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第三章 雑用、始めます
第七八話 正直者
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大きなお手々を犯人に向けて決め台詞を言う巨デブ神官熊。
カッコいい姿に拍手で讃えるテオとニア。
「えっ? ぼく?」
そしていきなり犯人にされ動揺する少年。
『そう、お前』
俺は当初サッくんを指し示すと思っていたのだが、巨デブ神官熊は別の人物を犯人として挙げた。
その少年はザ・普通が相応しい言葉で、他に表現をしようがない。今も震えて困惑しており、子供らしいリアクションをしていると思う。
とても犯人には見えない。
「ぼ、僕じゃないよっ」
『犯人はみんな同じことを言う』
「仰るとおりっ!」
大人組の頭上には疑問符が浮かんでいるというのに、唯一テオだけが巨デブ神官熊の味方をしている。
テオの太鼓持ちに機嫌を良くした巨デブ神官熊が畳み掛けるように少年を詰問していく。熊神の神託による確信と、熊神狂信者による支持を得た巨デブ神官熊は、この場において最強の尋問官であろう。
『うむ。一見普通であることこそがお前の特徴であり、お前の特殊能力だろう。どんな場所でも溶け込める能力というのは潜入工作員にとって最高の能力であり、一流のみが持ち得る能力とも言える』
「その上で演技まで身につけたら、鬼に金棒ですねっ!」
『うむ。正にこの者がそれよ』
テオのよいしょに気を良くしたのか、口調まで変わり始める巨デブ神官熊。
「僕は──「なるほどっ。でしたら、熊神様の力を使わねば分かりますまいっ」」
お前、誰だよ。
というか、俺の喋らせない戦法を使うなって。
元凶として叱責されたらどうしてくれる。
『そう。偉大なる熊神様が教えてくださらねば、もっと悲しい事件が起こっていたに違いない』
「熊神様バンザーイっ」
「バンザーイっ」
ニアも真似しないの。
ルイーサさんに怒られるよ?
「いい加減にしてっ! 僕じゃないっ!」
「そうだ。この子は真面目が取り柄で、他人の悪口を言うところすら見たことがない」
『思い上がるな』
「何?」
おい、どうした。
不機嫌ポイントがあったのか?
声色から上機嫌が窺えた明るい声が、地を這うような低い声に変わり、万歳三唱をしていたテオとニアも驚き動きを止める。
『子供の様子の全てを親が知っているというのはお前の思い込みだ。親の知らないところで何をするか分からないから、親は子供から目を離せないと思い悩むのであろう?』
この言葉に疑問符を浮かべていた大人組が一方向を見て大きく何度も頷いていた。
やめろ。こっちを見るな。
『実際どうだ? 目を離したから決闘騒ぎなどという問題を起こしたのではないか? これが予想できて放置していたとするならば、お前は親として失格だ』
「貴様っ」
多少動けるようになった神父が殺気を放ちながら巨デブ神官熊に歩を進める。
おっと。
能面様や巨デブ神官熊に驚いて【念動】を緩めてしまっていたか。
いかんなぁ。集中を切らせるなんてまだまだだ。
「──くっ」
決してわざと希望を持たせたわけじゃないんだよ?
だからそんなに睨まないでよ。
『おや? 具合が悪いのか?』
「…………」
『無理せずに休んでいると良い。お前が目覚めたときには話は無事に終わっているさ』
「はっ? ──っ」
元々神父が近づいていたこともあって距離は最初よりかは近かったけど、それでも手が届く距離にはいなかった。
それなのに、瞬きするまでもない刹那の瞬間で、神父は強制的に地面とキスさせられていた。
──このデブ、速っ!
