暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一

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第二章 冒険、始めます

第四四話 お宝サルベージ

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 宿屋に搬送された人たちはルイーサさんに元気を出して欲しいルークのサービスにより、浄化と外傷の手当がされた。
 ルークの【青炎】は聖属性魔法であるため、呪いや部位欠損があったとしても全て癒やし、全てを滅することができる。ゆえに、部位欠損が原因でスラム堕ちした者たちから非常に感謝された。

 もちろん、できないこともある。
 病気や先天性の欠損などだ。

「ルークっ、ありがとうっ!」

「グルッ、グルッ」

 ルークも得意気に胸を張り、ルイーサさんが抱きつきやすくしていた。
 抱きついて褒め称えたのはルイーサさんだけじゃなく、エイダンさんも友人の手が治ったと感謝のハグを贈っていた。

「グルッ、グルッ」

「ふむふむ。ブルーノさん、ルークはご褒美にそろそろ怪鳥の料理が食べたいそうです」

「それはいい。ちょうど食べ頃だ」

「グルゥゥゥッ」

 そう、怪鳥はまだ一口も食べてない。
 というのも、ニアやご近所さんにも食べさせたいけど、怪鳥の肉に含まれた魔力含有量が半端なく、魔力量が少ない者が食べると体調不良になったり、魔力暴走に近いことが体内で起こったりと、とにかく毒になるらしい。
 よって、数日掛けて魔力を抜く作業をしてくれていたのだ。

「じゃあ僕も作りたいものがあります」

「なんだ?」

「鳥のもつ焼きと、鶏ガラスープです」

「俺も気になる」

「一緒に作りましょう」

「そうしよう」

 さて、俺たちはどうすればいいのだろうか。
 俺も一応治療ができないことはないけど、本職にはとても勝てない。
 いても戦力にならないなら錬金術の道具を漁りに行きたいし、ナディアさんの付与武器の素材も獲りに行きたい。

「それで僕たちってどうすれば?」

「女性が多いから、治療は俺とナディアが担当する。ディルたちは自由時間だ」

「では、何かあったら呼んでください」

「また紙を届けよう」

 あぁ……あれも気になるけど、また今度聞けばいいか。

「はい」

 ということで、子供&従魔組は探検することになりました。
 保護者はエイダンさん。
 友人は就寝中であるため、本人は暇らしい。

「おいっ、俺は成人してるぞっ」

「そうだね。でも、僕と三つしか変わらないから子供枠でいけると思う。それに大人枠だと、全部奢ってもらうけどいいの?」

「えっ? 買い物すんの?」

「するかもしれない。もうすぐおやつの時間だし」

「えっと……」

 テオはチラッとエイダンさんを見る。

「エイダンさんは工業区を案内してくれるから、御礼を払わないといけないでしょ」

 エイダンさんは意外にノリが良いから、黙って頷いてくれている。

「──悪い。家に帰って報告するまでは子供だったわ」

「でしょう? 良かった、良かった」

「「ふっ……」」

 ニアとエイダンさんも堪らず吹き出した。
 なんてったって、彼は現在無一文なのだ。
 衣類も俺が奢り、宿は好意で宿泊しているという完全な居候である。

「じゃあ荷車担当よろしく」

「おう」

 昨日のデートの後、足回りを修復しておいた荷車に、先程拾ってきた車輪をはめて完全復活したデッドマン号。
 今回の宝探し後に再改修を行う予定だ。
 末永くよろしく。

「端から行くと今日中には終わらないから、錬金術工房を中心に行くか」

「そうしましょう」

 変わらずニアはルークの背中の上に乗り、イムレを抱きしめながらモフモフを堪能している。
 そして俺とエイダンさんは荷車に乗って、テオに荷車を引かせていた。普通なら貴族にそんなことをさせないし、普通の貴族はそんなことをしない。
 だが、彼は普通ではない。
 何故か楽しんで荷車を引いている。
 それも四輪の大型荷車をだ。

「そういえば、この辺で魔石を手に入れるにはダンジョンでしか無理なんですか?」

「魔力が抜けた空魔石なら専門業者が取り扱ってるだろうけど、魔力が入っているものはダンジョンか、山にいるロックゴーレムから採取するのが早いんじゃないか」

「鉱山は無理なんですか?」

「魔石が採れる鉱山があったら、それだけで一財産だからなぁ。一攫千金を狙って探すのもいいかもな」

「でも僕のものにはならないですよね?」

「そうだな。国か領主のものになるが、報奨金はもらえるぞ。少ない金額を渡して困るのは貴族だから、たくさんもらえるか別のものをもらえるか」

 冒険者ランクとかだろうね。
 金欠貴族が権力でできそうなことと言ったら、冒険者ギルドに推薦状を渡すぐらいだろう。

「なんだ、魔石が欲しいのか?」

「テオはどこにあるか知ってるの?」

「あぁ。知ってる」

「どこにあるの?」

「湖の底」

「なんだ、あの話は本当だったのか?」

 エイダンさんも知っている話らしいけど、エイダンさんは噂程度の認識らしい。

「回収計画も立てて冒険者ギルドと協議していたんだけど、条件が折り合わなくて中止になったんだ」

「でもそれって鉱山と同じじゃん。回収しても領主に持って行かれるんでしょ?」

「鉱山もそうだけど、拾って帰ったものは本人のものだぞ」

「えっ?」

「掘り尽くした後に『見つけました』というのはなしだけど、拾ったり採掘の途中でたまたま手に入ったものは証拠品として持ち帰ることも可能だし、証明した後は自分のものになる。中には買い取りたいっていう貴族もいるけど、当然拒否権はある。特に東部は冒険者の功績を奪うようなことを禁じているからな」

「そうなのか。じゃあ何で冒険者は回収に行かないの? 領主が放置しているなら丸儲けじゃん」

「いや、協議が中断された理由がそこだ。あの湖は魔境にあるだけあって比較的強い魔物がいるらしい。しかも水中での戦闘で、魔石があるのは水底。相当の実力者を呼んで欲しいと頼んだけど、ダンジョンの方が稼げるということで誰も受けなかったんだ。んで、この話が冒険者の間で広まったんだ。『高位冒険者が受けなかったクソ案件』ってな」

 最高じゃん。
 採取しても誰にも迷惑がかからないなんて。
 ……一個残せば取り尽くしたことにならないよね?

「ほんとにっ!? じゃあ僕が採っちゃうよ!?」

「……話、聞いてたか? 誰も採れねぇから放置されてんの」

「ついでに魚も捕ろう」

『魚かっ! オレも行くぅぅぅっ』

『イムレも行く』

「わたしもぉぉぉっ」

「じゃあ明日行こうか」

「えっ? ほんとに……わたしもいっていいの?」

 ニアからしたら駄目だと分かっているけど、ノリで言ってみただけなのだろう。
 でも町の外の方が殲滅を躊躇わなくて良いことに気づいたから、ルークとイムレという殲滅派護衛を連れていけば大丈夫だと思うことにした。

「ルークとイムレから離れないようにね」

「うんっ! やったーー!」

「その前に宝探しを始めようっ」

「おぉぉぉーーーっ」

「テオ」

「……おーーー」

 子供枠のくせにやる気がないな。
 そんな彼にやる気を出させてあげよう。

「君の武器と別荘づくりに必要な道具なんだよ?」

「あっ、そうだった。頑張るぞぉぉぉっ」

 エイダンさんが鑑定役を担い、買い足す必要があるものもメモしていってもらう。
 長いこと放置されていたり、錬金術師が優先して集められていたこともあり、重量級の道具以外はほとんど残っていなかった。

『おーい、ここに何かあるぞ』

 ルークの元に行くと、トントンと足踏みをその場で足踏みをしていた。

 可愛い……。

『おい』

「そうだったね」

 ──《無属性魔法:探知》

「……うん、結構大きい地下室があるみたいだね」

『お宝か?』

「ちょっと待ってね」

 地下室への扉を開けて、《照明》を地下へと落とす。

「おぉ、本だ」

 除湿用魔導具のおかげで状態も良く、図鑑や魔導書などの実用書が多くて、個人的にはかなりのお宝だと思う。
 是非とも魔導具の本棚ごと持って帰りたい。

 今回の収穫は錬金釜に錬金盤、それから錬金盤で使われるだろう魔法陣と、地下で見つかった書物だ。
 換金しやすい素材などは既になく、書物の中に錬金図鑑大全があったのは本当にラッキーだった。これがなかったら生産ギルドに買いに行かなきゃいけなかったらしいのだが、俺みたいな子供には売ってくれないらしい。
 学園を出てもなければ、師匠がいるわけでもないという至極真っ当な理由で。

 ここでも土竜遊撃隊が活躍し、書物を棚ごと運ぶことができた。
 もちろん、【念動】を使って運び出している。
 でなければ、重すぎてデッドマン号がお亡くなりになってしまっただろう。
 せっかく復活したというのに、それは酷すぎる。

「じゃあ帰ろっか」

「「…………あぁ」」

 テオとエイダンさんは、俺が横に寝かして積み重ねた四つの本棚を、お盆を持つように運んでいる姿に固まっているが、俺は全て無視して歩を進める。
 俺からしたらテオが引く荷車には錬金釜などの他の収穫物が載っているのに、それを魔法も使わず人力で引くことの方が驚愕に値するけどね。

 お互いが引きつつ帰り着き、毎度お馴染みのごとく離れの方に直接回り込んで荷物を置く。
 俺も自分の姿が異常だと分かっているからね。
 できるだけ他人に見られないようにという工夫はしているのだ。

 ただ今回は食堂に先に顔を出すべきだった。


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