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序章 貴族転生

第二十話 解説からの照れ隠し

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 ついに職業を得たわけだが使い方が分からない。剣士とかなら剣を持てば自動で補正がかかるらしい。

 俺は? 職業の名前すら聞いてないよ?

「とりあえずステータスを確認してみたら? ついでに分類ごとに整理しといてあげたから」

「ありがとうございます!」

 整理するほどだったかな? でもステータスに職業が載っているはずだ。

「ステータス」

【名 前】 アクナイト
【性 別】 男
【年 齢】 5歳
【種 族】 鬼族(隠蔽)
【レベル】 1
【魔力量】 50,000
【魔 術】 無
      水魔術
      地魔術
【職 業】 トイストア
【スキル】 
〈固 有〉=ユニーク=
      カタログ  1
      セクション 1
〈行 動〉=ノーマル=
      言語 10(隠蔽)
      算術 10(隠蔽)
      暗記 6 観察 6
      植物鑑定 5
      生物鑑定 4
      魔力強化 5
      思考強化 5
      身体強化 7
      防御強化 6
      歩法 6 跳躍 5
      疾駆 6 呼吸 4
      身体異常耐性  7
      精神異常耐性  7
      物理攻撃耐性  3
      水属性攻撃耐性 2
      地属性攻撃耐性 2
      無属性攻撃耐性 2
      気配遮断    5
      気配察知    5
      魔力察知    6
      危機察知    4
      聞き耳 5 手探り 6
      話術  3 清掃  3 
      採取  6 土木  2 
      信仰  7 心話  6 
      偽装  10(隠蔽)
     =ユニーク=
      魔力把握   5
      魔力制御   5
      魔力循環   3
      魔力圧縮   2
      魔力具現   2
      魔力武具   2
      武器強化   2
      状態異常無効 5(隠蔽)
      解読 2 隠蔽5(隠蔽)
〈職 業〉=ノーマル=
      木工 7
      調合 6
      体術 5
      棒術 5
      短縮詠唱 7
【加 護】 創造神アルテアの加護(隠蔽)
【称 号】 転生者(隠蔽)
      使 徒(隠蔽)

「おぉぉーー! いろいろ突っ込みどころがあってどこから手をつけたものか……」

「上から聞いて行けばいいんじゃない?」

「御言葉に甘えます。ではさっそく名前についての疑問です。名前だけでしたっけ?」

 伯爵家の苗字があった気がする。

「それね。貴族の出生証明書を出していなかったから貴族名鑑に載っていなかったのよ。まぁ実際に血縁はないわけだし」

「やっぱりか……。次は魔力量について教えてください。どうしてこんなにきりが良いんですか?」

「そこ? そこが気になるの? 数字がおかしいとか、こんなに増えた理由は? とかでなく?」

 まぁ思わなかったわけではない。しかし、すでに化け物と言われたあとだ。今さら気にならない。増えた理由はダム方式しか思い浮かばないから、そこまで気にならないかな。

「……そうね。ダム方式で回路が広がって放出量と吸収量が増えて、それに対応するように許容量が増えたというところよ。あとはドロンの果実を主食にしていたことね。何と言っても、あれは魔力の塊だから。……それできりの良さだけど、サービスで切り上げたのよ」

 説明は一言で終了した。

「ありがとうございます! いやぁ正直気絶できない時期があったので、五万はないと思ったんですよねー! それとドロンの果実か。さすが親分の主食ですね。これからも主食にさせていただきます!」

「料理もやりなさいよ。次は魔術かしら?」

「お願いします!」

「適性属性は適性がありますよっていう表示なの。魔術を覚えなければ宝の持ち腐れで属性のままよ。でも魔術を一つでも習得すれば、その属性は魔術表記に変化するわ。あとは魔力操作か魔力制御のレベル次第で威力や制度、種類などが変化するってわけ。無属性に関しては特殊だから表記はまだ・・そのままよ」

 なるほどなるほど。術式や呪文の研究だけでなく基礎を疎かにすれば全てが水泡に帰すというわけか。垂れ流しも無駄ではなかった。

「職業は飛ばしてスキルについて教えてください。数字についてもお願いします!」

「固有スキルは職業に付随したスキル。行動スキルはあなたが努力をした結果。職業スキルは種族特性のおかげで習得したスキルね。まぁ最後の短縮詠唱は少し違うけどね」

「どう違うのです? というか魔術職のスキルでは?」

「そうよ。でも魔術の適性があって研鑽を積んだ者ならば習得可能なスキルよ。適性があって魔術を使えるのにスキルを所持していなかったら、努力が足りないってことになるわね」

 結構辛辣……。俺も頑張らねば。

「……あなたは頑張りすぎよ」

 ボソッと呟いたアルテア様は眉間に指を当て難しい顔をしながらもんでいた。

 お疲れなのかな?

「スキルの種類は共通してノーマル、ユニーク、エクストラの三つよ。規定のレベルを超えたら昇格するものもあれば、複数の統合スキルであったり、独立したスキルだったりするわ。数字はレベルなんだけど、そうね……面倒だから表示しようかしら」

 アルテア様に招かれた白い空間に、ステータスとは別の輝く板が浮上してアルテア様の代わりに説明を担っていた。

【ノーマル】
 10 = 伝 説 = 超級職転職条件
  9 = 英 雄
  8 = 達 人 = 上級職転職条件
  7 = 一 流
  6 = 熟 練
  5 = 中級者
  4 = 一人前
  3 = 新 兵
  2 = 見習い
  1 = 初心者

【ユニーク】
  5 = 伝 説 = 超級職転職条件
  4 = 達 人
  3 = 熟 練
  2 = 一人前
  1 = 見習い

【エクストラ】
  3 = 神 話
  2 = 伝 説
  1 = 英 雄

「補足するわね。ノーマルとユニークにある転職条件っていうのは、職業スキルが対象のレベルを超える必要があるということよ。条件は他にもあるということね。ユニークはノーマルの偶数のレベルが相当で、実力についても同じように判断されるわ。もちろん上のスキルになればなるほどスキルレベルは上げにくくなっていくんだけどね」

「では、いくつか最大値のものがあると思うんですが?」

「最大値になることは稀なんだけど、自分の職業の階級以上は持て余すし、レベルが上がりづらくなるから最大値にしてから昇格させることを推奨するわ。あとあなたの職業はユニークスキルを所持している上級職になるんだけど、転職して超級職になるまではユニークのままが効率がいいの。そのままでも習熟度は蓄積されていくから無駄にはならないわよ」

 これは罠だな。

 誰もが上昇志向を持っている。そこに自分の職業をさらに高める可能性があるスキル昇格が目の前に舞い降りる。ほとんどの人が誘惑に勝てずに昇格させてしまうだろう。
 特に一般職でくすぶっているものたちには、喉から手が出るほどのチャンスだ。

 でもアルテア様が言っていたじゃないか。ユニークのスキルに昇格したり生えたりするのはレベル八以上。ユニークのレベルはノーマルの偶数相当。階級が上がればレベルを上げづらくなる。

 ということは、ノーマルスキルで最大値になることはそのままユニークスキルでも最大値になるということだ。

 八まで上げた上げやすいスキルレベルがユニークスキルの四で停滞する。だから最大値になることは稀なのだろう。

 ニコニコ笑っているから正解なんだろうな。職業のシステムも属性のシステムも全て素質や才能を与えているが、結局最終的な選択や行動を人間に委ねて、人生を良きものにするのも悪しきものにするのも全て本人次第と伝えようとしているように感じる。

 『他人を羨む前にまず努力をせよ』

 この言葉を神託だと思い肝に銘じよう。

「ふふふっ。次は?」

「スキルの内容も気になりますが、隠蔽されているスキルが増えたように感じます」

「偽装と隠蔽に状態異常無効スキルね。木像を作って祈ってくれたお礼と努力したご褒美に、追放祝いかしら」

「決定したんですか? 奴隷ではなく?」

 モフモフに会いに行ける!?

「奴隷として欲するとしたら現在では神子だけね。でも伯爵が許さないわ。奴隷遊びする時間は神子にはないからね」

「もしかして病気が治ることと関係あります?」

「このあと薬が届いて完治するの。伯爵は職業がないなら種族特性スキルを習得習熟させるために、毎日訓練漬けにさせると思うわ。そこに奴隷とか邪魔じゃない。だからあなたを遠ざけようとするけど、あなたは賢く能力も高いから担ぎ出そうとされたら御家問題勃発でしょ? 結論、殺すのがベストよ。森に解き放って魔物に殺されてもいいし、追撃用に兵士も出すだろうしね」

 嬉しいような迷惑なような。

 森に放逐されるなら最大限にごねて物資をゲットしてやるぜ!

「あげたスキルの内、完全に隠れたらおかしいものを偽装で偽って、完全に隠した方がいいものは隠蔽で隠してしまえばいいわ。
 最大値の偽装は最大値の鑑定で、最大値の隠蔽はエクストラスキルでのみ見破ることができるから基本的には大丈夫よ。ただ教会にあるようなステータス表示用の神器は気をつけてちょうだい。今回は私が妨害するからいいけどね」

「ありがとうございます! 化け物並みの魔力量とかのことですね?」

「そうよ。五歳の子どものステータスとしては異常だからね。あとあなたは自傷行為をやめなさい。モフ丸が悲しんでいたわよ?」

「わふ~~」

 え? そんなことしてたっけ? 

 確かに神子派兵士による集団戦で集中攻撃を受けたりで体中傷痕だらけだけど、自傷行為はしてないはず……。

「属性攻撃耐性がついているでしょ? あなた自分に魔術を撃っていたじゃない」

 あぁー、あれか。

 森に追放されるなら魔獣の魔法対策が必要だと思って、せめて自分の適性属性の攻撃だけは平気なようにしようと思って、壁に向かって跳ね返ってきた魔術に背を向けて喰らうということをやっていた。

「あれは兵士との訓練で傷を負ったときだけ医務室で手当てをしてくれるので、どうせなら検証に使おうと思って試しただけです。毒とかは怖くて手を出せなかったんですけどね。……まさかそれで状態異常無効スキルをつけてくれたんですか?」

「そうよ。毒を喰らって苦しんでいるところをモフ丸に見せたくないもの」

「結構、見ているんですね」

「えぇ。あなたがいる島のモフモフは可愛い子が多いからね。ついでに見ているわ」

 モフ丸がペロペロしているところを見れば照れ隠しであることは明白で、島のモフモフを見ることの方がついでなのだろう。

 ありがたいことである。

「うっうん! 最後はいよいよ本命かしら?」

「お願いします!」

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