88 / 116
第二章 一期一会
第八十四話 出立からの勇往邁進
しおりを挟む
毎回俺の起床を察知して、的確なタイミングで話し掛けてくるモフモフは今日も抜かりなかった。
「昨夜も――」
顔面に載った丸いお腹が何かを言う前に、口にドロン飴を放り込んで口を塞ぐ。
「恥ずかしがることないのにーー! 内容の方が恥ずかしいと思うんだけどな!」
「……日課やってお風呂に入ったら出発だよ!」
「えーー! ご飯は!?」
「町でね!」
「えーー!」
まだ動けないでいる従魔たちとエルフ娘たちを一人ずつお姫様抱っこでお風呂に運び、最後の入浴を済ませる。
このときみんなに言われて気づいたのだが、どうやら俺にも角が生えたらしい。深い緑色の二本の角に、金色の模様が浮き出ているそうだ。
レニーが「お揃い」だと喜び抱きついてきた。大人の女性という印象の彼女は、夜の時と同じ少女のような仕草で喜んでいた。……可愛い。
お風呂から出て、試着以外では初めて新装備を身につける。今回は緑色の方だ。
パキスタンの正装風の服の上から外套を身につけ、左手の薬指にお揃いの指輪つける。擬装用の鞄はアーマードブルの革製肩掛け鞄で、ラビくんが鞄内でお昼寝できるように毛布が敷いてある。
「じゃあ先に行くね。【迷宮都市】で待ってるから」
「アーク殿……」
「アーク、寂しい……」
「主ーー!」
「主様……」
「「ご主人様……」」
待っていると告げると、遠距離恋愛が始まる恋人のようにしんみりし始めたレニー、イム、アイラ、メルが抱きついてきた。
アイビーとローズは新入りだからと遠慮がちだが、寂しそうにしてくれている。
まぁ違う意味で寂しがっているモフモフたちもいるけど……。
「リムくん……悲しいね……」
「ガウゥゥ……」
一人ずつ抱きしめて唇を重ねて別れを惜しむ。彼女たちは俺と別れを惜しんだあと、ふてくされているモフモフたちとも最後のふれあいを行う。
後ろ髪を引かれる思いだが、船の時間があるので洞窟を出発し、町に向けてカーさんたちと一緒に走り続ける。
「アーク! 今日からは女の子の代わりに、ぼくのお腹の柔らかさを堪能してくれていいんだよ?」
リムくんに乗ったラビくんが話し掛けてきた。
「……ありがとう! というか、ヤキモチ妬いてたの?」
「ち、違うもんねーー! ふんっ!」
可愛い子だ。気遣いできる子だから、レニーたちに遠慮していたらしい。
「今日からは《按摩》の習熟に付き合ってもらおうかな!」
「……しょうがないなーー! 特別だよーー!」
「ありがとう!」
「うむうむ!」
ご機嫌に頷く姿が可愛い。揺れる耳が破壊力を増している。
「アーク、町に行く前に自分のステータスを確認しておきなさい。昨夜やっと整理が終わって、スキルの名前が変わったりしているから、しっかり把握しておきなさい!」
カーさんと何やら打ち合わせをしていたタマさんが、ステータスの確認を促す。
「分かりました。ステータス」
【名 前】 アーク
【性 別】 男
【年 齢】 10歳
【種 族】 鬼族 (ハーフエルフ)
【レベル】 219
【魔力量】 4,900,000
【魔 術】 無
水魔術
地魔術
火魔術
風魔術
闇魔術
光魔術
森魔術
氷魔術
雷魔術
砂魔術
熔魔術
飴魔術
金属魔術
振動魔術
具現魔術
【職 業】 トイストア
【スキル】
〈固 有〉=ユニーク=
カタログ 3
セクション 3
=エクストラ=
覇運
限界突破
環境適応 3
〈行 動〉=ノーマル=
算術 10 観察 10
跳躍 10 疾駆 10
威圧 10 遊戯 10
心話 10 偽装 10
=ユニーク=
素材鑑定 5
素材探査 5
魔力循環 5
魔力圧縮 5
魔力付与 5
魔力吸収 5
無音歩行 5
合気 5 盗聴 5
念動 5 念話 5
〈職 業〉=ノーマル=
調合 10 薬術 10
醸造 10 料理 10
解体 10 罠術 10
加工 10 製紙 10
鍛冶 10 話術 10
騎乗 1 按摩 2
魔術陣 10
短縮詠唱 10
=ユニーク=
医術 5 手術 3