「うおぉぉぉぉぉっ! さすがでございますぅぅぅっ!」
神父の方が先に殺気を向けていた結果だから、巨デブ神官熊の行動に疑問はないけど、だからといってテオのようにあからさまな称賛はできないな。
絶対に後で怒られるよ。
『うむ。お前の信仰心は感心するものがある。名を名乗ることを許そう』
巨デブ神官熊はテオの称賛に大層ご満悦らしく、名乗りを許すという栄誉を与えることにしたらしい。
つまり、巨デブ神官熊はテオの名前を覚えておき、後日助力しても良いと言っているのだ。俺の従魔の召喚熊という微妙な立場のはずなのに。
「身に余る光栄に感謝申し上げます。私の名はテオドール・フォン・アグニールと申します」
『うむ。良き名だ』
神父を踏みつけた状態でテオを褒める巨デブ神官熊と、跪き頭を垂れるテオ。
二人だけの世界に浸っているところ申し訳ないけど、さっさと先に進んで欲しい。
『さて、具合が悪そうな者はいなくなった。話を進めようではないか』
地面にめり込んだ神父の後頭部から足を退け、普通少年に目を向ける巨デブ神官熊。
『少年よ、無実を訴えるというならば相応の証拠を示さねばなるまい。反対に我々も犯人とするならば相応の証拠を示す必要がある。が、我々は既に用意している上、固有の能力で虚偽の申告を見破ることができる』
「えっ……」
『では、無実であることを立証してもらおうではないか』
「そんなのっ……ないっていう証明なんかできないよっ」
まぁ悪魔の証明って言うもんな。
でも少年の場合はできるでしょ。
『できないはずなかろう? 悪口一つ言ったことがないのだろ?』
「そ、そうだよ」
『そうよな。ならば「正直者で真面目な僕をあなたの固有能力で調べてください」と言えば良かろう? 気づかなかったのか、それとも調べて欲しくないのか。いったいどちらなんだろうな?』
「そ、それは……気づかなかったな……」
「ん? 気づかないことを教えてもらったら『ありがとうございます』でしょ?」
神父を抑える必要がなくなり暇になったので、熊の威を借らせていただきました。
それぞれ違った感情の視線を感じつつ、巨デブ神官熊の太鼓持ち二号に就任した。
「お礼を言うのはまだ早いと、僕は思うんだ」
「それは何故?」
「その能力が公正である証拠がないからだよ。そんな簡単なこともわからないの?」
「それは別の話だよね? 気づかなかったことを気づかせてくれたことは、それで一つのお礼を言う事由になるよね? 能力の公正はまた別のことで、公正な能力と証明された場合は『疑いを晴らしてくれてありがとう』になるんだよ。二つのことを混同している時点で君はズレているんだよ。そんな簡単なことも分からないの?」
「──チッ。じゃあ、ありがとう。これで良い?」
「『じゃあ』の使い方、間違っているよ? この場合に使うと、納得してないけどお前が言うから仕方なくって意味になってしまい、大変失礼な発言になるんだよ。勉強になったかな? 将来があるなら、礼儀作法と一緒に習うと良いよ」
「はぁ? 僕の人生はお前とは違って薔薇色って決まってるんだよっ。エルフでもないくせに『エルフの神秘』とか言って、馬鹿なんじゃないのっ?! 僕のお客さんはみんなお前のせいで仕事がなくなったって言ってた。おかげで僕の収入も減ったんだよっ。人生設計が大幅に狂って……いったいどうしてくれるんだよっ!」
──パチパチパチパチッ。
『見事なり』
「ははっ。神官様の正しさを証明でき、誠に身に余る光栄でございます」
同時に王弟仕込みの礼を取ってみた。
それにしても、巨デブ神官熊の拍手が可愛い。
プニプニしてる肉球で拍手しているせいか、音は控えめで仕草がたまらなく可愛い。
「テオ様。これが従者の役目よ」
「クソッ。悔しいッ」
『うむ。我が優秀な従者のおかげで化けの皮を剥ぐことができたようだ。シスターよ、これがお主の子の本当の姿よ。とくと目に焼き付けよ』
「…………」
未だ信じられないようで、無言で目を見開いて少年を見るシスター。
「さすが子供。煽り耐性低いね。男の取り方じゃなくて、孤児で生きるための覚悟を身に付けるべきだったね」
「はぁぁぁぁっ!? お前にっ! お前にっ! 僕のっ! 僕達の何が分かるって言うんだよっ!」
「何も」
「じゃあっ! 覚悟ってなんだよっ!」
「聞いたら何でも教えてもらえると思っているような人間の気持ちや考えなんか一生分かるわけないでしょ。というか分かりたくもない」
どうして孤児院出身の冒険者が上手くいかないか考えたことがないのか?
