エルフに転生したけど、魔法じゃなくておもちゃで無双する

暇人太一

文字の大きさ
上 下
19 / 23
第一章 転生と計画

第十八話 アポロ、社長になる

しおりを挟む
 今日は待ちに待った遺跡探検の日だ。まぁ昨日隊商を見送った後に少し覗いてみたけど、すごく広い空間の真ん中に祭壇みたいなものがある以外は特に目新しいものはなかった。それでも地下空間というものはワクワクしてしまうのは不思議である。

「あの真ん中は最後にしようね。他に何があるか探してみよう? いいよね?」

「もちろんだよ」

 ここは食肉製造プラントにする場所だから、一度稼働させたら二度と入れなくなる場所だ。だからこそ、見落としがないくらい徹底的に探索しなければならない。しかしいかんせん暗くて見にくい。一応カンテラを持ってきたが広すぎるし暗すぎるしで、足元すらよく見えない。

 アポロは魔法で光源を確保して何かいろいろ探している。昨日覗いたときに、遺跡内の全体像を把握できたのもアポロの魔法のおかげだ。アポロこそチートだと思うしアポロがいれば何でもできそうだが、一人によりかかって生活していくのは家族でも友達でもない。俺はアポロに寄生したくないのだ。よって遺跡探検は三人の勝負となった。

 俺も【トイ】で使えるアイテムを探したけど、体験版じゃあ何もできないことが判明しただけだった。それでも何かないかと探していると、足元にあった何かに躓いた。あと少しで転びそうになり、思わずたたらを踏んだ。

 不思議に思いながらもカンテラを向けてみると、地面から太い管が少し露出していた。俺は勝利を確信してアポロたちを呼んだ。

「おーい! 見つけたぞー!」

「えぇぇぇーーー!」

「今行きマス」

 二人は勢いよく飛んできて俺が指し示す地面に視線を向けた。二人は負けたことも悔しがったが、この管がどこに繋がっているかが気になったようで、それぞれの端に向かって飛んでいった。

「見つけたよー! この部屋が怪しいと見た!」

 俺はベガを待って一緒に行き、部屋の前でそわそわしているアポロと合流した。アポロは既に扉が開くか試しており、開いたことを確認したあとは中を覗かず俺たちを待っていたようだ。

「じゃあ開けるよー。準備はいい?」

「いいぞ」

「マスター、開けてください」

 アポロはそっと扉を開けると中に光源を入れ、全体像を見れるように部屋の中を一周させた。部屋の中はそこまで広くなく、真ん中にミキサーみたいな形をした機会が置かれていた。全体的に黒色だが、ガラスを使っているか分からないけど透明な部分には液体が入っていた。そしてよく見ると液体の中には石が浮いているのだ。

 このとき俺は『この世界の石は浮くんだな』なんて思っていたが、アポロにはそれが何か分かったようだった。

「あれは精霊石! しかも天然の精霊石だよ! でも力が尽きる寸前だよ。どう使えば属性の判断ができなくなるまで力がなくなるんだよ!」

 アポロが憤慨している。悲しんで耳が垂れたり怒って耳が立ったりと、喜怒哀楽がはっきりしていて可愛い子である。でも悲しませると俺の心にもダメージが入るから、この機械から精霊石を取り出してあげようと思った。

「斧で割ってみない? 宝箱用に手斧持ってきたんだけど、あれも中に欲しい物が入っているって部分では共通しているから、宝箱でいいんだよね?」

「……うん! じゃあ足場作るね!」

 アポロが土魔法で足場を作り、石から離れている部分に思いっきり斧を振り下ろした。一度目は弾かれ、二度目は傷がつき、三度目には亀裂が入り、四度目には中身の液体が噴き出したのだ。そして最後にもう一度振り下ろした斧によって大穴が開き、俺は中にあった精霊石を取り出してアポロに渡した。

「もうダメなのか?」

「うーん。そうだ! レグルたちが力を込めれば元通りになるかもしれないし、精霊が休む場所としては精霊石は格別っていうから、持って帰って大事に持ってようよ」

「じゃあ俺のスキルが正規版になるまで持ってて。エルフに取り上げられる可能性がほぼ絶対だからさ。ヤツらは精霊関係のものは全て自分たちのものって考えているみたいだし」

「なにか持ってるの?」

「え? 森にある世界樹」

「どこの森?」

「俺たちが今いる森」

 アポロは首を傾げながら唸って考えていた。結局分からず、外に出たら教えることになった。

「じゃあ早速真ん中に行こう!」

 他には何もなかったから本命に行くしかないのだが、本命も特に目新しいものはなかった。さっきの機械に入っていたのと同じ液体に囲まれた石製の仏壇のようなものが置かれているだけだ。

 手当たり次第にペタペタ触っていくが何もなく、空洞かどうか確認するも何もない。そしてついに帰ろうとしたときベガが何かを見つけたのだ。

「これは……鍵デスネ」

「一応もらっておくか」

「じゃあ帰って食肉製造プラントを作ろうね!」

 何気に楽しみにしているのか、アポロは食肉製造プラントに対して乗り気だ。それもそのはずで食肉製造プラントの肉を食べ続ければ、エルフはいずれ自分たちが忌み嫌うダークエルフに進化するからだ。そんな事例は天界でも発見されておらず、新発見を天界より先に確認できると喜んでいた。

