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第二章 一期一会
第八十四話 出立からの勇往邁進
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毎回俺の起床を察知して、的確なタイミングで話し掛けてくるモフモフは今日も抜かりなかった。
「昨夜も――」
顔面に載った丸いお腹が何かを言う前に、口にドロン飴を放り込んで口を塞ぐ。
「恥ずかしがることないのにーー! 内容の方が恥ずかしいと思うんだけどな!」
「……日課やってお風呂に入ったら出発だよ!」
「えーー! ご飯は!?」
「町でね!」
「えーー!」
まだ動けないでいる従魔たちとエルフ娘たちを一人ずつお姫様抱っこでお風呂に運び、最後の入浴を済ませる。
このときみんなに言われて気づいたのだが、どうやら俺にも角が生えたらしい。深い緑色の二本の角に、金色の模様が浮き出ているそうだ。
レニーが「お揃い」だと喜び抱きついてきた。大人の女性という印象の彼女は、夜の時と同じ少女のような仕草で喜んでいた。……可愛い。
お風呂から出て、試着以外では初めて新装備を身につける。今回は緑色の方だ。
パキスタンの正装風の服の上から外套を身につけ、左手の薬指にお揃いの指輪つける。擬装用の鞄はアーマードブルの革製肩掛け鞄で、ラビくんが鞄内でお昼寝できるように毛布が敷いてある。
「じゃあ先に行くね。【迷宮都市】で待ってるから」
「アーク殿……」
「アーク、寂しい……」
「主ーー!」
「主様……」
「「ご主人様……」」
待っていると告げると、遠距離恋愛が始まる恋人のようにしんみりし始めたレニー、イム、アイラ、メルが抱きついてきた。
アイビーとローズは新入りだからと遠慮がちだが、寂しそうにしてくれている。
まぁ違う意味で寂しがっているモフモフたちもいるけど……。
「リムくん……悲しいね……」
「ガウゥゥ……」
一人ずつ抱きしめて唇を重ねて別れを惜しむ。彼女たちは俺と別れを惜しんだあと、ふてくされているモフモフたちとも最後のふれあいを行う。
後ろ髪を引かれる思いだが、船の時間があるので洞窟を出発し、町に向けてカーさんたちと一緒に走り続ける。
「アーク! 今日からは女の子の代わりに、ぼくのお腹の柔らかさを堪能してくれていいんだよ?」
リムくんに乗ったラビくんが話し掛けてきた。
「……ありがとう! というか、ヤキモチ妬いてたの?」
「ち、違うもんねーー! ふんっ!」
可愛い子だ。気遣いできる子だから、レニーたちに遠慮していたらしい。
「今日からは《按摩》の習熟に付き合ってもらおうかな!」
「……しょうがないなーー! 特別だよーー!」
「ありがとう!」
「うむうむ!」
ご機嫌に頷く姿が可愛い。揺れる耳が破壊力を増している。
「アーク、町に行く前に自分のステータスを確認しておきなさい。昨夜やっと整理が終わって、スキルの名前が変わったりしているから、しっかり把握しておきなさい!」
カーさんと何やら打ち合わせをしていたタマさんが、ステータスの確認を促す。
「分かりました。ステータス」
【名 前】 アーク
【性 別】 男
【年 齢】 10歳
【種 族】 鬼族 (ハーフエルフ)
【レベル】 219
【魔力量】 4,900,000
【魔 術】 無
水魔術
地魔術
火魔術
風魔術
闇魔術
光魔術
森魔術
氷魔術
雷魔術
砂魔術
熔魔術
飴魔術
金属魔術
振動魔術
具現魔術
【職 業】 トイストア
【スキル】
〈固 有〉=ユニーク=
カタログ 3
セクション 3
=エクストラ=
覇運
限界突破
環境適応 3
〈行 動〉=ノーマル=
算術 10 観察 10
跳躍 10 疾駆 10