環境?
武器?
そんなものなくても誰でもなれることに、冒険者としての利点があるというのに。
「決闘一つとってもそう。窮地に陥れば強者が介入してくれて助けてくれる。【調停者】の地位を利用して有耶無耶にしてくれる。そして【調停者】とコネを持ちたいからと、子どもたちの客になる。なんて甘く温い環境にいるんだ。だからいつまで経っても覚悟を持てないんだよ。孤児は貴族じゃない。何事も知らないヤツから死んで行くんだよ」
聞かなきゃ知ることもできない?
聞いた話を鵜呑みにする?
他に類似の話はないか?
信憑性は?
検証はしたのか?
たった一つの事柄でも死ぬ気で情報を集めることに意味があり、だからこそその情報に価値がつく。
「覚悟が何かって?」
「お前だって分かんないんだろっ?! 孤児じゃないもんなぁっ! 宿屋にタダで泊まってるだけの居候だろっ!」
「──死ぬ覚悟だよ」
本気全開の殺気を放ちながら少年に告げる。
「「「──っ」」」
『まぁ待て』
いつの間にか成体熊サイズになったヴァルが横にいて、俺を小脇に抱えた。
「ごめんごめん。ついイラッとしちゃって」
『うんうん。我もイラッとしたから仲間だな。だがもっと怒っている奴がいてな。どう宥めるか悩むな』
「えっ?」
ヴァルが指し示す先にいるのは──。
「おかえりなさいませ、能面様」
と、怒れる【青獅子】ルークさん。
『振り出しに戻ったな』
「今日、帰れるかな……」
それにしても、どこの世界も自供って最強なんだな。
それが誘導尋問によるものだったとしても。
カッコいい姿に拍手で讃えるテオとニア。
「えっ? ぼく?」
そしていきなり犯人にされ動揺する少年。
『そう、お前』
俺は当初サッくんを指し示すと思っていたのだが、巨デブ神官熊は別の人物を犯人として挙げた。
その少年はザ・普通が相応しい言葉で、他に表現をしようがない。今も震えて困惑しており、子供らしいリアクションをしていると思う。
とても犯人には見えない。
「ぼ、僕じゃないよっ」
『犯人はみんな同じことを言う』
「仰るとおりっ!」
大人組の頭上には疑問符が浮かんでいるというのに、唯一テオだけが巨デブ神官熊の味方をしている。
テオの太鼓持ちに機嫌を良くした巨デブ神官熊が畳み掛けるように少年を詰問していく。熊神の神託による確信と、熊神狂信者による支持を得た巨デブ神官熊は、この場において最強の尋問官であろう。
『うむ。一見普通であることこそがお前の特徴であり、お前の特殊能力だろう。どんな場所でも溶け込める能力というのは潜入工作員にとって最高の能力であり、一流のみが持ち得る能力とも言える』
「その上で演技まで身につけたら、鬼に金棒ですねっ!」
『うむ。正にこの者がそれよ』
テオのよいしょに気を良くしたのか、口調まで変わり始める巨デブ神官熊。
「僕は──「なるほどっ。でしたら、熊神様の力を使わねば分かりますまいっ」」
お前、誰だよ。
というか、俺の喋らせない戦法を使うなって。
元凶として叱責されたらどうしてくれる。
『そう。偉大なる熊神様が教えてくださらねば、もっと悲しい事件が起こっていたに違いない』
「熊神様バンザーイっ」
「バンザーイっ」
ニアも真似しないの。
ルイーサさんに怒られるよ?
