスキルに全額入れず、懐にこっそりしまって逃亡資金として取っておいた。
というのも次に来るのは、王族と一緒に祝福の儀を終えて神子が判明した後で、エルフの村で開かれる宴に参加するために物資を持って訪れるそうだ。
つまり、俺は死亡扱いでこの村にはいないのだ。
「……それでは取引の時間をいただきましてありがとうございました」
一瞬『今まで』と言いかけてしまったが、なんとか堪えあいさつを終えた俺は家に戻ることにした。もう会うことはないかもしれないけど、初めてよくしてくれたことは決して忘れはしないと心に刻み込むのだった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果
kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。
自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。
魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる