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第一章 転生と計画
第十九話 ティグル、ときめく
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シーズン中はさすがに村の本宅にいないとダメかと思ったのだが、俺が村に行くと神子筆頭候補が情緒不安定になるとかで、森にいられるのなら森にいろと言われた。そのおかげで、シーズン中でも毎日温かいモフモフに抱きついて眠れていた。
そしてシーズンと言えば、蛇を釣っては首を落として解体するという食肉製造プラントの仕事が始まったのだが、これがなかなか大変なのだ。筋肉の塊との綱引きが思いのほか大変だし、首をギロチンで落とす瞬間に目が合うと夢に出てきそうなほど気持ち悪い。それをアポロに伝えると、アポロは「蛙の目玉と一緒だね」と言っていた。
俺は食肉製造プラントの社長でアポロは蛙養殖場兼加工場の社長である。ではベガは何をしているのだろうかという疑問が湧くが、彼は俺たちの食肉製造加工場の社長であり、俺たちの会社の社員でもあるという一番過酷なポジションなのだ。だからこそ、俺たちは愚痴は言うが文句は絶対に言わないのだった。
そして新事実が判明する。蛇の目玉も宝石になるらしく、アポロの仕事がさらに激増した。代わりに俺とベガが養殖場の手伝いや、蛇の毒を使った滋養強壮剤を作ったり皮をなめしたりしていた。
結局、シーズン中も新たな商品を作ったり肉を確保したりと忙しい毎日を過ごしていた。
◇
そして俺は九歳になった。食肉製造プラントが稼働した翌年のヴァーミリオン商会との取引では、カクタス・フラウアがいないおかげで村長とコソ泥クソ野郎が取引をしていたが、商談にもならずボロクソに買い叩かれていた。フラウア家の残党のいるにはいるが、カクタス・フラウアの責任を取らされたせいで、ほとんど奴隷扱いだった。
俺はというと蛇の商品が驚かれ気に入られで、かなり大きな取引になった。特に【蛇眼石】と呼ばれるキャッツアイのような光の筋が入った宝石は縁起が良いとされ、王侯貴族がこぞって手に入れようとするんだとか。それと地味に強壮剤と皮も人気だった。皮はきれいな一枚で加工もしやすいと言っており、少し色をつけた金額で取引をしてくれたのだ。
それが九歳までの間ずっと続き、ヴァーミリオン商会とはかなりいい関係を築いて来れた。当然村の住人よりも稼いでいる俺は毎回睨まれたり襲われたりで大変だったが、アポロの言うとおり常時発動している鎧みたいなスキル【霊魔武装】のおかげで痛くも痒くもなかった。ただビックリするだけだ。
そんなことで今年も商品を用意してヴァーミリオン商会の隊商を待っているのだった。
◇◇◇
「お父様……わたし学園に行きたくない……」
「おいおい。どうしたんだ? 何かあったのか?」
何も言わず兎の耳を垂れた少女は俯いたまま、コクリと頷いたのだった。
「もしかして髪色のことと瞳の色ことか?」
またもコクリと頷いた。
「……そうか」
この少女の髪色は紫紺色で瞳の色は金色だった。父親の瞳も金色だが、紫と金色が揃った場合のみ金色は嫌悪される。何故ならば、魔物の瞳の色が基本的に紫色で上位種などになると金色になるからだ。そしてとある事情により、獣人の国は魔物の特徴を持つことで激しく差別されてしまうのだ。
結果、同年代の子どもたちによって魔物討伐という名のイジメが行われていた。
しかしこの家が学園に行かないわけにはいかない事情があった。そのことを分かっているからこそ、入園一年前のギリギリまで我慢してきたのだが、日に日に酷くなるイジメに十歳の女の子は堪えられなくなってしまったのだ。
その日から父親は何か方法はないかと考えていた。すると、たまたま家に来ていた上司が父親の異変に気づき相談に乗ってくれることになった。
「ふーん。どこもかしこもくだらんことをしておるな。俺も経験したが、この役職になったおかげで世界を見に行けた。おかげでどうでも良くなったぞ。所詮狭い世界でしか粋がれない醜い者共の精神安定剤でしかない。そんなものを相手にする必要はない。別に学園は一つだけではないしな。とりあえず広い世界を見せてやれ。もうすぐ副業のために出掛けるんだろ? たまには美味いものを持って帰ってくれよ。宝石ばっかじゃなくて」
「……そうですね。そうします。お土産の方も何か考えておきます」
「おう」
父親の晴れやかな表情を見た上司はようやく一安心し、仕事の打ち合わせを始めるのだった。
◇◇◇
昨日ようやく森の中のいつもの野営地に着いたと聞き、俺たちは急いで荷物を荷車に積んでいった。この荷車は大活躍しており毎日使っているせいで、取引日当日になってから荷物を載せていた。もう一台作ることはしなかったが、増えた商品を載せるための連結式の荷車を作った。まるで電車ごっこをしているような気分になりながら、取引をしに村へと向かった。
この頃には身長もかなり伸び体もほとんど大人であったため、さすがに暴力的なイジメは少なくなってきた。特に同年代の子どもの反応は凄まじく変化して、逆に怯えられるようになっていた。
まぁ気持ちは分かる。
今はほぼ大人と平均的な小学生中学年くらいの差があり、今までイジメていたものからしたら復讐されるかもしれないと戦々恐々としているからだろう。俺は五歳の頃から復讐を始めていたから、今さら復讐をする必要はないのだ。それに被害者面して弱く見せていた方がいいこともあるため、余計なもめ事は起こさないに限る。
エルフたちの買い物や取引が終わった頃を見計らって隊商に近づくと、一人見慣れない女の子が一人で立っていた。これはお互いのために無視する方がいいと思っていると、女の子の方から声をかけられた。
「買い忘れですか?」
「いいえ。ヴァーミリオン商会と個人的な取引をさせてもらっています。それから私は『ティグル・アステール』と申します。どうぞお見知りおきください」
俺を見て何も気づかないってことは初対面であることは間違いない。それならば真っ先にすることはあいさつだ。できるだけいい印象を持ってもらわなければならないからな。
「は……初めまして。わたしは『クロエ・ヴァーミリオン』と申します。よろしくお願いします」
あっぶねー! あいさつしておいてよかったー!
見慣れない女の子の正体がまさかのヴァーミリオン商会の御令嬢だとは思わなかったが、最初にあいさつをした自分の判断は間違っていないと自分を褒めてあげたい。
「おや? あいさつは済ませてしまったのか。紹介したかったのにな」
ヴァーミリオン商会の会長が来てすぐそう言った。俺も最初に紹介してもらいたかったなと思ったが、不快に思われていないなら特に気にする必要もないだろうと思うことにした。
「クロエ、彼がいつも【蛙石】や【蛇眼石】を作ってくれているんだよ。まだ祝福の儀を迎えていないのにすごいだろ?」
「……え? わたしよりも年下なのですか?」
「ん? 年齢は聞かなかったのか? 彼はクロエの一つ下でまだ九歳だよ」
俺の年齢を聞いた御令嬢は目を見開き、俺の頭の先からつま先までを何度も往復させて驚いていた。
「まぁハーフですので成長が早いみたいですよ。それと両親がいませんので生きていくために手に職をつけただけですよ。たまたまです」
実際すごいのはアポロであって俺ではない。だから褒められるのは困るのだ。
「そ……そうなのですか……」
同情しているのかなと思ったのだが、どうやら自分のした行動が恥ずかしかったようで両手を頬に当て顔を赤らめていた。そしてその様子を何故か商会長が驚愕の表情で見つめていた。
「商会長殿、早速今年分を御覧いただきたいのですが……?」
「ん? あぁ……そうだね。見させてもらうよ」
失礼だったかなと思うも、情緒不安定な神子筆頭候補のためには一刻でも早く村を出て行かなければならず、商談を邪魔される前に済ませてしまう必要があったのだ。
「そう言えばティグル君は来年祝福の儀を受けることになるわけだけど、どのスキルがいいなとか思ったことはないのかな?」
いつか来るだろうと思っていた質問だが、さすがに既に持っているとは言えない。般若さんには虐待のことと同じくらい口止めされている秘密であり、俺自身説明できないスキルの話はしたくないので好都合でもあった。その結果思いついたスキルは、テイマーである。希少スキルの一つだから憧れていても不思議ではないのだ。
「テイマーがいいですね」
「ほぉ……うちの娘と同じ事を言うのだね」
「それは大変喜嬉しいですね。美少女との出会いだけでなく、意見まで同じというのは不肖な身である私には身に余る光栄でございます」
「美少女……」
ん? どうした?
御令嬢が何やら呟き商会長はポカーンとし、周囲の護衛や商会員は肩を震わして笑いを堪えていた。
「ティグル……さんは動物が好きなんですか?」
御令嬢がモジモジしながら話し掛けてきた。テイマー希望が気になったようだ。
「動物というよりもモフモフした存在が好きなんですよ。テイマーなら動物だけでなく幻獣とかも仲良くできる可能性がありますからね」
「モフモフは可愛いですよね! わたしも好きです!」
さっきまでのモジモジはなんだったんだ? と思えるほど興奮しながら近づいてきた。したがって御令嬢を至近距離で見ることになり、その可愛さに思わず動きが止まってしまった。
整った顔に綺麗な金色の瞳、艶やかな紫紺色の髪に豊満な胸。非の打ち所がないとはまさにこの子のことを言うのではないかと思うほどである。
「おほんっ! さて取引といこうかね」
取引は御令嬢が見学のなか行われ少しだけ緊張するもいつものように終わり、今回もまた生活用品を購入するのだが、今回はいつもより多めに購入することにした。お金もスキルに全額入れず、懐にこっそりしまって逃亡資金として取っておいた。
というのも次に来るのは、王族と一緒に祝福の儀を終えて神子が判明した後で、エルフの村で開かれる宴に参加するために物資を持って訪れるそうだ。
つまり、俺は死亡扱いでこの村にはいないのだ。
「……それでは取引の時間をいただきましてありがとうございました」
一瞬『今まで』と言いかけてしまったが、なんとか堪えあいさつを終えた俺は家に戻ることにした。もう会うことはないかもしれないけど、初めてよくしてくれたことは決して忘れはしないと心に刻み込むのだった。
そしてシーズンと言えば、蛇を釣っては首を落として解体するという食肉製造プラントの仕事が始まったのだが、これがなかなか大変なのだ。筋肉の塊との綱引きが思いのほか大変だし、首をギロチンで落とす瞬間に目が合うと夢に出てきそうなほど気持ち悪い。それをアポロに伝えると、アポロは「蛙の目玉と一緒だね」と言っていた。
俺は食肉製造プラントの社長でアポロは蛙養殖場兼加工場の社長である。ではベガは何をしているのだろうかという疑問が湧くが、彼は俺たちの食肉製造加工場の社長であり、俺たちの会社の社員でもあるという一番過酷なポジションなのだ。だからこそ、俺たちは愚痴は言うが文句は絶対に言わないのだった。
そして新事実が判明する。蛇の目玉も宝石になるらしく、アポロの仕事がさらに激増した。代わりに俺とベガが養殖場の手伝いや、蛇の毒を使った滋養強壮剤を作ったり皮をなめしたりしていた。
結局、シーズン中も新たな商品を作ったり肉を確保したりと忙しい毎日を過ごしていた。
◇
そして俺は九歳になった。食肉製造プラントが稼働した翌年のヴァーミリオン商会との取引では、カクタス・フラウアがいないおかげで村長とコソ泥クソ野郎が取引をしていたが、商談にもならずボロクソに買い叩かれていた。フラウア家の残党のいるにはいるが、カクタス・フラウアの責任を取らされたせいで、ほとんど奴隷扱いだった。
俺はというと蛇の商品が驚かれ気に入られで、かなり大きな取引になった。特に【蛇眼石】と呼ばれるキャッツアイのような光の筋が入った宝石は縁起が良いとされ、王侯貴族がこぞって手に入れようとするんだとか。それと地味に強壮剤と皮も人気だった。皮はきれいな一枚で加工もしやすいと言っており、少し色をつけた金額で取引をしてくれたのだ。
それが九歳までの間ずっと続き、ヴァーミリオン商会とはかなりいい関係を築いて来れた。当然村の住人よりも稼いでいる俺は毎回睨まれたり襲われたりで大変だったが、アポロの言うとおり常時発動している鎧みたいなスキル【霊魔武装】のおかげで痛くも痒くもなかった。ただビックリするだけだ。