威圧 10 遊戯 10
心話 10 偽装 10
=ユニーク=
素材鑑定 5
素材探査 5
魔力循環 5
魔力圧縮 5
魔力付与 5
魔力吸収 5
無音歩行 5
合気 5 盗聴 5
念動 5 念話 5
〈職 業〉=ノーマル=
調合 10 薬術 10
醸造 10 料理 10
解体 10 罠術 10
加工 10 製紙 10
鍛冶 10 話術 10
騎乗 1 按摩 2
魔術陣 10
短縮詠唱 10
=ユニーク=
医術 5 手術 3
発掘 5 建築 5
錬金 5 付与 5
分解 5 整備 5
細工 5 刀工 5
染織 5 服飾 5
演劇 5 製本 3
複製 1 窃取 1
性技 5 絶倫 5
調教 5 家事 5
酒造 5 製菓 5
食品加工 5
宝石細工 5
魔具作製 5
魔導罠術 5
配置図盤 3
図化 5 転写 1
捕捉 5 契約 3
化合 5 王気 2
無表情 2
見切り 1
刺突 2 斬鉄 5
居合 5 圧切 1
両断 5 切断 1
打突 5 破砕 5
螺旋 5 反射 5
金剛 5 傀儡 5
詠唱破棄 5
=エクストラ=
言語理解 3
素材地図 3
自然産業 3
創作技術 3
画匠術 3
遺宝術 3
瞬間記憶 3
並列思考 3
物体転移 3
立体機動 3
解析 3 遠話 3
韜晦 3 神託 3
不可視 3
剣霊術 3
武霊術 3
暗殺術 3
纏衣術 3
閃駆 3
領域 3
必中 3
無詠唱 3
〈身 体〉=エクストラ=
魔力支配 3
魔力変化 3
魔力回復 3
属性纏鎧 3
身体練成 3
超回復 3
物理攻撃無効 3
精神攻撃無効 3
無属性攻撃無効 3
火属性攻撃無効 3
風属性攻撃無効 3
水属性攻撃無効 3
地属性攻撃無効 3
闇属性攻撃無効 3
森属性攻撃無効 3
氷属性攻撃無効 3
雷属性攻撃無効 3
砂属性攻撃無効 3
〈知 覚〉=エクストラ=
心眼 3
看破 3
存在察知 3
空間知覚 3
地獄耳 3
探知眼 3
精霊眼 3
【能 力】=身体系=
高速再生 身体硬化
=戦闘系=
竜鰐闘技
=特殊系=
武威
【加 護】 創造神アルテアの加護
霊 王シリウスの加護
炉 神リゲルの加護
商 神アリオトの加護
【称 号】 転生者
使 徒
勇 者
神 匠
巨 頭
超越者
守護者
奴隷王
博 愛
霊魔天
武芸者
覚醒者
【備 考】=従 魔=
耳長銀狼(ラビ)
エント (レニー)
ヒュドラ(アイラ)
ウェヌスフロッグ(メル)
パンドラスライム(イム)
=召喚獣=
フェンリル特異種(リム)
=守護精霊=
樹の高位精霊 (カリュオン)
綿花の高位精霊(ネポス)
=師 匠=
武神獣ゼオレス(真名)
戦鬼将イルリス(真名)
「突っ込みどころ満載だろうけど、種族の偽装以外は全部エクストラの《韜晦》スキルで隠してあるわ。《隠蔽》スキルの最上位だから、基本的に閲覧不可って事ね。他人があなたを見れば無能に映るはずよ。人間関係を構築するための踏み絵になるわね!」
見下すヤツは無視って事ね。
「気になることを全て聞いたらキリがなさそうなので、いくつか聞いてもいいですか?」
「時間がないから少しだけよ」
「では、魔力量は何なんですか?」
「あぁ。魔力量の前に〈固有〉欄に《限界突破》があるでしょ? 特殊な条件が必要だからレベルがないんだけど、効果は魂格レベルの上限解放よ。それによって二百万を超えたのが一つ。高位精霊との契約が一つ。それ以外では魔力含有食材の摂取に神器での吸収が一つ。最後に端数が面倒だったから切り上げて完成よ!」
「なるほど……。高位精霊様との契約ではどれくらい増えたのですか?」