 早めに始めれば祝福の儀を迎えるときには、病的にまで白い肌が肌色から小麦色くらいまでにはなるだろう。そしてその姿で王族に会うといい。

 そして森に戻ってくるとまず最初に世界樹を教えた。俺が指差した先を見たアポロはというと、口をポカーンと開けて固まっていた。

「アポロ?」

「あぁ……。あれは巨大な魔樹だよ。魔境に生えている樹木だから品質はいいけど、荷車を作った木と全く同じだよ。大きいから驚いたけど、それだけだよ」

「じゃあエルフが力説していた説って間違ってたのかー! でも王族は世界樹だと思っているから、あそこに住んでるんだよなー。憐れなやつらだ」

「本物の世界樹は比べものにならないくらい巨大らしいよ」

「じゃあ俺は本物の世界樹を探しに行きたいな。アポロたちは場所を知ってるかもしれないけど、少しずつヒントを集めて探していかないか?」

「そうだね! その方が冒険ぽいね!」

「楽しそうデス」

 その日俺たちの新しい目標が決まり、他にも行きたい場所や探したいものなどを話し合った。それはとても楽しい時間だった。


 ◇


 翌日、今日からはついに食肉製造プラントを稼働させるための準備を始める。まずは子持ちの蛇を探して連れて来なければならないのだが、小屋の空堀にいたであろう我らの食肉を食べて満腹になった大蛇が何匹か横たわっていた。気持ち悪いだけでなく肉を盗られたことで怒ったアポロによって、高威力の放水攻撃を喰らって食肉製造プラントの方になすすべなく流されていった。

「子持ちいた?」

「全部!」

「じゃあこれからは皮と目玉と舌と魔核を取ったら、少量の水と一緒に穴の中にポイだからね。それと格子扉は餌やり以外は完全封鎖ね」

「でもどうやって肉を獲るの? 穴に入るのは怖すぎて無理だよ!?」

「あの蛇は賢いから、好物のジュエルフロッグを横穴に置いておけば勝手に食べるよ。そしたらそのまま釣る。食後で動きが鈍くなっているだろうし、改造型格子扉はギロチンとしても使えるから、穴に入ることはないと思うけど、出て来るのが一匹だけとは限らないから注意が必要だけどね」

「食べられたあとの蛙はどうするの?」

「素材の扱いってどうなるの? 食べられたら魔核のエネルギーが尽きたとか、目玉が腐ったとか」

 これが最重要課題というのは間違いないだろう。

 もし食べられても蛙石として使用できるのなら、何も気にすることはなくなるけど、できない場合はカラーフロッグの養殖を完全に終わらせて、ジュエルフロッグ一本でやっていくしかないだろう。カラーフロッグをやめない理由はエルフに人気の肉だからだ。食べれなくなったら代わりに獲りに行くからと、狩人にしつこく聞かれることが予想される。

 よって、カラーフロッグは定期的に納品しなければいけない食材であった。

「食べられてから取り出すまでの時間によりマス。食べられてすぐでしたら体内に触れた場所ならともか、魔核や肉は大丈夫でショウ。目玉はほとんど運でショウネ。どちらにしろジュエルフロッグの養殖拡大は必須デスネ。ですが、カラーフロッグはやめなくても大丈夫かと思いマス。目玉の加工は増えますが、小粒でいいのならそこまで難しくはありませんので、マスターなら朝飯前デス」

「ぼ……ぼくの仕事が激増したね……」

「ごめんな、アポロ。このお礼は絶対にするから、しばらくは蛙と蛇の仕事を手伝ってくれ!」

「謝らなくていいんだよ。仕事は気持ち悪いけど、この環境はぼくにとってありがたいからね! ダンジョンがないこの森で長期間の魔境滞在と魔物討伐は、みんなの願いが早く叶うってことだからね!」

「じゃあ蛇はかなりおいしいかもな。この森ではかなり強い部類だから、育てて首を落とすだけなんてレベル上げには持って来いだな!」

 もちろんギロチン可変型の格子扉を作ったのはアポロだが、なかった場合は情報から毒槍で攻撃して仕留める予定だった。つまり、元から蛇は俺の糧にもなる予定だったのだ。

「みんな喜んでるだろうなー!」

 アポロの嬉しそうな顔を見たらもう少し蛇を確保したくなったので、空堀にジュエルフロッグを並べてみた。すると、徐々に集まり出す子持ち蛇とボスとも呼べそうなほどデカい巨大蛇。横穴に入るか心配になる大きさをアポロが無理矢理流し、蛇の臭いを薬草で消した後、蛇除けの薬を小屋と空堀の周りに散布した。

 これによりエルフの村の地下は魔境の森の中でも強大な魔物の一体である巨大蛇の住処になり、同時に食肉製造プラントが完成するのだった。それにしても、あの地下遺跡のおかげでエルフの村の結界が強化されたり、農作物の育ちがよかったりすると言っていたが何もなかったな。巨大な精霊とかがいると思ったんだけどな。

 結局、もう二度と行けないからと考えることを放棄した。そしてこの二週間後、とうとうシーズンに突入した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

召喚勇者、人間やめて魂になりました

暇人太一
ファンタジー
甘酸っぱい青春に憧れ高校の入学式に向かう途中の月本朝陽は、突如足元に浮かび上がる魔法陣に吸い込まれてしまった。目が覚めた朝陽に待っていた現実は、肉体との決別だった。しかし同時に魂の状態で独立することに……。 四人の勇者のうちの一人として召喚された朝陽の、魂としての新たな生活の幕が上がる。 この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...