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第二章 冒険、始めます
第六一話 初めての領地防衛
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賊の引き渡しと賊の土地の名義変更は恙無く終了し、今は冒険者ギルドにいる。
エイダンさんの採取依頼が出ているか確認しに来たのだが、なんとすでに受けた人がいるらしく、その依頼書は受注中のボードに貼られていた。
俺が魔石を持って帰ってきたことで、自分も行けると踏んだ冒険者がいたらしい。予想できていたことだし、採取できなかったという失敗の実績を広めてくれれば、今後邪魔されることもなく独占できるだろう。
だが、突然暇になってしまった。
せっかく来たのだから何か依頼を受けておきたいと思い物色していると、ルークとイムレを登録したときに退けられた受付嬢が声を掛けてきた。
「依頼をお探しですか?」
「まぁ……はい」
「でしたら、こちらの依頼はどうでしょうか? 先程受け付けたばかりで朝の貼り出しに間に合わなかったのですが、ルイーサ様の関係者の方がよろしいかと思いまして」
ん? ルイーサさん関係の依頼が出ているなんて聞いてないけどなぁ。
「見せてもらえますか?」
「受付へどうぞ」
受付の前に行くと、カウンターに依頼書が置かれているのが見えた。
内容は採取依頼で、北の森内にある沼地で錬金術に使う泥の採取と、付近に自生する薬草の採取だった。薬草の資料が添付されており、泥の採取用容器も預けられているそうだ。
依頼料は森の外苑ではないからということで、危険手当を別にしても相場よりも高めになっている。
問題は、何故ルイーサさん関係なのかということだろう。
「依頼者はシェイドール商会ポット支店の支店長ですので、ルイーサ様の関係者にいかがかと」
「この商会とどのような関係が?」
「えっ?」
「ディル、多分その支店長は弟だ」
「弟? えーと、唯一この町に住んでいるという?」
「そうだ」
ナディアさんでも多分と言っていることを、ほぼ他人の俺が知るわけない。
「あれ? どこかで聞いたことがある名前だな……。どこだっけ」
「ご存知なのも無理はありません。シルフォード商会を除けば、この町で一番有名な商会ですからね」
「へー」
「それで、どうします?」
「まぁルイーサさんの子どもの依頼ならいいんじゃない?」
「対象は赤銅級の依頼ですので、石板級か赤銅級の方のみ受けることができます」
「じゃあ僕とニアで受けようか?」
「うん」
「では、受け付けさせていただきますのでカードの提示をお願いします」
俺とニアは冒険者カードを渡す。
しばらく待った後に依頼書の控えとともにカードをもらい、同時に採取用の容器や資料も受け取った。
デッドマン号に四つの瓶を載せ、テオの希望で宿屋に向かう。
依頼に行くことを伝えるついでに、テオ自身の装備も身に着けて森に行きたいらしい。
北門に向かうついでに寄ればいいだけなので了承した。
ちなみにデッドマン号がなかった場合は、ギルドで荷車を貸してくれるらしい。
当然壊れたら弁償する必要があるけど、複数の冒険者パーティーで受ければ壊さないように注意することもできるはず。実際にエイダンさんの依頼を受けた人たちも複数のパーティーで、採取と戦闘で担当を分けたそうだ。
情報漏洩になるからギルドは教えてくれないけど、シスターの知り合いの冒険者に聞いたら普通に教えてくれた。
「そうそう。土地の件ですけど、これでアレを黙っておいてくださいね」
「ん? あぁ……なるほど。それで……。分かったよ、墓場まで持っていこう」
「墓場ないじゃん……」
「何か言ったかい?」
「いえ、何も」
シスターとの契約が終わった頃、ようやく宿屋に着いた。
テオと寝坊組の身支度をしている間に依頼を受けたことを報告し、賊の報告についてはシスターに丸投げするとオブラートに包んで伝えた。
少しだけジト目で見られたが、すぐに準備組がやってきて逃走できた。
◆
沼地は湖の北を通って、少し進んだところにあった。
「薬草は根元を残して採取し、泥は底の粘土っぽいものを採取すると……」
薬草はともかく、泥は普通の低位冒険者には無理じゃないか?