発掘 5 建築 5
錬金 5 付与 5
分解 5 整備 5
細工 5 刀工 5
染織 5 服飾 5
演劇 5 製本 3
複製 1 窃取 1
性技 5 絶倫 5
調教 5 家事 5
酒造 5 製菓 5
食品加工 5
宝石細工 5
魔具作製 5
魔導罠術 5
配置図盤 3
図化 5 転写 1
捕捉 5 契約 3
化合 5 王気 2
無表情 2
見切り 1
刺突 2 斬鉄 5
居合 5 圧切 1
両断 5 切断 1
打突 5 破砕 5
螺旋 5 反射 5
金剛 5 傀儡 5
詠唱破棄 5
=エクストラ=
言語理解 3
素材地図 3
自然産業 3
創作技術 3
画匠術 3
遺宝術 3
瞬間記憶 3
並列思考 3
物体転移 3
立体機動 3
解析 3 遠話 3
韜晦 3 神託 3
不可視 3
剣霊術 3
武霊術 3
暗殺術 3
纏衣術 3
閃駆 3
領域 3
必中 3
無詠唱 3
〈身 体〉=エクストラ=
魔力支配 3
魔力変化 3
魔力回復 3
属性纏鎧 3
身体練成 3
超回復 3
物理攻撃無効 3
精神攻撃無効 3
無属性攻撃無効 3
火属性攻撃無効 3
風属性攻撃無効 3
水属性攻撃無効 3
地属性攻撃無効 3
闇属性攻撃無効 3
森属性攻撃無効 3
氷属性攻撃無効 3
雷属性攻撃無効 3
砂属性攻撃無効 3
〈知 覚〉=エクストラ=
心眼 3
看破 3
存在察知 3
空間知覚 3
地獄耳 3
探知眼 3
精霊眼 3
【能 力】=身体系=
高速再生 身体硬化
=戦闘系=
竜鰐闘技
=特殊系=
武威
【加 護】 創造神アルテアの加護
霊 王シリウスの加護
炉 神リゲルの加護
商 神アリオトの加護
【称 号】 転生者
使 徒
勇 者
神 匠
巨 頭
超越者
守護者
奴隷王
博 愛
霊魔天
武芸者
覚醒者
【備 考】=従 魔=
耳長銀狼(ラビ)
エント (レニー)
ヒュドラ(アイラ)
ウェヌスフロッグ(メル)
パンドラスライム(イム)
=召喚獣=
フェンリル特異種(リム)
=守護精霊=
樹の高位精霊 (カリュオン)
綿花の高位精霊(ネポス)
=師 匠=
武神獣ゼオレス(真名)
戦鬼将イルリス(真名)
「突っ込みどころ満載だろうけど、種族の偽装以外は全部エクストラの《韜晦》スキルで隠してあるわ。《隠蔽》スキルの最上位だから、基本的に閲覧不可って事ね。他人があなたを見れば無能に映るはずよ。人間関係を構築するための踏み絵になるわね!」
見下すヤツは無視って事ね。
「気になることを全て聞いたらキリがなさそうなので、いくつか聞いてもいいですか?」
「時間がないから少しだけよ」
「では、魔力量は何なんですか?」
「あぁ。魔力量の前に〈固有〉欄に《限界突破》があるでしょ? 特殊な条件が必要だからレベルがないんだけど、効果は魂格レベルの上限解放よ。それによって二百万を超えたのが一つ。高位精霊との契約が一つ。それ以外では魔力含有食材の摂取に神器での吸収が一つ。最後に端数が面倒だったから切り上げて完成よ!」
「なるほど……。高位精霊様との契約ではどれくらい増えたのですか?」
「具体的な数字は省くけど、一体の高位精霊と契約するには特殊な条件がない限り、最低でも百万の魔力量が必要なのよ。でも契約後は二割増しの魔力を受け取れるわ。あんたは二体分だから、最低でも二百四十万ね。ちなみ、二体同時に高位精霊と契約したのは、あんが初めてよ!」
「では次に、一番気になっている《絶倫》について教えてもらえませんか? 取った覚えがないし、《性技》も何故か最大値だし!」
「何を言ってるのよ! スキルは未習得でも経験値が蓄積されていて、該当スキルを習得したときに反映されると知っているでしょ? あんたは添い寝を始めたときから蓄積があって、あとは意識があるときも技術を修めれば最大値になっていたの! 《絶倫》は派生スキルよ! 特効薬を飲んだでしょ?!」
「あの薬ってそんな薬だったの!?」