「具体的な数字は省くけど、一体の高位精霊と契約するには特殊な条件がない限り、最低でも百万の魔力量が必要なのよ。でも契約後は二割増しの魔力を受け取れるわ。あんたは二体分だから、最低でも二百四十万ね。ちなみ、二体同時に高位精霊と契約したのは、あんが初めてよ!」
「では次に、一番気になっている《絶倫》について教えてもらえませんか? 取った覚えがないし、《性技》も何故か最大値だし!」
「何を言ってるのよ! スキルは未習得でも経験値が蓄積されていて、該当スキルを習得したときに反映されると知っているでしょ? あんたは添い寝を始めたときから蓄積があって、あとは意識があるときも技術を修めれば最大値になっていたの! 《絶倫》は派生スキルよ! 特効薬を飲んだでしょ?!」
「あの薬ってそんな薬だったの!?」
「……言わなかったっけ? おかしいなぁ……。まぁあの薬のおかげで派生して、【霊王】の加護のおかげと習熟で最大値よ! 元々化け物並みの体力もあったし、才能があったんでしょうよ! おかげで六人を相手にしているのに、あんただけがいつも元気でしょ? よかったじゃない! ――はい! この話はおしまい! 時間がないけど、もういいのね!?」
誤魔化しやがった……。しかも俺に才能があるとか言って、なすりつけで逃げ切ろうともしている。
でも俺は知っている。あの薬を飲ませた共犯者がいることを……。
その共犯者に視線を向けると、耳で顔面を隠して鉄壁の防御を張っていた。
……可愛いから良しとしよう。
ステータスの確認を終えたのは、町に着く直前だった。盗難対策のためにラビくんを抱っこして町に入り、港に向かう。
町に入った際に服装をジロジロ見られたが、生えたばかりの角を見て納得していた。
町の雰囲気が数日前に来たときよりもピリピリしている気がするが、今日出て行く俺には関係ない。
『アーク、露店の出店場所に行かなくていいの?』
『え? 何で?』
『去年約束してたじゃん!』
『次の年に奴隷狩りを依頼したのに?』
『でも行かなかったことで後々不利になるかもしれないじゃん! 行っていなかったら、いませんでした! 約束を破棄したのはそちらだって言えるよ!』
『それもそうか!』
ラビくんの提案を受け、露店予定地を訪れた。当然クロエの姿はなく、代わりに貴族男性と騎士がいた。面倒そうなことになりそうだと判断し、さっさとその場を後にする。
一瞬、騎士と目が合う。騎士が目礼をしたので、俺も返礼しておく。
『いなかったねーー!』
『逆に来てたら、どの面下げて? と聞いてたよ!』
『……そうだね!』
ラビくんと念話で雑談しながら、港に向かうまでに串焼きを購入して朝食を取る。
港に到着後は待ち時間もなく船に乗り、時間通りに出発した。
「ようやく……! 念願のモフモフ探しの旅が、ようやく始まるのか……!」
『じゃあ、追い出されたモフモフたちとずっと一緒にいれる場所も探そうよ! これから助けるモフモフの新しいお家としてさ! ドロンを育てたり、アークのおもちゃで遊んだり!』
『いいね! ――そうだ! いつか絵本で見た天空大陸を捜して、そこに棲もうよ! 空なら奴隷狩りも来れないでしょ?』
『うん! 頑張ろうね!』
『約束!』
『うん! 約束!』
新たな目標を胸に抱き、【霊王】を捜すという使命を果たす旅が始まる。
捜索の旅は真っ直ぐではないけれど、寄り道をすることになっても、苦しむモフモフを助けるために全力を尽くすという信念を曲げない道を歩もうと、改めて決意を固めるのだった。
「親分! オークちゃん! 行ってきます!」
===================
第二章『一期一会』 完結
閑話を挟んでから次章を開始します。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次章はタマさんの欲望編(仮)を予定してます。