「おにいちゃん、どろどうする?」
ニアと従魔たちはデッドマン号に乗っており、汚れを回避している。
テオとナディアさんは少し離れた場所で魔樹を探していた。
ナディアさんに余裕があったら槍も作りますよって言ったら、魔法杖兼用のものが良いと話が広がり、それならニアとお揃いで作ろうとなった。
そしてその素材なら絶対魔樹を使いたいそうで、テオと一緒に探しているわけだ。
これで寄生と言われずに済むだろう。
「お兄ちゃんがバンッて水を割るから、このロープを一緒に引こう」
「うん」
『素直だな……。心配になるぞ?』
分かるよ、その気持ち。
普通は「バンッて、何?」って言いそうだもん。
それとロープは見えるけど、その先のものは見えない。
ロープの先端には俺が【念動】でつくったバケツみたいな容器がつけてあり、その容器自体を操作しつつロープ引き体験をさせるだけだ。
本当なら不要な作業だが、何もやっていないという後ろめたさを消すために必要な作業だと思う。
「行くよ? せーのっ! バンッ!」
手刀を振り下ろして水を割るという超人技を披露し、崩れる水を《障壁》で堰き止めてロープを投げ入れる。
「うんしょっ」
「どっこいしょっ」
「うんしょっ」
「どっこいしょっ」
気の抜ける掛け声とともに、微妙に負荷を掛けたロープを引く。
横でルークとイムレが爆笑しているが、ニアが楽しそうだから良しとしよう。
あの誘拐未遂の日以降、外出していてもどこか不安そうにしていたから、楽しいという気持ちが不安を上回るならそれに越したことはない。
「四杯目……終わったーーーっ!」
「つかれたーーっ」
単純な動作でも繰り返せば疲労は貯まるわけで、五歳児のニアにとっては相当な労働になったはず。
「でもたのしかった」
「それならこれからも依頼を受けようか」
「うん」
テオたちも帰ってきたため帰ろうかと話していたのだが、その時ルークとテオが何かに反応した。
「『臭っ』」
「どうしたの?」
『沼地のせいで気づくのが遅れたが、何か臭いぞっ」
「本当にな」
「ん? ふむ……」
──【神字:理体】
──〈魔力掌握〉
──【念動】
──《無属性魔法:探知》
──〈索敵〉
「──ん?」
──【神字:処理】
──〈生命感知〉
「……なるほど」
「どうしたの?」
「スタンピードみたいだ」
「「はっ!?」
「なあに、それ」
「魔物の行進かな?」
「そんなもんじゃねぇよっ! 上位種が率いた魔物の軍隊だぞっ!?」
「早く戻って防衛準備に取り掛からねばっ」
「戻ったら犯罪者になると思うなーー」
「なんでっ!?」
「人為的に起こされたスタンピードだから。まぁとりあえず広いところに移動しましょう。できるなら、森から出さないようにしたいからね」
「はぁ!?」
「まぁいいから、いいから」
魔物の進行方向に向かって進み、微妙に広くボスウサ狩りをした拠点の近くに到着した。
ボスウサの拠点を思い出し、そこにデッドマン号を置いて俺以外の全員に待機してもらう。
ルークとイムレを護衛につけとけば大丈夫だろう。
むしろ、空堀を乗り越えてきた魔物を討伐してレベルを上げるのもいいだろう。
「おいっ! 一人でなんて無茶だっ!」
「そのために後詰でルークがいるんじゃん。僕は乱戦の方が得意だから心配入らないよ」
この作戦で一番重要なのはニアの護衛だ。
恐怖から守るためには母親が必要だし、ナディアさんもニアを気にしていては戦闘に集中できないだろう。
テオは単純に実力不足だけど、一応保護対象の要人である。
ここは大人しくしていてもらいたい。
「さてと、準備するか」
──〈心眼〉
──〈痛覚遮断〉
──〈身体強化〉
──〈魔力感知〉
──〈魔力掌握〉
──〈多重魔法〉
──【神字:理体】
──【神字:処理】
──【念動】
今回は暗殺モードだと都合が悪いので、気配を消さずにあえてちょうどいい量の魔力を放出して餌になる。
「なるべく大きい方がいいなぁ」
──〈悪路走破〉
──〈高速移動〉
──【念動:波動】
おそらくスタンピードに巻き込まれたであろう魔物がボスウサフォートに向かってきたので、先手を取って巨大羊を迎撃する。
懐に入って首に向かってフックを打ち込む。
同時に【念動:波動】を放ち、内部破壊を狙う。
打ち込んだら即座に離脱して挽き肉を回避。
「こいつは欲しいからボスウサフォートに送り込んでイムレに血抜きしてもらおう」
イムレの分体越しにお願いして、フォート内に【念動】を使って放り込んだ。
「……キモいのが来たなぁ」
スタンピード本隊よりも巻き込まれた魔物が次々と襲ってくるのだが、欲しいものはフォート内に入れておき、その他は進路妨害用のバリケードとして道に山積みにしている。
無事だった場合は、テオたちと一緒に使い途を考えればいい。
そして今回来たのは俺が嫌いな蛇。
討伐しても利用方法がないから、とりあえず殺気を込めた〈威圧〉で追い払おうと思う。
──が、何故か止まらぬ。
「おいっ! この臭い、多分香の臭いだっ!」
なるほど。
魔物寄せの香を使用しているから、止まることなく直進しているのか。
使用規制がある薬品だが、スタンピード発生時に魔物を誘導するために使ったりするらしい。効果の一つに理性を失くして狂化させるというものがあり、香の臭い以外反応しないようにしているらしい。
これは一撃必殺以外の討伐方法は考えられないかも。
中途半端に半殺しにしても、俺の〈痛覚遮断〉のようにダメージが通っていない状態になるだろう。
「君に決めた」
──〈悪路走破〉
──〈高速移動〉
──《無属性魔法:障壁》
──〈空歩〉
──【念動:波動】
脳天に連続して【念動:波動】を繰り出して討伐し、ナディアさんに首チョンパしてもらう。
俺が一番嫌いな顔面部分が最高値になる素材らしく、ルイーサさんたちが欲しがると聞いたから、一応先に切り取ってもらおうと思ったのだ。
「バイパーウィップ、ゲットだぜーーっ!」
さて本隊よ、かかってこいやぁっ。
エイダンさんの採取依頼が出ているか確認しに来たのだが、なんとすでに受けた人がいるらしく、その依頼書は受注中のボードに貼られていた。
俺が魔石を持って帰ってきたことで、自分も行けると踏んだ冒険者がいたらしい。予想できていたことだし、採取できなかったという失敗の実績を広めてくれれば、今後邪魔されることもなく独占できるだろう。
だが、突然暇になってしまった。
せっかく来たのだから何か依頼を受けておきたいと思い物色していると、ルークとイムレを登録したときに退けられた受付嬢が声を掛けてきた。
「依頼をお探しですか?」
「まぁ……はい」
「でしたら、こちらの依頼はどうでしょうか? 先程受け付けたばかりで朝の貼り出しに間に合わなかったのですが、ルイーサ様の関係者の方がよろしいかと思いまして」
ん? ルイーサさん関係の依頼が出ているなんて聞いてないけどなぁ。
「見せてもらえますか?」
「受付へどうぞ」
受付の前に行くと、カウンターに依頼書が置かれているのが見えた。
内容は採取依頼で、北の森内にある沼地で錬金術に使う泥の採取と、付近に自生する薬草の採取だった。薬草の資料が添付されており、泥の採取用容器も預けられているそうだ。
依頼料は森の外苑ではないからということで、危険手当を別にしても相場よりも高めになっている。
問題は、何故ルイーサさん関係なのかということだろう。
「依頼者はシェイドール商会ポット支店の支店長ですので、ルイーサ様の関係者にいかがかと」
「この商会とどのような関係が?」
「えっ?」
「ディル、多分その支店長は弟だ」
「弟? えーと、唯一この町に住んでいるという?」
「そうだ」
ナディアさんでも多分と言っていることを、ほぼ他人の俺が知るわけない。
「あれ? どこかで聞いたことがある名前だな……。どこだっけ」
「ご存知なのも無理はありません。シルフォード商会を除けば、この町で一番有名な商会ですからね」
「へー」
「それで、どうします?」
「まぁルイーサさんの子どもの依頼ならいいんじゃない?」
「対象は赤銅級の依頼ですので、石板級か赤銅級の方のみ受けることができます」
「じゃあ僕とニアで受けようか?」
「うん」
「では、受け付けさせていただきますのでカードの提示をお願いします」
俺とニアは冒険者カードを渡す。
しばらく待った後に依頼書の控えとともにカードをもらい、同時に採取用の容器や資料も受け取った。
デッドマン号に四つの瓶を載せ、テオの希望で宿屋に向かう。
依頼に行くことを伝えるついでに、テオ自身の装備も身に着けて森に行きたいらしい。
北門に向かうついでに寄ればいいだけなので了承した。
ちなみにデッドマン号がなかった場合は、ギルドで荷車を貸してくれるらしい。
当然壊れたら弁償する必要があるけど、複数の冒険者パーティーで受ければ壊さないように注意することもできるはず。実際にエイダンさんの依頼を受けた人たちも複数のパーティーで、採取と戦闘で担当を分けたそうだ。
情報漏洩になるからギルドは教えてくれないけど、シスターの知り合いの冒険者に聞いたら普通に教えてくれた。
「そうそう。土地の件ですけど、これでアレを黙っておいてくださいね」
「ん? あぁ……なるほど。それで……。分かったよ、墓場まで持っていこう」
「墓場ないじゃん……」
「何か言ったかい?」
「いえ、何も」
シスターとの契約が終わった頃、ようやく宿屋に着いた。
テオと寝坊組の身支度をしている間に依頼を受けたことを報告し、賊の報告についてはシスターに丸投げするとオブラートに包んで伝えた。
少しだけジト目で見られたが、すぐに準備組がやってきて逃走できた。
◆
沼地は湖の北を通って、少し進んだところにあった。
「薬草は根元を残して採取し、泥は底の粘土っぽいものを採取すると……」
薬草はともかく、泥は普通の低位冒険者には無理じゃないか?
「おにいちゃん、どろどうする?」
ニアと従魔たちはデッドマン号に乗っており、汚れを回避している。
テオとナディアさんは少し離れた場所で魔樹を探していた。
ナディアさんに余裕があったら槍も作りますよって言ったら、魔法杖兼用のものが良いと話が広がり、それならニアとお揃いで作ろうとなった。
そしてその素材なら絶対魔樹を使いたいそうで、テオと一緒に探しているわけだ。
これで寄生と言われずに済むだろう。
「お兄ちゃんがバンッて水を割るから、このロープを一緒に引こう」
「うん」
『素直だな……。心配になるぞ?』
分かるよ、その気持ち。
普通は「バンッて、何?」って言いそうだもん。
それとロープは見えるけど、その先のものは見えない。
ロープの先端には俺が【念動】でつくったバケツみたいな容器がつけてあり、その容器自体を操作しつつロープ引き体験をさせるだけだ。
本当なら不要な作業だが、何もやっていないという後ろめたさを消すために必要な作業だと思う。
「行くよ? せーのっ! バンッ!」
手刀を振り下ろして水を割るという超人技を披露し、崩れる水を《障壁》で堰き止めてロープを投げ入れる。
「うんしょっ」
「どっこいしょっ」
「うんしょっ」
「どっこいしょっ」
気の抜ける掛け声とともに、微妙に負荷を掛けたロープを引く。
横でルークとイムレが爆笑しているが、ニアが楽しそうだから良しとしよう。
あの誘拐未遂の日以降、外出していてもどこか不安そうにしていたから、楽しいという気持ちが不安を上回るならそれに越したことはない。
「四杯目……終わったーーーっ!」
「つかれたーーっ」
単純な動作でも繰り返せば疲労は貯まるわけで、五歳児のニアにとっては相当な労働になったはず。
「でもたのしかった」
「それならこれからも依頼を受けようか」
「うん」
テオたちも帰ってきたため帰ろうかと話していたのだが、その時ルークとテオが何かに反応した。
「『臭っ』」
「どうしたの?」
『沼地のせいで気づくのが遅れたが、何か臭いぞっ」
「本当にな」
「ん? ふむ……」
──【神字:理体】