「……言わなかったっけ? おかしいなぁ……。まぁあの薬のおかげで派生して、【霊王】の加護のおかげと習熟で最大値よ! 元々化け物並みの体力もあったし、才能があったんでしょうよ! おかげで六人を相手にしているのに、あんただけがいつも元気でしょ? よかったじゃない! ――はい! この話はおしまい! 時間がないけど、もういいのね!?」
誤魔化しやがった……。しかも俺に才能があるとか言って、なすりつけで逃げ切ろうともしている。
でも俺は知っている。あの薬を飲ませた共犯者がいることを……。
その共犯者に視線を向けると、耳で顔面を隠して鉄壁の防御を張っていた。
……可愛いから良しとしよう。
ステータスの確認を終えたのは、町に着く直前だった。盗難対策のためにラビくんを抱っこして町に入り、港に向かう。
町に入った際に服装をジロジロ見られたが、生えたばかりの角を見て納得していた。
町の雰囲気が数日前に来たときよりもピリピリしている気がするが、今日出て行く俺には関係ない。
『アーク、露店の出店場所に行かなくていいの?』
『え? 何で?』
『去年約束してたじゃん!』
『次の年に奴隷狩りを依頼したのに?』
『でも行かなかったことで後々不利になるかもしれないじゃん! 行っていなかったら、いませんでした! 約束を破棄したのはそちらだって言えるよ!』
『それもそうか!』
ラビくんの提案を受け、露店予定地を訪れた。当然クロエの姿はなく、代わりに貴族男性と騎士がいた。面倒そうなことになりそうだと判断し、さっさとその場を後にする。
一瞬、騎士と目が合う。騎士が目礼をしたので、俺も返礼しておく。
『いなかったねーー!』
『逆に来てたら、どの面下げて? と聞いてたよ!』
『……そうだね!』
ラビくんと念話で雑談しながら、港に向かうまでに串焼きを購入して朝食を取る。
港に到着後は待ち時間もなく船に乗り、時間通りに出発した。
「ようやく……! 念願のモフモフ探しの旅が、ようやく始まるのか……!」
『じゃあ、追い出されたモフモフたちとずっと一緒にいれる場所も探そうよ! これから助けるモフモフの新しいお家としてさ! ドロンを育てたり、アークのおもちゃで遊んだり!』
『いいね! ――そうだ! いつか絵本で見た天空大陸を捜して、そこに棲もうよ! 空なら奴隷狩りも来れないでしょ?』
『うん! 頑張ろうね!』
『約束!』
『うん! 約束!』
新たな目標を胸に抱き、【霊王】を捜すという使命を果たす旅が始まる。
捜索の旅は真っ直ぐではないけれど、寄り道をすることになっても、苦しむモフモフを助けるために全力を尽くすという信念を曲げない道を歩もうと、改めて決意を固めるのだった。
「親分! オークちゃん! 行ってきます!」
===================
第二章『一期一会』 完結
閑話を挟んでから次章を開始します。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次章はタマさんの欲望編(仮)を予定してます。
まだ読んでもいいと言っていただければ幸いです。
「昨夜も――」
顔面に載った丸いお腹が何かを言う前に、口にドロン飴を放り込んで口を塞ぐ。
「恥ずかしがることないのにーー! 内容の方が恥ずかしいと思うんだけどな!」
「……日課やってお風呂に入ったら出発だよ!」
「えーー! ご飯は!?」
「町でね!」
「えーー!」
まだ動けないでいる従魔たちとエルフ娘たちを一人ずつお姫様抱っこでお風呂に運び、最後の入浴を済ませる。
このときみんなに言われて気づいたのだが、どうやら俺にも角が生えたらしい。深い緑色の二本の角に、金色の模様が浮き出ているそうだ。
レニーが「お揃い」だと喜び抱きついてきた。大人の女性という印象の彼女は、夜の時と同じ少女のような仕草で喜んでいた。……可愛い。
お風呂から出て、試着以外では初めて新装備を身につける。今回は緑色の方だ。
パキスタンの正装風の服の上から外套を身につけ、左手の薬指にお揃いの指輪つける。擬装用の鞄はアーマードブルの革製肩掛け鞄で、ラビくんが鞄内でお昼寝できるように毛布が敷いてある。