まだ読んでもいいと言っていただければ幸いです。
「昨夜も――」
顔面に載った丸いお腹が何かを言う前に、口にドロン飴を放り込んで口を塞ぐ。
「恥ずかしがることないのにーー! 内容の方が恥ずかしいと思うんだけどな!」
「……日課やってお風呂に入ったら出発だよ!」
「えーー! ご飯は!?」
「町でね!」
「えーー!」
まだ動けないでいる従魔たちとエルフ娘たちを一人ずつお姫様抱っこでお風呂に運び、最後の入浴を済ませる。
このときみんなに言われて気づいたのだが、どうやら俺にも角が生えたらしい。深い緑色の二本の角に、金色の模様が浮き出ているそうだ。
レニーが「お揃い」だと喜び抱きついてきた。大人の女性という印象の彼女は、夜の時と同じ少女のような仕草で喜んでいた。……可愛い。
お風呂から出て、試着以外では初めて新装備を身につける。今回は緑色の方だ。
パキスタンの正装風の服の上から外套を身につけ、左手の薬指にお揃いの指輪つける。擬装用の鞄はアーマードブルの革製肩掛け鞄で、ラビくんが鞄内でお昼寝できるように毛布が敷いてある。
「じゃあ先に行くね。【迷宮都市】で待ってるから」
「アーク殿……」
「アーク、寂しい……」
「主ーー!」
「主様……」
「「ご主人様……」」
待っていると告げると、遠距離恋愛が始まる恋人のようにしんみりし始めたレニー、イム、アイラ、メルが抱きついてきた。
アイビーとローズは新入りだからと遠慮がちだが、寂しそうにしてくれている。
まぁ違う意味で寂しがっているモフモフたちもいるけど……。
「リムくん……悲しいね……」
「ガウゥゥ……」
一人ずつ抱きしめて唇を重ねて別れを惜しむ。彼女たちは俺と別れを惜しんだあと、ふてくされているモフモフたちとも最後のふれあいを行う。
後ろ髪を引かれる思いだが、船の時間があるので洞窟を出発し、町に向けてカーさんたちと一緒に走り続ける。
「アーク! 今日からは女の子の代わりに、ぼくのお腹の柔らかさを堪能してくれていいんだよ?」
リムくんに乗ったラビくんが話し掛けてきた。
「……ありがとう! というか、ヤキモチ妬いてたの?」
「ち、違うもんねーー! ふんっ!」
可愛い子だ。気遣いできる子だから、レニーたちに遠慮していたらしい。
「今日からは《按摩》の習熟に付き合ってもらおうかな!」
「……しょうがないなーー! 特別だよーー!」
「ありがとう!」
「うむうむ!」
ご機嫌に頷く姿が可愛い。揺れる耳が破壊力を増している。
「アーク、町に行く前に自分のステータスを確認しておきなさい。昨夜やっと整理が終わって、スキルの名前が変わったりしているから、しっかり把握しておきなさい!」
カーさんと何やら打ち合わせをしていたタマさんが、ステータスの確認を促す。
「分かりました。ステータス」
【名 前】 アーク
【性 別】 男
【年 齢】 10歳
【種 族】 鬼族 (ハーフエルフ)
【レベル】 219
【魔力量】 4,900,000
【魔 術】 無
水魔術
地魔術
火魔術
風魔術
闇魔術
光魔術
森魔術
氷魔術
雷魔術
砂魔術
熔魔術
飴魔術
金属魔術
振動魔術
具現魔術
【職 業】 トイストア
【スキル】
〈固 有〉=ユニーク=
カタログ 3
セクション 3
=エクストラ=
覇運
限界突破
環境適応 3
〈行 動〉=ノーマル=
算術 10 観察 10
跳躍 10 疾駆 10
威圧 10 遊戯 10
心話 10 偽装 10
=ユニーク=
素材鑑定 5
素材探査 5
魔力循環 5
魔力圧縮 5
魔力付与 5
魔力吸収 5
無音歩行 5
合気 5 盗聴 5
念動 5 念話 5
〈職 業〉=ノーマル=
調合 10 薬術 10
醸造 10 料理 10