そんなことで今年も商品を用意してヴァーミリオン商会の隊商を待っているのだった。
◇◇◇
「お父様……わたし学園に行きたくない……」
「おいおい。どうしたんだ? 何かあったのか?」
何も言わず兎の耳を垂れた少女は俯いたまま、コクリと頷いたのだった。
「もしかして髪色のことと瞳の色ことか?」
またもコクリと頷いた。
「……そうか」
この少女の髪色は紫紺色で瞳の色は金色だった。父親の瞳も金色だが、紫と金色が揃った場合のみ金色は嫌悪される。何故ならば、魔物の瞳の色が基本的に紫色で上位種などになると金色になるからだ。そしてとある事情により、獣人の国は魔物の特徴を持つことで激しく差別されてしまうのだ。
結果、同年代の子どもたちによって魔物討伐という名のイジメが行われていた。
しかしこの家が学園に行かないわけにはいかない事情があった。そのことを分かっているからこそ、入園一年前のギリギリまで我慢してきたのだが、日に日に酷くなるイジメに十歳の女の子は堪えられなくなってしまったのだ。
その日から父親は何か方法はないかと考えていた。すると、たまたま家に来ていた上司が父親の異変に気づき相談に乗ってくれることになった。
「ふーん。どこもかしこもくだらんことをしておるな。俺も経験したが、この役職になったおかげで世界を見に行けた。おかげでどうでも良くなったぞ。所詮狭い世界でしか粋がれない醜い者共の精神安定剤でしかない。そんなものを相手にする必要はない。別に学園は一つだけではないしな。とりあえず広い世界を見せてやれ。もうすぐ副業のために出掛けるんだろ? たまには美味いものを持って帰ってくれよ。宝石ばっかじゃなくて」
「……そうですね。そうします。お土産の方も何か考えておきます」
「おう」
父親の晴れやかな表情を見た上司はようやく一安心し、仕事の打ち合わせを始めるのだった。
◇◇◇
昨日ようやく森の中のいつもの野営地に着いたと聞き、俺たちは急いで荷物を荷車に積んでいった。この荷車は大活躍しており毎日使っているせいで、取引日当日になってから荷物を載せていた。もう一台作ることはしなかったが、増えた商品を載せるための連結式の荷車を作った。まるで電車ごっこをしているような気分になりながら、取引をしに村へと向かった。
この頃には身長もかなり伸び体もほとんど大人であったため、さすがに暴力的なイジメは少なくなってきた。特に同年代の子どもの反応は凄まじく変化して、逆に怯えられるようになっていた。
まぁ気持ちは分かる。
今はほぼ大人と平均的な小学生中学年くらいの差があり、今までイジメていたものからしたら復讐されるかもしれないと戦々恐々としているからだろう。俺は五歳の頃から復讐を始めていたから、今さら復讐をする必要はないのだ。それに被害者面して弱く見せていた方がいいこともあるため、余計なもめ事は起こさないに限る。
エルフたちの買い物や取引が終わった頃を見計らって隊商に近づくと、一人見慣れない女の子が一人で立っていた。これはお互いのために無視する方がいいと思っていると、女の子の方から声をかけられた。
「買い忘れですか?」
「いいえ。ヴァーミリオン商会と個人的な取引をさせてもらっています。それから私は『ティグル・アステール』と申します。どうぞお見知りおきください」
俺を見て何も気づかないってことは初対面であることは間違いない。それならば真っ先にすることはあいさつだ。できるだけいい印象を持ってもらわなければならないからな。
「は……初めまして。わたしは『クロエ・ヴァーミリオン』と申します。よろしくお願いします」
あっぶねー! あいさつしておいてよかったー!