「いい加減にしてっ! 僕じゃないっ!」
「そうだ。この子は真面目が取り柄で、他人の悪口を言うところすら見たことがない」
『思い上がるな』
「何?」
おい、どうした。
不機嫌ポイントがあったのか?
声色から上機嫌が窺えた明るい声が、地を這うような低い声に変わり、万歳三唱をしていたテオとニアも驚き動きを止める。
『子供の様子の全てを親が知っているというのはお前の思い込みだ。親の知らないところで何をするか分からないから、親は子供から目を離せないと思い悩むのであろう?』
この言葉に疑問符を浮かべていた大人組が一方向を見て大きく何度も頷いていた。
やめろ。こっちを見るな。
『実際どうだ? 目を離したから決闘騒ぎなどという問題を起こしたのではないか? これが予想できて放置していたとするならば、お前は親として失格だ』
「貴様っ」
多少動けるようになった神父が殺気を放ちながら巨デブ神官熊に歩を進める。
おっと。
能面様や巨デブ神官熊に驚いて【念動】を緩めてしまっていたか。
いかんなぁ。集中を切らせるなんてまだまだだ。
「──くっ」
決してわざと希望を持たせたわけじゃないんだよ?
だからそんなに睨まないでよ。
『おや? 具合が悪いのか?』
「…………」
『無理せずに休んでいると良い。お前が目覚めたときには話は無事に終わっているさ』
「はっ? ──っ」
元々神父が近づいていたこともあって距離は最初よりかは近かったけど、それでも手が届く距離にはいなかった。
それなのに、瞬きするまでもない刹那の瞬間で、神父は強制的に地面とキスさせられていた。
──このデブ、速っ!
「うおぉぉぉぉぉっ! さすがでございますぅぅぅっ!」
神父の方が先に殺気を向けていた結果だから、巨デブ神官熊の行動に疑問はないけど、だからといってテオのようにあからさまな称賛はできないな。
絶対に後で怒られるよ。
『うむ。お前の信仰心は感心するものがある。名を名乗ることを許そう』
巨デブ神官熊はテオの称賛に大層ご満悦らしく、名乗りを許すという栄誉を与えることにしたらしい。
つまり、巨デブ神官熊はテオの名前を覚えておき、後日助力しても良いと言っているのだ。俺の従魔の召喚熊という微妙な立場のはずなのに。
「身に余る光栄に感謝申し上げます。私の名はテオドール・フォン・アグニールと申します」
『うむ。良き名だ』
神父を踏みつけた状態でテオを褒める巨デブ神官熊と、跪き頭を垂れるテオ。
二人だけの世界に浸っているところ申し訳ないけど、さっさと先に進んで欲しい。
『さて、具合が悪そうな者はいなくなった。話を進めようではないか』
地面にめり込んだ神父の後頭部から足を退け、普通少年に目を向ける巨デブ神官熊。
『少年よ、無実を訴えるというならば相応の証拠を示さねばなるまい。反対に我々も犯人とするならば相応の証拠を示す必要がある。が、我々は既に用意している上、固有の能力で虚偽の申告を見破ることができる』
「えっ……」
『では、無実であることを立証してもらおうではないか』
「そんなのっ……ないっていう証明なんかできないよっ」
まぁ悪魔の証明って言うもんな。
でも少年の場合はできるでしょ。
『できないはずなかろう? 悪口一つ言ったことがないのだろ?』
「そ、そうだよ」
『そうよな。ならば「正直者で真面目な僕をあなたの固有能力で調べてください」と言えば良かろう? 気づかなかったのか、それとも調べて欲しくないのか。いったいどちらなんだろうな?』
「そ、それは……気づかなかったな……」
「ん? 気づかないことを教えてもらったら『ありがとうございます』でしょ?」
神父を抑える必要がなくなり暇になったので、熊の威を借らせていただきました。
それぞれ違った感情の視線を感じつつ、巨デブ神官熊の太鼓持ち二号に就任した。
「お礼を言うのはまだ早いと、僕は思うんだ」
「それは何故?」