解体 10 罠術 10
加工 10 製紙 10
鍛冶 10 話術 10
騎乗 1 按摩 2
魔術陣 10
短縮詠唱 10
=ユニーク=
医術 5 手術 3
発掘 5 建築 5
錬金 5 付与 5
分解 5 整備 5
細工 5 刀工 5
染織 5 服飾 5
演劇 5 製本 3
複製 1 窃取 1
性技 5 絶倫 5
調教 5 家事 5
酒造 5 製菓 5
食品加工 5
宝石細工 5
魔具作製 5
魔導罠術 5
配置図盤 3
図化 5 転写 1
捕捉 5 契約 3
化合 5 王気 2
無表情 2
見切り 1
刺突 2 斬鉄 5
居合 5 圧切 1
両断 5 切断 1
打突 5 破砕 5
螺旋 5 反射 5
金剛 5 傀儡 5
詠唱破棄 5
=エクストラ=
言語理解 3
素材地図 3
自然産業 3
創作技術 3
画匠術 3
遺宝術 3
瞬間記憶 3
並列思考 3
物体転移 3
立体機動 3
解析 3 遠話 3
韜晦 3 神託 3
不可視 3
剣霊術 3
武霊術 3
暗殺術 3
纏衣術 3
閃駆 3
領域 3
必中 3
無詠唱 3
〈身 体〉=エクストラ=
魔力支配 3
魔力変化 3
魔力回復 3
属性纏鎧 3
身体練成 3
超回復 3
物理攻撃無効 3
精神攻撃無効 3
無属性攻撃無効 3
火属性攻撃無効 3
風属性攻撃無効 3
水属性攻撃無効 3
地属性攻撃無効 3
闇属性攻撃無効 3
森属性攻撃無効 3
氷属性攻撃無効 3
雷属性攻撃無効 3
砂属性攻撃無効 3
〈知 覚〉=エクストラ=
心眼 3
看破 3
存在察知 3
空間知覚 3
地獄耳 3
探知眼 3
精霊眼 3
【能 力】=身体系=
高速再生 身体硬化
=戦闘系=
竜鰐闘技
=特殊系=
武威
【加 護】 創造神アルテアの加護
霊 王シリウスの加護
炉 神リゲルの加護
商 神アリオトの加護
【称 号】 転生者
使 徒
勇 者
神 匠
巨 頭
超越者
守護者
奴隷王
博 愛
霊魔天
武芸者
覚醒者
【備 考】=従 魔=
耳長銀狼(ラビ)
エント (レニー)
ヒュドラ(アイラ)
ウェヌスフロッグ(メル)
パンドラスライム(イム)
=召喚獣=
フェンリル特異種(リム)
=守護精霊=
樹の高位精霊 (カリュオン)
綿花の高位精霊(ネポス)
=師 匠=
武神獣ゼオレス(真名)
戦鬼将イルリス(真名)
「突っ込みどころ満載だろうけど、種族の偽装以外は全部エクストラの《韜晦》スキルで隠してあるわ。《隠蔽》スキルの最上位だから、基本的に閲覧不可って事ね。他人があなたを見れば無能に映るはずよ。人間関係を構築するための踏み絵になるわね!」
見下すヤツは無視って事ね。
「気になることを全て聞いたらキリがなさそうなので、いくつか聞いてもいいですか?」
「時間がないから少しだけよ」
「では、魔力量は何なんですか?」
「あぁ。魔力量の前に〈固有〉欄に《限界突破》があるでしょ? 特殊な条件が必要だからレベルがないんだけど、効果は魂格レベルの上限解放よ。それによって二百万を超えたのが一つ。高位精霊との契約が一つ。それ以外では魔力含有食材の摂取に神器での吸収が一つ。最後に端数が面倒だったから切り上げて完成よ!」
「なるほど……。高位精霊様との契約ではどれくらい増えたのですか?」
「具体的な数字は省くけど、一体の高位精霊と契約するには特殊な条件がない限り、最低でも百万の魔力量が必要なのよ。でも契約後は二割増しの魔力を受け取れるわ。あんたは二体分だから、最低でも二百四十万ね。ちなみ、二体同時に高位精霊と契約したのは、あんが初めてよ!」
「では次に、一番気になっている《絶倫》について教えてもらえませんか? 取った覚えがないし、《性技》も何故か最大値だし!」
