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第一章 居候、始めます
第一話 無能だと追放された転生貴族
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「──狼さん」
ごちそうにかぶりつくように飛びかかって来た魔狼達は、味見すらできずに今世を終えた。
その身は無数の穴が開き、大量の血が噴き出している。
「なんだ、チートあるじゃん。無能じゃないじゃん」と思うかもしれないが、歴とした無能です。
自分で言いたくはないが、本当に無能なんです。
だから、危険を冒してまで取り違えを行った伯爵も売却を選んだのだ。
有能だったら奴隷にして飼い殺しの運命だったらしいから、ある意味無能でよかったかもしれない。無能だったから、伯爵は証拠隠滅と胡麻すりを兼ねて王弟に売却したのだ。
結果、幽閉生活を終えることができた。
無能バンザーイっ!!!
まぁ暗殺者生活も幽閉生活の延長のような環境の悪さだったけど、戦闘系の技能を身につけられたから全くの無駄とは言えない。
蠱毒のような弱肉強食の生活だったから、暴力を使ったいじめや虐待は当たり前。時には魔法を使ってくることもあったり。
食事はあったけど、ロシアンルーレットのように腐敗したものや毒物を強制的に食べさせられたり。
各種耐性系技能が爆上がりしていくか、体が追いつかずに死ぬかの生活が基本だった。
過酷な生活に加えて戦闘訓練も当然行われた。
共通の装備が配給されるため格闘術と短剣術は必修だったが、他の戦闘技能に関しては各自の適性に任せられていた。
一通り全ての武器を試した後という条件はついていたけど、適性がある武器の発注は申請をすれば用意してもらえ、少年兵を起用した軍隊に近いかな。
ちなみに暗殺部隊と言っても毒殺や罠などは一切使わず、隠密特攻のみという脳筋司令官だった。
でも仕方がないんだ。
王族の護衛に搦め手を得意とする人材がおらず、誰も教授することができない。
これが国王の護衛なら話が違うが、残念ながら我が暗殺特殊部隊は国王にも秘密の部隊である。協力が得られるはずもない。
話を戻そう。
戦闘訓練は魔法訓練も行う。
属性魔法の適性がある者は必修で、俺以外の全員が魔法訓練に参加していた。
複数人の見学者がいる場合、武器の習熟に充てられるはずだったらしい。実際に告知されていた。
しかし予想は外れ、見学者は俺一人。
教官たちも俺一人に時間を割きたくはなかったようで、俺は自習という自由時間を得た。
侮辱の嘲笑と引き換えに得た自由時間でとにかく〈魔力操作〉の熟練度を上げ、同時に開放されている図書室で地図や一般常識を身につけた。
俺は幽閉生活の暇つぶしのおかげで文字の読み書きはできるが、他の私生児達はほとんどできない。それがコンプレックスらしく、図書室に入ることを執拗に邪魔してくるのだ。
魔法訓練の時間は、天が与えた人生の転機かもしれない。
そう思ったほど嬉しかった。
今回の目的地も図書室の資料で目をつけていた場所だ。
その天恵のような時間のおかげで、無能の代名詞である無属性魔法が進化し、別の能力が派生した。
地方や種族によって呼称は異なるらしいが、教会が使用している呼称は【神法】。魔法を引用しつつ、自分たちの個性を加えているらしい。
教会以外で一番普及している呼称は【奇跡】らしい。
神の御業と思えるほどの強力な魔法を使え、特定の人物しか使用できない複合魔法を使用することから名付けられたらしい。
ただ、特化型だから複数を使用ということにはならないらしく、その関係かどうかは不明だが、覚醒条件は人それぞれ異なるらしい。
俺は〈魔力操作〉の習熟だったけど、他には精霊契約が条件だった者もいるようだ。
俺の奇跡は【念動】というもので、〈魔力操作〉でものを操作できる。
微妙って思うかもしれないけど、本来特化型の奇跡が万能型になるほど使える魔法なのだ。
頭を柔らかくすれば応用がかなり効くのだが、その最たるものは【魔素】の操作だろう。
属性魔法を使用するためには自分の属性魔力を呼び水に、大気中の属性魔素を集め、自分の魔力を通して命令を伝えることが必要だ。
この過程を経ることで魔法が発動する。
適性属性を持たない者には大気中の魔素を集めることができず、命令を伝えることもできない。ゆえに魔法が使用できない。
でも、魔導具は違う。
適性関係なく魔法効果を発動できている。
呼び水を不要とし、大気の魔素の代わりに属性魔石を使用し、魔法陣が人間に代わって命令を伝えているのだ。
これを踏まえると、大気中の魔素を集めて、自分の魔力と大気中の魔素の集合体の間に魔法陣を設置すれば魔法が発動すると考察できる。
