おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一

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序章 貴族転生

第十四話 事件からの新居建造

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 平和な日々を送っていたのだが、二年間毎日続けられていたカツンカツンという音の正体がついに判明した。

 衝撃的な事件を起こして。

「……やりやがったな。アイツ……!」

 俺は養父にアポを取ろうと思ったのだが、いつまで待たされるか分かったものではない。だから最近できたコネを使うことにした。

「お疲れ様です、兵士長殿。今、御時間よろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんです」

 兵士長は『勝手に見取り稽古』の観察対象で、俺の組手相手でもある。現在は彼の呼吸・・を盗んでいる最中だ。

「ありがとうございます。それでは早速なのですが、どうやら敷地内に侵入者がいるみたいなのです」

「なんですと!? 何か根拠でも……?」

「百聞は一見にしかずです。是非見てもらいたいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろんですとも」

 了承を得たことで俺と兵士長は事件現場に行く準備をする。本当に事件が起きた場合、関係各所に通達をしなければならない。そのための人員を連れて行くようだ。

 この時点ですでに信じているのと同じなのだが、一応確認しなければならないということだろう。

「こちらです」

「…………」

 兵士長は何かに気づいたのだろう。主に事件現場の場所について。

「これです」

「…………これは?」

「現在の自宅です」

「……いつからこの状態に?」

「早朝の日課で朝食の調達から帰ってきたときにはすでに。早朝までは無事でしたよ。生きてますからね」

「……ですね」

 もう分かるだろうが、現在我が家は倒壊しているのだ。無事なのは屋根くらいではなかろうか。

「伯爵様を呼んでいただけませんか? 新築する許可をいただきたいのです」

「……わかりました。おい! 旦那様に報告してこい!」

「はっ!」

 養父に報告するために一人の若い兵士が屋敷に向かって走り出したのだが、彼は帯剣しているため神子派である。ついでにもう一人に報告しに行くのだろう。

「犯人捜しは必要ですか?」

「…………旦那様の判断次第ですね」

「でしたら捜しはしないでしょうね」

「…………」

 その場にいる全員が沈黙し、俺の言葉を聞き流していた。空気が肌に突き刺さるような沈黙が続き、全員が自然と屋敷の方角を見る。

 みんな養父の到着を心待ちにしているのだ。

「待たせた。それで、これが倒壊した建物か……」

 養父の登場に沈黙を貫いていた全員がホッとしており、養父の言葉で到着が遅れた理由を知る。養父を含めて全員が報告をした者を見て不敵に笑う姿から、わざと一部を隠した報告をしたのだろうことを確信する。

「報告もできない部下は考えものだな」

「申し訳ありません! 再教育しますのでお許しを!」

 とばっちりの兵士長とは対照的に、神子派の兵士は不敵な笑みを崩すことなく軽く頭を下げるだけであった。
 さすがの養父もムカついたのだろうか、据わった目つきで神子派の兵士を見ている。

「……再教育は不要だ。配置転換をする」

 全員の頭に娼館が浮かんだだろうが、今回はコイツが犯人かどうか不明である。そのせいかどうかは知らないが、別の場所への配置転換らしい。

「護衛業だ」

「えっ?」

 今まで不敵に笑っていた顔が凍りつき真っ青になっている。養父に対しての疑問の声も意図して出たわけではなく、自然と心内から出た言葉のようだ。

「なんだ? 問題でもあるのか?」

「い……いえ……」

 護衛業ってなんだ? 娼館の他にも副業をしているのか? それにしても嫌そうだ。
 まぁ俺には関係ないし、嫌がる彼には一つの言葉しかかけてあげれない。

 はい、斉唱! ざまぁ!

 彼に対して同じ気持ちを持ったであろう者たち全員で、心の中での斉唱だ。きっと伝わったはず。

「それでこれに対して心当たりは?」

 周囲の兵士達と件の兵士を見ていたら、養父から原因に対して説明を求められた。

「はい。ここ二年ほど毎晩朝までカツンカツンという音が聞こえてきまして、昨夜音が強くなったように感じたと思ったら、今朝このようになっていたのです」

「……そうか。それでどうする?」

「修繕する許可をください」

「……必要なものがあれば手配する。老朽化・・・が進んだ敷地内の建物を修繕するのは仕事のうちだ。費用に関しては伯爵家が出す」

「ありがとうございます」

 犯人捜しなど不毛なことはしないし、老朽化として片付けるから納得しろというのも分かる。
 さすがに今回ばかりは養父も神子の主張を鵜呑みにすることはないだろうが、俺が犯人捜しを要求しないのならもみ消すことも十分に可能である。

 養父の部下である兵士達は元より、物分かりがいい俺は老朽化で話を終わらせることにした。
 藪蛇で配置転換や奴隷は嫌だからである。

「修繕のこともある。用があれば屋敷の方に来い」

「はい」

 俺たちの総意が養父に伝わったのか、問題は片付いたと判断して屋敷に戻っていった。

「……手伝いましょうか?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、兵士長たちにも火の粉が飛んでしまう可能性がありますので、遠慮させていただきます」

「……そう、ですね……。こちらこそお気遣いありがとうございます」

 兵士長が一瞬神子の部屋の方角を見て、困った顔をしながら部下を連れて帰って行く。

「さてと。どうせなら少し大きくしよう。元々は小屋として使っているから、そこは変えないようにしよう。小屋は良いけど家はダメだとか言われたら困るし」

 杭の位置をずらしてロープを延長するだけで、周囲に何もない俺の領域は簡単に広げることが可能である。今回は十メートル四方を囲って大幅に領域を拡大した。
 ただせっかく少しずつ修繕をして住み、作品置き場なる場所も作って女神像などを飾っていたのに……。

 四畳半の狭い小屋に布団と道具と等身大女神像だけを置いて、朝と夜に祈りを捧げる清らかな生活を送っている幼児にまさかの仕打ち。

 この恨みはらさでおくべきか……。

 修繕もとい新築するための最初の作業を、神子への復讐を兼ねたものにするため作業を始める。

「えっほ! えっほ!」

 巨大な木像はかなり重い。でも木像完成からオークちゃんを担いで動くという基礎体力の向上を行ってきたのだ。魔力の補助があればなんのそのである。

「兵士長殿。夕方取りに来ますので訓練場に置かせてください!」

「こ……これは……なんです?」

「オークちゃんの木像です」

 たぶんそういう意味で聞いたわけではないだろうが、俺もオークちゃんの情報を持っていないのだから答えようがない。

「向きはこのままでお願いします」

「え、えぇ……」

 オークちゃんの視線の先は神子の部屋で、ポールアックスを手に持ち、神子の部屋を睨んでいるようにも見える。
 果たして夜中のトイレも一人で行けないビビりの神子(笑)は、この威圧感満点のオークちゃんの視線に耐えられるかな?

 夕方になれば影がカーテンに映る位置取りである。無視はできまい。これから完成まで毎日設置する予定だ。
 本当は夜も置きたいが、無人になる訓練場に置いておいて燃やされたら殺しに行きたくなってしまう。だから訓練も兼ねた朝夕の移動で済ますことに留めたのだ。

「じゃあ、やるか!」

 新築後の広さはだいたい六畳くらいを予定している。微妙な変化なら文句が言いづらいだろうし、小屋が新しくなって広くなれば使用人から喜ばれるだろう。

 等身大女神像や布団などを脇に避けておいて、ボロボロになった元から小屋に使われている木材は廃棄処分または薪利用。修繕に使用したもので再利用可能なものは再利用コーナーへと選別していく。

 選別後は簡単な掃除をして、建築予定地を決める。

「木材の申請は今からじゃ間に合わないだろうから、森に行って伐採するか」

 斧を背負って柵を越え森に向かう。しかし今日は時間がないこともあり、外縁に生えている樹木を伐採して建材にしよう。

 魔力で斧を強化し爆速ハイハイモードで斧を一閃。イメージはオークちゃんがイビルプラントにトドメを刺した一撃だ。

 ガツンという衝撃が体を襲い、斧から手が離れそうになるも踏ん張る。オークちゃんに気合が足りんと言われそうだと思いながら、斧を数度打ちつけた後、反対側に移動して伐採を完了する。

 ズンッ。

 巨木が倒れたときに起こした衝撃に一抹の不安を抱きながら、領域への帰宅を果たすのだった。

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