見慣れない女の子の正体がまさかのヴァーミリオン商会の御令嬢だとは思わなかったが、最初にあいさつをした自分の判断は間違っていないと自分を褒めてあげたい。
「おや? あいさつは済ませてしまったのか。紹介したかったのにな」
ヴァーミリオン商会の会長が来てすぐそう言った。俺も最初に紹介してもらいたかったなと思ったが、不快に思われていないなら特に気にする必要もないだろうと思うことにした。
「クロエ、彼がいつも【蛙石】や【蛇眼石】を作ってくれているんだよ。まだ祝福の儀を迎えていないのにすごいだろ?」
「……え? わたしよりも年下なのですか?」
「ん? 年齢は聞かなかったのか? 彼はクロエの一つ下でまだ九歳だよ」
俺の年齢を聞いた御令嬢は目を見開き、俺の頭の先からつま先までを何度も往復させて驚いていた。
「まぁハーフですので成長が早いみたいですよ。それと両親がいませんので生きていくために手に職をつけただけですよ。たまたまです」
実際すごいのはアポロであって俺ではない。だから褒められるのは困るのだ。
「そ……そうなのですか……」
同情しているのかなと思ったのだが、どうやら自分のした行動が恥ずかしかったようで両手を頬に当て顔を赤らめていた。そしてその様子を何故か商会長が驚愕の表情で見つめていた。
「商会長殿、早速今年分を御覧いただきたいのですが……?」
「ん? あぁ……そうだね。見させてもらうよ」
失礼だったかなと思うも、情緒不安定な神子筆頭候補のためには一刻でも早く村を出て行かなければならず、商談を邪魔される前に済ませてしまう必要があったのだ。
「そう言えばティグル君は来年祝福の儀を受けることになるわけだけど、どのスキルがいいなとか思ったことはないのかな?」
いつか来るだろうと思っていた質問だが、さすがに既に持っているとは言えない。般若さんには虐待のことと同じくらい口止めされている秘密であり、俺自身説明できないスキルの話はしたくないので好都合でもあった。その結果思いついたスキルは、テイマーである。希少スキルの一つだから憧れていても不思議ではないのだ。
「テイマーがいいですね」
「ほぉ……うちの娘と同じ事を言うのだね」
「それは大変喜嬉しいですね。美少女との出会いだけでなく、意見まで同じというのは不肖な身である私には身に余る光栄でございます」
「美少女……」
ん? どうした?
御令嬢が何やら呟き商会長はポカーンとし、周囲の護衛や商会員は肩を震わして笑いを堪えていた。
「ティグル……さんは動物が好きなんですか?」
御令嬢がモジモジしながら話し掛けてきた。テイマー希望が気になったようだ。
「動物というよりもモフモフした存在が好きなんですよ。テイマーなら動物だけでなく幻獣とかも仲良くできる可能性がありますからね」
「モフモフは可愛いですよね! わたしも好きです!」
さっきまでのモジモジはなんだったんだ? と思えるほど興奮しながら近づいてきた。したがって御令嬢を至近距離で見ることになり、その可愛さに思わず動きが止まってしまった。
整った顔に綺麗な金色の瞳、艶やかな紫紺色の髪に豊満な胸。非の打ち所がないとはまさにこの子のことを言うのではないかと思うほどである。
「おほんっ! さて取引といこうかね」
取引は御令嬢が見学のなか行われ少しだけ緊張するもいつものように終わり、今回もまた生活用品を購入するのだが、今回はいつもより多めに購入することにした。お金もスキルに全額入れず、懐にこっそりしまって逃亡資金として取っておいた。
というのも次に来るのは、王族と一緒に祝福の儀を終えて神子が判明した後で、エルフの村で開かれる宴に参加するために物資を持って訪れるそうだ。
つまり、俺は死亡扱いでこの村にはいないのだ。
「……それでは取引の時間をいただきましてありがとうございました」
一瞬『今まで』と言いかけてしまったが、なんとか堪えあいさつを終えた俺は家に戻ることにした。もう会うことはないかもしれないけど、初めてよくしてくれたことは決して忘れはしないと心に刻み込むのだった。
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