つまり【念動】で魔素を集め、魔法陣を描くことができれば属性魔法を使えるようになるということだ。
恥ずかしい詠唱を一生懸命練習している彼らが構築している魔法陣をTTPすれば、魔法が発動することは確認済みである。
問題は通常の属性魔法の劣化版らしく、改良や習熟は必須だ。
もう一つは、無能証明の片輪である【神字:理】を習熟できたことが、今の自分を支えていると言っても過言ではないだろう。
祝福の儀式の主役と言えば、【神字】の授与。
適性属性はおまけだ。
人生の道標として、一文字から最大四文字までの文字を与えられる。
この世界の文字は漢字のように表語文字であるため、文字数が少ないよりも多いほうが道標としては迷わずに済むと教会は考えているらしい。
教会の考えに多くの賛同者が集まり、そのせいで文字数が多いほど神からの寵愛を受けているという考えが広まり、神字量至上主義という差別も広がった。
実際に習熟した身から言わせると、これは大きな間違いだ。
全人類共通で四つの枠が与えられており、人によって空き枠の数が違うだけ。
気づく者、気づかない者。
努力する者、怠ける者。
成長を続ける者だけが、枠を全て使うことができる。
さらに、文字数が少なければ応用が効く。
だって漢字と同じ表語文字だからね。
四文字の人は空き枠がない代わりに、最初から全ての枠を使用でき、特化した人生の道標あるおかげで人生に迷うことなく邁進できるというわけだ。
そして共通していることで一番重要なことがあるのだが、それを間違えると人生が詰む。
文字を得ただけでは道標にはならない。
文字を意識した上で、関連する努力が必要なのだ。
例えば、【神字:天下無双】を与えられたとする。
天下無双という言葉に胡座をかき努力を怠ると、天下無双級の馬鹿になる。
能力の方ではなく、馬鹿の方に補正が付くわけだ。
定着後の認識改変は困難で、せっかくの【神字】が無駄にこともある。
自分の【神字】の本質とは何か。
どう努力をすればいいかと意識していくことで、【神字】の本領を発揮させることができるわけだ。
俺の【神字:理】は、頭脳を補助する情報系だと意識した結果、〈瞬間記憶〉などの技能を習得できた。
魔法陣のTTPでは大いに役に立っている。
異世界転生でチートをもらうことはできなかったけど、十二年間の地獄級チュートリアルのおかげで、地獄の淵にいるような状態でも落ち着いて活路を見い出すことができている。
さらに、目的地まで辿り着けそうな気もするのだった。
ごちそうにかぶりつくように飛びかかって来た魔狼達は、味見すらできずに今世を終えた。
その身は無数の穴が開き、大量の血が噴き出している。
「なんだ、チートあるじゃん。無能じゃないじゃん」と思うかもしれないが、歴とした無能です。
自分で言いたくはないが、本当に無能なんです。
だから、危険を冒してまで取り違えを行った伯爵も売却を選んだのだ。
有能だったら奴隷にして飼い殺しの運命だったらしいから、ある意味無能でよかったかもしれない。無能だったから、伯爵は証拠隠滅と胡麻すりを兼ねて王弟に売却したのだ。
結果、幽閉生活を終えることができた。
無能バンザーイっ!!!
まぁ暗殺者生活も幽閉生活の延長のような環境の悪さだったけど、戦闘系の技能を身につけられたから全くの無駄とは言えない。
蠱毒のような弱肉強食の生活だったから、暴力を使ったいじめや虐待は当たり前。時には魔法を使ってくることもあったり。
食事はあったけど、ロシアンルーレットのように腐敗したものや毒物を強制的に食べさせられたり。
各種耐性系技能が爆上がりしていくか、体が追いつかずに死ぬかの生活が基本だった。
過酷な生活に加えて戦闘訓練も当然行われた。
共通の装備が配給されるため格闘術と短剣術は必修だったが、他の戦闘技能に関しては各自の適性に任せられていた。
一通り全ての武器を試した後という条件はついていたけど、適性がある武器の発注は申請をすれば用意してもらえ、少年兵を起用した軍隊に近いかな。
ちなみに暗殺部隊と言っても毒殺や罠などは一切使わず、隠密特攻のみという脳筋司令官だった。
でも仕方がないんだ。
王族の護衛に搦め手を得意とする人材がおらず、誰も教授することができない。
これが国王の護衛なら話が違うが、残念ながら我が暗殺特殊部隊は国王にも秘密の部隊である。協力が得られるはずもない。
話を戻そう。
戦闘訓練は魔法訓練も行う。
属性魔法の適性がある者は必修で、俺以外の全員が魔法訓練に参加していた。
複数人の見学者がいる場合、武器の習熟に充てられるはずだったらしい。実際に告知されていた。
しかし予想は外れ、見学者は俺一人。
教官たちも俺一人に時間を割きたくはなかったようで、俺は自習という自由時間を得た。