「その能力が公正である証拠がないからだよ。そんな簡単なこともわからないの?」
「それは別の話だよね? 気づかなかったことを気づかせてくれたことは、それで一つのお礼を言う事由になるよね? 能力の公正はまた別のことで、公正な能力と証明された場合は『疑いを晴らしてくれてありがとう』になるんだよ。二つのことを混同している時点で君はズレているんだよ。そんな簡単なことも分からないの?」
「──チッ。じゃあ、ありがとう。これで良い?」
「『じゃあ』の使い方、間違っているよ? この場合に使うと、納得してないけどお前が言うから仕方なくって意味になってしまい、大変失礼な発言になるんだよ。勉強になったかな? 将来があるなら、礼儀作法と一緒に習うと良いよ」
「はぁ? 僕の人生はお前とは違って薔薇色って決まってるんだよっ。エルフでもないくせに『エルフの神秘』とか言って、馬鹿なんじゃないのっ?! 僕のお客さんはみんなお前のせいで仕事がなくなったって言ってた。おかげで僕の収入も減ったんだよっ。人生設計が大幅に狂って……いったいどうしてくれるんだよっ!」
──パチパチパチパチッ。
『見事なり』
「ははっ。神官様の正しさを証明でき、誠に身に余る光栄でございます」
同時に王弟仕込みの礼を取ってみた。
それにしても、巨デブ神官熊の拍手が可愛い。
プニプニしてる肉球で拍手しているせいか、音は控えめで仕草がたまらなく可愛い。
「テオ様。これが従者の役目よ」
「クソッ。悔しいッ」
『うむ。我が優秀な従者のおかげで化けの皮を剥ぐことができたようだ。シスターよ、これがお主の子の本当の姿よ。とくと目に焼き付けよ』
「…………」
未だ信じられないようで、無言で目を見開いて少年を見るシスター。
「さすが子供。煽り耐性低いね。男の取り方じゃなくて、孤児で生きるための覚悟を身に付けるべきだったね」
「はぁぁぁぁっ!? お前にっ! お前にっ! 僕のっ! 僕達の何が分かるって言うんだよっ!」
「何も」
「じゃあっ! 覚悟ってなんだよっ!」
「聞いたら何でも教えてもらえると思っているような人間の気持ちや考えなんか一生分かるわけないでしょ。というか分かりたくもない」
どうして孤児院出身の冒険者が上手くいかないか考えたことがないのか?
環境?
武器?
そんなものなくても誰でもなれることに、冒険者としての利点があるというのに。
「決闘一つとってもそう。窮地に陥れば強者が介入してくれて助けてくれる。【調停者】の地位を利用して有耶無耶にしてくれる。そして【調停者】とコネを持ちたいからと、子どもたちの客になる。なんて甘く温い環境にいるんだ。だからいつまで経っても覚悟を持てないんだよ。孤児は貴族じゃない。何事も知らないヤツから死んで行くんだよ」
聞かなきゃ知ることもできない?
聞いた話を鵜呑みにする?
他に類似の話はないか?
信憑性は?
検証はしたのか?
たった一つの事柄でも死ぬ気で情報を集めることに意味があり、だからこそその情報に価値がつく。
「覚悟が何かって?」
「お前だって分かんないんだろっ?! 孤児じゃないもんなぁっ! 宿屋にタダで泊まってるだけの居候だろっ!」
「──死ぬ覚悟だよ」
本気全開の殺気を放ちながら少年に告げる。
「「「──っ」」」
『まぁ待て』
いつの間にか成体熊サイズになったヴァルが横にいて、俺を小脇に抱えた。
「ごめんごめん。ついイラッとしちゃって」
『うんうん。我もイラッとしたから仲間だな。だがもっと怒っている奴がいてな。どう宥めるか悩むな』
「えっ?」
ヴァルが指し示す先にいるのは──。
「おかえりなさいませ、能面様」
と、怒れる【青獅子】ルークさん。
『振り出しに戻ったな』
「今日、帰れるかな……」
それにしても、どこの世界も自供って最強なんだな。
それが誘導尋問によるものだったとしても。
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