──〈魔力掌握〉
──【念動】
──《無属性魔法:探知》
──〈索敵〉
「──ん?」
──【神字:処理】
──〈生命感知〉
「……なるほど」
「どうしたの?」
「スタンピードみたいだ」
「「はっ!?」
「なあに、それ」
「魔物の行進かな?」
「そんなもんじゃねぇよっ! 上位種が率いた魔物の軍隊だぞっ!?」
「早く戻って防衛準備に取り掛からねばっ」
「戻ったら犯罪者になると思うなーー」
「なんでっ!?」
「人為的に起こされたスタンピードだから。まぁとりあえず広いところに移動しましょう。できるなら、森から出さないようにしたいからね」
「はぁ!?」
「まぁいいから、いいから」
魔物の進行方向に向かって進み、微妙に広くボスウサ狩りをした拠点の近くに到着した。
ボスウサの拠点を思い出し、そこにデッドマン号を置いて俺以外の全員に待機してもらう。
ルークとイムレを護衛につけとけば大丈夫だろう。
むしろ、空堀を乗り越えてきた魔物を討伐してレベルを上げるのもいいだろう。
「おいっ! 一人でなんて無茶だっ!」
「そのために後詰でルークがいるんじゃん。僕は乱戦の方が得意だから心配入らないよ」
この作戦で一番重要なのはニアの護衛だ。
恐怖から守るためには母親が必要だし、ナディアさんもニアを気にしていては戦闘に集中できないだろう。
テオは単純に実力不足だけど、一応保護対象の要人である。
ここは大人しくしていてもらいたい。
「さてと、準備するか」
──〈心眼〉
──〈痛覚遮断〉
──〈身体強化〉
──〈魔力感知〉
──〈魔力掌握〉
──〈多重魔法〉
──【神字:理体】
──【神字:処理】
──【念動】
今回は暗殺モードだと都合が悪いので、気配を消さずにあえてちょうどいい量の魔力を放出して餌になる。
「なるべく大きい方がいいなぁ」
──〈悪路走破〉
──〈高速移動〉
──【念動:波動】
おそらくスタンピードに巻き込まれたであろう魔物がボスウサフォートに向かってきたので、先手を取って巨大羊を迎撃する。
懐に入って首に向かってフックを打ち込む。
同時に【念動:波動】を放ち、内部破壊を狙う。
打ち込んだら即座に離脱して挽き肉を回避。
「こいつは欲しいからボスウサフォートに送り込んでイムレに血抜きしてもらおう」
イムレの分体越しにお願いして、フォート内に【念動】を使って放り込んだ。
「……キモいのが来たなぁ」
スタンピード本隊よりも巻き込まれた魔物が次々と襲ってくるのだが、欲しいものはフォート内に入れておき、その他は進路妨害用のバリケードとして道に山積みにしている。
無事だった場合は、テオたちと一緒に使い途を考えればいい。
そして今回来たのは俺が嫌いな蛇。
討伐しても利用方法がないから、とりあえず殺気を込めた〈威圧〉で追い払おうと思う。
──が、何故か止まらぬ。
「おいっ! この臭い、多分香の臭いだっ!」
なるほど。
魔物寄せの香を使用しているから、止まることなく直進しているのか。
使用規制がある薬品だが、スタンピード発生時に魔物を誘導するために使ったりするらしい。効果の一つに理性を失くして狂化させるというものがあり、香の臭い以外反応しないようにしているらしい。
これは一撃必殺以外の討伐方法は考えられないかも。
中途半端に半殺しにしても、俺の〈痛覚遮断〉のようにダメージが通っていない状態になるだろう。
「君に決めた」
──〈悪路走破〉
──〈高速移動〉
──《無属性魔法:障壁》
──〈空歩〉
──【念動:波動】
脳天に連続して【念動:波動】を繰り出して討伐し、ナディアさんに首チョンパしてもらう。
俺が一番嫌いな顔面部分が最高値になる素材らしく、ルイーサさんたちが欲しがると聞いたから、一応先に切り取ってもらおうと思ったのだ。
「バイパーウィップ、ゲットだぜーーっ!」
さて本隊よ、かかってこいやぁっ。
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