「何を言ってるのよ! スキルは未習得でも経験値が蓄積されていて、該当スキルを習得したときに反映されると知っているでしょ? あんたは添い寝を始めたときから蓄積があって、あとは意識があるときも技術を修めれば最大値になっていたの! 《絶倫》は派生スキルよ! 特効薬を飲んだでしょ?!」
「あの薬ってそんな薬だったの!?」
「……言わなかったっけ? おかしいなぁ……。まぁあの薬のおかげで派生して、【霊王】の加護のおかげと習熟で最大値よ! 元々化け物並みの体力もあったし、才能があったんでしょうよ! おかげで六人を相手にしているのに、あんただけがいつも元気でしょ? よかったじゃない! ――はい! この話はおしまい! 時間がないけど、もういいのね!?」
誤魔化しやがった……。しかも俺に才能があるとか言って、なすりつけで逃げ切ろうともしている。
でも俺は知っている。あの薬を飲ませた共犯者がいることを……。
その共犯者に視線を向けると、耳で顔面を隠して鉄壁の防御を張っていた。
……可愛いから良しとしよう。
ステータスの確認を終えたのは、町に着く直前だった。盗難対策のためにラビくんを抱っこして町に入り、港に向かう。
町に入った際に服装をジロジロ見られたが、生えたばかりの角を見て納得していた。
町の雰囲気が数日前に来たときよりもピリピリしている気がするが、今日出て行く俺には関係ない。
『アーク、露店の出店場所に行かなくていいの?』
『え? 何で?』
『去年約束してたじゃん!』
『次の年に奴隷狩りを依頼したのに?』
『でも行かなかったことで後々不利になるかもしれないじゃん! 行っていなかったら、いませんでした! 約束を破棄したのはそちらだって言えるよ!』
『それもそうか!』
ラビくんの提案を受け、露店予定地を訪れた。当然クロエの姿はなく、代わりに貴族男性と騎士がいた。面倒そうなことになりそうだと判断し、さっさとその場を後にする。
一瞬、騎士と目が合う。騎士が目礼をしたので、俺も返礼しておく。
『いなかったねーー!』
『逆に来てたら、どの面下げて? と聞いてたよ!』
『……そうだね!』
ラビくんと念話で雑談しながら、港に向かうまでに串焼きを購入して朝食を取る。
港に到着後は待ち時間もなく船に乗り、時間通りに出発した。
「ようやく……! 念願のモフモフ探しの旅が、ようやく始まるのか……!」
『じゃあ、追い出されたモフモフたちとずっと一緒にいれる場所も探そうよ! これから助けるモフモフの新しいお家としてさ! ドロンを育てたり、アークのおもちゃで遊んだり!』
『いいね! ――そうだ! いつか絵本で見た天空大陸を捜して、そこに棲もうよ! 空なら奴隷狩りも来れないでしょ?』
『うん! 頑張ろうね!』
『約束!』
『うん! 約束!』
新たな目標を胸に抱き、【霊王】を捜すという使命を果たす旅が始まる。
捜索の旅は真っ直ぐではないけれど、寄り道をすることになっても、苦しむモフモフを助けるために全力を尽くすという信念を曲げない道を歩もうと、改めて決意を固めるのだった。
「親分! オークちゃん! 行ってきます!」
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第二章『一期一会』 完結
閑話を挟んでから次章を開始します。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次章はタマさんの欲望編(仮)を予定してます。
まだ読んでもいいと言っていただければ幸いです。
応援ありがとうございます!
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