「じゃあ先に行くね。【迷宮都市】で待ってるから」
「アーク殿……」
「アーク、寂しい……」
「主ーー!」
「主様……」
「「ご主人様……」」
待っていると告げると、遠距離恋愛が始まる恋人のようにしんみりし始めたレニー、イム、アイラ、メルが抱きついてきた。
アイビーとローズは新入りだからと遠慮がちだが、寂しそうにしてくれている。
まぁ違う意味で寂しがっているモフモフたちもいるけど……。
「リムくん……悲しいね……」
「ガウゥゥ……」
一人ずつ抱きしめて唇を重ねて別れを惜しむ。彼女たちは俺と別れを惜しんだあと、ふてくされているモフモフたちとも最後のふれあいを行う。
後ろ髪を引かれる思いだが、船の時間があるので洞窟を出発し、町に向けてカーさんたちと一緒に走り続ける。
「アーク! 今日からは女の子の代わりに、ぼくのお腹の柔らかさを堪能してくれていいんだよ?」
リムくんに乗ったラビくんが話し掛けてきた。
「……ありがとう! というか、ヤキモチ妬いてたの?」
「ち、違うもんねーー! ふんっ!」
可愛い子だ。気遣いできる子だから、レニーたちに遠慮していたらしい。
「今日からは《按摩》の習熟に付き合ってもらおうかな!」
「……しょうがないなーー! 特別だよーー!」
「ありがとう!」
「うむうむ!」
ご機嫌に頷く姿が可愛い。揺れる耳が破壊力を増している。
「アーク、町に行く前に自分のステータスを確認しておきなさい。昨夜やっと整理が終わって、スキルの名前が変わったりしているから、しっかり把握しておきなさい!」
カーさんと何やら打ち合わせをしていたタマさんが、ステータスの確認を促す。
「分かりました。ステータス」
【名 前】 アーク
【性 別】 男
【年 齢】 10歳
【種 族】 鬼族 (ハーフエルフ)
【レベル】 219
【魔力量】 4,900,000
【魔 術】 無
水魔術
地魔術
火魔術
風魔術
闇魔術
光魔術
森魔術
氷魔術
雷魔術
砂魔術
熔魔術
飴魔術
金属魔術
振動魔術
具現魔術
【職 業】 トイストア
【スキル】
〈固 有〉=ユニーク=
カタログ 3
セクション 3
=エクストラ=
覇運
限界突破
環境適応 3
〈行 動〉=ノーマル=
算術 10 観察 10
跳躍 10 疾駆 10
威圧 10 遊戯 10
心話 10 偽装 10
=ユニーク=
素材鑑定 5
素材探査 5
魔力循環 5
魔力圧縮 5
魔力付与 5
魔力吸収 5
無音歩行 5
合気 5 盗聴 5
念動 5 念話 5
〈職 業〉=ノーマル=
調合 10 薬術 10
醸造 10 料理 10
解体 10 罠術 10
加工 10 製紙 10
鍛冶 10 話術 10
騎乗 1 按摩 2
魔術陣 10
短縮詠唱 10
=ユニーク=
医術 5 手術 3
発掘 5 建築 5
錬金 5 付与 5
分解 5 整備 5
細工 5 刀工 5
染織 5 服飾 5
演劇 5 製本 3
複製 1 窃取 1
性技 5 絶倫 5
調教 5 家事 5
酒造 5 製菓 5
食品加工 5
宝石細工 5
魔具作製 5
魔導罠術 5
配置図盤 3
図化 5 転写 1
捕捉 5 契約 3
化合 5 王気 2
無表情 2
見切り 1
刺突 2 斬鉄 5
居合 5 圧切 1
両断 5 切断 1
打突 5 破砕 5
螺旋 5 反射 5
金剛 5 傀儡 5
詠唱破棄 5
=エクストラ=
言語理解 3
素材地図 3
自然産業 3
創作技術 3
画匠術 3
遺宝術 3
瞬間記憶 3
並列思考 3
物体転移 3
立体機動 3
解析 3 遠話 3
韜晦 3 神託 3
不可視 3
剣霊術 3
武霊術 3
暗殺術 3
纏衣術 3
閃駆 3
領域 3
必中 3
無詠唱 3
〈身 体〉=エクストラ=
魔力支配 3
魔力変化 3
魔力回復 3
属性纏鎧 3
身体練成 3
超回復 3
物理攻撃無効 3
精神攻撃無効 3
無属性攻撃無効 3
火属性攻撃無効 3
風属性攻撃無効 3
水属性攻撃無効 3
地属性攻撃無効 3
闇属性攻撃無効 3
森属性攻撃無効 3
氷属性攻撃無効 3
雷属性攻撃無効 3
砂属性攻撃無効 3
〈知 覚〉=エクストラ=
心眼 3
看破 3
存在察知 3
空間知覚 3
地獄耳 3
探知眼 3
精霊眼 3
【能 力】=身体系=
高速再生 身体硬化
=戦闘系=
竜鰐闘技
=特殊系=
武威
【加 護】 創造神アルテアの加護
霊 王シリウスの加護
炉 神リゲルの加護
商 神アリオトの加護
【称 号】 転生者
使 徒
勇 者
神 匠
巨 頭
超越者
守護者
奴隷王
博 愛
霊魔天
武芸者
覚醒者
【備 考】=従 魔=
耳長銀狼(ラビ)
エント (レニー)
ヒュドラ(アイラ)
ウェヌスフロッグ(メル)
パンドラスライム(イム)
=召喚獣=
フェンリル特異種(リム)
=守護精霊=
樹の高位精霊 (カリュオン)
綿花の高位精霊(ネポス)
=師 匠=
武神獣ゼオレス(真名)
戦鬼将イルリス(真名)
「突っ込みどころ満載だろうけど、種族の偽装以外は全部エクストラの《韜晦》スキルで隠してあるわ。《隠蔽》スキルの最上位だから、基本的に閲覧不可って事ね。他人があなたを見れば無能に映るはずよ。人間関係を構築するための踏み絵になるわね!」
見下すヤツは無視って事ね。
「気になることを全て聞いたらキリがなさそうなので、いくつか聞いてもいいですか?」
「時間がないから少しだけよ」
「では、魔力量は何なんですか?」
「あぁ。魔力量の前に〈固有〉欄に《限界突破》があるでしょ? 特殊な条件が必要だからレベルがないんだけど、効果は魂格レベルの上限解放よ。それによって二百万を超えたのが一つ。高位精霊との契約が一つ。それ以外では魔力含有食材の摂取に神器での吸収が一つ。最後に端数が面倒だったから切り上げて完成よ!」
「なるほど……。高位精霊様との契約ではどれくらい増えたのですか?」
「具体的な数字は省くけど、一体の高位精霊と契約するには特殊な条件がない限り、最低でも百万の魔力量が必要なのよ。でも契約後は二割増しの魔力を受け取れるわ。あんたは二体分だから、最低でも二百四十万ね。ちなみ、二体同時に高位精霊と契約したのは、あんが初めてよ!」
「では次に、一番気になっている《絶倫》について教えてもらえませんか? 取った覚えがないし、《性技》も何故か最大値だし!」
「何を言ってるのよ! スキルは未習得でも経験値が蓄積されていて、該当スキルを習得したときに反映されると知っているでしょ? あんたは添い寝を始めたときから蓄積があって、あとは意識があるときも技術を修めれば最大値になっていたの! 《絶倫》は派生スキルよ! 特効薬を飲んだでしょ?!」
「あの薬ってそんな薬だったの!?」
「……言わなかったっけ? おかしいなぁ……。まぁあの薬のおかげで派生して、【霊王】の加護のおかげと習熟で最大値よ! 元々化け物並みの体力もあったし、才能があったんでしょうよ! おかげで六人を相手にしているのに、あんただけがいつも元気でしょ? よかったじゃない! ――はい! この話はおしまい! 時間がないけど、もういいのね!?」
誤魔化しやがった……。しかも俺に才能があるとか言って、なすりつけで逃げ切ろうともしている。
でも俺は知っている。あの薬を飲ませた共犯者がいることを……。
その共犯者に視線を向けると、耳で顔面を隠して鉄壁の防御を張っていた。
……可愛いから良しとしよう。
ステータスの確認を終えたのは、町に着く直前だった。盗難対策のためにラビくんを抱っこして町に入り、港に向かう。
町に入った際に服装をジロジロ見られたが、生えたばかりの角を見て納得していた。
町の雰囲気が数日前に来たときよりもピリピリしている気がするが、今日出て行く俺には関係ない。
『アーク、露店の出店場所に行かなくていいの?』
『え? 何で?』
『去年約束してたじゃん!』
『次の年に奴隷狩りを依頼したのに?』
『でも行かなかったことで後々不利になるかもしれないじゃん! 行っていなかったら、いませんでした! 約束を破棄したのはそちらだって言えるよ!』