侮辱の嘲笑と引き換えに得た自由時間でとにかく〈魔力操作〉の熟練度を上げ、同時に開放されている図書室で地図や一般常識を身につけた。
俺は幽閉生活の暇つぶしのおかげで文字の読み書きはできるが、他の私生児達はほとんどできない。それがコンプレックスらしく、図書室に入ることを執拗に邪魔してくるのだ。
魔法訓練の時間は、天が与えた人生の転機かもしれない。
そう思ったほど嬉しかった。
今回の目的地も図書室の資料で目をつけていた場所だ。
その天恵のような時間のおかげで、無能の代名詞である無属性魔法が進化し、別の能力が派生した。
地方や種族によって呼称は異なるらしいが、教会が使用している呼称は【神法】。魔法を引用しつつ、自分たちの個性を加えているらしい。
教会以外で一番普及している呼称は【奇跡】らしい。
神の御業と思えるほどの強力な魔法を使え、特定の人物しか使用できない複合魔法を使用することから名付けられたらしい。
ただ、特化型だから複数を使用ということにはならないらしく、その関係かどうかは不明だが、覚醒条件は人それぞれ異なるらしい。
俺は〈魔力操作〉の習熟だったけど、他には精霊契約が条件だった者もいるようだ。
俺の奇跡は【念動】というもので、〈魔力操作〉でものを操作できる。
微妙って思うかもしれないけど、本来特化型の奇跡が万能型になるほど使える魔法なのだ。
頭を柔らかくすれば応用がかなり効くのだが、その最たるものは【魔素】の操作だろう。
属性魔法を使用するためには自分の属性魔力を呼び水に、大気中の属性魔素を集め、自分の魔力を通して命令を伝えることが必要だ。
この過程を経ることで魔法が発動する。
適性属性を持たない者には大気中の魔素を集めることができず、命令を伝えることもできない。ゆえに魔法が使用できない。
でも、魔導具は違う。
適性関係なく魔法効果を発動できている。
呼び水を不要とし、大気の魔素の代わりに属性魔石を使用し、魔法陣が人間に代わって命令を伝えているのだ。
これを踏まえると、大気中の魔素を集めて、自分の魔力と大気中の魔素の集合体の間に魔法陣を設置すれば魔法が発動すると考察できる。
つまり【念動】で魔素を集め、魔法陣を描くことができれば属性魔法を使えるようになるということだ。
恥ずかしい詠唱を一生懸命練習している彼らが構築している魔法陣をTTPすれば、魔法が発動することは確認済みである。
問題は通常の属性魔法の劣化版らしく、改良や習熟は必須だ。
もう一つは、無能証明の片輪である【神字:理】を習熟できたことが、今の自分を支えていると言っても過言ではないだろう。
祝福の儀式の主役と言えば、【神字】の授与。
適性属性はおまけだ。
人生の道標として、一文字から最大四文字までの文字を与えられる。
この世界の文字は漢字のように表語文字であるため、文字数が少ないよりも多いほうが道標としては迷わずに済むと教会は考えているらしい。
教会の考えに多くの賛同者が集まり、そのせいで文字数が多いほど神からの寵愛を受けているという考えが広まり、神字量至上主義という差別も広がった。
実際に習熟した身から言わせると、これは大きな間違いだ。
全人類共通で四つの枠が与えられており、人によって空き枠の数が違うだけ。
気づく者、気づかない者。
努力する者、怠ける者。
成長を続ける者だけが、枠を全て使うことができる。
さらに、文字数が少なければ応用が効く。
だって漢字と同じ表語文字だからね。
四文字の人は空き枠がない代わりに、最初から全ての枠を使用でき、特化した人生の道標あるおかげで人生に迷うことなく邁進できるというわけだ。
そして共通していることで一番重要なことがあるのだが、それを間違えると人生が詰む。
文字を得ただけでは道標にはならない。
文字を意識した上で、関連する努力が必要なのだ。
例えば、【神字:天下無双】を与えられたとする。
天下無双という言葉に胡座をかき努力を怠ると、天下無双級の馬鹿になる。
能力の方ではなく、馬鹿の方に補正が付くわけだ。
定着後の認識改変は困難で、せっかくの【神字】が無駄にこともある。
自分の【神字】の本質とは何か。
どう努力をすればいいかと意識していくことで、【神字】の本領を発揮させることができるわけだ。
俺の【神字:理】は、頭脳を補助する情報系だと意識した結果、〈瞬間記憶〉などの技能を習得できた。
魔法陣のTTPでは大いに役に立っている。
異世界転生でチートをもらうことはできなかったけど、十二年間の地獄級チュートリアルのおかげで、地獄の淵にいるような状態でも落ち着いて活路を見い出すことができている。
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