『それもそうか!』
ラビくんの提案を受け、露店予定地を訪れた。当然クロエの姿はなく、代わりに貴族男性と騎士がいた。面倒そうなことになりそうだと判断し、さっさとその場を後にする。
一瞬、騎士と目が合う。騎士が目礼をしたので、俺も返礼しておく。
『いなかったねーー!』
『逆に来てたら、どの面下げて? と聞いてたよ!』
『……そうだね!』
ラビくんと念話で雑談しながら、港に向かうまでに串焼きを購入して朝食を取る。
港に到着後は待ち時間もなく船に乗り、時間通りに出発した。
「ようやく……! 念願のモフモフ探しの旅が、ようやく始まるのか……!」
『じゃあ、追い出されたモフモフたちとずっと一緒にいれる場所も探そうよ! これから助けるモフモフの新しいお家としてさ! ドロンを育てたり、アークのおもちゃで遊んだり!』
『いいね! ――そうだ! いつか絵本で見た天空大陸を捜して、そこに棲もうよ! 空なら奴隷狩りも来れないでしょ?』
『うん! 頑張ろうね!』
『約束!』
『うん! 約束!』
新たな目標を胸に抱き、【霊王】を捜すという使命を果たす旅が始まる。
捜索の旅は真っ直ぐではないけれど、寄り道をすることになっても、苦しむモフモフを助けるために全力を尽くすという信念を曲げない道を歩もうと、改めて決意を固めるのだった。
「親分! オークちゃん! 行ってきます!」
===================
第二章『一期一会』 完結
閑話を挟んでから次章を開始します。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
次章はタマさんの欲望編(仮)を予定してます。
まだ読んでもいいと言っていただければ幸いです。
0
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
俺のスキルはJRエー。
日前蜜柑
ファンタジー
一話毎の終わりに競馬の事を書いてたけど、趣味で無い人には悪いかなと思い、違うところで書く事にした。
なので文字数は纏まらない。
思いっ切りファンタジックに、けれど競馬は実際のJRAのレースを元にするので、そこは真実になる。
もちろん当たり外れもね。
自分の名前は忘れた。
確かWINS(場外馬券場)で落ちていた馬券を拾っていたと思う。
宝塚記念だったかな?。
ふと目についたのは数字だった。先程の宝塚記念と同じ当たり目だ。
異世界記念?、ふっ、見間違いだな。
そう思い懐に入れた。
その刹那、目の前が真っ白になる。
あっ、これ貧血だ。
倒れたのは分かった。
顔を地面に打ちつけたから。
あ〜駄目だ、ただの貧血じゃ無い。
それからは何処かに自分の身体が、まるで川に流される様にふわふわと動いていく。
異世界なのだけど···。
若返って20歳くらいだけど。
頭の中に響いたのは(スキルJRエー)。
名前はハクタらしい。
そして公園で拾ったラノベとか言うのに書かれてた景色と一緒。
草原だ、草原だよ。
どうする、これよ。
目の前を馬車が行く。
あっ、街道だ。
そこに盗賊が現れる。
頭の中でピーンと来た。
多分これ、助けないと駄目なやつ。
しかしどうやって。
俺のスキルはJRエーだぞ。
思い付くのは···馬運車召喚!。
出るわきゃな···「出たよおい!」。
盗賊を馬運車で蹴散らした。
何人か轢いたよ。
何か悪い。
盗賊だよ、相手は。
「私商人のノレドと申します」
「俺、ハクタって言います」
「俺等護衛のヤフードと···」
「キルダだ有難うな」
で、ラノベの如く感謝されて、馬車の商人と二人の護衛さんとともに、ヨードって町へ行く事に。
うん、商人さんの口添えで、入場税も払って貰い、初日は商人さんの家に泊まり、その後の宿も取って貰えた。
おまけに有り難い事に3ヶ月分の生活費までくれた。
もうね、感謝感謝だよ。
さてどうする家康、じゃ無い。
どうするハクタよ。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる